Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

医師働き方改革、2024年度からの施行見送りや柔軟対応など検討せよ—日医

2020.6.22.(月)

医師の働き方改革として、2024年4月から、勤務医の時間外労働時間を「原則、年間960時間までとする」ことなどとされているが、これでは地域医療の確保が難しくなる。2024年度からの施行を見送る、あるいは柔軟実施を認める、ことなどを検討する必要がある―。

また、大学病院から地域医療機関への医師派遣を確保(つまり地域医療を確保)するために、960時間とは別枠で「副業・兼業のために年間480時間までの時間外労働を可能とする」仕組みなども検討すべきである―。

日本医師会の「医師の特殊性を踏まえた働き方検討委員会」が6月17日に、こういった内容の提言を取りまとめました(日医のサイトはこちら)。

時間外労働上限「960時間+480時間」などは、これまでの検討会論議をひっくり返すものだが・・・

我が国では、きめ細かく良質な医療提供体制が構築されていますが、それは「専ら病院勤務医の献身的な努力」に支えられていると指摘されます。

勤務医の時間外労働の実態を見ると、▼11.1%が「脳・心臓疾患の労災認定基準における時間外労働の水準」の2倍となる年間1920時間を超えている▼1.6%が3倍となる年間2880時間を超えている―ことが分かりました(医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査、いわゆる10万人調査)。こうした超過重労働を放置すれば、医師の健康・生命が阻害され、地域医療提供体制も崩壊してしまいます。



そこで、「医師の健康・生命」と「地域医療提供体制」との両立を目指し、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」(以下、前検討会)が2019年3月末に、次のような方針を固めました(関連記事はこちら)。

▽2024年4月から「医師の時間外労働上限」を適用し、原則として年間960時間以下とする(すべての医療機関で960時間以下を目指す)(いわゆるA水準)

▽ただし、「3次救急病院」や「年間に救急車1000台以上を受け入れる2次救急病院」など地域医療確保に欠かせない機能を持つ医療機関で、労働時間短縮等に限界がある場合には、期限付きで医師の時間外労働を年間1860時間以下までとする(いわゆるB水準)

▽また研修医など短期間で集中的に症例経験を積む必要がある場合には、時間外労働を年間1860時間以下までとする(いわゆるC水準)

▽2024年4月までの5年間、全医療機関で「労務管理の徹底」(いわゆる36協定の適切な締結など)、「労働時間の短縮」(タスク・シフティングなど)を進めるとともに、追加的健康確保措置(勤務間インターバルや連続勤務制限など)を徹底する



2024年4月の適用に向けて、「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(以下、今検討会)で▼B・C医療機関の指定の在り方▼追加的健康確保措置の詳細—などの議論が行われていますが(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら)、現在、新型コロナウイルス感染症の影響で議論は中断となっています。



そうした中で日医委員会では、今年(2020年)2月から5月にかけて「地域住民が安心して暮らせる医療提供体制を維持し、医学の進歩に資する働き方」を検討し、今般、その内容を取りまとめ公表したものです。

そこでは、上記の新労働時間上限を適用した場合、救急医療を担う病院で、例えば▼「救急対応しない医師」と「救急対応する医師」とに分かれ、当直医師間で働き方に格差が生じる▼救急対応を原則一人でやらなければならない▼救急当直担当医師の負担は重くなる(現在は2名の医師が3時間ごとに交代するなどの体制を組んでいるが、1人の医師が長時間の対応を余儀なくされる)▼医師が何らかの理由で1人、1日欠けてもローテーションが組めなくなる▼救急当直担当医師は月6回当直となり、平日の超過勤務ができなくなる▼オンコール体制の強化という別の負担が他の医師に発生する—などの問題が浮上してくると指摘。

また大学病院においては、スタッフによる「教育・研究」「地域医療支援」の時間を短縮せざるを得ず、将来の医学・医療の水準や、地域への医師派遣に大きな問題が生じるとも見通したうえで、地域医療支援機能を維持するために、例えば、A水準の960時間とは別枠で「副業・兼業のために1週当たり8時間、年間420時間までの時間外労働を認める」制度の導入などを提案しています。

さらに、新型コロナウイルス感染症の第2波、第3波が到来した場合に備えた「医療提供体制の充実」も求められている中で、日医委員会では次の2つの考え方を提言しています。

(1)2024年度からの施行を猶予する
(2)2024 年度から実施するが、その時点で対応が間に合わない部分について現実に即した判断で実施する(例、A水準B水準の判断を、二次医療圏の合意形成を図りつつ、各医療機関が自己判断するなど)

このほか、▼公立病院の業務に支障がない範囲において、公立病院の医師が他医療機関で働くことを柔軟に認める▼育児休業制度における「予め診療日を決めて働くことはできない」などの制約を撤廃する▼宿日直適用除外を工夫する(宿日直が2人体制の場合、1人はバックアップ要員として1人だけ許可を取る方法、時間帯を分けて交替する方法など)―も提案しています。



今後、新型コロナウイルス感染症の影響が一定程度収束した段階で、厚労省検討会の議論が再開することになりますが、この提言をどのように受け止めるのか注目が集まります。ただし、「A水準の960時間とは別枠で副業・兼業のために年間420時間までの時間外労働を認める」ような仕組みの検討は、これまでの検討会論議をすべてひっくり返すものであり、どこまでが議題にあがるのか注目する必要があります。

なお、新型コロナウイルス感染症に対応する医療従事者では、それこそ「不眠不休での対応」となっています。これを働き方改革の中で、どこまで考慮するのかも重要な視点です。新型コロナウイルス感染症に限らず、大規模災害時にもこうした「突発的事態」が生じますが、医療従事者が「労働時間上限なので、診療はここまでとします」となれば、国民の生命維持が困難になるでしょう。このため「突発的事態」には、労働時間上限の適用を除外する仕組みを設けることが必要であり、そうした検討がさらに進むと考えられます(今検討会では、岡留健一郎委員(日本病院会副会長)から突発的事態への対応についての言及あり)。

一方で、「新型コロナウイルス感染症に重点化するために、予定入院・予定手術を延期する」ことなどの影響によって、新型コロナウイルス感染症に直接対応しない医療従事者の負担は「大きく軽減」しています。もっとも、上記A・B・C水準は「医療機関内の平均」ではなく、「医療機関内のスタッフ1人1人」が対象となる(例えば1人でも960時間を超える時間外労働を行う医師がいれば、A水準とは認められず、B水準に指定されなければ、一切の時間外労働が認められなくなる)ため、依然として「医療従事者全体の働き方改革を進めていく」ことの重要性はいささかも減じていない点に留意が必要です。

病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

【関連記事】

長時間勤務医の健康確保の代償休息、「予定された休日の確実な確保」でも良しとすべきか―医師働き方改革推進検討会
B・C水準指定の枠組みほぼ固まるが、医療現場の不安など踏まえ「年内決着」を延期―医師働き方改革推進検討会
医師の兼業・副業で労働時間は当然「通算」、面接指導等の健康確保措置は主務病院が担当―医師働き方改革推進検討会
B・C指定に向け、医師労働時間短縮状況を「社労士と医師等」チームが書面・訪問で審査―医師働き方改革推進検討会
高度技能習得や研修医等向けのC水準、「技能獲得のため長時間労働認めよ」との医師の希望が起点―医師働き方改革推進検討会(2)
地域医療確保に必要なB水準病院、機能や時短計画、健康確保措置など7要件クリアで都道府県が指定―医師働き方改革推進検討会(1)
2021年度中に医療機関で「医師労働時間短縮計画」を作成、2022年度から審査―医師働き方改革推進検討会(2)
長時間勤務で疲弊した医師を科学的手法で抽出、産業医面接・就業上の措置につなげる―医師働き方改革推進検討会(1)
1860時間までの時間外労働可能なB水準病院等、どのような手続きで指定(特定)すべきか―医師働き方改革推進検討会



医師・看護師等の宿日直、通常業務から解放され、軽度・短時間業務のみの場合に限り許可―厚労省
上司の指示や制裁等がなく、勤務医自らが申し出て行う研鑽は労働時間外―厚労省

医師働き方の改革内容まとまる、ただちに全医療機関で労務管理・労働時間短縮進めよ―医師働き方改革検討会

医師の時間外労働上限、医療現場が「遵守できる」と感じる基準でなければ実効性なし―医師働き方改革検討会
研修医等の労働上限特例(C水準)、根拠に基づき見直すが、A水準(960時間)目指すわけではない―医師働き方改革検討会(2)
「特定医師の長時間労働が常態化」している過疎地の救急病院など、優先的に医師派遣―医師働き方改革検討会(1)

研修医や専攻医、高度技能の取得希望医師、最長1860時間までの時間外労働を認めてはどうか―医師働き方改革検討会(2)
救急病院などの時間外労働上限、厚労省が「年間1860時間以内」の新提案―医師働き方改革検討会(1)
勤務員の健康確保に向け、勤務間インターバルや代償休息、産業医等による面接指導など実施―医師働き方改革検討会(2)
全医療機関で36協定・労働時間短縮を、例外的に救急病院等で別途の上限設定可能―医師働き方改革検討会(1)
勤務医の時間外労働上限「2000時間」案、基礎データを精査し「より短時間の再提案」可能性も―医師働き方改革検討会
地域医療構想・医師偏在対策・医師働き方改革は相互に「連環」している―厚労省・吉田医政局長
勤務医の年間時間外労働上限、一般病院では960時間、救急病院等では2000時間としてはどうか―医師働き方改革検討会
医師働き方改革論議が骨子案に向けて白熱、近く時間外労働上限の具体案も提示―医師働き方改革検討会
勤務医の働き方、連続28時間以内、インターバル9時間以上は現実的か―医師働き方改革検討会
勤務医の時間外労働の上限、健康確保策を講じた上で「一般則の特例」を設けてはどうか―医師働き方改革検討会
勤務医の時間外行為、「研鑽か、労働か」切り分け、外形的に判断できるようにしてはどうか―医師働き方改革検討会
医師の健康確保、「労働時間」よりも「6時間以上の睡眠時間」が重要―医師働き方改革検討会
「医師の自己研鑽が労働に該当するか」の基準案をどう作成し、運用するかが重要課題―医師働き方改革検討会(2)
医師は応召義務を厳しく捉え過ぎている、場面に応じた応召義務の在り方を整理―医師働き方改革検討会(1)
「時間外労働の上限」の超過は、応召義務を免れる「正当な理由」になるのか―医師働き方改革検討会(2)
勤務医の宿日直・自己研鑽の在り方、タスクシフトなども併せて検討を―医師働き方改革検討会(1)
民間生保の診断書様式、統一化・簡素化に向けて厚労省と金融庁が協議―医師働き方改革検討会(2)
医師の労働時間上限、過労死ライン等参考に「一般労働者と異なる特別条項」等設けよ―医師働き方改革検討会(1)

医師の働き方改革、「将来の医師の資質」なども勘案した議論を―社保審・医療部会(1)
勤務医の時間外労働上限、病院経営や地域医療確保とのバランスも考慮―医師働き方改革検討会 第7回(2)
服薬指導や診断書の代行入力、医師でなく他職種が行うべき―医師働き方改革検討会 第7回(1)
業務移管など「勤務医の労働時間短縮策」、実施に向けた検討に着手せよ―厚労省

医師の労働時間規制、働き方を変える方向で議論深める―医師働き方改革検討会(2)
勤務医の負担軽減目指し、業務移管など緊急に進めよ―医師働き方改革検討会(1)
タスク・シフティングは段階的に進める方向で議論―医師働き方改革検討会
医師の勤務実態を精緻に調べ、業務効率化方策を検討―医師働き方改革検討会
罰則付き時間外労働規制、応召義務踏まえた「医師の特例」論議スタート—医師働き方改革検討会
医師への時間外労働規制適用に向けて検討開始、診療報酬での対応も視野に—厚労省
医師も「罰則付き時間外労働の上限規制」の対象とするが、医療の特殊性も検討―働き方改革



地域医療構想・医師偏在対策・医師働き方改革は「実行する」段階、医療現場の十分な支援を―厚労省・吉田医政局長



放射線技師に静脈路確保など認める法令改正、メディカル・スタッフが現に実施可能な業務の移管推進―医師働き方改革タスクシフト推進検討会
技師・技士による検査や医薬品投与のための静脈路確保など認めてはどうか―医師働き方改革タスクシフト推進検討会
医師から他職種へのタスク・シフティング、教育研修や実技認定などで安全性を確保―医師働き方改革タスクシフト推進検討会
医師から他職種へのタスク・シフティング、「B・C水準指定の枠組み」に位置付けて推進―医師働き方改革タスクシフト推進検討会
診療放射線技師による造影剤注入や臨床検査技師による直腸機能検査など、安全性をどう確保すべきか―医師働き方改革タスクシフト推進検討会
医師から他職種へのタスク・シフティング、「業務縮減効果大きく、実現しやすい」業務から検討―医師働き方改革タスクシフト推進検討会

現行制度の整理・明確化を行うだけでも、医師から他職種へのタスク・シフティングが相当進む―厚労省ヒアリング
医師から他職種へのタスク・シフティング、特定行為研修推進等で医療の質担保を―厚労省ヒアリング
フィジシャン・アシスタント(PA)等、医師会は新職種創設に反対するも、脳外科の現場医師などは「歓迎」―厚労省

薬剤師・看護師・技師・医師事務作業補助者・救急救命士へのタスク・シフティング進めよ―四病協



医療・介護従事者の意思なども反映した供給体制の整備を—働き方ビジョン検討会
地方勤務の意思ある医師、20代では2-4年を希望するが、30代以降は10年以上の希望が増える—厚労省