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外来診療 経営改善のポイント 2024年度版ぽんすけリリース

「7月」分データ、2012年以降は平均在院日数短縮と新規患者獲得を両立する理想的な動き―病院報告、2019年7月分

2019.11.7.(木)

「7月分」のデータを追いかけると、病院の一般病床では2012年以降「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」とを両立できている―。

こうした状況が、厚生労働省が11月1日に公表した今年(2019年)7月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

2019年6月から7月にかけて平均在院日数短縮と病床利用率向上を両立

厚労省は毎月、日本全国の病院における(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を把握し、「病院報告」として公表しています(前月の記事はこちら)。

今年(2019年)7月の(1)「1日平均患者数」は、病院全体で▼入院:123万2468人(前月と比べて2201人・0.2%増)▼外来:137万9652人(同6万3385人・4.8%増)―となりました。

医療法上の病床種別に入院患者数を見てみると、▼一般病床:67万7840人(前月比2191人・0.3%増)▼療養病床:27万531人(同504人・0.2%減)▼精神病床:28万2543人(同504人・0.2%増)▼結核病床:1486人(同9人・0.6%増)―などという状況です。

2019年6月から7月にかけて入院・外来ともに病院の患者数は概ね増加している(病院報告19年7月1 191101)



また(2)「平均在院日数」は、病院全体では26.3日で、前月から0.9日短縮。病床種別に見ると、▼一般病床:15.4日(前月から0.5日短縮)▼療養病床:136.2日(同4.3日短縮)▼介護療養病床:324.9日(同5.2日延伸)▼精神病床:252.8日(同12.3日短縮)▼結核病床:62.5日(同4.8日短縮)―となりました。介護療養を除き、前月よりも在院日数が短縮しています。

2019年6月から7月にかけて介護療養を除き、病院の平均在院日数は短縮している(病院報告19年7月3 191101)



さらに(3)「月末病床利用率」を見ると、病院全体では80.6%で、前月から3.0ポイント向上しました。病床種別に見ると、▼一般病床:76.8%(前月比5.0ポイント向上)▼療養病床:87.0%(同0.3ポイント向上)▼介護療養病床:90.1%(同0.2ポイント低下)▼精神病床:86.2%(同0.5ポイント向上)▼結核病床:34.1%(同0.4ポイント向上)―という状況です。介護療養を除き、前月よりも病床利用率は向上しています。

2019年6月から7月にかけて介護療養を除き病院の病床利用率は向上している(病院報告19年7月2 191101)

一般病床の7月分データ、平均在院日数短縮と新規患者獲得とを両立

次に「暦月の変動」を除外するために、一般病床における「7月分」の平均在院日数の動向を見てみます。2012年以降、「概ね短縮」している状況が伺えます。

▼2012年:17.2日(厚労省のサイトはこちら

(0.6日短縮)

▼2013年:16.6日(厚労省のサイトはこちら

(0.3日短縮)

▼2014年:16.3日(厚労省のサイトはこちら

(0.4日短縮)

▼2015年:15.9日(厚労省のサイトはこちら

(0.2日延伸)

▼2016年:16.1日(厚労省のサイトはこちら

(増減なし)

▼2017年:16.1日(厚労省のサイトはこちら

(0.4日短縮)

▼2018年:15.7日(厚労省のサイトはこちら

(0.3日短縮)

▼2019年:15.4日(厚労省のサイトはこちら



一方、月末病床利用率は、次のような状況です。増減を繰り返しながら、「緩やかに向上している」と見ることができそうです。

▼2012年:75.8%(厚労省のサイトはこちら

(0.1ポイント低下)

▼2013年:75.7%(厚労省のサイトはこちら

(1.1ポイント低下)

▼2014年:74.6%(厚労省のサイトはこちら

(0.8ポイント低下)

▼2015年:73.8%(厚労省のサイトはこちら

(2.6ポイント低下)

▼2016年:71.2%(厚労省のサイトはこちら

(3.2ポイント向上)

▼2017年:74.4%(厚労省のサイトはこちら

(2.6ポイント向上)

▼2018年:77.0%(厚労省のサイトはこちら

(0.2ポイント低下)

▼2019年:76.8%(厚労省のサイトはこちら


 
このように「7月分」データを見ると、「2012年以降、大きく見れば平均在院日数の短縮と病床利用率向上とを実現できている」と言うことができそうです。

Gem Medで繰り返しお伝えしていますが、平均在院日数の短縮は、▼急性期一般病棟(旧7対1・10対1一般病棟)等における「重症患者割合」(重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合)の向上▼DPC特定病院群(旧II群)要件の1つである「診療密度」の向上▼「院内感染」や「ADL低下」などのリスク軽減▼患者のQOL向上(例えば職場への早期復帰を果たし、生活の安定を取り戻す)—といった経営の質・診療の質の向上に直結する要素です。

ただし、「在院日数の短縮」は、▼空床の発生・増加→▼病床利用率の低下→▼病院経営の悪化―にも繋がる、両刃の剣であることも事実です(出来高・DPCのいずれにおいても入院料が「1日当たり」で設定されているため)。

このため、「在院日数の短縮」によって医療の質を向上させ、同時に「病床利用率を向上」させ、病院経営を安定させる必要があります。具体的には、▼かかりつけ医等と密接に連携して紹介患者を確保する▼救急搬送患者を積極的に受け入れる―などし、「重症の新規入院患者」獲得に力を入れなければなりません。この点、「7月分」の状況を見れば、2012年以降、病院の努力が成果に結びついていることが分かります。

こうした取り組みを今後も進めることが重要なことはもちろんですが、地域によっては人口減少により「患者数そのものが減少」し始めているところもあり、近い将来、都市部の多くでも人口減少(=患者数減少)が始まります。そうなれば多くの病院において新規患者獲得がさらに難しくなり(病院間で患者の奪い合いが激化する)、病院の努力が結実しない事態も生じます。客観的に▼地域の医療ニーズ▼競合病院の状況▼自院の機能やリソース―を分析し、病床の機能転換(急性期から回復期・慢性期)や、「ダウンサイジング」(病床の削減)、共倒れを防ぐための「近隣病院との再編・統合」なども検討していく必要があります。厚労省は、公立病院・公的病院等の一部(424病院)について「再編統合の再検証が特に強く要請される」との考えを示しています。

 
 
 
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