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GemMed塾 看護モニタリング

2024年度の次期介護報酬改定に向け、2020・21年度の介護事業所経営状況を調査―介護事業経営調査委員会

2022.1.26.(水)

2024年度の次期介護報酬改定(診療報酬との同時改定)に向け、2020・21年度における介護事業所・施設の経営状況調査を行う(介護事業経営概況調査)。そこでは新型コロナウイルス感染症の影響(感染患者が発生したか、事業縮小を行ったかなど)も併せて調査し、介護事業所・施設の経営状況を適切に分析可能とする―。

1月24日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会の「介護事業経営調査委員会」で、こういった内容が概ね固められました。近く開催される親会議(介護給付費分科会)の了承を経て、調査が実施されます。

有効回答率の向上が大きな課題、法人種別のテコ入れなども検討へ

介護事業所・施設における収益の柱は「介護報酬」です。介護報酬は「公定価格」であるため、物価や賃金の動きに合わせて見直し必要があります。また、介護現場の課題等を解決するために、政策的に報酬の見直しを行う必要もあります(例えば介護データの提出を求めるために加算を設けるなど)。

こうした点から介護保険制度では、3年に一度、介護報酬を見直すこととなっており、2021年度に直近の改定が行われ、2024年度に次期改定が予定されています(2024年度は診療報酬改定もあり、6年に一度の同時改定となる)。

上述のとおり、介護報酬は介護事業所・施設における収益の柱であるため、介護報酬改定においては「介護事業所・施設の経営状況」を踏まえることも重要となります。経営状況が厳しければ、安定的な介護サービス確保のために経営の下支え(プラス改定等)が必要となってきます。

この介護事業所・施設の経営状況(収支や人員配置、利用者数など)を把握するための調査には、▼介護事業経営概況調査▼介護事業経営実態調査―の2種類があり、両者の関係は次のようになっています(関連記事はこちらこちらこちら)。

▽直近改定(ここでは2021年度改定)の翌年度(ここでは2022年度)に「介護事業経営概況調査」を行い、直近改定前後の2年度分(ここでは2020年度および2021年度)の経営状況を把握する

▽直近改定(同)の翌々年度(ここでは2023年度)に「介護事業経営実態調査」を行い、次期改定の翌年度(ここでは2022年度)の経営状況を把握する



定点調査(同一の事業所・施設のデータを3年度分収集する)ではないことから厳密な比較はできませんが、介護事業所・施設の経営状況の大枠を3年度分把握することができ、介護報酬改定に向けた重要なエビデンスの1つとなります。



1月24日の介護事業経営委員会では、2022年度に実施する介護事業経営概況調査(2020年度・21年度の経営状況を把握する)の詳細を固めました。前回調査(2021年度改定に向けた2018・19年度の経営状況把握調査)と大枠は同様で「全介護サービスを対象に、サービス毎に調査対象事業所・施設を抽出し、各事業所・施設における収益・支出・人員配置や給与の状況・利用者の状況・施設や設備の状況など」を詳しく調査します。ただしコロナ感染症の影響を踏まえて、次のような点で修正が図られます。

(1)コロナ感染症の影響(入所者やスタッフに感染者が発生したか、サービスの縮小や閉鎖などを行ったかなど)を調査する

(2)補助金収益の中で「コロナ関連補助金」を区分けして把握する

コロナ関連補助金を明確に把握できるようにする(介護事業経営調査委員会2 220124)



このうち(1)について調査票を眺めると、下表のような点を確認してはどうかとの提案が厚生労働省からなされています。例えば「1」と「3」の双方にチェックがなされている事業所・施設では「コロナ感染症患者が発生し、サービス縮小を行った」ことが、「1」のみにチェックがなされている事業所・施設では「コロナ感染症患者が発生したが、サービス縮小などは行わなった」ことが分かります。

コロナ感染症患者が発生したか、事業縮小を行ったなどを明確に把握できるようにする(介護事業経営調査委員会1 220124)



この点、堀田聰子委員(慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)は「感染者の発生状況と、サービス状況とは分けて調べた方がよいのではないか。また選択肢も増やした方がよいのでないか」と提案しました。例えば「休業」と「縮小」との選択肢を分けるなどし、より詳細な分析を可能にしてはどうかとの提案です。今後、厚労省当局と田中滋委員長(埼玉県立大学理事長)とで精査し、調査票を修正するか否かを決します。



また委員の多くから「回答率の向上」に向けた工夫を強化すべし、との指摘が多数出ています。厚労省では▼既存情報(介護保険総合データベースのデータなど)を活用し、調査負担を減らす▼オンライン調査を促進する▼回答・事業所施設には「経営分析に参考となる指標が得られる計算式や結果」などを提示するなどのメリットを付与する―といった工夫を行っていますが、「さらなる一手を打ってはどうか」との意見が多く出ています。

例えば松本庄平委員(福祉医療機構経営サポートセンターリサーチグループグループリーダー)は「法人の種類別に回答率を分析し、例えば営利法人で低ければ、そこにテコ入れをするなどを取り組みを行ってはどうか」といった旨を提案。

野口晴子委員(早稲田大学政治経済学術院教授)は「事業所・施設からヒアリングを行い、回答率アップのヒント(ボトルネックを見つけ対処する)を得るなどの短期的な取り組み、あわせて社会福祉法人などでは財務諸表提出義務を課すなどの中長期的な取り組みをセットで検討し、実施していく必要がある。有効回答率は8割台に乗せることが重要だ(2020年度の介護事業経営実態調査では有効回答率は全体で45.2%)」と強調しました。

さらに泉千夏委員(EY新日本有限責任監査法人FAAS事業部シニアマネジャー)は「回答者へのインセンティブとして、例えばベンチマークが可能となるような工夫を行う」ことを提案しています。例えば「自事業所・施設が同じサービス内で、どの程度の位置(経営良好、経営不良など)に属しているのか」など、通常経営では知りえない情報を国が提示するなどすれば、調査により積極的になってくれると期待できます。



さらに松本委員は「介護職員の処遇改善に向けた新たな補助金」交付について、「この2月(2021年2月)から賃金引き上げを行うことが補助要件となっており、事業所・施設では2021年度のコスト増」になる、その一方で「補助金の交付は6月(2022年6月)からであり、収益増は2022年度に入ってからとなる」ため、収益と支出とでアンバランスが生じる可能性があり、そこを明確に把握できるような工夫を検討してはどうか、とも提案しています。この点も、厚労省と田中委員長で「調査票での工夫を行うのか、分析の中で工夫するのか」などを詰めていきます(関連記事はこちら)。



なお、財務省や財政制度等審議会から介護事業経営実態調査について「収支差率には、特別損失である『事業所から本部への繰り入れ』が反映されている一方で、調査票段階では『特別利益』が反映されておらず、収支差に偏りがある」旨の指摘があります。これを踏まえ厚労省では、特別損失・特別利益の現状について別途実態調査を行い、その結果を踏まえて「調査内容の見直しを検討する」方針も示しています(2023年度の介護事業経営実態調査に反映させるかどうかを検討する)。介護事業所・施設の経営をより適切に把握することを目指すものです。



意見を踏まえて厚労省と田中委員長で「調査票の修正」などを行い、近く開催される親会議(介護給付費分科会)に報告。そこでの了承を待って、5月(2022年5月)の調査実施→12月(2022年12月)に結果報告となる見込みです。



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