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協会けんぽの「医科・歯科・DPC・調剤含めた後発品割合」は78.7%で足踏み状態、期限内の目標クリアは可能か―協会けんぽ

2020.7.22.(水)

協会けんぽにおけるジェネリック医薬品(後発品)の使用割合は、今年(2020年)3月末時点で、調剤ベースでは81.6%で、今年(2020年)に入ってから足踏み状態となっている―。

また、医科・DPC・歯科分を加味した後発品割合も78.7%で足踏み状態。現行ペースが続けば、政府目標の「80%以上」達成は2020年9月末となる見込みで、「2020年9月」の期限内達成が可能かどうかを注視する必要がある―。

こういった状況が、協会けんぽを運営する全国健康保険協会が7月15日に公表した医薬品使用状況から明らかになりました(協会のサイトはこちら)。

協会けんぽ全体の後発品割合、調剤分だけを見ると今年(2020年)1月から81.6%が続く

「医療技術の高度化」が進んでおり、例えば、超高額な脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)や、やはり超高額な白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などが保険適用されています。あわせて「高齢化の進展」が進み、我が国の医療費は増加傾向にあります。なお、今般の新型コロナウイルス感染症の影響で、マイナスに触れる可能性もありますが、その状況は今後のデータを待つ必要があります。

2022年度からは、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達します。高齢者では、医療機関の受診率が高く、延べ日数(通院期間や入院期間)が長いことから1人当たりの医療費が現役世代に比べて高く(約4倍)、高齢者の増加は「医療費増」に大きなインパクトを与えます(関連記事はこちら)。

また人口動態推計によれば、2025年度から2040年度にかけて高齢者の増加ペース自体は鈍化するものの、「支え手」となる現役世代人口が急速に減少していくことが分かっています。

このように、「少なくなる一方の支え手」で「増加する高齢者」を支えなければならず、公的医療保険制度の財政基盤は非常に脆くなっていきます。

こうした状況の下では、「医療費の伸びを、我々国民が負担可能な水準に抑える」(医療費適正化)ことが必要不可欠です。そこで政府は、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます。

このうち後発品に関しては、▼2017年央に後発品の使用割合を数量ベースで70%以上とする(第1目標)▼2020年9月に80%以上とする(第2目標)―という2段階の目標が設定され、全国で使用推進が行われています。



主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する「協会けんぽ」(運営者:全国健康保険協会)では、かねてから積極的に後発品使用促進に取り組んでおり、例えば医療機関を受診し、医薬品を処方された加入者個々人に宛てて「貴方の医薬品を先発品から後発品に切り替えれば、自己負担額が○○円軽減されます」といった通知を発出したり、毎月の後発品使用割合の公表などを行っています。

7月15日には、今年(2020年)3月末時点の後発品使用割合が公表されました(前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら、さらにその前月の状況はこちら)。

協会けんぽ全体(日本全国)の後発品使用割合(新指標、調剤分)を見ると、前々月(2020年1月)末・前月(2020年2月)末と同じ「数量ベースで81.6%」となりました。調剤分に限定すれば、2019年10月以降、安定して政府の第2目標「80%以上」を達成できていますが、「横這い」となっている点が気になります。

協会けんぽの後発品割合は、今年(2020年)に入ってから足踏み状態となっている(協会けんぽの後発品割合1 200715)

「医科・DPC・歯科を加味した全体」の80%クリアは、2020年9月となる見込み

一方、調剤分に「医科・DPC・歯科」分を加えた保険診療全体の後発品割合は、今年(2020年)3月末時点で78.7%となり、前月から変化なく、第2目標の達成には至っていません。

また、都道府県別に見ると依然として大きなバラつきがあり、「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合が最も高いのは沖縄県の88.5%(前月末から0.1ポイント増)、逆に最も低いのは徳島県で70.3%(同増減なし)となりました。

沖縄県のほか、「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合80%以上をクリアできているのは、▼岩手県の84.4%(前月末から0.2ポイント増)▼鹿児島県の84.2%(前月末から0.2ポイント減)▼山形県の82.4%(同増減なし)▼宮城県の82.4%(同0.2ポイント増)▼島根県の82.1%(同0.1ポイント増)▼宮崎県の82.0%(同0.1ポイント増)▼青森県の81.7%(同0.3ポイント増)▼佐賀県の81.6%(同増減なし)▼長崎県の81.2%(同0.1ポイント増)▼福島県の81.2%(同0.3ポイント増)▼熊本県の81.1%(同0.2ポイント増)▼秋田県の80.8%(同0.2ポイント減)▼北海道の80.8%(同増減なし)▼新潟県の80.8%(同0.1ポイント減)▼鳥取県の80.2%(同0.2ポイント減)▼長野県の80.2%(同0.1ポイント減)▼富山県の80.1%(同0.1ポイント減)―の合計18道県となりました。前月は「山口県」が80%以上クリア自治体に仲間入りしましたが、今回はドロップしています。

80%以上をクリアは18道県に減少してしまった(協会けんぽの後発品割合2 200715)



前述のとおり「調剤」ベースでは「80%以上クリア」が安定維持されていますが、「医科・DPC・歯科」を合わせると、「80%クリア」までには依然として1.3ポイントの開きがあります。一昨年(2018年)12月末(75.3%)から今年(2020年)3月末(78.7%)まで、単純計算で「1か月当たり0.23ポイント強」のペースで後発品割合が上昇している格好です(前月までよりも0.1ポイント低いペース)。このペースがその後も続くとすれば、計算上「80%以上クリア」は今年(2020年)9月末(前月までより1か月遅いペース)となり、「2020年9月に80%以上とする」との第2目標達成がなんとか実現できそうです。

しかし、今年(2020年)に入ってから、再度の「足踏み」状態となっており、今後の状況を注視する必要があるでしょう。協会けんぽでは、▼軽減額通知(お薬代の軽減可能額のお知らせ)対象を15歳以上に拡大する▼厚生労働省が定めた重点地域を中心に医療機関・保険薬局への訪問を強化する―という緊急対策を打ち出しており(関連記事はこちら)、この効果の検証についても注目が集まります。



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