Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 看護モニタリング

新型コロナ対応に医療資源を重点化するため、白内障や低悪性度がん手術などは「延期」要請を―厚労省

2020.4.10.(金)

限られた医療資源を、当面の間、新型コロナウイルス感染症に重点化・集約化する必要があり、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる重点医療機関等はもとより、重点医療機関以外の一般医療機関でも、医師が「延期可能」と判断した予定入院・予定手術については延期を要請すべきである―。

厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策推進本部は4月7日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症の患者数が大幅に増えたときに備えた入院医療提供体制等の整備の更なる推進について」を示し、こうした点を都道府県や医療現場に要請しました(厚労省のサイトはこちら)。

延期可能か否かの判断基準として、外科系医学会は米国の基準に照らして、▼手根管症候群手術▼白内障手術▼健診・ドックの消化管内視鏡▼低悪性度のがん▼非緊急性の整形外科手術(股・膝関節置換、脊椎)▼尿管結石(病状安定)▼待機的血管形成術―などを例示しています(日本外科学会のサイトはこちら)。

一般医療機関でも、医師が「延期可能」と考える予定手術・予定入院は延期を要請せよ

新型コロナウイルスの猛威は衰えるところを知らず、東京・大阪・福岡といった大都市を中心に患者数が急増。爆発的な感染拡大(いわゆるオーバーシュート)を防止し、収束へと向かうめに、安倍晋三内閣総理大臣が▼埼玉県▼千葉県▼東京都▼神奈川県▼大阪府▼兵庫県▼福岡県―の7都府県を対象として、「外出等の自粛」「3つの密(密閉、密集、密接)を避ける」ことなどを要請する緊急事態宣言を行うに至っています(関連記事はこちらこちら)。

新型コロナウイルス陽性と診断された患者については、軽症・重症を問わず「入院」することが原則です(指定感染症)。しかし患者数が増加する中でこの原則を貫ければ「感染症病床がいっぱい」となり、重症患者に適切な入院医療を提供できなくなってしまいます(テレビ報道等で言われる「医療崩壊」)。

この点、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策本部は3月1日に、「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の各対策(サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制)の移行について」を示し、新型コロナウイルス感染症疑い患者の増加に応じて、▼必要な感染予防策を十分に整えたうえで、外来に関して「一般医療機関でも外来診療を行う」体制を、入院に関して「感染症指定医療機関のみならず、一般医療機関において、一般病床も含めて必要な病床を確保する」体制を段階的に整える▼感染患者が大幅に増加した場合には、「高齢者・基礎疾患を有する方・免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方・妊産婦―以外で症状がない、または医学的に症状が軽い方」は、PCR等検査で陽性であっても、自宅での安静・療養を原則とする―考えを提示。

その後、東京や大阪などの大都市を中心に患者が急増し、医療提供体制の段階的移行の必要性が現実化してきたことを踏まえ、3月19日(26日に改訂)に事務連絡「新型コロナウイルス感染症の患者数が大幅に増えたときに備えた入院医療提供体制等の整備について」を発出し、▼各都道府県で「新型コロナウイルス感染症患者を重点的に受け入れる医療機関」の設定などを早急に進めること▼医療資源を新型コロナウイルス感染対策に集中させるために、延期が可能な予定手術・予定入院については「延期」を検討すべきこと―などが示されました。

さらに今般、患者数が各地で急増し、緊急事態宣言が行われたことを踏まえ、医療提供体制の整備を加速させることが要請されています。具体的には、(1)新型コロナウイルス感染症に対応した医療提供体制の整備(2)軽症者・無症状者の宿泊・自宅療養への移行開始―の2点です。



まず(1)では、▼重点医療機関(新型コロナウイルス感染症患者を重点的に受け入れる医療機関)の設定▼入院患者受け入れ病床数の医療機関への割当て―などの調整をさらに進めるよう要望。

さらに、とりわけ緊急事態宣言の対象となった7都道府県(埼玉・千葉・東京・神奈川・大阪・兵庫・福岡―)においては、直ちに多数の患者受け入れが必要となることに備えて、重点医療機関等はもとより、「重点医療機関以外の医療機関」「患者受け入れの割り当てが少ない医療機関」においても、「医師の判断により延期が可能と考えられる予定手術・予定入院」については延期の要請を行うことが求められます。

限られた医療資源を、新型コロナウイルス感染症対策に重点化・集約化させるとともに、重症化リスクの高い患者(予定手術前後に新型コロナウイルス感染症を発症した4例中3例が死亡に至ったとの報告がある)の入院を避ける意味合いもあります。

外科系医学会、白内障手術・低悪性度のがん・健診時の消化器内視鏡等の「延期」提言

この点は、▼日本医学会連合▼日本外科学会▼日本消化器外科学会▼日本胸部外科学会▼日本心臓血管外科学会▼日本血管外科学会▼日本呼吸器外科学会▼日本小児外科学会▼日本乳癌学会▼日本内分泌外科学会―の10の外科系医学会による「新型コロナウイルス陽性および疑い患者に対する外科手術に関する提言」(4月1日)でも、次のような考え方が示されています。

▽新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、予定手術(待機手術)の実施・延期は、医学的観点(医学的必要性)および限りある医療資源の効率的・効果的な配分の観点から多角的に検討して判断する
医学的必要性は、手術ごとに、当該分野の専門家が「手術をその時点で行う必然性」「患者の病態や年齢によって異なる術後の回復期に新型コロナウイルス肺炎を発症するリスク」「手術の延期がもたらす医学的危険性」を総合的に検討して決定する
医療資源の投入については、管理者(院長等)が地域における新型コロナウイルス感染者数やその将来予測を踏まえ、▼各施設の保有資源(急性期病床・感染症病床・ICU病床数、医療スタッフ、人工呼吸器などの医療機器、個人用防護具(PPE)など)▼医療提供者および地域の安全・健康確保―を、個別手術ごとに検討して決定する
夜間などスタッフ数が限られる状況における緊急手術は、最大限回避すべきである
▽エアロゾルを発生し得る(新型コロナウイルス感染のリスクが高まる)処置として▼気管挿管・抜菅▼気管切開▼マスク換気▼気管支鏡▼胸腔ドレーン留置▼消化器内視鏡▼消化器などの電気メス処置▼腹腔鏡―などがあり、これらの処置に際しては飛沫感染リスクが高まることを認識する

併せて、米国外科学会(ACS)が推奨するセントルイス大学のESAS(Elective Surgery Acuity Scale)をベースにした手術トリアージの目安として、次のような考えも示しています。

【致命的疾患でない、急を要しない外来手術など】
(例)▼手根管症候群手術▼白内障手術▼健診・ドックの消化管内視鏡―など
→「延期」する

【致命的疾患でないが潜在的には生命を脅かす、または重症化する危険性あり、入院を要する疾患】
(例)▼低悪性度のがん▼非緊急性の整形外科手術(股・膝関節置換、脊椎)▼尿管結石(病状安定)▼待機的血管形成術―など
→「可能であれば延期」する

【数日から数か月以内に手術しないと致命的となり得る疾患】
(例)▼外傷▼ほとんどのがん手術▼臓器移植手術▼心臓手術▼重症下肢虚血に対する血管手術―など
→「十分な感染予防策を講じ、慎重に実施」する

こうした見解・知見も踏まえて、「延期が可能と考えられる予定手術・予定入院についての延期要請」を早急に検討・実施することが求められます。

新型コロナ患者が急増していない地域でも、宿泊施設の確保など進めよ

また(2)の「軽症者・無症状者の宿泊・自宅療養への移行」(対策の移行、関連記事はこちらこちら)に関しては、上述の「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の各対策(サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制)の移行について」(3月1日)で大きな考え方が示されており、厚労省は次のような点を要請しています。

【現状では「対策の移行」が必要ではない地域】
今から、▼宿泊施設の確保▼宿泊療養の運営体制の整備▼自宅療養中の患者へのフォローアップ体制の整備―などを進める

【「対策の移行」をすでに開始した、あるいは検討している地域】
今後の感染者数増加に備え、中長期的な視点から「入院治療が必要な方への医療提供体制整備」にも重点をおいて取り組む(宿泊・自宅療養中に重症化することもありうる)



診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

新型コロナ緊急事態宣言の実効性高めるため、医療物資調達や感染患者受け入れる医療機関への財政支援を―全国知事会
新型コロナ対策で総額108兆円超の緊急経済対策、病床や人工呼吸器・ECMOの確保、オンライン診療の臨時拡大など推進
新型コロナ対策の基本的対処方針を緊急事態宣言踏まえ改訂、「3つの密」を避け、医療提供体制を強化
新型コロナ疑い患者の外来診療で【院内トリアージ実施料】、新型コロナ感染患者の入院医療で【救急医療管理加算】等の算定認める―中医協総会
新型コロナへのBCG有効性は未確認、ゼロ歳時へのBCG接種に問題が生じないよう優先供給を―小児科学会・ワクチン学会
新型コロナ軽症者等の宿泊療養でホテル代・食事代は不要、宿泊・自宅療養のいずれも医療従事者が健康管理―厚労省
新型コロナウイルス感染症、高齢者やLDH高値者で生存率低く、出血合併症に留意したECMO早期実施が重要
日本集中治療医学会と日本麻酔科学会が共同し、新型コロナ患者管理の情報共有や呼吸不全患者管理トレーニング、ICU飽和状態対策など推進
医療機関スタッフが新型コロナ感染等で出勤できず、一時的に施設基準を満たせずとも、変更届を行わず従前の診療報酬を算定して良い―厚労省
新型コロナ検査の保険適用に関し、検査キット等の考えを2020年度改定の中で明確化―厚労省
新型コロナ陽性でも、軽症者・無症状者は「宿泊療養・自宅療養」の対象に―厚労省
新型コロナ感染防止のため、臨時・特例的に「初診からのオンライン診療」認める―オンライン診療指針見直し検討会
新型コロナウイルスを迅速に検出する機器、国立国際医療研究センター病院など16施設に配置―経産省
医療従事者の新型コロナ感染、必要性を認めた場合には積極的に検査実施を―厚労省
新型コロナ検査の保険適用に関し、体外診断用医薬品や検査キット等の考えをさらに明確化―厚労省
新型コロナ感染防止のための電話等用いた診療、「情報通信機器を用いる医学管理料」算定の考え明確化―厚労省
新型コロナウイルス検査の保険適用踏まえ、検査キット等の考えをさらに明確化―厚労省
各都道府県で「新型コロナウイルス感染症患者を重点的に受け入れる医療機関」設定など早急に進めよ―厚労省

各都道府県に「新型コロナ感染患者の診療拠点となる公立・公的病院」を設置せよ―四病協
新型コロナ対策の臨時特例的なオンライン診療の拡大、診療報酬上も「柔軟な対応」を認める―厚労省
新型コロナ感染避けるため、慢性疾患患者の「予測される症状変化に対する医薬品」処方を電話等で可能に―厚労省

新型コロナウイルス検査の保険適用を踏まえ、検査キット等を明確化―厚労省
新型コロナ感染防ぐため、在宅自己注射する患者等への「電話等での指導や衛生材料等支給」認める―厚労省
新型コロナ感染予防のため全医療機関外来で標準予防策を講じ、新型コロナ患者診療では必要な装備着用を―厚労省
新型コロナ感染防止のため、「オンライン診療・医薬品処方が可能な範囲」を特例的・臨時的に拡大―オンライン診療指針見直し検討会

公立・公的病院等の再編・統合に向けた再検証、新型コロナ受け事実上の期限延長―厚労省
新型コロナウイルス検査の保険適用を踏まえ、診療報酬の疑義解釈を提示―厚労省
新型コロナ、疫学的関連性が把握できない程度の感染拡大から「概ね3か月後」に患者数ピーク―厚労省
新型コロナ感染疑い患者、院内で移動型エックス線装置を用いたエックス線撮影を認める―厚労省
新型コロナウイルス検出のためのPCR検査、3月6日から保険適用―厚労省
新型ウイルス対策、WAMの資金貸付の強化や診療報酬等の柔軟対応の周知徹底を―日病・相澤会長
新型コロナ対応、緊急開設医療機関で「届け出月からの基本診療料算定」、大病院で「電話での外来診療料算定」可能―厚労省
新型コロナ患者増加状況踏まえ、一般医療機関での外来診療、一般病院の一般病床での入院医療を段階的に進める―厚労省
新型コロナ感染対策のための電話等による診療や薬剤処方、【電話等再診料】や【処方箋料】を算定―厚労省
基礎疾患持つ患者の新型コロナ感染避けるため、電話等による診療・処方、処方箋のFAX送信ルール明確化―厚労省
公立病院における新型コロナ感染症への医療提供体制の充実を要請―高市総務相
「互いに手を伸ばせば届く距離で、多くの人が会話等で一定時間以上続く」環境が新型コロナ感染リスクを高める―厚労省専門家会議
新型ウイルス感染拡大防止に向け、イベント開催の必要性検討、「社員等が休みやすい環境」整備を―加藤厚労相
新型コロナウイルス感染に関する相談者・受診者増に対応するため、相談センターや特別外来の体制等充実を
新型コロナウイルス患者等の受け入れ等で診療報酬の施設基準等満たさずとも、当面は変更届け出等は不要―厚労省
37.5度以上の発熱があり入院が必要な肺炎が疑われる患者、新型コロナウイルス検査の実施を―厚労省
37.5度以上発熱が4日以上続く、倦怠感や呼吸困難がある場合は「帰国者・接触者相談センター」に相談を―厚労省
新型コロナウイル患者の入院医療費は「公費負担」とするなど、治療体制を急ぎ整える―首相官邸
新型コロナウイルス関連での外出自粛患者への診療、往診料や訪問診療料の算定可能―厚生労働省
新型コロナウイルス患者、緊急やむを得ない場合には「感染症病床以外の病床」への搬送・入院も可能―厚労省
新型コロナウイルスの感染疑い例診察する特別外来を設置、相談センターから紹介―厚労省
中国武漢市滞在歴のない「新型コロナウイルスの感染患者」、本邦で初確認―厚労省
本邦でも新型コロナウイルスの感染患者、中国武漢市の滞在歴―厚労省
SARS、MERSと異なる病原体不明肺炎が中国で発生―厚労省



新型コロナ対策、まずPCR検査の拡充を進めるべきではないか―日病・相澤会長



新型コロナで診療縮小等となる医療機関等への優遇貸付拡充、病院では当初5年「1億円まで無利子」で長期運転資金を融資―厚労省・WAM
新型コロナにより事業縮小や閉鎖を余儀なくされる病院や老健施設に資金融資―福祉医療機構



DPC対象病院、「医療の質向上」と「経営の質向上」とを両立―中医協総会