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医師働き方改革により「医師派遣の中止・縮小→地域医療提供体制への悪影響」が徐々に出ている可能性—四病協

2025.9.25.（木）

昨年（2024年）4月の医師働き方改革スタートから1年が経過したが、これにより「医師派遣の中止・縮小→地域医療提供体制への悪影響」が徐々に出ている可能性がある—。

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会が9月18日に、こうした調査結果を発表しました（日病サイトはこちら）。今後も状況を逐次、注視する必要があります。

医師働き方改革の実現に向けて宿日直許可の取得進む
「医師派遣の中止・縮減」が徐々に拡大している可能性、地域医療への影響も懸念

医師働き方改革の実現に向けて宿日直許可の取得進む

昨年（2024年）4月から、【医師の働き方改革】がスタートしています。すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制（原則：年間960時間以下（A水準）、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関（B水準）や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師（C水準）など：年間1860時間以下）を適用するとともに、追加的健康確保措置（▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置（勤務停止など）―など）を講じる義務が医療機関の管理者に課されるものです。

医師働き方改革の全体像（中医協総会1　210721）

この点、医療現場には「自院はB水準などの申請をしていないが、本当にすべての医師が時間外労働960時間以内に収まるのだろうか」、「大学病院が自院の医療体制を確保するために、医師派遣を引き揚げてしまわないか」など、さまざまな不安があります。

そこで四病協では、状況を正確に把握するために四病協の加盟病院と全国医学部長病院長会議傘下病院を対象に状況調査を行っています（関連記事はこちら）。

今般、「医師働き方改革のスタートから1年間が経過した」状況を調査。818施設が回答しています。

まず「時間外労働960時間以内」などを実現するための重要ポイントとなる「宿日直許可」について見てみましょう。

74.2％の病院が「病院全体で取得」、22.4％の病院が「一部の診療科のみ、一部の時間帯のみで取得」していることが分かりました。2024年の前回調査と比べて「病院全体で宿日直許可を取得している病院」が増加（4.1ポイント増）し、「宿日直許可を取得していない病院」は減少（10.6%→3.4%へ7.2ポイント減少）しています。

宿日直許可の取得状況（四病協医師働き方改革影響調査1　250918）

また「宿日直中の診療範囲について、医師との間での取り決めがある事項」の変化（2024年の前回調査→2025年の今回調査）を見ると、次のような状況です。宿日直中には「軽微な業務」のみ実施可能ですが、」対応しなければならない業務の負担が、若干、軽減傾向にあるようです。

▽入院中の患者の急変
→変わらない：80.0％、対応が増えた：2.1％、対応が減った：3.6％

▽かかりつけ患者の時間外の受診対応
→変わらない：78.5％、対応が増えた：0.3％、対応が減った：8.7％

▽かかりつけ「以外」の患者の時間外の受診対応の有無
→変わらない：73.4％、対応が増えた：1.5％、対応が減った：10.7％

宿日直中の業務内容の変化（四病協医師働き方改革影響調査2　250918）

自由記述の内容を見ても、▼宿日直中の業務が軽度なものに限定され、時間外手当の対象業務が明確になった▼宿直医が担当する診療科の患者のみを診るようになり、他科の患者は待機医師が対応するようになった▼深夜の救急搬送が減少した▼夜間透析が中止された▼夜間の電話対応のファーストコールを看護師が行うようになり、医師の対応が減少した—と、病院全体では「医師の業務負担が軽減している」ことが分かります。

次に時間外労働については、次のような状況が明らかになっています。A水準が増加していることなどから「医療現場で医師働き方改革が浸透してきている」状況が伺えそうです。

▽A水準：92.7％（前回調査に比べて0.5ポイント増）、B水準：16.9％（同1.4ポイント増）、連携B水準：3.3％（同3.3ポイント増）、C1水準：5.3％（同0.2ポイント増）、C2水準：0.7％（同0.2ポイント減）

▽病院機能別に見ると、特定機能病院・臨床研修病院・専門医指定施設・救急対応病院（2次救急・救命救急センター、周産期母子医療センター）・地域医療支援病院などで「B・連携B・C水準取得」が多い

医師の時間外労働（四病協医師働き方改革影響調査3　250918）

「医師派遣の中止・縮減」が徐々に拡大している可能性、地域医療への影響も懸念

また、危惧・懸念されている「医師派遣の中止等」については次のような状況が明らかになっています。

▽医師派遣側
→派遣の中止・削減予定なしが64.9％（前回調査に比べて0.6ポイント増）と最も多いが、▼場合により中止・削減を検討する：12.3％（同14.1ポイント減）▼すでに中止・削減している：7.0％（同6.7ポイント増）—という病院も一定程度ある

医師派遣の変化（派遣側）（四病協医師働き方改革影響調査4　250918）

▽医師受け入れ側
→▼派遣中止の連絡あり：7.6％（前回調査に比べて4.0ポイント増）▼派遣縮減の連絡あり：13.7％（同8.0ポイント増）▼医師の報酬引き上げ要請あり：9.5％—など

医師派遣の変化（受け入れ側）（四病協医師働き方改革影響調査5　250918）

医師派遣の中止・削減・コスト増など、地域医療への影響が徐々に拡大しているようです。

この点に関連して「診療縮小などを検討しているか？」を聞いたところ、▼自院に影響あり：11.6％（前回調査に比べて4.6ポイント増）▼今後、自院に影響が出る可能性あり：23.3％（同11.7ポイント減）▼自院に影響はないが、地域医療に影響あり：4.6％▼今後、地域医療に影響が出る可能性あり：10.3％（同3.6ポイント増）—という状況も分かりました。