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2019年度に超高額レセはさらに増加、医療費最高額は血友病A患者の4037万円―健保連

2020.9.8.(火)

昨年度(2019年度)において、1か月当たり医療費が1000万円以上となった高額レセプトは851件あり、前年度に比べて123件・16.9%増加した―。

1か月当たり医療費の最高額は、血友病A患者の4037万7520円であった―。

健康保険組合連合会が9月4日に公表した昨年度(2019年度)の「高額レセプト上位の概要」から、こういった状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)(2018年度に関する記事はこちら、2017年度に関する記事はこちら、2016年度に関する記事はこちら)。

1000万円以上2000万円未満のレセは前年度から16.9%増加、2桁増続く

健康保険組合(健保組合)は、主に大企業の従業員とその家族が加入する公的医療保険です。健保組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)では、毎年度のレセプトから「1000万円以上の高額レセプト」を抽出し、分析しています。

1000万円以上の高額レセプトは昨年度(2019年度)には851件発生し、初めて800件を超えるとともに、過去最高を更新しました。最近の状況を見ると、次のように概ね2桁の増加率で増加していることが分かります。

▼2014年度:300件

(61件・20.3%増)

▼2015年度:361件

(123件・34.1%増)

▼2016年度:484件

(48件・9.9%増)

▼2017年度:532件

(196件・36.8%増)

▼2018年度:728件

(123件・16.9増)

▼2019年度:851件



また金額階級別に高額レセプトの対前年増加率(2018年度→19年度)を見ると、▼2000万円以上:1.22%増▼1000万円以上2000万円未満:18.89%増▼500万円以上1000万円未満:4.92%増▼400万円以上500万円未満:5.98%増▼300万円以上400万円未満:0.58%増▼200万円以上300万円未満:0.51%増▼100万円以上200万円未満:3.31%増▼40万円以上100万円未満:2.42%増―となっており、「1000万円以上2000万円未満」のレセプトが著しく増加していることが分かります。

さらに「1000万円以上2000万円未満」のレセプトの増加率は、▼2015年度→16年度:32.17%増▼2016年度→17年度:10.84%増▼2017年度→18年度:40.43%増▼2018年度→19年度:18.89%増―で、毎年度2桁の増加率が続いていることが分かります。

金額階級別の高額レセの発生状況(2019年度の高額レセプト3 200904)



健保連では、例えば▼2015年11月には、造血幹細胞移植後の急性GVHD(移植片対宿主病)治療薬「テムセルHS注」(収載時の薬価は1バッグ当たり86万8680円)が▼2016年5月にはライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(コレステロールエステル蓄積症、ウォルマン病)治療薬「カヌマ点滴静注液20㎎」(同10ml1瓶当たり127万7853円)が▼2017年8月には脊髄性筋萎縮症治療薬「スピンラザ髄注」(12mg5mL1瓶当たり932万424円)が▼2018年5月には先天性血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血抑制に用いる「ヘムライブラ皮下注」(150mg1瓶当たり134万4343円)が―保険適用載されていることを紹介しており、「高額な医薬品の保険適用が、高額レセプト増加の大きな要因になっている」と考えていることが伺えます。

高額レセ増加要因の1つとして、超高額医薬品等の保険適用があげられる(2019年度の高額レセプト2 200904)



なお、昨年度(2019年度)における最高額のレセプトは、血友病Aの患者で1か月当たり4037万7520円でした。また、▼第2位:血友病B患者(3747万8670円)▼第3位:コレステロールエステル蓄積症患者(3451万900円)▼第4位:劇症型心筋炎患者(3314万4320円)▼第5位:BH4反応性高フェニルアラニン血症患者(3312万770円)―と続きます。2017年度、18年度に続き、昨年度(2019年度)も「月額1億円を超えるレセプト」は出現していません。

上位100件の高額レセプトを疾病別に見てみると、循環器系疾患がもっとも多く44件(前年度から8%減)、次いで血液疾患20件(同43%増)で、先天性疾患、悪性腫瘍はゼロ件でした。

2019年度の高額レセ上位100(2019年度の高額レセプト1 200904)



こうした高額レセプトが発生した場合、健保組合の財政が一時的に苦しくなることがありえます(とりわけ小規模な健保組合では1件が財政に与える影響が大きい)。そこで健保連では、いわば「再保険」とも言える仕組みを用意しています。具体的には保険料の一部をプールし、高額レセプト(2019年度は一般疾病では120万円超、血友病などの特殊疾病では40万円超)が発生した健保組合に対して、基準額(同)を超過した分が交付されます(高額医療交付金交付事業)。

高額医療交付金(2019年度の高額レセプト4 200904)

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