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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

新専門医シーリング、我が国の医学研究力を維持・向上するため「教育・研究」実態も勘案せよ―日本学術会議

2020.1.16.(木)

新専門医取得を目指す専攻医について、厚生労働省の都道府県別・診療科別必要医師数をベースとした「採用数上限」(シーリング)が設けられているが、ここには「教育・研究」が勘案されていない。我が国の医学研究力を維持・向上するために、「教育・研究」実態を十分に勘案・反映した仕組みとする必要がある―。

日本学術会議の「臨床医学委員会」は1月15日に、こうした内容を盛り込んだ「専攻医募集シーリングによる研究力低下に関する緊急提言」を行いました(学術会議のサイトはこちら)。

我が国の基礎医学研究力は、確実に低下傾向にある

従前の各学会が独自に養成する専門医制度には「国民に分かりにくくなっている」「質が担保されているか不明確である」との批判が多く、2018年度から、各学会と日本専門医機構が協働して養成プログラムを作成し、統一的な基準で認定する「新専門医制度」へと改められました。

ただし、「専門医の質を追求するあまり専門医養成施設の要件が厳しくなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されてしまうのではないか」との声が医療現場にあり、▼日本専門医機構▼学会▼都道府県▼厚生労働省―が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」仕組みを構築・運用することとなっています。その一環として「地域・基本領域ごとの専攻医採用数に上限を設ける」仕組み(シーリング)が設けられています。

シーリングの仕組みは非常に複雑ですが、厚生労働省の試算した「都道府県別・診療科別の必要医師数」をベースに、▼既に必要医師数を確保できていると考えられる都道府県・診療科ではシーリング(採用数に上限)を設ける▼採用数の一部を「他の都道府県での研修」に充てるプログラム(連携プログラム)とする―というものです(関連記事はこちらこちら)。



臨床医学委員会は、「日本の医療制度の将来を見据えた安定的持続のために、適正に医療資源を配分すること」そのものには理解を示すものの、現在のシーリング制度には大きな問題点があると指摘します。

具体的には、シーリングのベースとなる「都道府県別・診療科別の必要医師数」は、医師の診療行為のみが勘案され、「教育・研究行為」がまったく勘案されていないという点です。とくに大学病院では、医師は臨床に従事するのみでなく「学生の教育」や「研究」に多くの時間従事しています。一般病院においても「研究」に一定の時間を割く医師が少なくないことは述べるまでもありません。

このため臨床医学委員会は、▼大学を始めとする医育機関で教育や研究に従事する若手医師数が制限され、「生命科学分野の研究力」が大幅に低下する▼医育機関から周辺地域の基幹病院への指導医・専攻医派遣で地域医療を支えており、医育機関の人員減少は教育・研究分野のマンパワー減少をもたらす▼基礎医学教室に大学院等学生として出向している臨床医が一定数おり、医育機関での専攻医採用制限は基礎医学教室の研究者数の大幅な減少につながり、臨床医学のみならず基礎医学における研究力に対しても重大な負の影響をもたらす―という大きな弊害があることを強調。

我が国における基礎医学研究力の低下については、例えば▼医学部卒業者の中で、基礎医学研究に従事する卒業生数は2000年前後から各大学で大幅に減少している▼臨床系トップジャーナルにおける日本発論文数のシェアはこの15年間、先進国の中で唯一「毎年確実に低下傾向」を示している―というデータを提示しています。

我が国の医学研究力は低下傾向にある(日本学術会議提言 200115)



また、2004年度から導入された新たな初期臨床研修制度(診療に従事する医師は、2年以上の臨床研修を受けなければならない)によって「大学病院の臨床講座に所属する医師、基礎医学に進む医師の減少に拍車がかかり、日本の医学研究力低下の深刻な低下を招く要因となり、医学研究力低下は、15年以上経過しても是正されていない」とし、「医学研究力を低下させる同じ轍を踏んではならない」とも指摘。



このため臨床医学委員会では、▼必要医師数の算定は、診療だけでなく、研究・教育の正確な実態を把握し、そのデータに基づくものとする▼科学技術立国である我が国において、「将来へインパクトを与える研究力」と「次世代を育成する教育力」を維持するために必要な人材を確保する―こととし、次世代を担う専門医を育成する上で「研究・教育の視点を重視した専門医育成制度を構築する」ことを強く提言しています。

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