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新専門医、2021年度採用の専攻医数シーリング案を日本専門医機構固める―医師専門研修部会

2020.4.13.(月)

来年度(2021年度)から新専門医資格の取得を目指す専攻医について、都道府県別・診療科別の採用数上限(シーリング)を、今年度(2020年度)と同様に厚生労働省の「都道府県別・診療科別の必要医師数」をベースに設定する。その際、今年度(2020年度)に浮上した課題について解消を目指す(見直しを行う)こととしてはどうか―。

4月10日に、新型コロナウイルス感染防止のために持ち回り開催された医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」(以下、専門研修部会)に、こうした報告が行われました。

今後、各都道府県にこの内容と専門研修部会委員の意見が伝えられ、医療関係者や地域住民、関係市町村等で構成される地域医療対策協議会の意見等を踏まえ、7月(2020年7月)の専門研修部会での決定・了承を待つことになります(当然、修正が求められる可能性もある)。2021年度の専攻医募集は今秋(2020年秋)から開始される見込みです。

2021年度専攻医採用スケジュール案(医師専門研修部会2 200410)

最新データや運用上の課題を踏まえ、必要医師数・シーリング数を見直し

従前の専門医制度は、各学会が独自の基準で専門医資格を規定していたため、「国民に分かりにくくなっている」「質が担保されているか不明確である」との強い批判がありました。そこで、2018年度からは、各学会と日本専門医機構が協働して養成プログラムを作成し、統一的な基準で専門医を認定する「新専門医制度」へと改められたのです。

ただし、「専門医の質を追求するあまり専門医養成施設の要件が厳しくなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されてしまうのではないか」との声が医療現場にあり、▼日本専門医機構▼学会▼都道府県▼厚生労働省―が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」仕組みを構築・運用することとなっています。その一環として「地域・基本領域ごとの専攻医採用数に上限を設ける」仕組み(シーリング)が設けられています。

シーリングの仕組みは非常に複雑ですが、厚生労働省の試算した「都道府県別・診療科別の必要医師数」をベースに、▼既に必要医師数を確保できていると考えられる都道府県・診療科ではシーリング(採用数に上限)を設ける▼採用数の一部を「他の都道府県での研修」に充てるプログラム(連携プログラム)とする―というものです。

2020年度から、このシーリングシステムが導入されていますが、一部学会などからベースとなる「都道府県別・診療科別の必要医師数」に対して、▼医療現場の肌感覚に必ずしもマッチしていない部分もある▼研究医等養成の視点が十分でない―との指摘もあります。そこで、日本専門医機構・関係学会・厚労省・自治体の四者で意見交換を進め、今般、「都道府県別・診療科別の必要医師数」と「シーリング」について修正案を厚労省・日本専門医機構がまとめまたものです。主な修正内容は次のような点です(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

【都道府県別・診療科別の必要医師数】
▽基礎データについて最新のものに更新する(例えば、患者調査を従前の2014年調査結果から2017年調査結果に更新)

▽医療ニーズ(患者数)について入院需要と外来需要とで分けて算出する

▽小児科のニーズ(患者数)について、従前「主たる診療科別推計患者数」を用いて試算していたが、2021年度は「15歳未満人口の全国推計患者数」を用いる

▽麻酔科のニーズ(患者数)について、従前「外科」をターゲットに据えていたが、2021年度は「手術を行う全診療科」をターゲットに据える

▽精神科の入院ニーズ(患者数)について新たに「精神科疾病別推計入院患者数」(630調査結果)を用いる(外来ニーズは従前どおり「精神および行動の障害」の推計患者数を用いる)



【シーリング】
▽2020年度には「過去2年分の平均採用数」を採用上限数のベースに用いていたが、2021年度には「過去3年分の平均採用数」を用いる(2018・19・20年度の3か年分の採用実績があるため)

▽他都道府県との連携プログラム(研修期間の半分を他の地域での研修に携わる新専門医要請プログラム)のベースとなる「充足率」(厚労省の試算した必要医師数に対し、実際にどの程度の医師が配置されているか)について、▼泌尿器科(2020年度よりも充足率が高いと判断)▼小児科(同)▼放射線科(同)―と判断する

▽従前に比べて2020年度の採用数が大幅に「減少」してしまった都道府県別診療科(例えば東京都の皮膚科など)があることから、「採用数上限」の考え方を一部見直す(過去3年平均と2020年度実績とで大きな方とする)

▽従前と比べて2020年度の採用数が大きく減少した診療科(主に皮膚科と麻酔科)について、シーリング数の下限を設ける(2020年度の95%とし、それに満たない場合には連携プログラム枠として95%まで増やす)

▽連携プログラムについて、従前「研修期間の半分を他地域で研修する」こととしていたが、研修期間が長い診療科(皮膚科等)もある(半分とすると2年以上、他地域での研修が必要となり、連携プログラムの応募数が激減してしまう)ことから、全診療科共通で「1年6か月を他地域で研修する」こととする

▽2020年度の連携プログラムによって「充足率が向上した」都道府県があり、従前のルールであれば「2021年度は連携先対象から外れる」こととなる。しかし、充足率向上は一時的なものと考えられ、そこに2021年度にも専攻医を一定期間、派遣できるように「連携先都道府県のルール」を見直す

▽精神科について「精神保健指定医」の連携枠を設ける(「専攻医は多いが精神保健指定医は少ない」という地域での連携プログラムを可能とする)

2021年度シーリングの見直し概要1(医師専門研修部会3 200410)

2021年度シーリングの見直し概要2(医師専門研修部会4 200410)

秋田県の精神科など、2021年度に初めてシーリングがかかる案が浮上

日本専門医機構は、こうした見直し案に基づいて具体的なシーリングの数値も発表しています。

例えば、東京都の皮膚科を見ると、過去の採用実績が▼2018年度:88名▼2019年度:86名▼2020年度:63名―と2020年度に激減しています。厚生労働省医政局医事課の担当者は持ち回り開催後の記者会見で「2020年度には、東京都の皮膚科領域において、連携プログラムからのマッチングを開始したが、応募数が少なかったようで。2018・19年度に比べて激減してしまった(18・19年度の平均に比べて24名・27.6%減)」ことを紹介。ここで、従前からのルールである「シーリング数(採用数上限)が20名超の場合には、2020年度の採用実績を2021年度の上限とする」を適用すれば、東京都の皮膚科では「採用数が少ないまま」(2021年度の上限数が63名)となってしまいます。

そこで、上述の「過去3年平均と2020年度実績とで大きな方とするルール」によって上限を79名(従前ルールでは63名)とし、また「下限95%ルール」によって下限を72名(76名(2020年度のシーリング)×0.95)とし、結果、2021年度のシーリングを「72名」に設定しています。

東京都・皮膚科を例にとって2021年度のシーリングを見てみると・・・(医師専門研修部会5 200410)



●2021年度シーリング案(厚労省のサイトはこちら(医師専門研修部会の資料)

【内科】
▽東京都:通常プログラム398名+連携プログラム123名 → 2021年度は合計521名が上限(2020年度採用実績数よりも8名増)
▽京都府:通常62名+連携18名 → 2021年度は合計80名が上限(同5名増)
▽大阪府:通常200名+連携10名 → 2021年度は合計210名が上限(同8名増)
▽和歌山県:通常20名+連携3名 → 2021年度は合計23名が上限(同2名増)
▽鳥取県:通常15名+連携1名 → 2021年度は合計16名が上限(同1名増)
▽岡山県:通常55名+連携7名 → 2021年度は合計62名が上限(同3名増)
▽徳島県:通常16名+連携4名 → 2021年度は合計20名が上限(同8名増)
▽福岡県:通常118名+連携29名 → 2021年度は合計147名が上限(同6名増)
▽長崎県:通常33名+連携4名 → 2021年度は合計37名が上限(同9名増)
▽熊本県:通常33名+連携0名 → 2021年度は合計33名が上限(同1名減)

【小児科】
▽東京都:通常98名+連携19名 → 2021年度は合計117名が上限(同6名減)
▽滋賀県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計7名が上限(同1名増)
▽京都府:通常9名+連携0名 → 2021年度は合計9名が上限(同増減なし)
▽鳥取県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計7名が上限(同4名増)
▽岡山県:通常14名+連携0名 → 2021年度は合計14名が上限(同9名増)
▽香川県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計7名が上限(同6名増)
▽長崎県:通常9名+連携0名 → 2021年度は合計9名が上限(同6名増)
▽大分県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計7名が上限(同5名増)

【皮膚科】
▽東京都:通常54名+連携18名 → 2021年度は合計72名が上限(同9名増)
▽神奈川県:通常14名+連携1名 → 2021年度は合計15名が上限(同2名減)
▽京都府:通常8名+連携2名 → 2021年度は合計10名が上限(同増減なし)
▽兵庫県:通常13名+連携0名 → 2021年度は合計13名が上限(同7名増)
▽福岡県:通常11名+連携1名 → 2021年度は合計12名が上限(同1名減)

【精神科】
▽秋田県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計7名が上限(同増減なし)
▽東京都:通常74名+連携12名 → 2021年度は合計86名が上限(精神科指定医連携枠を5名分設定)(同5名減)
▽石川県:通常9名+連携0名 → 2021年度は合計9名が上限(同増減なし)
▽島根県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同増減なし)
▽岡山県:通常10名+連携1名 → 2021年度は合計11名が上限(同増減なし)
▽高知県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同4名増)
▽福岡県:通常17名+連携5名 → 2021年度は合計22名が上限(精神科指定医連携枠を5名分設定)(同1名減)
▽佐賀県:通常8名+連携0名 → 2021年度は合計8名が上限(同増減なし)
▽熊本県:通常11名+連携0名 → 2021年度は合計11名が上限(同7名増)
▽沖縄県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計7名が上限(同増減なし)

【整形外科】
▽東京都:通常104名+連携13名 → 2021年度は合計117名が上限(同7名減)
▽石川県:通常10名+連携0名 → 2021年度は合計10名が上限(同増減なし)
▽京都府:通常16名+連携1名 → 2021年度は合計17名が上限(同増減なし)
▽大阪府:通常41名+連携2名 → 2021年度は合計43名が上限(同9名減)
▽和歌山県:通常9名+連携0名 → 2021年度は合計9名が上限(同1名減)
▽香川県:通常8名+連携0名 → 2021年度は合計8名が上限(同7名増)
▽福岡県:通常33名+連携10名 → 2021年度は合計43名が上限(同1名増)
▽長崎県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計117名が上限(同3名増)
▽熊本県:通常8名+連携0名 → 2021年度は合計117名が上限(同増減なし)

【眼科】
▽東京都:通常52名+連携16名 → 2021年度は合計68名が上限(同1名増)
▽京都府:通常14名+連携3名 → 2021年度は合計17名が上限(同増減なし)
▽大阪府:通常22名+連携4名 → 2021年度は合計26名が上限(同増減なし)
▽兵庫県:通常12名+連携1名 → 2021年度は合計13名が上限(同1名減)
▽福岡県:通常11名+連携0名 → 2021年度は合計11名が上限(同5名減)

【耳鼻咽喉科】
▽東京都:通常44名+連携11名 → 2021年度は合計55名が上限(同1名増)
▽愛知県:通常16名+連携1名 → 2021年度は合計17名が上限(同5名減)
▽京都府:通常8名+連携2名 → 2021年度は合計10名が上限(同増減なし)
▽大阪府:通常17名+連携2名 → 2021年度は合計19名が上限(同1名減)
▽兵庫県:通常14名+連携0名 → 2021年度は合計14名が上限(同1名増)
▽奈良県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計7名が上限(同7名増)
▽和歌山県:通常8名+連携0名 → 2021年度は合計8名が上限(同増減なし)
▽岡山県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計7名が上限(同3名増)
▽広島県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同3名増)
▽愛媛県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計7名が上限(同4名増)

【泌尿器科】
▽滋賀県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同1名増)
▽京都府:通常19名+連携0名 → 2021年度は合計19名が上限(同6名増)
▽大阪府:通常18名+連携1名 → 2021年度は合計19名が上限(同1名増)
▽愛媛県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同3名増)
▽熊本県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同増減なし)

【脳神経外科】
▽東京都:通常41名+連携7名 → 2021年度は合計48名が上限(同2名増)

【放射線科】
▽東京都:通常36名+連携7名 → 2021年度は合計43名が上限(同1名減)
▽石川県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同6名増)
▽京都府:通常14名+連携0名 → 2021年度は合計14名が上限(同4名増)
▽大阪府:通常14名+連携3名 → 2021年度は合計17名が上限(同1名増)
▽奈良県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同増減なし)
▽和歌山県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同3名増)
▽岡山県:通常9名+連携0名 → 2021年度は合計9名が上限(同4名減)
▽福岡県:通常15名+連携0名 → 2021年度は合計15名が上限(同2名増)

【麻酔科】
▽北海道:通常20名+連携3名 → 2021年度は合計23名が上限(同増減なし)
▽東京都:通常75名+連携15名 → 2021年度は合計90名が上限(同11名増)
▽京都府:通常11名+連携2名 → 2021年度は合計13名が上限(同2名増)
▽大阪府:通常30名+連携2名 → 2021年度は合計32名が上限(同増減なし)
▽岡山県:通常14名+連携3名 → 2021年度は合計17名が上限(同6名増)
▽徳島県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同6名増)
▽福岡県:通常20名+連携4名 → 2021年度は合計24名が上限(同7名増)
▽佐賀県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同5名増)
▽長崎県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同増減なし)
▽熊本県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同1名増)
▽沖縄県:通常8名+連携0名 → 2021年度は合計8名が上限(同6名増)

【形成外科】
▽東京都:通常30名+連携10名 → 2021年度は合計40名が上限(同2名減)
▽石川県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同増減なし)
▽大阪府:通常15名+連携2名 → 2021年度は合計17名が上限(同増減なし)
▽兵庫県:通常13名+連携0名 → 2021年度は合計13名が上限(同増減なし)
▽岡山県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計7名が上限(同増減なし)
▽福岡県:通常7名+連携0名 → 2021年度は合計7名が上限(同増減なし)

【リハビリテーション科】
▽東京都:通常16名+連携4名 → 2021年度は合計20名が上限(同増減なし)
▽和歌山県:通常6名+連携0名 → 2021年度は合計6名が上限(同増減なし)



なお、▼外科▼産婦人科▼病理▼臨床検査▼総合診療科―については、従前より「各都道府県とも医師が不足している」などの理由でシーリングは設けられていません。

2020年度から「ブロック単位連携プログラム」稼働、東北地方などの医師偏在解消目指す

ところで、「連携プログラム」とは上述のとおり、一定期間(2021年度は1年6か月)について他の地域(医師が多数ではない地域)での診療に従事するものです。例えば、東京都の内科枠で採用される医師は、2021年度には最多で521名となり、うち123名は「東京都以外の他の道府県で1年6か月間の診療に従事する」ことが求められます。

これにより「医師偏在の解消」につなげる狙いがあり、とりわけ医師が少数である東北地方での医師不足解消に期待が寄せられました。しかし、2020年度の状況を見ると、近隣の埼玉県や千葉県も「医師が多数ではない」ことから、そうした近隣県と連携したプログラムが目立ち、制度創設時に期待した「東北地方等での勤務」は思うようには増えませんでした。

そこで厚労省は「都道府県単位でなく、地域ブロック別(北海道ブロック、東北ブロック、関東ブロック、北陸ブロック、東海ブロック、近畿ブロック、中国ブロック、四国ブロック、吸収ブロック、沖縄ブロック)に医師の充足率を見て、連携プログラムについては医師が多数でないブロックでの一定期間(1年6か月)勤務を求める」こととしてはどうか、都の検討を進めています。

例えば、関東ブロックには「医師の充足率が0.8以下(医師の充足度合いが低い)の診療科が存在しない」ことから、上述の東京都・内科では、医師の充足度合いが低い東北ブロックなどと積極的に連携することが期待されるのです。

地域ブロックごとに医師偏在状況を見て、連携プログラムを構築していってはどうか(医師専門研修部会1 200410)



もっとも、遠方地域に存在する病院と連携するプログラムの作成には相当の苦労が必要であり、導入は「2022年度に採用される専攻医」からとなる見込みです。厚労省医政局医事課の担当者は「時間をかけてしっかりと連携先を見つけ、適切な連携プログラムを構築してほしい」との考えを持ち回り開催後の記者会見で強調しています。


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