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GemMed塾 ミニウェビナー DPC委員会のありかたとは?

2021年9月までに2174件の医療事故・84.8%で院内調査済、コロナ第5波の影響で報告・調査件数が大幅減―日本医療安全調査機構

2021.10.12.(火)

今年(2021年)9月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は18件。2015年10月の医療事故調査制度発足から累計2174件の医療事故が報告され、このうち84.8%で院内調査が完了している―。

事故報告件数、院内調査件数が大きく落ち込んでおり、新型コロナウイルス感染症の第5波の影響が考えられる。ただし、センターへの相談件数には落ち込みは見られない―。

日本で唯一のセンターである「日本医療安全調査機構」が10月8日に公表した「医療事故調査制度の現況報告(9月)」から、こうした状況が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

2021年9月の医療事故報告は大きく減少、コロナ感染症第5波の影響か

2015年10月から【医療事故調査制度】が始まりました。

すべての医療機関等(病院、診療所、助産所)に、すべての「院長などの管理者が予期しなかった、医療に起因(疑いを含む)する死亡・死産」をセンターに報告することが義務付けられています。事故の原因・背景を詳しく調査・分析し、「再発防止策」を構築して、それを医療現場に広く共有することで医療安全の確保・向上を狙うものです。

医療事故調査制度は、大枠では次のような流れで進められます。

▽医療事故が発生した場合、医療機関等の管理者(院長など)は、速やかにセンターへ事故発生を報告する

▽事故が発生した医療機関等が「自ら」事故原因を調査【院内調査】し、調査結果をセンターに報告する

▽当該医療機関等は、調査結果に基づいて事故の内容や原因を遺族に説明する(調査結果報告書の提示までは義務付けられていない)

▽センターで事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを構築し、公表する

医療事故調査制度の概要



センターは精力的に「再発防止策」を検討しており、これまでに次の14本の再発防止策を公表しています。
(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―
(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析
(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析
(4)気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入に係る死亡事例の分析
(5)腹腔鏡下胆嚢摘出術に係る死亡事例の分析
(6)栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析
(7)一般・療養病棟における非侵襲的陽圧換気(NPPV)及び気管切開下陽圧換気(TPPV)に係る死亡事例の分析
(8)救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析
(9)入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析(関連記事はこちら
(10)大腸内視鏡検査等の前処置に係る死亡事例の分析
(11)肝生検に係る死亡事例の分析
(12)胸腔穿刺に係る死亡事例の分析
(13)胃瘻造設・カテーテル交換に係る死亡事例の分析
(14)カテーテルアブレーションに係る 死亡事例の分析



センターは毎月、医療事故報告の状況を公表しています(前月の状況は こちら、前々月の状況はこちら)。今年(2021年)9月には、新たに18件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は2174件となりました。

前月までに比べて、報告数が大きく落ち込んでおり、新型コロナウイルス感染症の影響が伺えます。コロナ禍では「予定入院・予定手術の延期」や「患者の受診控え」「感染症全般の減少」などが生じ、結果として「重大な医療事故(死亡につながる医療事故)の減少」につながっていると考えられます。7月下旬からの「第5波」がタイムラグを置いて、医療事故調査制度に到来したと見ることができそうです。



今年(2021年)9月に新たに報告された医療事故18件は、病院から16件、診療所から2件でした。制度発足(2015年10月、以下同)からの累計では、病院から2057件(事故全体の94.6%)、診療所から117件(同5.4%)となっています。

また今年(2021年)9月に新たに報告された医療事故18件を診療科別に見てみると、▼消化器科:3件▼内科:2件▼循環器内科:2件▼脳神経外科:2件▼産婦人科:2件—などで多くなっています。制度発足からの累計では、▼外科:343件(事故全体の15.8%)▼内科:274件(同12.6%)▼整形外科:185件(同8.5%)▼消化器科:181件(同8.3%)▼循環器内科:180件(同8.3%)―などで多い状況です。

医療事故報告の状況(医療事故の現況(2021年9月)1 211008)

センターへの相談はコロナ禍でも減少せず、一般国民への情報提供が重要課題な点は変わらず

医療機関等は「すべての死亡・死産」をセンターへ報告しなければならないわけではありません。上述のとおり、報告対象は死亡・死産事例のうち「院長などの管理者が『予期せず』、かつ『医療に起因し、または起因すると疑われる』もの」に限定されます。

例えば、火災などで重度かつ広範囲の熱傷を負った方が救急搬送され、懸命な治療が行われたにもかかわらず残念ながら死亡してしまったケースなどでは、一般に「死亡が予期」されることから、センターへの報告は必要ないと考えられるでしょう。ただし明らかな処置上のミスなどがあり、通常の経過とは異なるプロセスで死亡したような場合には、「予期しなかった」医療事故となり、センターへの報告が必要となってくるでしょう。

ただし「どこまでが予期された医療事故なのか」の判断は難しく、医療現場では「不幸にも患者が死亡したが、報告すべき医療事故に該当するのか分からない」という疑問が生じえます。また、医療機関等には「初めての医療事故で、センターへどのように報告すればよいのか分からない」といった疑問が生じることもあるでしょう。

一方、遺族の中には「家族が医療機関等で死亡したが、医療事故として報告されていない。事故を隠蔽しようとしているのではないか?」との疑念を持つ方もおられることでしょう。

そこでセンターでは相談対応を行っており、今年(2021年)9月には、新たに126件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計では1万1143件となっています。相談件数には「コロナ感染症の第5波」の影響は出ていないように見えます。

今年(2021年)9月に新たにセンターへ寄せられた相談の内訳は、▼医療機関等から50件▼遺族などから70件▼その他・不明6件―でした。

医療機関等からの相談内容を見てみると、最も多いのは「報告の手続き」に関するもので36件(医療機関等からの相談全体の62.1%)、次いで「院内調査」に関するもの10件(同17.2%)、「報告すべきか否かの判断に迷う」ケース5件(同8.6%)という状況です。

一方、遺族などからの相談内容を見ると、「医療事故に該当するか否かの判断」が57件(遺族などからの相談全体の73.1%)で、やはり大部分を占めています。また「制度開始前の事故事例」「生存事例」など、報告対象とはならない事例に関する相談件数も少なくありません。様々な手段を通じて「一般国民への正しい情報の浸透」に取り組むことが重要課題である状況に変化はないようです。

センターへの相談に関する状況(医療事故の現況(2021年9月)3 211008)

コロナ禍で「院内調査」のスピード低下、センターへの調査依頼は遺族から4件

医療事故調査制度は、上述のとおり「再発防止策の構築と周知」が目的で、「犯人捜し」や「特定個人の責任追及」などをする仕組みではありません。

そこから、事故が生じた医療機関等が自ら事故の内容や背景を調査する【院内調査】が重視されています。調査の過程で「自院の体制・手続き・ルールなどに問題がなかったか」を検証し、その中で自ら「自院の課題」を発見し、自ら「再発防止策構築」に繋げることが重要と考えられているのです。

今年(2021年)9月に新たに院内調査が完了した事例は15件で、制度発足からの累計では1843件となりました。これまでに報告されたすべての医療事故2174件のうち84.8%(前月から増減なし)で院内調査が完了している格好です。院内調査の月間件数が大きく落ち込んでおり、コロナ感染症の影響が伺えます(コロナ感染拡大防止のために対面での調査を控える必要があったことなどが推測される)。

院内調査の状況(医療事故の現況(2021年9月)2 211008)





もっとも、遺族の中には「院内調査結果に納得がいかない」「院内調査が遅い、何かを隠そうとしているのではないか」といった疑念を持つ方もおられるかもしれません。

また、診療所や助産所などの小規模施設では、「自前で院内調査を実施することが難しい」ケースもあることでしょう(医師会や病院団体、大学病院などが調査をサポートする体制が整えられている)。

そこでセンターでは、「遺族や医療機関等からの調査依頼を受け付ける」体制も敷いています【センター調査】。センター調査では「センターが最初から調査しなおす」のではなく、「院内調査が時期・内容ともに適切に実施されているか」という観点での調査が行われます。

今年(2021年)9月にセンターへ寄せられた調査依頼は、遺族から4件ありました。制度発足からの累計調査依頼件数は165件(遺族から138件・83.6%、医療機関等から27件・16.4%)。センター調査の進捗状況を見ると、85件で調査が完了しています(前月から2件増加)。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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急性肺血栓塞栓症、臨床症状に注意し早期診断・早期治療で死亡の防止—医療安全調査機構の提言(2)
過去に安全に使用できた薬剤でもアナフィラキシーショックが発症する—医療安全調査機構の提言(3)
気管切開術後早期は気管切開チューブの逸脱・迷入が生じやすく、正しい再挿入は困難—医療安全調査機構の提言(4)
胆嚢摘出術、画像診断・他診療科医師と協議で「腹腔鏡手術の適応か」慎重に判断せよ—医療安全調査機構の提言(5)
胃管挿入時の位置確認、「気泡音の聴取」では不確実—医療安全調査機構の提言(6)
NPPV/TPPVの停止は、自発呼吸患者でも致命的状況に陥ると十分に認識せよ―医療安全調査機構の提言(7)
救急医療での画像診断、「確定診断」でなく「killer diseaseの鑑別診断」を念頭に―医療安全調査機構の提言(8)
転倒・転落により頭蓋内出血等が原因の死亡事例が頻発、多職種連携で防止策などの構築・実施を―医療安全調査機構の提言(9)
「医療事故再発防止に向けた提言」は医療者の裁量制限や新たな義務を課すものではない―医療安全調査機構
大腸内視鏡検査前の「腸管洗浄剤」使用による死亡事例が頻発、リスク認識し、慎重な適応検討を―医療安全調査機構の提言(10)
「肝生検に伴う出血」での死亡事例が頻発、「抗血栓薬内服」などのハイリスク患者では慎重な対応を―医療安全調査機構の提言(11)



人口100万人あたり医療事故報告件数、2017・18・19と宮崎県がトップ、地域差の分析待たれる―日本医療安全調査機構