Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

新専門医制度の採用枠、新たに診療科別・都道府県別の必要医師数をベースに考えてはどうか―医師専門研修部会(2)

2019.3.25.(月)

 新専門医制度においては、都道府県別・診療科(領域)別に見て、「現在の医師数」が「必要医師数」を上回っている、あるいは同等である場合に、専攻医の定員上限(シーリング)を設定することとしてはどうか。また、シーリング対象の領域では、研修期間の50%以上を「医師少数地域の医療機関で研修(勤務)する」といった新たな連携プログラムを設けることを求めてはどうか―。

 3月22日に開催された医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」(以下、専門研修部会)では、こういった点も議論されました。

3月22日に開催された、「平成30年度 第5回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会」

3月22日に開催された、「平成30年度 第5回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会」

 

現在の5都府県(東京・神奈川・愛知・大阪・福岡)のシーリングには明確な根拠なし

 今年度(2018年度)から新専門医制度が全面スタートしています。従前、各学会が独自に行っていた専門医の養成・認定について、学会と日本専門医機構が協働して、統一的な基準で行うことで、「専門医の質の担保」と「国民への分かりやすさ」との両立を目指しています。

 もっとも、「質を追求するあまり、専門医を養成する施設の要件が厳しくなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されてしまうのではないか」との声が医療現場に根強く、日本専門医機構、学会、都道府県、厚生労働省が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」こととしています。例えば、「従前、後期研修施設であった医療機関を、新制度下での連携施設等に組み込む」「東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の5都府県では、基本領域ごとの専攻医採用数に上限(シーリング)を設ける」などの対策が図られています(関連記事はこちら こちらこちら)。

 ただし、現在のシーリングには明確な根拠がありません。現に、愛知県と神奈川県は、厚生労働省が「医師偏在対策」の一環として打ち出した新たな医師偏在指標(人口10万対医師数に、地域の患者動向などを加味した新指標)によれば「医師多数都道府県」に含まれていないにも関わらず、専攻医の採用数にはシーリングがかけられてしまっています(関連記事はこちら)。
医師専門研修部会(2)1 190322
 
 このため厚労省は「シーリング設定方法を早急に見直す必要がある」とし、3月22日の専門研修部会に次のような提案を行いました。

(1)2016年の医師数(仕事量)が、2016年の必要医師数または2024年の必要医師数を上回る、あるいは同等である都道府県・診療科(領域)について、シーリングの対象とする

(2)シーリングの対象となった都道府県・診療科(領域)では、医師少数都道府県の医療機関で、研修期間の50%以上を研修(勤務)する新たな連携プログラムを設けることを必須とする

(3)シーリングの対象となった都道府県・診療科(領域)では、地域貢献率を20%以上とする

 それぞれについて少し詳しく見ていきましょう。

 まず(1)は、根拠のあるシーリング設定を目指すものです。厚労省は3月22日の「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」(詳細は別稿でお伝えします)に、「都道府県別診療科ごとの将来必要な医師数の見通し(暫定)」を示しており、そこから2016年の医師数(仕事量)が、2016年・2024年の必要医師数を上回る、あるいは同等である都道府県・診療科(領域)は次のとおりであることが分かります。これらの都道府県・診療科(領域)がシーリング対象「候補」となります。なお、救急科・総合診療科についてはその役割が別途検討されるためシーリング対象からは除外されます(関連記事はこちら)。

【内科】
▼東京都▼石川県▼京都府▼大阪府▼和歌山県▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼徳島県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼熊本県

【小児科】
▼東京都▼富山県▼石川県▼福井県▼山梨県▼長野県▼滋賀県▼京都府▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼香川県▼愛媛県▼福岡県▼長崎県▼沖縄県

【皮膚科】
▼東京都▼富山県▼石川県▼福井県▼京都府▼大阪府▼奈良県▼和歌山県▼鳥取県▼島根県▼広島県▼徳島県▼香川県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼熊本県

【精神科】
▼北海道▼秋田県▼山形県▼東京都▼石川県▼京都府▼奈良県▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼広島県▼山口県▼徳島県▼香川県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼熊本県▼大分県▼宮崎県▼鹿児島県▼沖縄県

【外科】
▼京都府▼鳥取県▼岡山県▼広島県▼山口県▼徳島県▼愛媛県▼高知県▼福岡県▼長崎県▼大分県

【整形外科】
▼東京都▼石川県▼京都府▼大阪府▼兵庫県▼奈良県▼和歌山県▼鳥取県▼香川県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼熊本県▼宮崎県▼沖縄県

【産婦人科】
▼秋田県▼山形県▼東京都▼福井県▼山梨県▼大阪府▼奈良県▼和歌山県▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼徳島県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼宮崎県▼鹿児島県▼沖縄県

【眼科】
▼東京都▼滋賀県▼京都府▼大阪府▼兵庫県▼奈良県▼和歌山県▼徳島県▼愛媛県▼福岡県

【耳鼻咽喉科】
▼山形県▼東京都▼富山県▼石川県▼福井県▼山梨県▼岐阜県▼京都府▼大阪府▼奈良県▼和歌山県▼鳥取県▼岡山県▼広島県▼山口県▼徳島県▼香川県▼愛媛県▼高知県▼佐賀県▼長崎県

【泌尿器科】
▼青森県▼秋田県▼福井県▼山梨県▼滋賀県▼京都府▼大阪府▼奈良県▼鳥取県▼島根県▼山口県▼徳島県▼香川県▼愛媛県▼高知県▼佐賀県▼熊本県▼大分県▼鹿児島県

【脳神経外科】
▼北海道▼東京都▼大阪府▼和歌山県▼岡山県▼徳島県▼香川県▼高知県▼福岡県▼佐賀県

【放射線科】
▼東京都▼石川県▼福井県▼滋賀県▼京都府▼大阪府▼奈良県▼鳥取県▼岡山県▼山口県▼徳島県▼香川県▼愛媛県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼熊本県▼大分県▼宮崎県▼鹿児島県▼沖縄県

【麻酔科】
▼北海道▼東京都▼富山県▼京都府▼大阪府▼兵庫県▼島根県▼岡山県▼香川県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼熊本県▼大分県▼鹿児島県▼沖縄県

【病理診断】
▼東京都▼石川県▼山梨県▼滋賀県▼京都府▼奈良県▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼香川県▼佐賀県▼大分県▼沖縄県

【臨床検査】
▼青森県▼岩手県▼宮城県▼秋田県▼栃木県▼群馬県▼東京都▼富山県▼福井県▼長野県▼和歌山県▼島根県▼岡山県▼香川県▼愛媛県▼高知県▼長崎県▼沖縄県

【形成外科】
▼東京都▼神奈川県▼石川県▼京都府▼大阪府▼岡山県▼徳島県▼香川県▼高知県▼福岡県▼長崎県▼沖縄県

【リハビリテーション科】
▼宮城県▼秋田県▼東京都▼石川県▼福井県▼山梨県▼滋賀県▼京都府▼大阪府▼奈良県▼和歌山県▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼山口県▼愛媛県▼高知県▼福岡県▼熊本県▼鹿児島県▼沖縄県

●「都道府県別診療科ごとの将来必要な医師数の見通し(暫定)」
 
 例えば、内科・東京都を見ると、必要医師数が2016年に1万2496人、2024年に1万3316人であるのに対し、2016年の医師数(仕事量)が1万5010人おり、シーリングの対象となります。

 具体的に、どの程度の定員上限を設定するのかについて、厚労省は、例えば「2018・2019年度の専攻医平均採用数」から「2024年の必要医師数を達成するための年間養成数と平均採用数との差」の一定割合(例えば20%)を差し引いた数としてはどうか、とも提案しています。

 例えば、内科・東京都では2018年度の専攻医採用数は536人(2018年3月15日時点)であり、これを2018・19年度の平均と仮定します。一方、2024年の必要医師数を達成するための年間養成数について、厚労省は「90人」と推計しています。この差(536-90)の20%(89.2人)を2018・19年度の平均採用数(536人・仮定)から差し引いた「446人、447人」を内科・東京都の定員上限(シーリング)とする計算になります。
医師専門研修部会(2)2 190322
 

シーリング対象の診療科・都道府県は医師少数県などと連携した研修プログラムを

 
 また(2)は、シーリングの対象となった都道府県・診療科(領域)の研修プログラムについて、医師少数県(▼岩手県▼新潟県▼青森県▼福島県▼埼玉県▼茨城県▼秋田県▼山形県▼静岡県▼長野県▼千葉県▼岐阜県▼群馬県▼三重県▼山口県▼宮崎県―の16県、関連記事はこちら)の医療機関を連携先とし、連携先での勤務期間を研修期間全体の50%(通常は3年の研修期間であることから、1年6か月)以上とすることを求めるものです。ただし専攻医全員を対象とするものではなく、厚労省は「例えば、専攻医の10%程度」を対象にすることを提案しています。、
医師専門研修部会(2)3 190322
医師専門研修部会(2)1 190322
 
これが実現すれば、医師多数の地域から医師少数の地域への医師派遣が相当程度進むと考えられます。

 
もっとも、この場合、医師多数でも少数でもない都道府県で医師確保が困難になる可能性もあることから、(3)としてシーリング対象の都道府県・診療科では「地域貢献率20%」という縛りも設けるよう厚労省は提案しています。

「地域貢献率」とは、専攻医全体の延べ研修期間のうち、「どの程度、他の県での研修を行っているか」を見る指標です。東京都で研修する専攻医であっても、他の県の連携施設等で研修する期間があり、「他の県で長く研修する専攻医が多い」ほど地域貢献率は高くなります。

厚労省は地域貢献率の算出に当たり、上記の新たな「連携プログラム」を含めないとしており、つまり「医師少数県以外の県(医師が多数でも少数でもない県)への医師派遣を一定程度推進する」ことが必要となってきます。

整理すると、(2)の新たな「連携プログラム」によって医師少数県への医師派遣を、(3)の地域貢献率設定によって医師多数でも少数でもない県への医師派遣を促すことになります。

 
 厚労省は、2020年4月からの専攻医採用分について、こうした提案をもとにシーリングの仕組みを見直すよう日本専門医機構に要請しました。

これに対し、日本専門医機構の理事長である寺本民生参考人(帝京大学・臨床研究センター長)は「データの提示はありがたい」と述べた上で、「2018年度から新専門医研修を開始した医師が、新専門医資格を取得するまで最低3年程度はかかる。これまでのシーリング(5都府県で設定)の影響を見ながら考える必要がある。2020年4月採用分からの見直しは性急すぎるのではないか」との考えを示しています。

また専門研修部会でも、「新専門医制度の中だけで医師偏在対策は解消できない。あまりシーリング等を厳しくすれば、専攻医から『なぜ私の代から厳しくなるのか』との不満も出る。少し時間をかけて、広範に検討していく必要がある」(釜萢敏構成員:日本医師会常任理事)との指摘も出ており、内容や見直し時期について、さらなる検討が必要な部分も少なからずありそうです。

遠藤久夫座長(国立社会保障・人口問題研究所所長)は、こうした意見も踏まえ、日本専門医機構に「厚労省提案をもとに新たなシーリング設定案を検討する」よう依頼。次回の専門研修部会で、それをベースに議論することになりました。

 
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

内科・外科の連動研修の4月スタート見送り、ただし単位の遡及認定等で専攻医の不利益を回避―医師専門研修部会(1)
消化器内視鏡など23学会・領域のサブスペ認定に理解を求める、専攻医は安心して連動研修実施を―日本専門医機構
消化器内視鏡や老年病、新専門医制度のサブスペシャリティ領域認証に「待った」―医師専門研修部会
新専門医制度、プログラム制の研修にも関わらず2・3年目の勤務地「未定」が散見される―医師専門研修部会
新専門医制度、「シーリングの遵守」「迅速な情報提供」「カリキュラム制の整備」など徹底せよ―医師専門研修部会
新専門医制度、2019年度の専攻医登録を控えて「医師専門研修部会」議論開始

90学会・領域がサブスペシャリティ領域を希望、2019年9月には全体像固まる見込み―日本専門医機構
カリキュラム制での新専門医研修、必要な単位数と経験症例を基本領域学会で設定―日本専門医機構
新専門医制度、サブスペシャリティ領域は事前審査・本審査を経て2019年9月に認証―日本専門医機構
2019年度からの新専門医目指す専攻医の登録は順調、1次登録は11月21日まで―日本専門医機構
新専門医制度、2019年4月から研修始める「専攻医」募集を正式スタート―日本専門医機構
東京都における2019年度の専攻医定員、外科など除き5%削減を決定―日本専門医機構
2019年度新専門医研修、「東京のみ」「東京・神奈川のみ」で完結する研修プログラムの定員を削減―日本専門医機構
2019年度、東京都の専攻医定員数は2018年度から5%削減―日本専門医機構
日本専門医機構、新理事長に帝京大の寺本民生・臨床研究センター長が就任
がん薬物療法専門医、サブスペシャリティ領域として認める―日本専門医機構
2019年度の専攻医登録に向け、大阪や神奈川県の状況、診療科別の状況などを詳細分析―日本専門医機構
東京の専攻医、1年目に207名、2年目に394名、4年目に483名が地方勤務―日本専門医機構
新専門医制度、東京で専攻医多いが、近隣県を広くカバーする見込み―日本専門医機構

新専門医制度によって医師の都市部集中が「増悪」しているのか―医師養成と地域医療検討会
新専門医制度、偏在対策の効果検証せよ―医師養成と地域医療検討会
医学生が指導医の下で行える医行為、医学の進歩など踏まえて2017年度に再整理―医師養成と地域医療検討会

新専門医制度、専門研修中の医師の勤務地を把握できる仕組みに―日本専門医機構
地域医療構想調整会議での議論「加速化」させよ―厚労省・武田医政局長
新専門医制度で医師偏在が助長されている可能性、3県では外科専攻医が1名のみ—全自病
新専門医制度の専攻医採用、大都市部の上限値などの情報公開を―四病協

新専門医制度、東京で専攻医多いが、近隣県を広くカバーする見込み―日本専門医機構
新専門医制度、現時点で医師偏在は助長されていない―日本専門医機構

新専門医制度のサブスペシャリティ領域、国民目線に立ち「抑制的」に認証すべき―四病協

新専門医制度、専攻医の1次登録は10月10から11月15日まで—日本専門医機構
新専門医制度、都道府県協議会・厚労省・検討会で地域医療への影響を監視—医師養成と地域医療検討会
新専門医制度、地域医療への影響を厚労省が確認し、問題あれば対応—塩崎厚労相
2018年度からの新専門医制度に備え、10月から専攻医の仮登録—日本専門医機構
新専門医研修プログラム、都道府県協議会で地域医療を確保する内容となっているか確認―厚労省
専門医機構、地域医療への配慮について「必ず」都道府県協議会の求めに応じよ—厚労省検討会
新整備指針の見直し、総合診療専門医の研修プログラム整備基準を決定—日本専門医機構
専門医整備指針、女性医師に配慮した柔軟な対応などを6月2日の理事会で明記—厚労省検討会
地域医療へ配慮し、国民に分かりやすい専門医制度を目指す—日本専門医機構がQ&A
専門医取得が義務でないことやカリキュラム制の設置、新整備指針の中で対応—日本専門医機構
新専門医制度、整備指針を再度見直し「専門医取得は義務でない」ことなど明記へ―厚労省検討会

新専門医制度、見直しで何が変わったのか、地域医療にどう配慮するのかを分かりやすく示す―日本専門医機構
必要な標準治療を集中的に学ぶため、初の基本領域での研修は「プログラム制」が原則―日本専門医機構
新専門医制度、東京・神奈川・愛知・大阪・福岡では、専攻医上限を過去3年平均に制限―日本専門医機構
専門医制度新整備指針、基本理念に「地域医療への十分な配慮」盛り込む―日本専門医機構
地域医療に配慮した、専門医制度の「新整備指針」案を大筋で了承―日本専門医機構
消化器内科や呼吸器外科など、基本領域とサブスペ領域が連動した研修プログラムに―日本専門医機構
総合診療専門医、2017年度は「日本専門医機構のプログラム」での募集は行わず
新専門医制度、18基本領域について地域医療への配慮状況を9月上旬までにチェック―日本専門医機構
【速報】専門医、来年はできるだけ既存プログラムで運用、新プログラムは2018年目途に一斉スタート―日本専門医機構
新専門医制度、学会が責任もって養成プログラムを作成、機構が各学会をサポート―日本専門医機構
【速報】新専門医制度、7月20日に「検討の場」、25日の総会で一定の方向示す見込み―日本専門医機構
新専門医制度、各学会がそろって同じ土俵に立ってスタートすることが望ましい―日本専門医機構・吉村新理事長
【速報】新専門医制度、日本専門医機構の吉村新理事長「7月中に方向性示す」考え

新専門医制度で地域の医師偏在が進まないよう、専門医機構・都道府県・国の3層構造で調整・是正―専門医の在り方専門委員会
新専門医制度、懸念払しょくに向けて十分な議論が必要―社保審・医療部会

2016年末、人口10万人当たり医師数は240.1人、総合内科専門医が大幅増―医師・歯科医師・薬剤師調査―2014年医師・歯科医師・薬剤師調査

専門研修修了医(certified doctor)と臨床経験を十分に積んだ専門医(specialist)は区別すべき―四病協

2036年の医療ニーズ充足には、毎年、内科2946名、外科1217名等の医師養成が必要―医師需給分科会(3)

最も医師少数の2次医療圏は「北秋田」、最多数は「東京都区中央部」で格差は10.9倍―医師需給分科会(1)