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2020年度はコロナ禍で通所サービス利用者が激減、全体として要介護度改善の方向にシフトしている—厚労省

2021.11.4.(木)

2019年度から2020年度にかけて、介護サービス全体としては利用者減などがないが、サービス種類別に見ると「通所介護・通所リハで利用者が大きく減少する」など、新型コロナウイルス感染症の影響もでている―。

全体として「要介護度の改善」が進んでいると考えられる。2021年度にはADL維持等加算が拡充されており、その効果がどう現れるのか注目される―。

このような結果が、厚生労働省が11月2日に公表した2020年度の「介護給付費等実態統計」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(前年度の記事はこちら、前々年度の記事はこちら)。

2020年度、コロナ感染症の影響で通所介護・通所リハは利用者が大きく減少

介護給付費等実態統計は、1年度分の介護レセプトをもとに、介護サービスの提供状況(利用状況)や給付費の状況などを把握するものです。2018年度から集計対象を「介護保険総合データベース(介護DB、介護レセプトと要介護認定情報を格納)のレセプトすべて」に拡大したことから、従前の抽出調査である「実態調査」に比べて各段に精度が向上しています(2018年度の実態統計に関する記事はこちら、17年度実態調査に関する記事はこちら、16年度実態調査に関する記事はこちら)。

まず受給者の状況を見てみると、2020年度の累計受給者数は6316万3500人で、前年度に比べて112万4900人・1.8%の増加(2018→19年度は2.2%の増加)となりました。2020年度は新型コロナウイルス感染症が我が国でも猛威を振るいましたが、介護サービス全体で見れば「利用者の減少」などの大きな影響は出ていないようです。

また、同一人物を名寄せした実受給者数は621万9000人で、前年度に比べて10万7900人・1.8増加しています(2018→19年度は2.3%の増加)。実受給者数の伸び率と、累計受給者数の伸び率は同程度で、全体として、「1人1人がより多くのサービスを受給するようになった」あるいは「利用控えが生じた」ようなことは少なくとも2019から20年度にかけては生じていないことが分かります。



サービス種類別の累計受給者数(あわせて前年度からの増減)・実受給者数(同)は次のようになりました。

▽介護予防訪問看護:▼累計受給者数112万4700人・10.4%増▼実受給者数15万1000人・8.2%増

▽介護予防通所リハ:▼累計205万6800人・5.0%減▼実24万6800人・5.4%減

▽介護予防支援:▼累計879万8800人・4.3%増▼実100万9500人・1.0%増

▽訪問介護:▼累計1233万4400人・0.9%増▼実147万7300人・1.1%増

▽訪問看護:▼累計633万800人・8.4%増▼実81万600人・8.6%増

▽通所介護:▼累計1356万2300人・4.2%減▼実157万2600人・3.3%減

▽通所リハ:▼累計499万1500人・6.9%減▼実59万5700人・5.8%減

▽短期入所生活介護:▼累計345万2200人・12.0%減▼実62万8800人・13.6%減

▽居宅介護支援:▼3326万8500人・1.5%増▼実367万4400人・0.9%増

▽小規模多機能型居宅介護(短期利用以外):▼累計122万6000人・1.8%増▼実14万4600人・0.8%増

▽認知症対応型共同生活介護(短期利用以外):▼累計252万3600人・1.8%増▼実26万600人・0.8%増

▽定期巡回・随時対応型訪問介護看護:▼累計37万1900人・14.7%増▼実4万7700人・12.4%増

▽看護小規模多機能型居宅介護(短期利用以外):▼累計17万8000人・19.2%増▼実2万3800人・16.5%増

▽特養ホーム(介護老人福祉施設):▼累計673万4300人・1.1%増▼実70万7800人・0.7%増

▽老健施設:▼累計428万6200人・1.0%減▼実55万1200人・3.0%減

▽介護療養型医療施設:▼累計21万3900人・448%減▼実2万9600人・45.7%減

▽介護医療院:▼累計40万2900人・97.5%増▼実5万3700人・68.8%増

介護予防サービス種類別の利用者数動向(2020年度介護給付費等実態統計1 211102)

介護サービス種類別の利用者数動向(その1)(2020年度介護給付費等実態統計2 211102)

介護サービス種類別の利用者数動向(その2)(2020年度介護給付費等実態統計3 211102)



例えば、▼要支援者では利用者増加率が2018年度から19年度に比べて小さい▼通所サービスでは利用者が減少している―ことから、サービス種類によってはコロナ感染症の影響が出ていることが分かります。

また、「介護療養から介護医療院への転換が進んでいる」状況も確認できます。

一方、介護予防訪問看護について依然として伸び率が大きく、「医療的ケアが必要な要支援者に対する適切サービス提供が進んでいる」のか、あるいは問題となっている「事実上の訪問リハビリステーションによる軽度者へのリハビリ提供が増加してしまっている」のか、十分に精査する必要があります。2021年度介護報酬改定の効果が出る来年度データに注目が集まります(関連記事はこちら)。

全体として要介護状態の改善が進む、ADL維持等加算が充実でさらなる改善に期待されるか

次に「昨年度(2020年度)の1年間、継続してサービスを受給した人」について、昨年(2020年)4月から今年(2021年)3月にかけて要介護度がどう変化したのかを見てみましょう。

いずれの要介護度区分でも、変化のない「維持」の割合が最も多い状況に変わりはなく、8-9割程度を占めています。

また、要支援2から要介護3では「改善(軽度化)よりも悪化(重度化)の割合がはるかに高い」(悪化する人が多い)一方で、要介護4では、「改善(軽度化)が悪化(重度化)を上回っている」状況が確認できます。従前に比べて「改善する」傾向が強くなっており(これまでは改善割合と悪化割合が同程度にとどまっていた)、重度者に対して「機能改善・重度化防止に向けた努力」を各事業所・施設が積極的に行っていると考えることができます。

2018年度の前回介護報酬改定で、通所介護に【ADL維持等加算】が創設されました。クリームスキミング防止策をとったうえで、要介護度の維持・改善度合いが高い事業所を経済的に評価する極めて画期的な加算です。2021年度の介護報酬改定では、このADL維持等加算の拡充が行われており、その効果がどう現れるのかにも注目が集まります。

改善(軽度化)と悪化(重度化)の差(軽度化-重度化)を、加算導入の前後(2017年度・18年度・19年度)で比較してみると、次のようになりました。

▽要支援2:2017年度・マイナス17.0ポイント→18年度・マイナス10.9ポイント(6.1ポイント改善)→19年度・マイナス12.2ポイント(1.3ポイント悪化)→20年度・マイナス11.1ポイント(1.1ポイント改善)

▽要介護1:2017年度・マイナス22.0ポイント→18年度・マイナス20.6ポイント(1.4ポイント改善)→19年度・マイナス21.6ポイント(1.0ポイント悪化)→20年度・マイナス15.6(6.0ポイント改善)

▽要介護2:2017年度・マイナス10.5ポイント→18年度・マイナス10.0ポイント(0.5ポイント改善)→19年度・マイナス10.4ポイント(0.4ポイント悪化)→20年度・マイナス9.4ポイント(1.0ポイント改善)

▽要介護3:2017年度・マイナス8.6ポイント→18年度・マイナス8.3ポイント(0.3ポイント改善)→19年度・マイナス8.8ポイント(0.5ポイント悪化)→20年度・マイナス6.1ポイント(2.7ポイント改善)

▽要介護4:2017年度・マイナス0.4ポイント→18年度・プラス0.1ポイント(0.5ポイント改善)→19年度・マイナス0.3ポイント(0.4ポイント悪化)→20年度・プラス0.9ポイント(0.6ポイント改善)



また、要支援1から重度化した人の割合は、2017年度:35.5%→18年度:24.1%(11.4ポイント改善)→19年度:29.2%(5.1ポイント悪化)→20年度:19.8%(9.4ポイント改善)となりました。さらに要介護5からの軽度化割合は、2017年度:11.3%→18年度:11.5%(0.2ポイント改善)→19年度:11.7%(0.2ポイント改善)→20年度:6.0%(5.7ポイント悪化)となっています。

19年度から20年度にかけて「要介護5からの改善」を除き、「要介護状態が改善する方向に動いている」ように見えます。この傾向が続くことに期待が集まります。

2020年度における要介護度別の要介護度改善・悪化状況(2020年度介護給付費等実態統計4 211102)

利用者1人当たりの「単価」、要介護者では全サービス平均で20万1700円

次に受給者1人当たりの費用額に目を移すと、2021年4月審査分(2021年3月のサービス提供分)では、▼介護予防サービス:2万8400円(前年同期比300円増)▼介護サービス:20万1700円(同3300円増)―となりました。



サービス種類別に見ると、次のような状況です。

▽介護予防訪問看護:3万5200円(前年同期比1900円増)

▽介護予防支援:4600円(同増減なし)

▽訪問介護:8万3800円(前年比3500円増)

▽訪問看護:5万1200円(同2700円増)

▽訪問リハ:4万2100円(同2800円増)

▽通所介護:9万9400円(同6200円増)

▽通所リハ:8万3800円(同5700円増)

▽短期入所生活介護:12万5600円(同8000円増)

▽居宅介護支援:1万4700円(同100円増)

▽短期利用以外の特定施設入居者生活介護:22万3900円(同200円増)

▽定期巡回・随時対応型訪問介護看護:17万4500円(同700円減)

▽短期利用以外の小規模多機能型居宅介護:21万8300円(同400円増)

▽短期利用以外の看護小規模多機能型居宅介護:28万3000円(同4500円増)

▽特養ホーム:29万6500円(同300円増)

▽老健施設:31万9100円(同1300円増)

▽介護療養型医療施設:38万9000円(同4200円減)

▽介護医療院:41万4900円(同1900円減)

介護予防サービス種類別の利用者単価(2020年度介護給付費等実態統計5 211102)

介護サービス種類別の利用者単価(その1)(2020年度介護給付費等実態統計6 211102)

介護サービス種類別の利用者単価(その2)(2020年度介護給付費等実態統計7 211102)



サービスの種類によって1人当たり費用額、つまり「利用者単価」の増減状況が大きく異なっていることが分かります。「コロナ感染症の影響」「コロナ感染症を踏まえた介護報酬臨時特例の影響」「加算の算定状況」「利用者の要介護度の状況の変化(重度者が増えたのか、軽度者が増えたのか)」など、さまざまな切り口での詳細な分析が必要です。

介護単価、最高は鳥取県21万8500円、最低は北海道19万1200円、依然として西高東低

受給者1人当たり費用額(1人当たり単価)を都道府県別に比較すると、介護サービスでは、鳥取県が21万8500(前年同期から2800円増)でトップ。第2位の沖縄県(21万5600円、前年同期から1400円増)を抑えてトップを守っています。第3位は佐賀県の21万5300円で、前年同期から3200円増加しています。上位3件の顔ぶれ・順位は前年度と変わっていません。

逆に、最も低いのは北海道の19万1200円で、前年同期から3800円増加しています。次いで埼玉県の19万2300円(前年同期から2500円増)、福島県の19万2800円(前年同期から3000円増)となりました。こちらも顔ぶれ・順位に変化はありません。

最高の鳥取県と最低の北海道との間には1.14倍の格差があります(前年同期から0.01ポイント縮小)。また、医療と同様に「西高東低」の傾向があることも一目瞭然です。

都道府県別の介護単価、西高東低の状況が一目瞭然である(2020年度介護給付費等実態統計8 211102)

介護医療院では「要介護4・5」の重度者が8割超、介護保険3施設の機能分化進む

さらに、「2021年4月審査分」(2021年3月サービス提供分)のレセプトからサービス利用状況を見てみると、次のような状況が分かります。2020年度も介護報酬改定が行われておらず(加算の創設などもない)、前年度・前々年度と同様の傾向です。

▽訪問介護の内容類型は、要介護度が高くなるにつれ「身体介護」の利用度合いが高くなる(前年度・前々年度と同様の傾向)

訪問介護の要介護度別サービス内訳(2020年度介護給付費等実態統計9 211102)



▽地域密着型サービスでは、サービスの種類によって利用者の要介護度が大きく異なり、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護では飛び抜けて要介護4・5が多く、夜間対応型訪問介護や地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用以外)、看護小規模多機能型居宅介護(短期利用以外)で要介護4・5が比較的多い(前年度・前々年度と同様の傾向)

地域密着型サービスの要介護度(2020年度介護給付費等実態統計10 211102)



▽施設サービスにおける「要介護4・5の割合」はサービス種類別に異なっており、▼介護療養:86.3%(前年度に比べて0.7ポイント低下)▼介護医療院:83.8%(同0.2ポイント低下)▼特養ホーム:69.7%(同1.1ポイント低下)▼老健施設:43.8%(同0.9ポイント低下)―という状況である(前年度から減少しているが、誤差の範囲と見ることもできる)

介護保険施設の要介護度(2020年度介護給付費等実態統計11 211102)



▽施設入所者の1人当たり費用額(つまり単価)は、概ね「特養ホーム<老健施設<介護療養<介護医療院」となっている(前年度・前々年度と同様の傾向)。

介護保険施設の要介護度別1人当たり単価(2020年度介護給付費等実態統計12 211102)



介護医療院や介護療養は「要介護度が高く、かつ医療必要度が高い入所者の受け入れ施設」、特養ホームは「要介護度が高い入所者の『終の棲家』機能を持つ施設」、老健施設は「比較的要介護度が低い人向けの在宅復帰促進施設」という機能分担が進んでいます。



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