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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

2021年から22年にかけてケアマネ事業所が1.3%減少、一方、看多機や訪問看護は増加続く―厚労省

2024.1.15.(月)

一昨年(2022年)、看護小規模多機能型居宅介護や訪問看護ステーションの事業所数が前年から大きく増加した。その一方、認知症デイサービス事業所数や居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)が減少しており、背景を詳しく分析する必要がある―。

介護保険施設はそれぞれ特性があり、特別養護老人ホームや介護医療院では重度者が多く、介護老人保健施設では比較的軽度者が入所する。ただし、重度化・軽度化の状況は新型コロナウイルス感染症の影響なども見ながら、中長期的に評価していく必要がある―。

厚生労働省が1月12日に公表した2022年の「介護サービス施設・事業所調査」の概況から、こういった状況がわかりました(厚労省のサイトはこちら、詳細はこちら(政府統計の総合窓口e-Statホームページ))(前年(2021年)調査に関する記事はこちら、2020年調査に関する記事はこちら、2019年調査に関する記事はこちら、2018年調査に関する記事はこちら、2017年調査に関する記事はこちら、2016年調査に関する記事はこちら、2015年調査に関する記事はこちら)。

看多機、訪問看護ステーションの増加目立つ、認デイ・ケアマネ事業所は減少続く

介護サービス施設・事業所調査は、毎年の介護サービスの提供体制・提供内容(施設数や事業所数、利用者の状況など)を把握するものです。ここから介護基盤整備の課題などが明らかにし、介護保険制度改正・介護報酬改定につなげていきます。

2022年の事業所数・施設数を見ると、前年(2021年)からの増加が目立つのは▼介護医療院:18.3%増▼看護小規模多機能型居宅介護(看多機):10.3%増▼訪問看護ステーション:9.4%増▼介護予防訪問看護ステーション:9.3%増▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護:6.5%増—などです。

介護医療院は「介護療養などからの転換」が進んでいる」ためです。2023年度末で介護療養は廃止されるため、もうしばらく増加傾向が続くと見られます。

また、看多機については、医療ニーズの高い要介護者に対し、「泊り」「通い」「訪問」の3サービスを複合的に提供できる地域密着型サービスとして注目が高まっており、増加が続いています。ただし、事業所数は901施設(2022年10月1日時点)にとどまっており、「十分整備されている」とは必ずしも言い難く、「さらなる整備」に期待が集まります。この点、2024年度の介護報酬改定では▼総合マネジメント体制強化加算の新区分創設▼専門性の高い看護師による計画的な管理の評価新設▼柔軟なサービス提供の実施(緊急時訪問看護加算の見直しなど)▼ターミナルケア加算の引き上げ▼認知症ケアの指導、研修等の実施を評価する新たな区分創設▼サービス内容の明確化―などが行われる見込みで、さらなる事業所整備に期待が集まります(関連記事はこちら)。

また、訪問看護についても「医療ニーズの高い要介護者が増加している」ことが増加の背景にあることは述べるまでもありません。ただし、一部に「要支援者等の軽度者に対し、日中にのみリハビリサービスを行う」訪問看護ステーションが存在していることが従前より問題視され、これが事業所数増加に一役買っている可能性もあります。後者は「訪問看護ステーションに求められる本来の姿」からかけ離れており、2024年度の介護報酬改定でも厳しい対応が図らる見込みで、▼重度者対応▼24時間対応―に力を入れる訪問看護ステーションの重点的な資源投入を行っていくことが求められるでしょう。



一方、前年調査から減少が目立つものとしては、▼介護療養:28.7%減▼短期入所療養介護:2.0%減▼介護予防短期入所療養介護:2.0%減▼介護予防認知症対応型通所介護:1.6%減▼認知症対応型通所介護:1.4%減▼居宅介護支援事業所:1.3%減—などが挙げられます。

「ニーズが減少し、それに伴って事業所も減少している」のか、それとも「ニーズはあるが、採算が合わない、マンパワーが確保できないなどの理由で事業所が減少してしまっている」のかなどを詳しく見ていく必要があります。

介護サービス事業所数の推移1(2022年介護サービス・事業所調査1 240112)

介護サービス事業所数の推移2(2022年介護サービス・事業所調査2 240112)



例えば、認デイ(認知症対応型通所介護)については「単価が高いために利用者が敬遠し、認知症であっても通常のデイサービス(通所介護)を選択しがちである」との指摘があります。つまり「利用者減→事業所の収益減→事業閉鎖」という事態が生じている可能性があるのです。しかし問題の解決は非常に困難です。例えば単価を上げれば「さらなる利用者減」につながり、逆に単価を下げれば利用者は増加するかもしれませんが、スタッフの負担が大きくなり、やはり経営維持が難しくなってくるでしょう。

介護保険では「利用者の意向」を踏まえてサービスを選択することが重視されています。この視点と「良いサービスを受けるには、高い費用がかかる」という点とを、どう調和させていくべきか、今後の介護報酬改定などでも重要な検討テーマとなります。



一方、要介護高齢者の増加を考えると「ケアマネジメントのニーズが減少している」とは考えにくく、居宅介護支援事業所の減少は非常にきにかかるところです。2024年度介護報酬改定では「特定事業所加算の算定要件見直し」「1人当たりの利用者数上限引き上げ」などが検討される一方で、「同一建物減算」が行われる見込みであり、こうした改定の影響も注視していく必要があります(関連記事はこちらこちら)。

特養、老健施設、介護療養で「入所者の重度化」が見られる、中長期的な評価が必要

次に、介護保険施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設)の状況を見てみましょう。

1施設当たり定員は、次のようになっています。

【特別養護老人ホーム】(介護老人福祉施設)
▼平均は69.8人(前年から0.2人増)
▼2022年9月末時点の利用率は94.7%(同0.8ポイント低下)

【老健施設】(介護老人保健施設)
▼平均は87.0人(前年から増減なし)
▼2022年9月末時点の利用率は87.5%(同0.8ポイント低下)

【介護医療院】
▼平均は60.3人(前年から2.2人減)
▼2022年9月末時点の利用率は91.8%(同1.1ポイント低下)

【介護療養】(介護療養型医療施設)
▼平均は28.4人(前年から4.1人減)
▼2022年9月末時点の利用率は78.2%(同5.0ポイント低下)

介護保険施設の定員等の状況(2022年介護サービス・事業所調査3 240112)



前年調査と同様に「施設の利用率が低下している」点が気になります。「新型コロナウイルス感染症の影響」によるものなのか(一時的なもの)、あるいは「ニーズが減少している」ためなのか、などを詳しく分析していく必要があります。地方では「高齢者の人口が減少している」ところも少なくありません。そうした地域では、今後「空床がさらに目立ってくる」可能性があり、「規模の縮小」や「都市部からの入所者受け入れ」など、様々な視点で今後の施設運営を考えていく必要があります。



また介護保険施設別に入所者の要介護度を見ると、次のような状況です(政府統計の総合窓口e-Statホームページから統計表をダウンロードしてください)。

▽特養ホーム
▼要介護1:1.0%(前年から増減なし)▼要介護2:2.8%(同0.3ポイント減)▼要介護3:26.0%(同0.3ポイント減)▼要介護4:40.5%(同0.4ポイント増)▼要介護5:29.5%(同0.1ポイント増)
→要介護3以上が96.1%(同0.3ポイント増)で、入所者の「重度化」がさらに進んでいると言える

▽老健施設
▼要介護1:12.4%(前年から増減なし)▼要介護2:18.9%(同0.3ポイント減)▼要介護3:24.3%(同0.1ポイント増)▼要介護4:27.7%(同0.3ポイント増)▼要介護5:16.2%(同0.1ポイント減)
→要介護3以上が68.3%(同0.4ポイント増)で、入所者の「重度化」が見られる

▽介護医療院
▼要介護1:2.1%(前年から0.1ポイント増)▼要介護2:4.1%(同0.3ポイント増)▼要介護3:10.2%(同0.3ポイント増)▼要介護4:38.7%(同増減なし)▼要介護5:44.4%(同0.5ポイント減)
→要介護3以上が93.3%(同0.2ポイント減)で、わずかな軽度化がみられる

▽介護療養
▼要介護1:1.4%(前年から0.5ポイント減)▼要介護2:2.9%(同0.1ポイント減)▼要介護3:7.5%(同0.7ポイント減)▼要介護4:38.2%(同1.2ポイント増)▼要介護5:49.7%(同0.6ポイント減)
→要介護3以上が95.4%(同1.1ポイント増)で、入所者の「重度化」が見られる



このように介護保険施設の種類によって、▼規模▼利用率▼要介護度―に特徴のあることが再確認できます。また介護療養から介護医療院へ転換が進んでも「非常に重度の要介護高齢者が入所する」という特性には、これまでのところ変化がないことも再確認できます。

なお、入所者の軽度化・重度化については、短期的に判断すべきではなく、コロナ感染症の状況なども踏まえながら中長期的に見ていくことが必要でしょう。



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