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新専門医制度、循環器内科や呼吸器内科などのサブスぺ領域で「連動研修」認める―医師専門研修部会

2020.3.17.(火)

日本専門医機構が既に認定している23のサブスぺシャリティ領域のうち、次の領域について基本領域との「連動研修」を認める―。

▽「内科基本領域」の研修と▼消化器内科▼循環器内科▼呼吸器内科▼血液内科▼内分泌代謝・糖尿病内科▼脳神経内科▼腎臓内科▼膠原病・リウマチ内科―の各領域との連動研修

▽「外科基本領域」の研修と▼消化器外科▼呼吸器外科▼心臓血管外科▼小児外科▼乳腺外科―の各領域との連動研修

▽「放射線科基本領域」の研修と▼放射線診断▼放射線治療―の各領域との連動研修

3月13日に開催された医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」(以下、専門研修部会)で、こうした点が固められました。

3月13日に開催された、「令和元年度 第4回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会」

サブスぺ領域の在り方・要件などを固め、3類型に区分

従前の専門医制度には、「各学会が独自に養成を行っており、質が担保されているか不明確である」「学会・専門医が乱立し、国民に分かりにくくなっている」との批判が多くありました。そこで2018年度から、各学会と日本専門医機構が協働して養成プログラムを作成し、統一的な基準で認定する「新専門医制度」へと改められています。

新専門医制度は、「基本領域」(19領域)と「サブスペシャリティ領域」の2層構造となっており、「基本領域のみの専門医資格を取得する」ことも、「基本領域とサブスペシャリティ領域の専門医資格を取得する」ことも可能です。すでに2018年度から基本領域の研修がスタートしています。

【基本領域】(1)内科(2)外科(3)小児科(4)産婦人科(5)精神科(6)皮膚科(7)眼科(8)耳鼻咽喉科(9)泌尿器科(10)整形外科(11)脳神経外科(12)形成外科(13)救急科(14)麻酔科(15)放射線科(16)リハビリテーション科(17)病理(18)臨床検査(19)総合診療—の19領域



またサブスペ領域については、基本領域を修了した後に「より細分化した領域の専門知識・技術を身につける」ものとされていますが、例えば基本領域の研修が3年間、サブスぺ領域の研修が3年間であったとすれば、会得した知識・技術を医療現場に還元するまでに6年間がかかってしまい、「時間がかかりすぎるのではないか」とも思われます。

そこで日本専門医機構では、一定の症例について「基本領域での経験症例」と「サブスペシャリティ領域での経験症例」との重複カウントを可能とし、より早期に「基本領域とサブスペシャリティ領域の資格を保有する専門医」を養成する「連動研修」を計画しています。例えば、「内科」の基本領域研修で経験した症例の一部を、サブスぺ領域である「●●内科」の症例ともカウントすることで、サブスぺ領域の研修について質を担保しながら、一定の期間短縮が図れるのではないか、と考えられるのです。

この点、機構では「国民に分かりやすいこと」「すでに専門研修が実施されてきており、有用性などが確立されている」などの観点で23のサブスぺ領域を独自認定し、連動研修を実施する仕組みを固めていました。

しかし、この連動研修には次のように「医師の地域偏在を助長してしまう可能性がある」ことが分かりました。

▽「地域医療の確保」のため、基本領域について、例えば「基幹病院のみで完結させない」などの配慮・工夫が凝らしており、例えば内科において「A病院・B病院・C病院を循環する」という研修プログラムが組まれていたとする

▽サブスペ領域との連動研修となった場合、「B病院には当該サブスペシャリティ領域の指導医がいないので、A病院とC病院のみで研修を完結させ、B病院での研修(勤務)を行わない」という事態が生じてしまう可能性がある(B病院の所在する地域において医師確保に困難が生じかねない)



また、サブスぺ領域の認定そのものについて「乱立すれば、旧専門医制度と同様に『国民に分かりにくい仕組み』となってしまう。サブスぺ領域の認定基準を明確に定めておくべき」との指摘も強く、専門研修部会では機構・学会の関係者も交えた下部組織(サブスペシャルティ領域の在り方に関するワーキンググループ)を設置し、「サブスぺ領域の在り方」「認定基準の考え方」などを検討(関連記事はこちら)。ワーキンググループでは、サブスぺ領域には次の3類型が考えられるとし、上記のような弊害を解消するために「基本領域との連動研修が可能なサブスぺ領域は(1)に限る」との考えをまとめました。

(1)連動研修を行い得る領域
【要件】▼初診患者の受療行動を適正化し得る▼主に2次医療圏から3次医療圏単位で必要である▼多数の大学における講座の分類に近似している▼一般的な診療を行う上である程度幅広い疾患に対応でき、活躍しうる専門性がある―

[具体化]▼全都道府県で研修が行える体制が整備されている▼一定割合以上の医療機関で標榜されていること▼基本領域の研修中に多くの症例を経験できる▼実態として専攻医がはじめに取得するサブスペシャルティ領域である―「基本領域をある程度のボリュームを持った領域に細分化した領域」とする

(2)連動研修を行わない領域
【要件】▼症状が遷延する場合や、診断後により高い専門性が必要な治療を患者が求めた場合に受診の参考となる▼主に3次医療圏単位で必要である▼大学に講座はないことが多いが、多くの大学で十分な教育が可能である▼基本領域および連動研修を行い得る領域の能力向上に資する―

[具体化]▼実態として基本領域の修了後に研修が行われている領域▼複数の基本領域または連動研修を行い得る領域を横断する領域―などが想定される

(3)少なくとも1つのサブスペ領域を修得した後に研修を行う領域
【要件】▼難治疾患患者の受診や、医師が高次医療機関に紹介するに当たり有用である▼連動研修を行い得る領域との連携を踏まえ、地域医療提供体制に貢献する▼技術認定または、特定の疾患対策や特定の領域の発展に資する▼修得済みのサブスペ領域の能力向上に資する―

[具体化]▼技術認定▼特定の疾患対策を担う領域―などが想定される。 ○ それ以前の研修中に当該領域に相当する 症例を経験することを妨げるものではない

サブスぺ領域の区分と要件(医師専門研修部会1 200313)

機構認定の23サブスぺ領域を3区分に当てはめ、一部について連動研修を認める

さらにワーキングでは、既に日本専門医機構が独自認定した23のサブスぺ領域を上記3類型に当てはめ、次のような考え方を示しています。一部を集約し、相当部分について連動研修を認める格好です。

▽▼消化器内科(機構認定の消化器病・肝臓・消化器内視鏡を統合)▼循環器内科▼呼吸器内科▼血液内科▼内分泌代謝・糖尿病内科▼脳神経内科▼腎臓内科▼膠原病・リウマチ内科―の各領域を(1)に分類し、「内科基本領域」の研修との連動研修を認める

▽▼肝臓内科▼消化器内視鏡―の各領域を(3)に分類し、「消化器内科」サブスぺ領域修得後に研修を行うものとする

▽▼アレルギー▼感染症▼老年科▼腫瘍内科(機構認定ではがん薬物療法)―の各領域を(2)に分類し、内科および他の基本領域を修了後に研修を行うものとする

機構認定23サブスぺ領域の整備その1(医師専門研修部会2 200313)



▽▼消化器外科▼呼吸器外科▼心臓血管外科▼小児外科▼乳腺外科―の各領域を(1)に分類し、「外科基本領域」の研修との連動研修を認める

▽▼内分泌外科―の領域を(2)に分類し、外科および他の基本領域を修了後に研修を行うものとする

▽▼放射線診断▼放射線治療―の各領域を(1)に分類し、「放射線科基本領域」の研修との連動研修を認める

機構認定23サブスぺ領域の整備その2(医師専門研修部会3 200313)



このうち「内分泌外科」に関しては、(1)のうち「全都道府県で研修が行える体制が整備されている」などの要件を満たさない(現時点では5県で研修実施が不可能)ことなどから連動研修は「認めない」との結論に至ったものです。

この3類型は、既に日本専門医機構が認定している23のサブスぺ領域はもちろん、今後、認定される見込みのサブスぺ領域(約90領域)にも適用されます。

こうした考え方に対し、立谷秀清委員(全国市長会会長、福島県相馬市長)から「甲状腺がんのサブスぺ領域を認めてほしい」などの要望が一部出ましたが、原案通り認められています(サブスぺ領域は上述のとおり、地域医療確保に大きな影響を及ぼすテーマであり「地方医療対策協議会の意見を踏まえ、日本専門医機構や関係学会に対し、厚生労働大臣が意見を述べる」ことになっており、その意見の中で「上記の(1)(2)(3)の区分等を行う」旨が示されている)。

もっとも、この考えは未来永劫続くものではありません。今後、日本専門医機構で定める「サブスぺ領域に係る細則」は「少なくとも5年に一度(当初は3年に一度)見直しを行う」ことを明確にしています。



今後、日本専門医機構で「サブスぺに係る細則」と「新専門医制度の整備指針」(サブスペに関する規定を指針から細則に移行する)の見直しを行い、それを専門研修部会に報告することになります。

連動研修可能領域は過去に遡及して「経験症例」としてカウント

なお、日本専門医機構が独自に認定した23サブスぺ領域は「連動研修を前提とし、2019年度から連動研修をスタートする」という考えに立っていました。すると「連動研修が正式に認められるまでの間に経験した症例はどう扱われるのか」「連動研修が認められなかった領域についてはどういう扱いとなるのか」という疑問が生じます。

この点、前者については日本専門医機構・関係学会では「専攻医に不利益が及ばないよう、既に経験した症例について、2019年4月に遡及して『連動研修の経験症例』としてカウントする」取り扱いとする考えであることが、3月16日の定例記者会見で日本専門医機構の寺本民生理事長から明確にされました。

また後者については、連動研修が認められないため「2019年4月に遡って経験症例としてカウントされる」ことはありませんが、寺本・日本専門医機構理事長は「基本領域と重複する部分もあり、3年間まるまる研修する必要まではなく、2年・1年の研修で良しとできる部分もある」との考えを提示。今後、具体的な研修プログラムが定められ、早期にサブスぺ資格を取得できる仕組みが明確となることでしょう。



なお、専門研修部会では、▼基本領域の専攻医採用における「連携プログラム」(シーリングの一部を地方で一定期間勤務するプログラムとする)について、日本専門医機構が連携先を紹介する仕組みを設ける▼基本領域の専攻医定員について、「医師少数区域等での勤務」を盛り込んだ研修プログラムから優先配分する―などの仕組みを了承しています。2021年4月からスタートする基本領域の研修プログラムに織り込まれることになるでしょう。



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