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【2024年度介護報酬改定4】3種類の処遇改善加算を新たな【介護職員等処遇改善加算】に一本化、訪問介護では加算率を2.1%引き上げ

2024.1.22.(月)

1月22日に開催された社会保障審議会で、2024年度介護報酬改定内容が了承されました。近々にパブリックコメントを募集し(1か月程度)、その結果も踏まえて告示公布・関連通知等発出がなされます。

●新単位数表などはこちら
●改定内容の全体像はこちら
●改定内容の概要はこちら



改定内容は膨大なため、何回かに分けて見ていきます。本稿では「介護職員等の処遇改善加算」に焦点を合わせます。

▽訪問看護に関する記事はこちら
▽居宅介護支援(ケアマネジメント)に関する記事はこちら
▽答申に向けた介護給付費分科会論議に関する記事はこちら

4段階の【介護職員等処遇改善加算】、例えば訪問介護では14.5-24.5%の加算率

少子高齢化が進展する中で「介護提供体制を確保するための介護人材の確保・定着」が非常に大きな課題となっています。介護分野では他産業に比べて賃金・給与が低いとの指摘があり、これまでに次の3つの「介護職員等の処遇改善に向けた加算」が設けられています。

▽介護職員処遇改善加算:2012年度介護報酬改定で、従前の「介護職員処遇改善交付金」を受けて創設され、その後、順次拡充されてきている(関連記事はこちら

▽特定処遇改善加算:2019年度改定で創設、主に勤続年数の長い介護福祉士の処遇改善を目指す(関連記事はこちらこちら

▽介護職員等ベースアップ等支援加算(以下、ベースアップ加算):2021年度改定で創設、基本給などの引き上げを目指す(関連記事はこちら

介護職員等ベースアップ等支援加算を含めた、3つの処遇改善加算の全体像(介護給付費分科会(3) 220228)



これらの加算による「処遇改善効果」は相当程度現れています(関連記事はこちら)。

介護職員等ベースアップ等支援加算などの状況(介護事業経営調査委員会1 230616)



ただし現場からは「事務作業が煩雑である」「3つの加算を一本化してほしい」「全産業平均と比べてまだまだ介護職員の給与は低い」「賃金増だけでなく『職場環境改善』にもさらに力を入れるべき」などの声が出ており、3つの加算を一本化する方針が固められました。

さらに昨年(2023年)12月20日の武見敬三厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣の折衝によって、「1.59%のプラス改定を行い、このうち0.98%は「介護職員等の処遇改善」に充てられ、残り0.61%が「実質的な本体プラス」部分となる。なお、この0.61%の中で「看護職員やケアマネジャーなどの処遇改善」対応を行うなどの方針も固めています。

こうした方針に沿った【処遇改善加算】などの見直しの全体像が明確にされています。

まず、現行の3加算を一本化した、新たな【介護職員等処遇改善加算】について見てみましょう。次の4段階に設定され、新加算I>新加算II>新加算III>新加算IVという具合に、加算率と要件に傾斜が設けられます(新加算IVが最も高い加算率だが要件が厳しい、新加算Iが最も要件が緩やかだが加算率は低め)。

【新加算I】(例えば訪問介護では加算率24.5%(現在の3加算合計22.4%よりも2.1ポイントの加算率アップ)、1か月の総請求単位数に上乗せする(以下同))
→下記の(新加算II-IV)の要件に加えて、「経験技能のある介護職員を事業所内で一定割合(例えば訪問介護では介護福祉士30%以上)以上配置する」ことを求める

【新加算II】(同じく訪問介護では22.4%加算率(現在の3加算合計20.3%よりも2.1ポイントの加算率アップ))
→下記の(新加算III、IV)の要件に加えて、「改善後の賃金年額440万円以上であるスタッフが1人以上」「職場環境の更なる改善、見える化」を求める

【新加算III】(同じく訪問介護では加算率18.2%(現在の3加算合計16.1%よりも2.1ポイントの加算率アップ))
下記の(新加算IV)の要件に加えて、「資格や勤続年数等に応じた昇給の仕組みの整備」を求める

【新加算IV】(同じく訪問介護では加算率14.5%(現在の3加算合計12.4%よりも2.1ポイントの加算率アップ))
「新加算IVとして得た収益の2分の1(1か月の総請求単位数×6.2%)を月額賃金で配分する」「職場環境を改善する(職場環境等要件)」「賃金体系等の整備、研修の実施」などを求める



新加算の加算率は、現行の3加算の「該当するもの」の加算率合計値+αで設定されています。

たとえば訪問介護を見ると、現行の3加算の最上位(処遇改善加算I:13.7%、特定処遇改善加算I:6.3%、ベースアップ等支援加算:2.4%)を併せて取得する事業所では「22.4%」の加算率となっています。

ここに新たな【介護職員等処遇改善加算】では「2.1%」を上乗せし、最上位では「25.4%」の加算率が設定されました。

なお、下表のとおりサービスごとに加算率は異なります(加算率はサービス毎の介護 職員の常勤換算職員数に基づき設定されている)。

処遇改善加算見直し概要1(社保審・介護給付費分科会(3)3 240122)

新たな【介護職員等処遇改善加算】への一本化+加算率アップは「2024年6月」から施行

ところで、新加算(介護職員等処遇改善加算への一本化+加算率アップ)は「本年(2024年)6月1日からの施行」となります。したがって、本年(2024年)4月・5月については「現在の3つの加算(加算率も現行どおり)」を算定しなければならない点に留意が必要です。

ただし、後述する「事業所内で加算財源について、柔軟な職種間配分を認める」改定内容は「本年(2024年)4月1日から施行」されます。

少し複雑になりますが、次のように整理できるでしょう。

【本年(2024年)4月・5月】
▽現行の3加算(処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算)算定する(加算率も現行どおり)
▽ただし、加算財源の「事業所内での柔軟な職種間配分」を可能とする

【本年(2024年)6月以降】
▽新加算(介護職員等処遇改善加算、高い加算率)を算定する



なお、「2024年度末(2025年3月31日)までは、現行の3加算の取得状況に基づく加算率を維持した上で、今般の改定による加算率の引上げを受けられる」との経過措置・激変緩和措置が設けられます。

例えば、訪問介護事業所で現在「処遇改善加算II(加算率10.0%)・特定処遇改善加算Ⅱ(同4.2%)・ベースアップ加算(同2.4%)を取得している」場合には、現在は「合計16.6%」の加算率が確保されています。

一方、新加算IIを取得するには「昇給の仕組みの整備」が必要となるため、この整備が出来るまでは「新加算IV(加算率14.5%)」の取得しか認められなくなってしまいます。

すると、当該事業所の取り組みは改定前後で変わらないにもかかわらず、加算率が「16.6%→14.5%=マイナス2.1%」となってしまうため、「当該事業所スタッフの給与減が生じる→モチベーションが低下してしまう」可能性が出てきます。このため「1年間の激変緩和措置」を設け、「期間中に要件充足を促す」こととするものです。

詳細は、今後の通知やQ&A等で示されていきます。



また加算の重要要件である「職場環境等要件」については、これまでに▼「生産性向上のための業務改善の取り組み」の細目を充実する▼新加算I・IIでは「カテゴリーごとに2つ以上、生産性向上では3つ以上」取り組む(必須項目も設定)、新加算Ⅲ・Ⅳでは「カテゴリーごとに1つ以上、生産性向上では2つ以上」取り組むことを求める—といった見直し方針が厚生労働省老健局老人保健課の古元重和課長から示されています(関連記事はこちら)。

見直し後の職場環境等要件、2025年度から適用される(社保審・介護給付費分科会(1)4 231130)



これらの詳細も、今後の通知やQ&A等で示されていきます。

「加算収益を事業所で柔軟に配分できる」仕組みへ見直し、2024年4・5月分にも適用

また処遇改善加算については「加算収益の配分ルール」の見直しが行われます。現在は▼処遇改善にかかる加算で得た収益は「全て賃金改善に充てる」こと▼「どの職種に、どの程度の処遇改善を行うか」については一定のルールに従うこと(例えば、ベースアップ加算では「経験・技能のある介護職員>その他の介護職員>その他の職種」という具合に処遇改善を行う)—が求められています。

しかし、新加算(一本化後の【介護職員等処遇改善加算】)では、次のように非常に広範な事業所の裁量が認められることになります。

▽「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することが望ましい」という基本的な考え方は示すが、職種に着目した配分ルールは設けず新加算全体の配分は「事業所内で柔軟に定めて良い」こととする

事業所の実情に合わせて、「どの職種に、どの程度の賃上げを行うか」などを柔軟に考えることができます。

なお、上述のとおり、この「柔軟化」措置は、「本年(2024年)4月・5月の現行加算」にも一足先に適用されます(本年(2024年)4月・5月は、一本化された新加算ではなく、現行の3加算を算定するが、その3加算で得た収益について「事業所内で柔軟に配分する」ことが可能となる)。



もっとも「確実かつ安定的な処遇改善」を目指すために、どのような形で処遇改善を行うかについては、次のようなルールが設けられます。

▽新加算I-IVのいずれでも「新加算IVの加算額の2分の1以上(例えば訪問介護では1か月の総請求単位数の7.2%)を『月額賃金の改善』に充てる

▽これまでベースアップ加算を取得していない事業所が新加算を取得する場合には、ベースアップ加算の要件と揃えて「収入として新たに増加するベースアップ加算相当分の加算額の3分の2以上を月額賃金の改善に充てる」ことを求める(公平性の確保)

▽既にベースアップ加算を取得している事業所が、新加算を取得する場合には新たな陳儀改善は求めない(事業所の負担増回避)

処遇改善加算見直し概要2(社保審・介護給付費分科会(3)4 240122)



例えば訪問介護では「新加算I(24.5%)の取得で、仮に1人当たり平均4万円の加算収益がある場合には、新加算(IV)の2分の1(7.2%)に相当する約1万2000円(4万円÷24.5%×7.2%)を月額賃金アップに充てる」ことになります。

なお、これまでの介護給付費分科会審議で▼「新たに設けられる月額賃金改善要件(新加算IVの2分の1以上を月額賃金に充てる、上述)」の適用は2024年度には猶予する(2025年度から適用)▼「ベースアップ加算相当の3分の2以上の新たな賃金改善(上述)」、「昇給の仕組みの整備」「賃金体系の整備、研修の実施等」は、2024年度は適用を猶予し、従前の加算率を維持できることとする—などの経過措置案も示されており、これらの詳細も今後の通知やQ&A等で示されていきます。



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