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2021-23年度の介護保険第1号保険料は6014円、2023年度にも1万人分の介護療養が居残り―厚労省

2021.5.21.(金)

2021年度からスタートした第8期介護保険事業計画(2021-23年度)において、介護保険料は全国平均で6014円となり、前期(2018-20年度)に比べて2.5%上昇している―。

都道府県別には、大阪、沖縄、青森などで保険料が高く、千葉、山口、埼玉などで保険料が低いが、「介護保険料が高い=悪い」という構図にはない点に留意が必要である―。

第8期計画が完了する2023年度に向けて、看護小規模多機能型居宅介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護などのさらなる整備が進められる予定である。介護療養については、2023年度末に「廃止」されるが、その時点でも「1万人分」が居残る状況である―。

厚生労働省は5月14日に、こういった集計結果を公表しました(厚労省のサイトはこちら)。

全国平均の1号介護保険料は、前期から2.5%増の6014円に

介護保険制度は、3年を1期とした介護保険事業(支援)計画に基づいて運営されます(市町村が介護保険事業計画を、都道府県が介護保険事業支援計画を作成)。地域(市町村・都道府県)ごとにサービス整備量を計画に定め、それを賄うための保険料を設定し、3年ごとに見直すのです(関連記事はこちらこちら)。

2021年度からは、新たな「第8期計画」(2021-23年度計画)がスタートしており、今般、その内容を厚労省が取りまとめたものです。

まず、全国平均の第1号保険料(65歳以上、月額)を見るは6014円(前期(2018-20年度)から145円・2.5%の上昇)となりました。6000円を超えるのは初めてのことです。

保険料は次のように推移しています。制度創設当初は「サービス料の拡充」が強く求められたことから、また2012年度からは「地域包括ケアシステムの構築に向けて、新サービスを創設した」ことなどから、保険料の上昇幅が大きくなっています。

▽第1期(2000-02年度):2911円

(前期から13.1%増)

▽第2期(2003-05年度):3293円

(前期から24.2%増)

▽第3期(2006-08年度):4090円

(前期から1.7%増)

▽第4期(2009-11年度):4160円

(前期から19.5%増)

▽第5期(2012-14年度):4972円

(前期から10.9%増)

▽第6期(2015-17年度):5514円

(前期から6.4%増)

▽第7期(2018-20年度):5869円

(前期から2.5%増)

▽第8期(2021-23年度):6014円



2022年度からは、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。2025年度から2040年度にかけては、高齢者の増加ペース自体は鈍化するものの、現役世代人口が急速に減少していくことが明らかになっています。このため、「介護ニーズが増加」する一方で、「支え手が減少」していくために、介護保険財政は厳しさを増していきます。厚労省の機械的な試算によれば「2025年度には、介護保険料は6856円(2021-23年度に比べて14.0%増)になる」見込みです。

大阪、沖縄、青森などで保険料が高く、千葉、山口、埼玉などで保険料が低い

第1号保険料を都道府県別に見ると、金額が高いのは▼大阪府(6826円)▼沖縄県(6826円)▼青森県(6672円)▼和歌山県(6541円)▼秋田県(6487円)—など、逆に低いのは▼千葉県(5385円)▼山口県(5446円)▼埼玉県(5481円)▼茨城県(5485円)▼長野県(5623円)—などとなっています。

また前期からの伸び率を見ると、高いのは▼埼玉県(8.4%増)▼神奈川県(5.1%増)▼静岡県(5.1%増)—など、低いのは▼熊本県(2.1%減)▼鳥取県(1.2%減)▼山梨県(1.0%減)—などです。

第8期介護保険事業計画における都道府県別の第1号保険料(その1)

第8期介護保険事業計画における都道府県別の第1号保険料(その2)



介護保険料と介護サービス量との間には、▼サービス量が多くなれば高くなる▼サービス量が少なくなれば低くなる―という関係にあります。各自治体で「自地域では介護サービスを充実させる、その代わり高い保険料を負担してもらう」「我々の地域では、介護保険料負担を抑えるために、サービス提供量もそこそこに抑える」などと判断することがベースになり、「介護保険料が高い=問題である」という単純構造にはなっていないことに留意が必要です。



さらに、保険者(市町村)別に第1号保険料を見てみると、5501-6000円が31.1%と最も多く、6001-6500円が23.3%、5001-5500円が18.3%、6501-7000円が13.0%となっています。5001-7000円の範囲に85.7%の保険者が収まっており、5000円未満あるいは7000円超の保険料設定は「少数派」と言えます。

少数派になる理由は、「サービス量が極端少ない」「人口が極めて少数で、1人当たりの保険料が高くなってしまう」などさまざまで、最も低いのは▼北海道・音威子府村▼群馬県・草津町—の「3300円」、逆に最も高いのは東京都・青ヶ島村の「9800円」となっています。

第8期介護保険事業計画における市町村別の第1号保険料分布

看多機や定期巡回は2023年度に向け大幅増計画、ただし介護療養も1万人分「残留」

保険料設定のベースとなる「介護サービス量」の見込みを全国ベースで見てみると、第8期計画が完了する2023年度時点で、▼在宅要介護者向けの介護サービスは2020年度(第7期計画の完了時点)に比べて9%増▼居住系サービス(特定施設、認知症高齢者グループホーム)は同じく14%増▼施設サービスは同じく8%増—となっています。

サービス種類別に見ると、▼看護小規模多機能型居宅介護:75%増▼定期巡回・随時対応型サービス:37%増—などが目立ちます。前者は「通い・訪問・通所」の3機能を併せ持つ小規模多機能型居宅介護に、医療機能(訪問看護)を加味したサービスで、医療ニーズの高い在宅要介護者に複合的・総合的なサービス提供を行うことを目指すもの、後者は「朝・昼・晩」などの定期的な巡回訪問サービスと、急変時に随時駆けつけるサービスをミックスしたもので、いずれも「地域包括ケアシステムの要」の1つになると期待されています。2012年度に創設された、まだ若いサービスであり、さらなる整備に期待が集まります。

また、介護医療院も同じく53%増が見込まれていますが、これは「介護療養型医療施設」などからの転換を見込んだもので、ダイレクトに「サービス量の純増」を意味するものではありません(もちろん、介護医療院の新設も見込まれている)。

なお、介護療養型医療施設については2023年度末(2024年3月)で「廃止」が決まっていますが、今回の集計では「2023年度末に1万人分」が存続するという数値も出ています。介護療養型医療施設の廃止とは、「当該病床に入所しても、介護保険給付を受けられない」ことを意味します(全額自費となる)。入所者およびその家族の安心を得るためにも、早急な「介護医療院への移行」などの道を探り、確定することが求められます。

第8期介護保険事業計画におけるサービス量見込み



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