老化に伴い睡眠の量と質が低下するが、そこには「栄養」が大きく関係し、「必須アミノ酸の追加摂取」で改善する—長寿医療研究センター
2025.1.27.(月)
老化に伴って睡眠の量と質が低下するが、そこには「栄養」が大きく関係していること、さらに「必須アミノ酸の追加摂取」により改善されることが、ショウジョウバエモデルを用いた実験から明らかなった—。
国立長寿医療研究センターが1月24日に、こうした研究成果を発表しました(研究センターのサイトはこちら)。
「食事を介した睡眠障害の改善方法の開発」につながる可能性
ついに2022年度から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、来年度(2025年度)には全員が後期高齢者となります。高齢化の進展は「要介護者、要支援者の増加」につながるため、「介護予防」などが非常に重要となります。
要介護・要支援の原因は多種多様ですが、「サルコペニア(加齢に伴って生じる骨格筋減弱症)やフレイル(虚弱)」が生じる→「これらが増悪する」→「要支援・要介護状態に陥る」という流れが1つ存在します。さらに高齢者では、「食欲の低下や食嗜好性の変化」→「タンパク質・エネルギー欠乏」→「サルコペニアやフレイルなどのリスクが高まる」ことも分かっています。
このように高齢者では、食事量の減少や偏った食事が原因で低栄養状態に陥りやすく、それが「筋力、免疫力、認知機能の低下」→「寝たきりや病気のリスク増大」につながるため、高齢者では「栄養バランスの取れた食事を摂る」ことが非常に重要となります(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
一方、「睡眠」は心身の健康を維持するために欠かせない役割を果たしますが、「年齢とともに量と質が低下してしまう」ことが知られています。睡眠不足や睡眠障害は▼認知症▼心血管疾患▼代謝疾患▼免疫不全—などと深く関連します。
さらに、「栄養状態」と「睡眠」の間には密接な関係があり、特に高齢者では「低栄養が睡眠の質を悪化させる」ことが報告されています。
今般、研究センターではショウジョウバエを用いて「低栄養が睡眠に与える影響」と「必須アミノ酸の摂取による改善効果」を研究。ショウジョウバエは、ヒト疾患遺伝子の約75%を共有しており、老化や栄養に関する研究に広く利用されており、またショウジョウバエでも「老化に伴い睡眠の量や質(睡眠時間の断片化)が低下する」ため、「ヒトでのメカニズムの解明」に役立つと考えられます。
まず、低栄養(主タンパク質源である乾燥酵母含有量を通常の10分の1に抑える)下で、ショウジョウバエの寿命や睡眠にどういった影響が出るのかを検討。
そこから、低栄養下では▼アミノ酸などの栄養源に応答して活性化するTORシグナル伝達が顕著に低下し、寿命も短縮する▼普通食と比べてより若齢期から睡眠の量が低下する—ことが確認されました。
次に、低栄養食に10種類の必須アミノ酸(体内で合成できず食事から摂取する必要があるアミノ酸)を追加する」ことで、寿命短縮や睡眠の量や質の低下が改善するかを検討。
そこから、▼TORシグナル伝達の低下は回復した▼寿命の短縮は改善されない—ことが分かりました。
もっとも、必須アミノ酸の摂取によって、「老化による睡眠量の減少」や「睡眠の断片化」が顕著に改善されることが明らかになりました。
このことから、必須アミノ酸は「寿命の制御とは独立したメカニズムで、老化に伴う睡眠障害を抑制している」可能性が示唆されました。
研究センターでは、「本研究により、特定の栄養摂取により老化に伴う睡眠障害を抑制できる」可能性が明らかになり、今後、ヒトへの応用研究などを行い「食事を介した睡眠障害の改善方法の開発」に貢献できる可能性があると期待を寄せています。
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