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GemMed塾 看護モニタリング

新型コロナ対策、地域の医療提供体制や緊急性など総合的に判断し「予定手術の延期」考慮を―日本外科学会

2020.4.15.(水)

新型コロナウイルス感染患者が増加する中で、限られた医療資源を「新型コロナウイルス感染症の重症患者」に重点化・集約化することが求められている。その際、医学的な判断から「延期が可能な予定手術については、延期や代替療法の可能性を考慮する」ことが必要である―。

延期等の考慮に当たっては、疾病のレベルはもちろん、「地域の医療提供体制が安定しているか、逼迫しているか」「患者が新型コロナウイルスに感染しているか否か」などを総合的に判断することが求められる―。

また、一般に「急を要しない疾患」であっても、患者の状態などから「早急な手術が必要である」こともあり、手術の延期を考慮する際には、疾病名だけで判断することは避け、患者の状態等を踏まえてケースバイケースで判断してほしい―。

日本外科学会は4月14日に、こうした点を盛り込んだ「外科手術トリアージ表の改訂版」を公表しました(日本外科学会のサイトはこちらこちら(改訂トリアージ表))。

限られた医療資源、新型コロナの重症患者への重点化・集約化が求められる

新型コロナウイルスの猛威は衰えるところを知らず、東京・大阪・福岡といった大都市を中心に患者数が急増しています。

新型コロナウイルス陽性と診断された患者については、軽症・重症を問わず「入院」することが原則です(指定感染症)。しかし患者数が増加する中でこの原則を貫ければ「感染症病床がいっぱい」となり、重症患者に適切な入院医療を提供できなくなってしまいます(テレビ報道等で言われる「医療崩壊」)。限られた医療資源の「有効活用」が極めて重要なテーマとなっているのです。

厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策本部は早くから、この点を踏まえた対策の必要性を訴え、次のような準備を進めてきています。

▽3月1日「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の各対策(サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制)の移行について」(関連記事はこちら
▼必要な感染予防策を十分に整えたうえで、外来に関して「一般医療機関でも外来診療を行う」体制を、入院に関して「感染症指定医療機関のみならず、一般医療機関において、一般病床も含めて必要な病床を確保する」体制を段階的に整える
▼感染患者が大幅に増加した場合には、「高齢者・基礎疾患を有する方・免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方・妊産婦―以外で症状がない、または医学的に症状が軽い方」は、PCR等検査で陽性であっても、自宅での安静・療養を原則とする

▽3月19日(26日に改訂)「新型コロナウイルス感染症の患者数が大幅に増えたときに備えた入院医療提供体制等の整備について」(関連記事はこちら
▼各都道府県で「新型コロナウイルス感染症患者を重点的に受け入れる医療機関」の設定などを早急に進める
▼医療資源を新型コロナウイルス感染対策に集中させるために、延期が可能な予定手術・予定入院については「延期」を検討する

▽4月8日「新型コロナウイルス感染症の患者数が大幅に増えたときに備えた入院医療提供体制等の整備の更なる推進について」(関連記事はこちら
▼限られた医療資源を、当面の間、新型コロナウイルス感染症に重点化・集約化する必要があり、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる重点医療機関等はもとより、重点医療機関以外の一般医療機関でも、医師が「延期可能」と判断した予定入院・予定手術については延期を要請する



また、▼日本医学会連合▼日本外科学会▼日本消化器外科学会▼日本胸部外科学会▼日本心臓血管外科学会▼日本血管外科学会▼日本呼吸器外科学会▼日本小児外科学会▼日本乳癌学会▼日本内分泌外科学会―の10外科系医学会では、4月1日に「新型コロナウイルス陽性および疑い患者に対する外科手術に関する提言」を行い(4月10日改訂)、そこでは、言わば「予定手術について延期可能か否かを判断する際の目安」(トリアージ表)が示されました(関連記事はこちら)。

例えば、「予定手術(待機手術)の実施・延期は、『医学的観点』(医学的必要性)および『限りある医療資源の効率的・効果的な配分』の観点から多角的に検討して判断すべき」ことなどを示すとともに、米国外科学会(ACS)が推奨するセントルイス大学のESAS(Elective Surgery Acuity Scale)をベースにした手術トリアージの目安も提示していました。

【致命的疾患でない、急を要しない外来手術など】
(例)▼手根管症候群手術▼白内障手術▼健診・ドックの消化管内視鏡―など
→「延期」する

【致命的疾患でないが潜在的には生命を脅かす、または重症化する危険性あり、入院を要する疾患】
(例)▼低悪性度のがん▼非緊急性の整形外科手術(股・膝関節置換、脊椎)▼尿管結石(病状安定)▼待機的血管形成術―など
→「可能であれば延期」する

【数日から数か月以内に手術しないと致命的となり得る疾患】
(例)▼外傷▼ほとんどのがん手術▼臓器移植手術▼心臓手術▼重症下肢虚血に対する血管手術―など
→「十分な感染予防策を講じ、慎重に実施」する

延期手術の考え方をさらに精緻化、地域の医療体制や新型コロナ感染の有無で場合分け

さらに今般、日本外科学会では、提言後に安倍晋三内閣総理大臣が緊急事態宣言を発したこと(関連記事はこちらこちらこちら)や、N95マスク等をはじめとする医療従事者の防護具不足がさらに顕著になってきていること(関連記事はこちら)などを踏まえ、トリアージ表の見直しを行ったものです。

上述のように、従前のトリアージ表では「手術例」が示されていましたが、日本外科学会では「疾患、診療科、患者状態により一律には分類することは難しく、ケースバイケースでの判断が必要である」と考え、今回「手術例」を削除。あわせて▼新型コロナウイルス感染が陽性なのか、陰性なのか、疑いなのかの区分▼医療提供体制についての区分―と追加しています。

改訂後のトリアージ表を見ると、例えば、次のような流れで予定手術を実施するか、延期するかを判断することになります。

【重篤度、緊急度、必要性、患者の容態などを総合的に考慮し、主治医を中心にした医療チームで協議して判断した疾病レベル(以下、疾病レベル)が「致命的でない、または急を要しない疾患」の手術】

▽当該地域・医療機関における病床数、医療スタッフ、個人防護具(PPE)、新型コロナウイルス感染患者の受け入れの有無、緊急事態宣言の有無、感染拡大の程度などの様々な要因を踏まえて判断した結果、「地域の医療提供体制が安定時である」場合
→▼陰性患者では「適切な感染予防策を講じたうえで慎重に実施する」―
→▼陽性・疑い患者では「延期する」―

▽同様に判断した結果(以下、略)、「地域の医療提供体制が逼迫時」である場合
→▼陰性患者、陽性・疑い患者ともに「延期する」―



【疾病レベルが「致命的でないが潜在的には生命を脅かす、または重症化する危険性がある疾患」の手術】

▽「地域の医療提供体制が安定時である」場合
→▼陰性患者では「適切な感染予防策を講じたうえで慎重に実施する」―
→▼陽性・疑い患者では「可能であれば延期し、やむを得ない場合のみ十分な感染予防策を講じたうえで慎重に実施する」―

▽「地域の医療提供体制が逼迫時である」場合
→▼陰性患者では「可能であれば延期する」―
→▼陽性・疑い患者では「延期する」―



【疾病レベルが「数日から数か月以内に手術しないと致命的となり得る疾患」の手術】

▽「地域の医療提供体制が安定時である」場合
→▼陰性患者では「適切な感染予防策を講じたうえで慎重に実施する」―
→▼陽性・疑い患者では「代替治療を考慮し、やむを得ない場合のみ十分な感染予防策を講じたうえで慎重に実施する」―

▽「地域の医療提供体制が逼迫時である」場合
→▼陰性患者、陽性・疑い患者ともに「代替治療を考慮し、やむを得ない場合のみ十分な感染予防策を講じたうえで慎重に実施する」―

新型コロナウイルス患者増が急増する中で、予定手術を実施するか否かのトリアージを行う際の判断の目安が示されている(日本外科学会 200414)



新型コロナウイルス患者が急増し、地域の医療提供体制が逼迫している場合には、可能な限り「手術の延期や代替治療の考慮」を行うことが求められると言えるでしょう。

また、新型コロナウイルス感染の有無を判断する際には、「PCR検査(新型コロナウイルス核酸検出法)による診断が望ましい」ものの、検査数にはキャパシティがあることから、日本外科学会では、PCR検査ができない場合には▼過去2週間程度の症状▼海外渡航歴・移動歴▼濃厚接触の有無(本人および同居者)▼胸部CT所見―などを踏まえて、総合的に判断する―との考えを示しています。

なお、ウイルス不顕性の患者も少なくなく、PCR検査でも偽陰性と判断されることも少なくないことを踏まえ、日本外科学会では、「検査や所見から『陰性』と判断された患者であっても、手術等を行うに当たっては、院内マニュアルに従って適切な感染予防策を講じることが重要である」と注意喚起しています。



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