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新型コロナ対策 症例Scope

2020年12月までに医療事故の84.3%で院内調査完了、新型コロナ第3波で再び事故報告など減少か―日本医療安全調査機構

2021.1.12.(火)

昨年(2020年)12月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は23件。2015年10月の医療事故調査制度発足から累計1931件の医療事故が報告され、このうち84.3%で院内調査が完了している―。

日本で唯一のセンターである「日本医療安全調査機構」が1月8日に公表した「医療事故調査制度の現況報告(12月)」から、こうした状況が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

12月には後述するように報告件数や相談件数などが減少しています。新型コロナウイルス感染症の第3波の影響と考えられ、今後の状況を注視していく必要があります。

2020年12月の医療事故報告、泌尿器科で4件、外科や循環器内科などで各3件

2015年10月から、すべての医療機関等(病院、診療所、助産所)に対し、「院長などの管理者が予期しなかった、医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてをセンターに報告する義務が課せられています【医療事故調査制度】。事故の原因・背景を詳しく調査・分析して「再発防止策」を構築し、それを医療現場に広く共有することによって、医療安全を確保し、向上させることが狙いです(制度創設に関する記事はこちら、制度改正に関する記事はこちらこちら)。

医療事故調査制度は、次のような流れで進められます。

▽医療事故が発生した場合、院長などの管理者は、速やかにセンターへ事故発生を報告する

▽事故が発生した医療機関等が自ら事故原因を調査【院内調査】し、調査結果をセンターに報告する

▽当該医療機関等は、調査結果に基づいて事故の内容や原因を遺族に説明する(調査結果報告書の提示までは義務付けられていない)

▽センターで事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを構築し、公表する



センターは精力的に「再発防止策」を検討しており、これまでに次の12本の再発防止策が公表されています。
(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―
(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析
(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析
(4)気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入に係る死亡事例の分析
(5)腹腔鏡下胆嚢摘出術に係る死亡事例の分析
(6)栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析
(7)一般・療養病棟における非侵襲的陽圧換気(NPPV)及び気管切開下陽圧換気(TPPV)に係る死亡事例の分析
(8)救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析
(9)入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析(関連記事はこちら
(10)大腸内視鏡検査等の前処置に係る死亡事例の分析
(11)肝生検に係る死亡事例の分析
(12)胸腔穿刺に係る死亡事例の分析



さらにセンターでは毎月、医療事故報告の状況を公表しています(前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら)。昨年(2020年)12月には、新たに23件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は1931件となりました。

新型コロナウイルスの影響で昨年(2020年)4‐9月には「患者の減少→事故報告数の減少」が生じていました。その後、報告件数は通常水準に戻りましたが、いわゆる第3波によって12月の報告件数が再び減少しています。限られた医療資源を新型コロナウイルス感染症の重症患者に重点化・集約化するために予定入院・予定手術が減ったこと、医療機関受診による新型コロナウイルスへの感染を避けるための受診控えなどが背景にあるものと考えられるでしょう。今後も継続的にウォッチしていく必要があります。

昨年(2020年)12月に新たに報告された医療事故23件の内訳は、すべて病院からでした。制度発足(2015年10月、以下同)からの累計では、病院から1826件(事故全体の94.6%)、診療所から105件(同5.4%)となっています。

また昨年(2020年)12月に新たに報告された医療事故23件を診療科別に見てみると、▼泌尿器科:4件▼外科:3件▼循環器内科:3件▼心臓血管外科:3件―などで多くなっています。制度発足からの累計では、▼外科:311件(事故全体の16.1%)▼内科:246件(同12.7%)▼整形外科:159件(同8.2%)▼循環器内科:157件(同8.1%)▼消化器科:153件(同7.9%)―などで多くなっています。

2020年12月の医療事故報告件数(医療事故の現況(2020年12月)1 210108)

センターへの相談件数は累計9914件、「一般国民の理解」は依然追い付かず

センターへ報告しなければならない医療事故は、医療機関等で生じたすべての死亡・死産事例ではありません。上述のとおり、死亡・死産事例のうち「院長などの管理者が『予期せず』、かつ『医療に起因し、または起因すると疑われる』もの」に限定されます。

例えば、交通事故などで極めて重度の損傷を負った被害者が救急搬送され、懸命な治療が行われたにもかかわらず残念ながら死亡してしまったケースなどでは、一般に「死亡が予期」され、センターへの報告は必要ないと考えられます。ただし明らかな処置上のミスなどがあり通常の経過とは異なるプロセスで死亡した場合には、「予期しなかった」医療事故となり、センターへの報告が必要となってくると考えられます。

もっとも「どこまでが予期された医療事故なのか」の判断は難しく、医療現場では「不幸にも患者が死亡したが、報告すべき医療事故に該当するのだろうか?」という疑問が生じます。また、医療機関等には「初めての医療事故で、センターへどのように報告すればよいのか分からない」といった疑問が生じることもあります。

一方で、遺族の中には「家族が医療機関等で死亡したが、医療事故として報告されていない。事故を隠蔽しようとしているのではないか?」との疑念を持つ方もおられることでしょう。

こうした疑問・疑念を放置すれば、制度への信頼が揺らいでしまうことから、センターでは相談対応を行っています。昨年(2020年)12月には新たに134件の相談がセンターに寄せられ、制度発足からの累計では9914件となりました。相談件数もやや減少しており、今後の状況を注視する必要があります。

昨年(2020年)12月に新たに寄せられた相談の内訳は、▼医療機関等から:55件▼遺族などから:73件▼その他・不明:6件―でした。

医療機関等からの相談内容を見てみると、最も多いのは「報告の手続き」に関するもので33件(医療機関等からの相談全体の50.8%)。次いで、「院内調査に関するもの」13件(同20.0%)、「センター調査に関するもの」7件(同10.8%)、などとなっており、「報告すべきか否かの判断に迷う」ケースは少数派です。医療現場が制度を十分に理解・把握している状況が伺えます。

一方、遺族などからの相談内容を見ると、「医療事故に該当するか否かの判断」が55件(遺族などからの相談全体の70.5%)で、依然として大多数を占めています。さらに「制度開始前の事故事例」「生存事例」など、報告対象とならない事例に関する相談件数も少なくなく、一般国民への「正しい情報提供」が依然として重要課題となっています。医療安全の確保は、一般国民にとっても極めて重要な制度であり、また制度発足から丸5年が経過しています。一般国民への啓蒙をどう進めていくべきかを検討していくことが必要でしょう。

2020年12月の相談件数(医療事故の現況(2020年12月)3 210108)

センターへの調査依頼は新規ゼロ、ただしセンター調査は4件で新たに完了

医療事故調査制度の目的は、上述のとおり「再発防止策の構築と周知」です。決して犯人捜しや特定個人の責任追及などではありません。この観点から、事故が生じた医療機関等が自ら事故の内容や背景を調査する【院内調査】が重視されています。なぜなら、調査の過程で「自院の体制・手続き・ルールなどに問題がなかったか」を検証し、その中で「自院の課題」を発見し、自ら「再発防止策構築」に繋げることが重要と考えられるためです。

昨年(2020年)12月に新たに院内調査が完了した事例は29件で、制度発足からの累計では1627件となりました。これまでに報告されたすべての医療事故1931件のうち84.3%(前月から0.5ポイント増加)で院内調査が完了している計算です。院内調査完了件数も減少しており、今後の動向を注視する必要があります。

2020年12月の院内調査結果報告(医療事故の現況(2020年12月)2 210108)



もっとも、遺族の中には「院内調査結果が納得できない」「院内調査が遅いが、何かを隠そうとしているのでは」といった疑念を持つ方もおられることでしょう。また、診療所や助産所などの小規模施設では、「自前で院内調査を実施することが難しい」ケースもあります(医師会や病院団体、大学病院などが調査をサポートする体制が整えられている)。

そこでセンターでは「遺族や医療機関等からの調査依頼を受け付ける」体制も敷いています【センター調査】。センター調査では「センターが最初から調査しなおす」のではなく、「院内調査が時期・内容ともに適切に実施されているか」という観点での調査である点に留意が必要です。

今年(2020年)12月にセンターへ寄せられた調査依頼はありませんでした。制度発足からの累計調査依頼件数は141件(遺族から116件・82.3%、医療機関等から25件・17.7%)。センター調査の進捗状況を見ると、54件で調査が完了しています(前月から4件増加)。



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医療事故に該当するかどうかの判断基準統一に向け、都道府県と中央に協議会を設置―厚労省
医療事故調査制度、早ければ6月にも省令改正など行い、運用を改善―社保審・医療部会

医療事故調査制度の詳細固まる、遺族の希望を踏まえた事故原因の説明を―厚労省



中心静脈穿刺は致死的合併症の生じ得る危険手技との認識を—医療安全調査機構の提言(1)
急性肺血栓塞栓症、臨床症状に注意し早期診断・早期治療で死亡の防止—医療安全調査機構の提言(2)
過去に安全に使用できた薬剤でもアナフィラキシーショックが発症する—医療安全調査機構の提言(3)
気管切開術後早期は気管切開チューブの逸脱・迷入が生じやすく、正しい再挿入は困難—医療安全調査機構の提言(4)
胆嚢摘出術、画像診断・他診療科医師と協議で「腹腔鏡手術の適応か」慎重に判断せよ—医療安全調査機構の提言(5)
胃管挿入時の位置確認、「気泡音の聴取」では不確実—医療安全調査機構の提言(6)
NPPV/TPPVの停止は、自発呼吸患者でも致命的状況に陥ると十分に認識せよ―医療安全調査機構の提言(7)
救急医療での画像診断、「確定診断」でなく「killer diseaseの鑑別診断」を念頭に―医療安全調査機構の提言(8)
転倒・転落により頭蓋内出血等が原因の死亡事例が頻発、多職種連携で防止策などの構築・実施を―医療安全調査機構の提言(9)
「医療事故再発防止に向けた提言」は医療者の裁量制限や新たな義務を課すものではない―医療安全調査機構
大腸内視鏡検査前の「腸管洗浄剤」使用による死亡事例が頻発、リスク認識し、慎重な適応検討を―医療安全調査機構の提言(10)
「肝生検に伴う出血」での死亡事例が頻発、「抗血栓薬内服」などのハイリスク患者では慎重な対応を―医療安全調査機構の提言(11)



人口100万人あたり医療事故報告件数、2017・18・19と宮崎県がトップ、地域差の分析待たれる―日本医療安全調査機構