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2018年度診療報酬改定の基本方針を了承、良質な医療の効率的提供目指す―社保審・医療保険部会 第110回(1)

2017.12.8.(金)

 2018年度の診療報酬改定では、(1)地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進(2)新たなニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実(3)医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進(4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上―4本柱を基本的視点に据える—。

 12月7日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、こういった基本方針が概ね了承されました(関連記事はこちらこちら)。社会保障審議会・医療部会の意見も踏まえて、近く正式取りまとめとなります(12月15日目途)。

 改定論議はすでに中央社会保険医療協議会で進んでいますが、医療保険部会・医療部会の議論の内容などは中医協にも逐次、共有されており、基本方針に沿った改定が行われます(中医協には手続き上、年明けの諮問時に正式に報告される予定)。

12月7日に開催された、「第110回 社会保障審議会 医療保険部会」

12月7日に開催された、「第110回 社会保障審議会 医療保険部会」

機能分化、質の高い医療提供、効率化を推進、働き方改革も重視

診療報酬改定に向けた議論は、2006年度改定から▼基本方針を医療保険部会と医療部会で策定する▼改定率は内閣が予算編成過程で決定する▼基本方針と改定率に沿って、具体的な点数設計を中医協で行う—という役割分担が行われています。かつては中医協に権限が集中し、汚職事件が発生してしまった点への反省を踏まえたものです。

基本方針では、まず2018年度の次期診療報酬改定に当たっては、前提として「高齢化が進展し、人生100年時代を見据えなければいけない」「地域包括ケアシステムの構築を急がなければならない」「制度の持続可能性を確保すると同時に、医療・介護現場における働き方の改革も進めなければならない」という点を認識しなければならないと指摘。

例えば「人生100年時代」を迎える中では、我が国の人口構成が大きく変わり、合わせて疾病構造も「急性期中心から慢性期中心へと変化していく」点を考慮しなければいけません。当然、報酬による財源配分に当たっても疾病構造の変化を十分に踏まえなければいけないことが分かります(関連記事はこちら)。さらに、「重症化予防」(診療報酬を離れれば、そもそも疾病に罹患しないような予防・健康づくり)への取り組みを重点的に進めていくことも重要となります(関連記事はこちら)。

また地域包括ケアシステムは、地域の実情に応じて▼住まい▼医療▼介護▼予防▼生活支援―を総合的・一体的に提供する体制を指します。団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年に向けて、医療・介護サービスなどの提供体制を再構築する必要があり、現在、各地で地域包括ケアシステムの構築が急ピッチで進められています。2018年度は6年に一度となる診療報酬・介護報酬の同時改定が行われ、かつ「2025年までに大きく舵を切れる最後の同時改定」となるため、とくに「医療・介護連携」や「医療と介護の役割分担」などの道筋を明確にすることが重要であることを再確認する必要があります(関連記事はこちらこちら)。

また、少子高齢化は医療保険制度の基盤を脆くする(給付は増えるが、保険料などの収入は減少していく)ため、「診療報酬の適正化」「効率的な医療提供を促進する報酬設計」を十分に行わなければいけないという考えにつながっていきます。

こうした基本認識に立って、2018年度改定では次の4本柱が建てられます。

(1)地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進

(2)新たなニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実

(3)医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進

(4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

2018年度診療報酬改定の基本方針案(概要)

2018年度診療報酬改定の基本方針案(概要)

まず1つ目の柱である「機能分化・連携の強化」については、▼医療機関連携▼多職種連携▼医療・介護で切れ目のないリハビリ提供▼かかりつけ医などの機能の評価▼医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価▼外来医療の機能分化▼生活習慣病の重症化予防▼質の高い在宅医療・訪問看護の確保▼国民の希望に応じた看取りの推進—などが具体的項目として挙げられています。

例えば「外来の機能分化」を進めるためには、「かかりつけ医が十分な機能を発揮する必要がある」、「効率的な入院医療提供」を行うためには、「質の高い在宅医療」を提供する体制を整備する必要がある、など、各項目は有機的に関連している点を忘れてはいけません。

 
また2つ目の柱である「安心・安全で納得できる質の高い医療提供」では、▼緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価▼認知症患者への適切な医療の評価▼難病患者に対する適切な医療の評価▼小児医療、周産期医療、救急医療の充実▼先進的な医療技術の適切な評価▼ICT等の将来の医療を担う新たな技術の導入、データの収集・利活用の推進▼アウトカムに着目した評価の推進—などの具体的事項が列挙されました。質の高い、手厚い医療を国民は求めており、より充実すべき分野への十分な評価が求められます。

 
さらに3本目の柱となる「医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進」は、現在、医療現場がもっとも注目している項目と言えるでしょう。近い将来、病院勤務医にも罰則付きの時間外労働規制が導入されますが、2018年度改定でも、この点を見据えた「布石」を打っておく必要があると言えます。また現時点でも、労働基準監督署による「宿直医には原則として業務を行わせてはいけない、業務を行う場合は夜勤となり、時間外手当を支払わなければならない」旨の指導などが積極的に行われ、とくに救急医療に力を入れる病院において経営上の危機を迎えていると指摘されます。こうした点について、診療報酬でどういった対応が可能なのかも検討する必要があるかもしれません。また、1つの医療機関でさまざまな機能を担っている状況は「負担の増大」につながるため、機能分化(入院・外来ともに)も負担軽減に向けた重要な視点の一つとなります。

 
質の高い医療は何よりも重要ですが、医療保険を取り巻く環境(少子高齢化、財政状況の悪化など)に鑑みれば、4本目の柱である「効率化」「制度の持続可能性の確保」も極めて重要な視点と言えます。具体的には、▼薬価制度の抜本改革▼後発医薬品の使用促進▼医薬品の適正使用▼費用対効果の評価▼効率性等に応じた薬局の評価▼機能分化―などが挙げられています。この「効率化」「制度の持続可能性の確保」は、少子高齢化に歯止めがかからない状況の中で、時間の経過とともに重要性を増していきます。

 
12月6日の医療部会、12月7日の医療保険部会では、幾ばくかの注文が付きましたが、基本方針案を概ね了承。厚労省保険局医療介護連携政策課の黒田秀郎課長は、「最終調整を行い、近く(12月15日を目途)基本方針を正式に取りまとめる」考えを示しています。

なお、改定論議は既に中医協で始まっていますが、医療保険部会・医療部会の議論の内容などは中医協にも逐次、共有されています。基本方針は、手続き上、年明けの諮問時に中医協に正式提示されますが、それを待たずに、基本方針に沿った改定論議が行われます。

 
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