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介護人材不足の中「地域や事業所の工夫」等の調査、「訪問介護の基本報酬引き下げ影響」調査求める声多し—社保審・介護給付費分科会(2)

2024.3.19.(火)

2024年度の介護報酬改定を受け、(1)高齢者施設等と医療機関の実効性のある連携体制(2)福祉用具貸与に係る上限価格のあり方(3)リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施および一体的取組(4)地域の実情や事業所規模等を踏まえた効果的かつ効率的なサービス提供の在り方—の4点について改定影響の調査を行う―。

このうち(4)の調査では「訪問介護サービスの維持、継続」などについても調査を行うべきではないか—。

3月18日に開催された、社会保障審議会・介護給付費分科会で、こういった議論が行われました(コロナ臨時特例の原則廃止に関する記事はこちら)。

早くも2027年度の次期介護報酬改定に向けた動きがスタートしています。本年(2024年)9月頃に調査を実施し、来年(2025年)3月頃に結果が公表されます。

2027年度の次期介護報酬改定に向けて「24年度改定の効果検証」を実施

2024年度介護報酬改定については、1月15日・22日に答申が行われ、3月15日に告示・関係通知や事務連絡の発出などが行われました。基本的には4月1日から、一部の医療と関連の深いサービス(居宅療養管理指導、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ)では6月1日から、新単位数や各種基準が適用されます。

●2024年度介護報酬改定に関する記事はこちら
●2024年度介護報酬改定に関する厚労省サイトはこちら



介護報酬改定では「介護現場の課題を解決し、介護の質を向上させる」ことが重要な目的の1つとなっており、「前回改定で、課題解決に向けて行った見直し(改定内容)の効果・影響はどうであったか」を見極め、その結果を踏まえて「次の改定では●●の対応を行おう」と考えていきます。例えば、2024年度の今回改定では、「医療・介護・障害福祉サービスの有機的な連携」が進むように、様々な対応が図られました。改定後には「真に有機的な連携が進んでいるか?形ばかりの連携に終わってはいないか?もし連携が進んでいないようであれば、そのネックはどこにあるのか?」などを調査し、その結果を踏まえて2027年度の次期改定論議を行っていきます。

また、改定論議には時間や財源の制約などもあるため、「●・▲・〇・△まで議論したかったが、意見集約がなされなかったので、今回は●・▲までで抑えておこう」という判断も必要となります。この場合には「次期改定に向けて、積み残しとなった〇・△に向けた検討をする必要がある」との宿題が残されます。

ただし、改定の効果・影響がすぐに出る項目と、比較的時間がかかる項目があるため、調査は「改定年度、改定翌年度、改定翌々年度」に分けて行われます。改定年度には「すぐに効果の現れる」項目を、時間のかかる項目については「翌年度、翌々年度」という具合に分担するイメージです。

この点、厚生労働省老健局老人保健課の古元重和課長は、2024年度には次の4項目の調査を行う考えを提示しています(すでに下部組織である「介護報酬改定検証・研究委員会」でも調査の考え方などを議論している、関連記事はこちら)。

(1)高齢者施設等と医療機関の実効性のある連携体制
(2)福祉用具貸与に係る上限価格のあり方
(3)リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施および一体的取組
(4)地域の実情や事業所規模等を踏まえた効果的かつ効率的なサービス提供の在り方

2024年度介護報酬改定の効果検証全体像(介護報酬改定検証・研究委員会1 240228)

24年度検証調査のスケジュール(介護報酬改定検証・研究委員会2 240228)



すでにGem Medでも報じていますが、改めて確認すると、(1)は今回改定の最重要論点の1つである「実効性のある医療・介護連携」が実現できているかどうかを調査するものです(関連記事はこちら)。介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院・特定施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護を対象に、施設・事業所の介護サービス実施状況、利用者の状態、入退所先、協力医療機関等との連携状況、連携している協力医療機関等の情報などを調べます。

この点について3月18日の介護給付費分科会では、「連携相手となる『医療機関側』についても、連携要請をなぜ断ったのかなどの調査を行うべきであろう」(東憲太郎委員:全国老人保健施設協会会長)とコメントしています。

なお連携体制構築には一定の時間がかかるため、この調査項目は2024年度にとどまらず、2025年度・26年度にも継続調査が行われます。



また、(2)は福祉用具の貸与価格等の実態調査を行うものです。



他方(3)は、介護報酬改定・診療報酬改定の重要ポイントとなった「リハビリ・栄養管理・口腔管理の一体的実施」が十分に進んでいるかどうかを調べるものです(関連記事はこちら)。例えば、2024年度改定に盛り込まれた▼通所リハビリの【リハビリマネジメント加算】▼介護老人福祉施設の【個別機能訓練加算】▼介護老人保健施設の【リハビリテーションマネジメント計画書情報加算】▼介護医療院の【理学療法、作業療法及び言語聴覚療法】—における「新区分」(関連記事はこちら)創設等の効果・成果を検証します。



ところで(4)では、人材確保がさらに困難となる状況下で効率的かつ効果的なサービス提供を可能とするための対応、例えば「新たな複合型サービスのニーズがどの程度あるのか」などの状況を見ます(関連記事はこちらこちらこちら)。

「介護報酬改定検証・研究委員会」での意見を踏まえて、「地域ごとの特性や実情に応じ、地域包括ケアシステムをさらに深化・推進させていくため、2024年度改定では地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取り組みや介護人材の確保・介護現場の生産性向上につながる取り組みなどのさらなる推進を目指した。本調査では『特に資源が乏しい地域』を中心に介護ニーズの状況や介護サービスの提供体制、小規模事業所を含めたサービス提供の実態等の直近の基礎的な情報を収集・分析しつつ、サービス提供上の課題を克服するための工夫等を総合的に調査する」こととされました。対象を絞り「介護人材不足などにどう対応していくべきか」を浮き彫りにする狙いがあると言えるでしょう。

この調査方向に異論は出ていませんが、介護給付費分科会委員からは「訪問介護等の改定後の実態を調査すべき」との要請が多数出されました。

2024年度介護報酬改定では、例えば訪問介護について、処遇改善を手厚く行う一方で、経営実態に鑑みた「基本報酬の引き下げ」が行われ、委員から苦言が呈されました(関連記事はこちら)。

この「基本報酬引き下げ」が訪問介護等にどう影響するかを調べるべきとの指摘が委員から多数出されており、例えば「単独型の訪問介護事業所/サービス付き高齢者住宅等の併設型の訪問介護事業所—別に、スタッフの状況や収支差といった基本情報にとどまらず、具体的な賃金の状況、サービスの廃止・停止・縮小等の状況などを丁寧に見ていくべき」(及川ゆりこ委員:日本介護福祉士会会長)、「訪問介護について、都道府県・市町村を対象にした『閉鎖』状況や、法人内での訪問介護サービス停止などの状況も調べるべき」(稲葉雅之構成員:民間介護事業推進委員会代表委員)などの声が目立ちます。

このほか(4)の調査については「地方では、近隣区域のほうが地域加算が高く、介護サービスがそちらに流れてしまう、利用者が点在しサービス提供にかかる移動コストが大きいなど、さまざまな課題がある。そうした課題を浮き彫りにし、介護提供基盤に地域格差が出ないような方策の分析につなげてほしい」(長内繁樹委員:全国市長会(大阪府豊中市長))などの要望も出ています。



こうした意見も参考に、具体的な調査内容を詰めていきます。ただし「1つの調査ですべての内容を明らかにする」ことはできません。●●を明らかにするには「改定の効果検証調査」が適している、◆◆を明らかにするには「ターゲットを絞った老健事業の研究調査」が適している、など、調査にも得手不得手があり、そうした点も勘案しながら、今後、具体的な調査内容を詰めていきます。

今後、委員の意見も踏まえて調査票を確定させ(今夏頃)。その後、9月頃に調査実施、来年(2025年)3月頃に調査結果報告を行うというスケジュールで調査が進められます。

24年度検証調査のスケジュール(介護報酬改定検証・研究委員会2 240228)



なお、3月18日の介護給付費分科会では、このほかに▼2021年度介護報酬改定の効果検証調査結果(すでに速報値で報告済)▼「介護保険における福祉用具の選定の判断基準」の改訂案—に関する報告も受けました。前者に関しては、「人員配置基準の緩和は、サービスの質確保(利用者の安全)、スタッフの負担(心理的・精神的)などに十分に配慮すべき」との声が多数出されました。

また後者の判断基準は、「2004年の策定」以降に、「新たな福祉用具が保険適用されている」点や、「貸与と販売との選択制が一部導入された」点などを踏まえ、現下の介護サービス提供状況にマッチするようにアップデートされるものです。近くパブリックコメント募集を行い、その結果も踏まえて、この6月(2024年6月)に改訂が行われる見込みです。

介護保険における福祉用具選定の判断基準改訂案1(社保審・介護給付費分科会(2)1 240318)

介護保険における福祉用具選定の判断基準改訂案2(社保審・介護給付費分科会(2)2 240318)



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