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地域医師会・医療機関と自治体が連携し、介護予防の「通いの場」への医療専門職関与強化を―厚労省

2019.8.26.(月)

 介護予防・健康づくりの推進が重視される中で、市町村の実施する「一般介護予防」事業の充実・強化が必要となる。地域の高齢者が集い、健康体操や健康状態チェックなどを行う「通いの場」の整備が進んでいるが、さらなる「地域高齢者の参加促進」や「医療専門職の関与」を進め、事業の評価・改善を図っていく必要がある―。

 「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」が8月23日に、こうした内容の中間とりまとめを行いました(厚労省のサイトはこちら(本文)こちら(参考資料))(関連記事はこちら)。年内(2019年内)に最終取りまとめを行い、介護保険制度改正等につなげることになります。

介護保険担当部局以外の取り組みも、介護予防につながれば「通いの場」に位置付け

 介護保険制度は、3年単位の介護保険事業(支援)計画(市町村で介護保険事業計画を、都道府県で介護保険事業支援計画を作成する)に則って進められます。高齢化や要介護認定の状況を踏まえて「どの程度のサービス量を整備するか」(居宅サービスは〇人分、施設サービスは〇床分というイメージ)を推測し、これを賄うために「介護保険料をどの程度に設定するか」などを計画に定めることになります。

65歳以上の第1号被保険者の納める介護保険料(全国平均)の推移を見ると、介護保険創設時の2000年度(2000-2002年度)には2911円でしたが、2018年度(2018-20年度)には5869円となり、2.02倍になっています。
一般介護予防事業等検討会中間まとめ1 190823
 
2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となるため、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していきます。その後、2040年にかけて高齢者人口の増加の度合いそのものは鈍化しますが、生産年齢人口が急激に減少していくため、介護保険財政が厳しくなり、「保険料水準が高騰していく」ことは確実です。

しかし、「保険料水準の高騰」は制度の基盤を脆くする(保険料を納められない人も出てくる)ため、「できるだけ要介護状態とならない」「健康を維持する」ことが重要です。2021年度からの次期介護保険事業(支援)計画(第8期計画)に向けた介護保険制度改正を議論する社会保障審議会・介護保険部会でも「介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)」が重要テーマの1つに掲げられました(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

その一環として厚生労働省は「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」(以下、検討会)を今年(2019年)5月に設置。▼今後求められる機能▼専門職関与に向けた方策―などを議論し、今般、中間とりまとめを行ったものです。

一般介護予防事業は、2014年度の介護保険制度改正に基づいて「地域支援事業」の中の「介護予防・日常生活支援総合事業」(いわゆる総合事業)の1つとして位置づけられました。例えば、地域に高齢者の「通いの場」を設け、そこで高齢者の健康チェックや健康体操などの介護予防事業を展開する取り組みです。

【市町村の実施する地域支援事業】
(1)介護予防・日常生活支援総合事業(単に「総合事業」と呼ぶことも多い)(▼介護予防・生活支援サービス事業(要支援者に対する訪問・通所サービス、配食などの生活支援サービス、介護予防支援事業)▼一般介護予防事業―)
(2)包括的支援事業(▼地域包括支援センターの運営▼在宅医療・介護連携推進事業▼認知症総合支援事業▼生活支援体制整備事業―)
(3)任意事業(▼介護給付費適正化事業▼家族介護支援事業―など)
介護保険部会1 190320
介護保険部会8 190320
 
 
 まず、「一般介護予防事業等に今後求められる機能」について検討会では、現在、▼「通いの場」は全国に9万1509か所設置されているが、高齢者の参加率は4.9%にとどまり、その内容は「体操」が約半数を占めている▼市町村が把握できている「通いの場」は、介護保険担当部局の取り組みに限られている▼介護予防に資する取り組みへの参加やボランティア等への参加を促すためのポイント付与などを実施する自治体は約25%にとどまっている―といった現状と課題を把握。

その上で、更なる一般介護予防事業等の機能強化に向けて、次のような考えをまとめました。

▽「通いの場」をより魅力的なものとし、効果的・効率的な介護予防を進めるため、「年齢層」「性別」「関心事」「健康状態」などに応じて参加できるよう、通いの場を「類型化」し示していくことを検討する

▽▼介護保険担当以外の部局が行う、スポーツや生涯学習に関する取り組み、公園・農園を活用した取り組みなどの「介護予防につながる取り組み」▼企業や社会福祉協議会など多様な主体と連携した取り組み▼医療機関や介護保険施設等が自主的に行う取り組み▼有償ボランティアなどいわゆる就労に類する取り組み-も「通いの場」として明確化を図る

▽「通いの場」などに参加しない高齢者について、支援が必要な者を把握し、「通いの場」への参加を含めた必要な支援につなげる方策を検討する。

▽これらを推進するため、自治体が多様な主体と連携し、既存の取り組みも含め「分野横断的に進めるための体制」の構築を進める

▽介護予防の取り組みへの参加促進を図るための「ポイント付与」について、対象の偏りや費用対効果などの点について、社会的に理解の得られる範囲を見極めながら、「通いの場」に限らず幅広い取り組みが対象となることを明確化し、事例紹介等を通じ推進していく

地域医師会・医療機関と自治体が連携し、「通いの場」への医療専門職の関与を強化

 
また、要介護状態の要因として、▼認知症▼脳血管疾患(脳卒中)▼高齢による衰弱▼骨折・転倒▼関節疾患―などが多く、80歳代前半をピークに高齢者の医療機関受診率が高くなることを踏まえると、介護予防は「生活習慣病に関する疾病・重症化予防等を主な内容とする保健事業と連携する」「医療専門職が関与する」ことが重要と考えられます。一方で、既存の「『通いの場』などへの定期的な医療専門職等の関与を促進する地域リハビリテーション活動支援事業」については、実施自治体は約5割にとどまっています。
一般介護予防事業等検討会中間まとめ2 190823
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そこで検討会では、「一般介護予防事業において、専門職の関与を進める」ことの重要性を強調しています。自治体(市町村)と地域医師会・地域医療機関との連携が極めて重要となり、先進的な連携事例の紹介やモデル事業などを行うことを提言しています。

一般介護予防事業等の「評価」、評価指標の在り方も含めた見直しを検討

 
 さらに一般介護予防事業においても、「PDCAサイクル」を回し、逐次改善を図っていくことが必要です。現行制度でも、一般介護予防事業を含めた総合事業全体の評価・改善を目的とする「一般介護予防事業評価事業」において、▼実施体制等に関するストラクチャー指 標▼企画立案、実施過程等に関するプロセス指標▼成果目標に関するアウトカム指標―が示され、「年度毎の評価が望ましい」とされていますが、こうしたPDCAサイクルを回している自治体は約3割にとどまっています。
一般介護予防事業等検討会中間まとめ5 190823

一般介護予防事業等検討会中間まとめ6 190823

一般介護予防事業等検討会中間まとめ7 190823

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そこで、検討会では、▼自治体の負担等も考慮しつつ、プロセス指標やアウトカム指標を含む評価の在り方を再検討、都道府県や国による市町村支援も検討する(市町村の負担が大きくPDCAサイクルを回せていない可能性もあるため)▼評価指標を検証できるよう、地域包括ケア「見える化」システム等のデータ整備やシステムの活用方策も検討を進める▼介護予防事業全体のPDCAサイクルに沿った推進方策についても、制度的な対応を含めて検討する▼介護保険における自治体への財政的インセンティブである「保険者機能強化推進交付金」(いわゆるインセンティブ交付金)について、上記指標と整合のとれたものとして、さらなる充実を検討する―方向を示しています。

 
 
検討会は、秋以降も議論を深め、年内(2019年内)に最終取りまとめを行った上で、次期介護保険制度見直し論議を行う、社会保障審議会・介護保険部会への報告を行う予定です。そこでは、「高齢者自身も地域づくりの担い手となる」という視点も重視し、▼地域支援事業の他の事業との連携方策▼地域支援事業の効果的な実施方法―なども検討テーマにあがる見込みです(関連記事はこちらこちら)。

 

 

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