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がん患者等への「人生の最終段階の医療」、満足度は高いが、痛み等が除去されないケースも―国がん

2019.1.10.(木)

 がんや心疾患などで亡くなられた患者の「遺族」の8割程度は、患者へ提供された医療内容などに満足しているが、「痛みが除去されなかった」ケース(3割程度)、「療養場所について十分な話し合いがなされなかった」ケース(2割程度)、「遺族による介護負担が重かった」ケース(4割程度)もあり、さらなる「医療の質」向上に向けた取り組みが期待される―。

 国立がん研究センター(国がん)が12月26日に公表した「患者が亡くなる前に利用した医療や療養生活の実態」に関する予備調査結果から、こうした状況が明らかになりました(国がんのサイトはこちら(予備調査報告書)こちら(プレスリリース))。

 がん患者の「人生の最終段階における苦痛」や「療養状況」に関する全国的な遺族調査は、我が国では初の試みです。

5割程度の遺族は「痛みの除去」や「療養場所」に満足しているが、不満を覚えるケースも

 人生の最終段階において、「貴重な時間を、可能な限りその人が望むようにより良く過ごすことができる」ような医療提供が求められています。そうした中で国がんは、「2016年に▼がん▼心疾患▼脳血管疾患▼肺炎▼腎不全―で亡くなられた患者」の遺族(有効回答2295名)を対象に、遺族から見た「医療やケアの質」「亡くなる前1か月間の患者の療養生活の質」「亡くなる1週間前の時点での患者の痛みや苦痛」「家族の介護負担やその後の精神的な負担」などをアンケート方式で調べています。

 患者の疾患構成は、▼がん:1630名(有効回答の71.0%)▼心疾患:131名(同5.7%)▼脳血管疾患:157名(同6.8%)▼肺炎:198名(同8.6%)▼腎不全:178名(同7.8%)―です。

 まず「亡くなる前1か月間の患者の療養生活の質」については、遺族の目線で▼痛みなく過ごせたか▼穏やかな気持ちで過ごせたか▼望んだ場所で過ごせたか▼家族や友人と十分に時間を過せたか―などを調査。次のような状況が明らかになりました。

[痛みなく過ごせた患者の割合]
▼がん:51.8%▼心疾患:49.6%▼脳血管疾患:47.1%▼肺炎:50.0%▼腎不全:52.3%
がん患者等の人生の最終段階の医療に関する予備調査(国がん)1 181226
 
[穏やかな気持ちで過ごせた患者の割合]
▼がん:52.6%▼心疾患:55.7%▼脳血管疾患:49.0%▼肺炎:53.5%▼腎不全:57.9%

[望んだ場所で過ごせた患者の割合]
▼がん:55.9%▼心疾患:45.8%▼脳血管疾患:39.5%▼肺炎:50.0%▼腎不全:53.9%
がん患者等の人生の最終段階の医療に関する予備調査(国がん)2 181226
 
[家族や友人と十分に時間を過せた患者の割合]
▼がん:60.9%▼心疾患:56.5%▼脳血管疾患:46.5%▼肺炎:50.5%▼腎不全:58.4%

 半数程度の患者が、「痛みなく、希望する場所での療養」が可能となっていましたが、死亡前1か月の間▼3割程度の患者は「痛みがある状態で過ごしていた」▼4割程度の患者は「痛みを含めた身体の苦痛がある状態で過ごしていた」―ことなども明らかとなりました。

 また療養場所(病院か、自宅か、など)によっても状況が若干異なり、例えばがん患者では、「病院での療養よりも、施設での療養のほうが『痛みを感じなかった』患者の割合が多い」、「病院での療養よりも、施設、さらに自宅での療養のほうが『穏やかな気持ちで過ごせた』患者の割合が多い」「自宅での療養では9割の患者が『希望する場所で療養できた』と感じているが、病院・施設での療養では3割程度にとどまる」ことなども分かりました。ただし「痛み」については、症状が安定した患者において施設等での療養が可能となることなども考慮した分析が必要です。

8割程度の遺族は医療提供内容に満足、ただし疾患により違いなども

次に「亡くなる前に受けた医療の構造・プロセス」に関しては、▼医療者が患者の苦痛症状に速やかに対応していたか▼医療者が患者の不安・心配を和らげるように努めていたか▼医師の患者への病状・治療内容の説明は十分だったか▼医療に対し全般的に満足したか―などを調べており、次のような状況が分かりました。

[医療者が患者の苦痛症状に速やかに対応していたと考える遺族の割合]
▼がん:83.7%▼心疾患:72.5%▼脳血管疾患:72.0%▼肺炎:79.3%▼腎不全:80.3%
がん患者等の人生の最終段階の医療に関する予備調査(国がん)3 181226
 
[医療者が患者の不安・心配を和らげるように努めていたと考える遺族の割合]
▼がん:83.1%▼心疾患:74.1%▼脳血管疾患:74.5%▼肺炎:77.8%▼腎不全:83.7%
がん患者等の人生の最終段階の医療に関する予備調査(国がん)4 181226
 
[医師の患者への病状・治療内容の説明は十分だったと考える遺族の割合]
▼がん:78.2%▼心疾患:67.2%▼脳血管疾患:63.7%▼肺炎:68.7%▼腎不全:80.3%
がん患者等の人生の最終段階の医療に関する予備調査(国がん)5 181226
 
[医療に対し全般的に満足した遺族の割合]
▼がん:76.2%▼心疾患:62.6%▼脳血管疾患:64.3%▼肺炎:74.8%▼腎不全:78.7%
がん患者等の人生の最終段階の医療に関する予備調査(国がん)6 181226
 
医療提供について、多くの遺族は高く評価していることが分かりました。ただし、疾患による違いもあり、例えば、がんや腎不全では、療養場所に関わらず「質の高い医療が提供されていた」と感じる遺族が大多数ですが、心疾患や脳血管疾患では、病院・自宅で療養する場合、医療提供内容に不満を感じる遺族が4割近くなっています。

さらなる医療の質向上に向けて、「満足度が低い理由」などを詳細に分析し、対応策を検討・実施していくことが期待されます。

 
また、「最後の療養場所の希望」に関して主治医との話し合いが十分になされた割合を見ると、▼がん:65.8%▼心疾患:47.8%▼脳血管疾患:43.3%▼肺炎:50.0%▼腎不全:61.5%—と疾患によって相当程度異なっていることが分かりました。上述のように、「療養場所によって満足度等が異なる」ことを踏まえ、十分な話し合いがなされることが期待されます。

4割の遺族が介護負担、2割の遺族が悲嘆を感じている

一方、疾患に関わらず、「介護負担感」については4割程度の遺族が「負担が大きかった」と答え、「抑うつ」については1割程度の遺族が感じている、「複雑性悲嘆(離別の苦痛)」を2割程度の遺族が感じている、ことなども明らかになりました。公的介護保険の活用に関する説明等が十分になされているか、グリーフケアが十分に実施されているか、などを再点検することが期待されます。
がん患者等の人生の最終段階の医療に関する予備調査(国がん)7 181226
 
なお、自宅療養において「介護負担感がある」と答えた遺族の割合は、病院・施設での療養と大差ありません。自宅での療養に置いては、介護保険サービスが相当程度利用されていることなども考えられ、より詳細な調査・分析が待たれます。

 
調査結果を踏まえ、国がんでは「予備調査の対象者数は限られており、場所別・疾患別結果は参考値とすべき」との前提を置いたうえで、▼医療に対する満足度が高い一方で、必ずしも全ての人の苦痛が十分に取り除かれていない▼患者や家族の苦痛を和らげるための緩和ケアは、あらゆる人と場所に届けられる基本的ケアであり、さらなる改善に取り組むことが重要―とコメントしています。

さらに国がんでは、予備調査結果を踏まえて、本年(2019年)に5万名の遺族を対象とする「本調査」を実施する予定です。予備調査では、「家族の死亡を思い出すことがつらい」「設問が多い」との理由で回答拒否となるケースもあり、改善・工夫が求められます。
 
 

 がん医療の質向上に向けては、「自院」と「全国のがん診療連携拠点病院等」の比較も重要でしょう。「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」(代表世話人:望月泉:八幡平市病院事業管理者・岩手県立病院名誉院長)では、DPCデータをもとに会員病院間でベンチマーク分析を実施し、「がん医療の質向上」に向けた研究を行っています(グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンがデータ分析等を担当)(関連記事はこちら)。

   
 
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