外来機能報告に基づく「紹介中心型の病院」、診療報酬上のインセンティブ論議をセットで進めよ―四病協
2021.9.29.(水)
来年度(2022年度)から、外来機能報告に基づき、地域で紹介中心型の病院(「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関)を明確化していくことになるが、診療報酬上のインセンティブ(加算など)の議論をしなければ、どの病院も「紹介中心型の病院」に手を上げないのではないか―。
医師働き改革が2024年度からスタートするが、医師は患者相手に業務を行っており、「●時間以上働いてはいけない」「〇時間働いたら、◇時間休息をとれ」などの細かな規定どおりに働くことはできるのだろうか―。
9月22日に開催された四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会)の総合部会で、こういった議論が行われたことが全日本病院協会の猪口雄二会長から報告されました。
紹介中心型の病院、診療報酬上のインセンティブがなければ病院側は手上げしないのでは
外来医療においても機能分化を進め、▼病院勤務医の負担軽減▼医療の質向上―などを目指す―ことが重要であり、まず「かかりつけ医」を受診し、そこから「高機能の病院外来」を紹介してもらうという患者の流れを強化することが求められています。
このためには、「『高機能の外来医療』を提供する病院」はどこなのか、「『かかりつけ医』機能を果たす医療機関」はどこなのか、などが患者に明らかにされていなければならず、改正医療法で次のような仕組みが構築されました(関連記事はこちら)。
(A)「一般病床・療養病床を持つ医療機関」(病院・有床診療所)に外来診療に係るデータを都道府県に報告することを義務付ける【外来機能報告制度】
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(B)提出された外来診療データをもとに、各地域で紹介型病院となる「『医療資源を重点的に活用する外来』を地域で基幹的に担う医療機関」を明確化する
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(C)重点外来基幹病院へは、かかりつけ医等からの紹介受診を原則とする(紹介状を持たずに受診した場合には特別負担徴収を義務化)
外来機能報告制度は来年(2022年)4月にスターとし、2023年初頭(1-3月)には「紹介中心型の病院」が地域で明確化される見込みです。現在、(A)(B)制度の詳細について外来機能報告等に関するワーキンググループで議論が進められています(年内に制度詳細を固める、関連記事はこちらとこちらとこちら。(C)の詳細は主に中央社会保険医療協議会で議論する)。
ところで、「紹介中心型の病院」の明確化は、▼外来機能報告データが、国の定める基準(例えば、外来患者に占める「手術前後の患者」「外来化学療法・外来放射線治療などの患者」割合などを想定)等に合致しているかを確認する▼病院に「紹介中心型の病院」になる意向があるか否かを確認する―というプロセスで行われる見込みです。
この点、「紹介中心型の病院」となった暁には、紹介状を持たずに受診する患者からは特別料金(初診時には7000円程度以上)を徴収しなければならなくなります(救急患者などは除外)。これは「外来患者の減少」→「外来収益の減少」につながると思われます。
このため四病協では、▼「紹介中心型の病院」になる意向がない病院でも、国の基準に合致した場合には、「紹介中心型の病院」とならざるとえないのか否か▼「紹介中心型の病院」となった場合の経済的インセンティブはどうなるのか―という点に注目していることが猪口・全日病会長から報告されました。
前者について、制度上は「病院の意向に基づいて、紹介中心型病院を明確化する」こととなっているため、「手上げをしていないにも関わらず、紹介中心型の病院に強制的にさせられる」ことはなさそうです。しかし、外来機能報告等ワーキングでは、幸野庄司構成員(健康保険組合連合会理事)から「国の基準に合致しながら、紹介中心型病院に手を上げない病院は好ましくない。指定の拒否は、正当な理由がある場合に限定すべきではないか」といった旨が指摘されています。また、9月15日の外来機能報告等ワーキングでは、「国の基準に合致しながら、手を上げない病院」などは、地域における協議の場に出席し、手を上げない理由などを開示すべきではないか」という方向中心型病院を明確化する「協議の場」へ住民代表参画が重要、協議結果は様々なツールでPRを―外来機能報告等WGも示されました(もちろん決定ではない)。
詳細は今後の議論を待つ必要がありますが、国の基準に合致する病院は、「紹介中心型の病院」となる意向がない場合、その理由を何らかの形で説明し、地域関係者の理解を得る必要が出てきそうです。
この場合、上述のとおり「外来収益が減少する」可能性が高くなります。猪口・全日病会長は「特別負担徴収が義務付けられている特定機能病院や200床以上の地域医療支援病院では、診療報酬で特別の評価がなされている(特定機能病院では一般病院よりも高い入院基本料が設定され(急性期一般1は1日につき1650点だが、7対1特定機能では1日につき1718点)、地域医療支援病院には【地域医療支援病院入院診療加算】(入院初日に1000点))。新たに設置される『紹介中心型の病院』でも、こうした診療報酬上のインセンティブをセットで考えなければ、手を上げる病院はまず現れず、その前に、これ以上議論も進まず、深まらないのではないか」とコメントしています。
議論の場が、制度に関しては「外来機能報告等ワーキング」で、診療報酬に関しては「中央社会保険医療協議会」でと分けて進められていますが、今後、「外来機能報告等ワーキング」の議論経過を踏まえて、中医協で「紹介中心型の病院への診療報酬上のインセンティブ」が論議されることになるでしょう。
医師の働き方改革、動き出してみなければ、医療現場がどうなるのか見えてこない
また2024年4月からは【医師の働き方改革】がスタートします。
制度施行に向けて「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で議論が進められ、最終局面を迎えています(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
ところで、四病協の総合部会(4団体の会長・副会長等の幹部で構成される)では、そもそもの問題として、「●時間以上働いてはいけない」「〇時間働いたら、◇時間休息をとれ」などの細かな規定どおりに働くことはできるのだろうかという疑問がぬぐえないと言います。患者は時間どおりに回復してくれませんし、状態が不安定なケースも少なくありません。「手術で●時間が経過したので、術の様子をみることは一切しません」などの対応が果たして医療現場で可能なのか、といった疑問です。
猪口・全日病会長は「検討会で議論し、結論が出たとしても、その通りに医療現場が動けるという確証はない。動き出してみなければ分からないというのが実際のところだ」とコメントしています。例えば、B水準指定等についてはモデル事業が行われることになっていますが、例えばB水準病院での診療実態・勤務医の働き方実態についても、モデルケース等を設定した検証などが必要になってくるかもしれません。
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