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「2月」分データから、在院日数短縮に新規患者獲得が追い付かないことが分かる―病院報告、2019年2月分

2019.6.5.(水)

 「2月分」のデータを追いかけると、病院の一般病床では2012年以降、「平均在院日数の短縮」が進んでいるが、ここに新規患者獲得が追い付かず、「病床利用率の向上」が実現できていない―。

 こうした状況が、厚生労働省が6月4日に公表した今年(2019年)2月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

2019年1月から2月にかけて、入院・外来ともの病院の患者は増加

 厚労省は、毎月、日本全国の病院における(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前月末の状況はこちら)。

 今年(2019年)2月における(1)の「1日平均患者数」は、病院全体で▼入院:126万9125人(前月に比べて2万5809人・2.1%増)▼外来:134万9412人(同6万4003人・5.0%増)―となりました。

 医療法上の病床種別に入院患者数を見てみると、▼一般病床:70万7999人(前月比2万3441人・3.4%増)▼療養病床:27万7201人(同1387人・0.5%増)▼精神病床:28万2356人(同1018人・0.4%増)▼結核病床:1490人(同26人・1.7%減)―などという状況です。
病院報告(2019年2月)1 190604
  
 次に(2)の「平均在院日数」を見てみると、病院全体では27.6日で、前月から1.4日短縮となりました。病床種別に見ると、▼一般病床:16.4日(前月から0.6日短縮)▼療養病床:131.5日(同11.9日短縮)▼介護療養病床:283.3日(同53.5日短縮)▼精神病床:266.0日(同21.4日短縮)▼結核病床:63.8日(同1.1日短縮)―となり、前月の「延伸」の反動もあり、すべての病床種別で短縮が実現できています。
病院報告(2019年2月)2 190604
  
 さらに(3)の「月末病床利用率」に目を移すと、病院全体では81.7%で、前月から0.6ポイント低下してしまいました。病床種別に見ると、▼一般病床:78.5%(前月比1.3ポイント低下)▼療養病床:87.8%(同0.5ポイント上昇)▼介護療養病床:90.4%(同0.1ポイント上昇)▼精神病床:85.5%(同0.1ポイント上昇)▼結核病床32.1%(同0.3ポイント上昇)―という状況です。
病院報告(2019年2月)3 190604
 

2月分のデータから「平均在院日数の短縮に、新規患者獲得が追い付いていない」状況

 次に「暦月の変動」を除外するために、一般病床における「2月分」の平均在院日数の動向を見てみましょう。2017年から18年にかけてわずかに延伸していますが、2012年以降、概ね「短縮が実現できている」と見ることができそうです。

▼2012年:17.9日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2013年:17.7日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日短縮)

▼2014年:17.5日(厚労省のサイトはこちら

(0.5日短縮)

▼2015年:17.0日(厚労省のサイトはこちら

(0.5日短縮)

▼2016年:16.5日(厚労省のサイトはこちら

(増減なし)

▼2017年:16.5日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日延伸)

▼2018年:16.7日(厚労省のサイトはこちら

(0.3日短縮)

▼2019年:16.4日(厚労省のサイトはこちら

  
 一方、月末病床利用率は、次のように低下と上昇を繰り返しており、少なくとも「上昇傾向にある」とは言い難い状況です。

▼2012年:78.9%(厚労省のサイトはこちら

(0.6ポイント低下)

▼2013年:78.3%(厚労省のサイトはこちら

(1.1ポイント低下)

▼2014年:77.2%(厚労省のサイトはこちら

(3.5ポイント低下)

▼2015年:73.7%(厚労省のサイトはこちら

(2.9ポイント上昇)

▼2016年:76.6%(厚労省のサイトはこちら

(1.2ポイント上昇)

▼2017年:77.8%(厚労省のサイトはこちら

(1.9ポイント上昇)

▼2018年:79.7%(厚労省のサイトはこちら

(1.2ポイント低下)

▼2019年:78.5%(厚労省のサイトはこちら

 
 このように「2月分」データからは、「平均在院日数の短縮」は実現できているが、「病床利用率の上昇」は実現できていないと言わざるを得ません。

 
 繰り返しお伝えしているとおり、平均在院日数の短縮は、▼急性期病院においては「重症患者割合」(重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合)の向上▼DPC特定病院群(旧II群)要件の1つである「診療密度」の向上▼「院内感染」や「ADL低下」などのリスク軽減▼患者のQOL向上(例えば職場への早期復帰を果たし、生活の安定を取り戻す)—といった経営の質・診療の質の向上に直結する要素です。

 ただし、単なる「在院日数の短縮」は「空床」の発生・増加をもたらし、経営悪化にもつながります(出来高・DPCのいずれにおいても入院料が「1日当たり」で設定されているため)。

そこで、▼かかりつけ医等と連携した重症な紹介患者の確保▼救急搬送患者の積極的な受け入れ―といった新規入院患者の獲得策を同時に採らなければならないのですが、「2月分」の状況からは、「平均在院日数の短縮に、病床利用率が追い付いていない。つまり新規患者獲得などに病院が相当苦労している」と見ることができます。
 
 地方によってはすでに人口減少によって「患者数そのもの」が減少し始め、また都市部でも人口減少(=患者数減少)が始まることから、新規患者の獲得が難しく(病院間で患者の奪い合いが激化する)なってきます。新規患者獲得の努力が実を結んでいない病院におかれては、もちろん「新規患者獲得に向けた新たな手立て」を講じることも必要ですが、客観的に▼地域の医療ニーズ▼競合病院の状況▼自院の機能やリソース―を分析し、機能転換(急性期から回復期・慢性期)や、場合によっては「ダウンサイジング」(病床の削減)、共倒れを防ぐための「近隣病院との再編・統合」なども検討に入れる必要があります(関連記事はこちらこちら)。

 

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