2024年度からの介護保険第1号保険料は6225円、最高は大阪府大阪市の9249円、最低は東京都小笠原村の3374円—厚労省
2024.5.15.(水)
2024-26年度の介護保険第1号保険料は、前期(2021-23年度)に比べて全国平均で3.5%増の「6225円」となった—。
都道府県別にみると最高は大阪府(7486円)、最低は山口県(5568円)、保険者(市区町村)別にみると最高は大阪府大阪市(9249円)、最低は東京都小笠原村(3374円)。最高と最低の格差は都道府県単位では1.34倍、保険者単位で2.74倍となった—。
介護サービス量を全国で見ると、看護小規模多機能型居宅介護や定期巡回・随時対応訪問介護看護などの増加が目立つが、高齢化がさらに進行する2040年度には「いずれのサービスも2桁増の整備」が見込まれている—。
厚生労働省が5月14日に「第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料、およびサービス見込み量等」を公表し、こうした状況を明らかにしました(厚労省サイトはこちら)。
目次
2024-26年度の介護保険第1号保険料は、前期から3.5%増の6225円(全国平均)
介護保険制度では、「3年を1期」とする計画(市町村による介護保険事業計画、都道府県による介護保険事業支援計画)に沿って、サービスの確保や保険料の設定が行われます(3年間のサービス提供量を設定し、それを賄うために必要な3年間の保険料を設定する)。
本年度(2024年度)から新たな介護保険事業(支援)計画(第9期計画)がスタートしており(関連記事はこちらとこちら)、今般、厚労省が第9期(2024-26年度)の保険料やサービス見込み量などを整理・公表しました。
まず65歳以上の第1号被保険者が納める保険料は、第9期には全国平均で月額「6225円」となりました。前期(第8期、21-23年度、以下同)の6014円に比べて、211円・3.5%引き上げられています。
前述のとおり、介護保険料はサービス提供量に大きく依存します。高齢化の進展によって高齢者が増加すれば、介護サービスの量も多く確保する必要があり、結果、保険料も高くなります。
また、2024年度介護報酬改定では「処遇改善のための加算」を充実しており(関連記事はこちらとこちら)、これも保険料に跳ね返ってきます。
介護保険料が第8期→第9期に引き上げられた背景には、こうした点があると考えられます。
介護保険料は次のように推移しており、制度創設当初に比べると24年間で保険料水準は2.14倍に増加しています。なお、介護費は2000年度から21年度にかけて3.0倍に増加しています(関連記事はこちら)。
▼第1期(2000→02年度):2911円
↓
(382円・13.1%増)
↓
▼第2期(03→05年度):3293円
↓
(797円・24.2%増)
↓
▼第3期(06→08年度):4090円
↓
(70円・1.72%増)
↓
▼第4期(09→11年度):4160円
↓
(812円・19.5%増)
↓
▼第5期(12→14年度):4972円
↓
(542円・10.9%増)
↓
▼第6期(15→17年度):5514円
↓
(355円・6.4%増)
↓
▼第7期(18→20年度):5869円
↓
(145円・2.4%増)
↓
▼第8期(21→23年度):6014円
↓
(211円・3.5%増)
↓
▼第9期(24→26年度):6225円
介護保険料の最高は大阪府大阪市、最低は東京都小笠原村で、保険料は2.74倍の開き
第9期の介護保険第1号保険料を都道府県別にみると、最も高いのは大阪府の7486円(前期から9.7%増)、最も低いのは山口県の5568円(前期から2.2%増)で、その格差は2278円・1.34倍となりました。第8期では最高:6826円(大阪府、沖縄県)、最低:5385円(千葉県)で、格差は1441円・1.27倍でしたので、格差が広がっている(837円・0.07ポイント拡大)ことが分かります。
また保険者(市区町村)別にみると、最も高いのは大阪府大阪市の9249円、最も低いのは東京都小笠原村の3374円で、その格差は5875円・2.74倍となりました。
第8期→第9期で、保険料を引き上げた保険者は45.3%、引き下げた保険者は17.5%、据え置きとした保険者は37.2%です。
上述のとおり、介護保険の保険料は、保険者、つまり市町村毎にサービス提供量をもとに設定されます。「より多くの介護サービスを確保するために保険料を高く設定しよう」と考える市町村もあれば、「保険料を抑えるために介護サービスの提供量も抑えよう」と考える市町村もあります。つまり、地域住民の意向が「介護保険料の水準に反映される」と言え、その高低を単純にとらえて「格差が広がっており問題である」などと判断することはできません。
第8期から9期にかけて、看多機や定期巡回・随時対応サービスなどの増加目立つ
また、上述した介護保険料のベースとなるサービス提供量については、全国値で次のような状況が明らかにされています。
▽65歳以上の第1号被保険者の数は、▼2023年度:3588万人→(0.4%増)→▼24年度:3603万人→(0.1%増)→▼25年度:3607万人→(0.03%増)→▼26年度:3608万人—と増加する
▽第1号被保険者の要介護認定者数・率は、▼2023年度:695万人(認定率19.4%)→(0.2ポイント増)→▼24年度:705万人(同19.6%)→(0.3ポイント増)→▼25年度:717万人(同19.9%)→(0.3ポイント増)→▼26年度:729万人(同20.2%)—と増加する
▽サービス提供量の増加が大きなもの(第8期→第9期、第8期→2040年度見込み)
・看護小規模多機能型居宅介護(看多機):49%増、76%増
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護:24%増、46%増
・介護医療院:30%増、48%増
・小規模多機能型居宅介護(小多機):13%増、28%増
・特定施設入居者生活介護:12%増、30%増
▽サービス提供量の増加が小さなもの(同)
・介護老人保健施設:2%増、18%増
・ショートステイ(短期入所生活介護等):4%増、20%増
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):5%増、23%増
・デイサービス(通所介護):7%増、23%増
・ホームヘルプ(訪問介護):8%増、25%増
高齢化の進展に伴い、いずれの介護サービスも第8期(2021-23年度)から2040年度にかけて「2桁の伸び」となっています。当然、介護保険料の水準も引き上げられることになりますが、「介護費増を我々国民の財布で賄えるのか、サービス量・保険料・保険給付範囲の在り方どのように考えていくべきなのか」を真剣に考える必要があります。
【関連記事】
2024年度介護報酬改定、プラス1.59%改定+αで「介護職員処遇改善」を強力推進、訪問看護やケアマネにも配慮—武見厚労相(2)
介護保険利用で「2割負担」となる高齢者、医療と介護の特性、利用控えなどに配慮して政治の場で範囲拡大を決定へ—社保審・介護保険部会
「より高所得の人に、より高い介護保険料を設定。そこで生まれる財源を低所得者の介護保険料軽減に充てる」方針決定—社保審・介護保険部会
介護保険で2割負担となる「一定所得者(上位所得者)の範囲」など、給付と負担の見直し内容を2023年までに固める—社保審・介護保険部会
リハビリ専門職による訪問看護の減算、老人保健施設の初期加算、生産性向上推進体制加算などの考え方をより明確化(2024年度介護報酬改定)
認知症専門ケア加算の「認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の者」割合、利用実人員、利用延人数のいずれで計算してもよい―厚労省
2024年6月から介護職員処遇改善加算見直しで「利用料変更」の可能性ある点を利用者・家族に説明せよ―厚労省
新たな【介護職員等処遇改善加算】、各種要件(キャリアパスIからV、職場環境等)の詳細を明らかに―厚労省
基本報酬引き下げ影響」調査求める声多し—社保審・介護給付費分科会(2)
2024年度介護報酬改定踏まえ高齢者施設・医療機関の連携、リハ・栄養・口腔の一体的取り組み状況など調査―介護給付費分科会・研究委員会
【2024年度介護報酬改定8】介護保険制度の安定性確保のため、「同一建物居住者へのサービス」が著しく多い訪問介護で基本報酬減算を強化
【2024年度介護報酬改定7】リハビリ・口腔管理・栄養管理の一体提供をさらに推進、質の高いリハビリ行う事業所を高く評価
【2024年度介護報酬改定6】医療機関-介護事業所・施設間の連携強化、介護保険施設・居住系施設の医療対応力強化を目指す
【2024年度介護報酬改定5】認知症の行動・心理症状(BPSD)予防にチームで取り組む施設等評価する【認知症チームケア推進加算】新設
【2024年度介護報酬改定4】3種類の処遇改善加算を新たな【介護職員等処遇改善加算】に一本化、訪問介護では加算率を2.1%引き上げ
【2024年度介護報酬改定3】処遇改善加算率の引き上げ等を歓迎する一方で、「訪問介護や定期巡回の基本報酬引き下げ」を懸念する声多数
【2024年度介護報酬改定2】ケアマネの基本単位数や特定事業所加算の単位数引き上げ、利用者数区分の見直し(緩和)も実施
【2024年度介護報酬改定1】訪問看護について「専門性の高い看護師による計画的な管理」や「歯科医療機関との連携」を新加算で評価
2024年度介護報酬改定に向け一足先に「人員配置基準」改正了承、介護施設等と医療機関の「中身ある連携」義務—社保審・介護給付費分科会
II型の介護医療院、療養型・その他型の老健施設で「2025年8月」から月額8000円程度の室料負担—社保審・介護給付費分科会
2024年度介護報酬改定、プラス1.59%改定+αで「介護職員処遇改善」を強力推進、訪問看護やケアマネにも配慮—武見厚労相(2)
2027年度介護報酬改定に向け高齢者施設等・医療機関連携の強化、人員配置基準の柔軟化など継続検討を—社保審・介護給付費分科会(2)
2024年度介護報酬改定、居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハ・通所リハは6月施行、他は4月施行に分断—社保審・介護給付費分科会(1)
老健施設・介護医療院で「入所者に室料負担」を課すべきか否か、政治の場で検討・決着へ—社保審・介護給付費分科会(5)
介護事業所の感染症・看取り対応力強化を介護報酬で推進、LIFEデータ利活用で「介護の質」向上につながる—社保審・介護給付費分科会(4)
認知症の行動・心理症状(BPSD)発生予防の取り組み評価、リハ・栄養・口腔の一体的取り組みさらに推進―社保審・介護給付費分科会(3)
先駆的特定施設の「人員配置基準の緩和」をどのような要件下で認めるか、ケアマネの担当者上限数引き上げ―社保審・介護給付費分科会(2)
介護保険施設等は「在宅医療提供、在宅療養支援を行う医療機関」などと中身のある連携関係構築を急ぎ進めよ―社保審・介護給付費分科会(1)
介護施設等に「医療機関との実のある協力関係」「安全・ケア質確保、負担軽減」検討委員会設定など義務化—社保審・介護給付費分科会(2)
「介護医療院」と「療養型・その他型の老健施設」、一定所得以上の入所者に多床室の「室料負担」求めては—社保審・介護給付費分科会(1)
見守り機器導入する老健施設等でも夜間人員基準緩和、介護施設等で「生産性向上」委員会設置を義務化へ—社保審・介護給付費分科会(2)
3種類の介護職員処遇改善の加算を【新加算】に一本化、加算額の一定割合を月額賃金に充当—社保審・介護給付費分科会(1)
ADL維持等加算などを「患者の状態改善」により資する内容に見直す、BCP未策定事業所等で介護報酬減算—社保審・介護給付費分科会(3)
介護保険施設等に「医療機関と連携した感染症対応力強化」の努力義務、実際の連携強化を介護報酬で評価—社保審・介護給付費分科会(2)
認知症高齢者の行動・心理症状(BPSD)を未然にチームで防ぐ取り組みを行う介護施設などを新加算で評価へ—社保審・介護給付費分科会(1)
介護保険施設等と医療機関との「中身のある連携・協力関係を構築する」ために、協力医療機関要件を厳格化—社保審・介護給付費分科会(2)
老人保健施設の在宅復帰機能・リハ機能・看取り機能・医療ニーズ対応・ポリファーマシー対策等を強化せよ—社保審・介護給付費分科会(1)
診療所の良好な経営状況に鑑み、2024年度診療報酬改定では「診療所は5.5%のマイナス改定」が妥当!―財政審建議
訪問介護の「同一建物減算」を厳格化すべきか?訪問介護+通所介護の新複合型サービスを創設すべきか?—社保審・介護給付費分科会(5)
訪問リハビリでも、「医療保険リハビリとの連携」強化を図り、「認知症リハビリ」実施を新たに評価へ—社保審・介護給付費分科会(4)
より質の高いケアマネジメントを推進しながらケアマネ業務の負担軽減目指す、同一建物減算を導入すべきか—社保審・介護給付費分科会(3)
介護保険の訪問看護、重度者対応・看取り対応・24時間365日対応などの機能強化をさらに推進—社保審・介護給付費分科会(2)
介護職員の3つの処遇改善を一本化、職場環境等要件も改善し「より働きやすい環境」構築—社保審・介護給付費分科会(1)
医療ショートを「高齢の軽症救急」搬送先の1つに、ショートステイでの看取り対応評価・長期利用是正進める—社保審・介護給付費分科会(3)
通所リハ、「入院中のリハ計画書入手」など義務化、質の高いリハ行う大規模事業所は高い報酬に—社保審・介護給付費分科会(2)
通所介護の入浴介助加算、安全確保のために「研修受講」義務化、重度者を多く受ける療養通所介護を高く評価—社保審・介護給付費分科会(1)
看多機に「利用頻度が少ない利用者向けの低い報酬」を設定、小多機の「認知症対応力強化」をさらに推進—社保審・介護給付費分科会
2024年度介護報酬改定では「介護人材確保」が最重要ポイント、介護経営安定と制度安定のバランスも鍵—社保審・介護給付費分科会(2)
介護報酬改定の施行時期、「4月を維持」すべきか、「診療報酬と合わせ6月施行」とすべきか—社保審・介護給付費分科会(1)
2024年度介護報酬改定、小規模事業所のBCP策定や老健の高額薬剤使用等もポイント、認知症研修は極めて有用―介護給付費分科会・研究委員会
介護職員の加算、算定率の高いものは基本報酬に組み入れ、著しく低いものは背景を踏まえ廃止も含めた検討進める—社保審・介護給付費分科会
介護職員の処遇改善、ICT・介護助手活用による生産性向上、サービスの質を確保した上での人員基準柔軟化など検討—社保審・介護給付費分科会
認知症対策、介護サービスの質向上目指すLIFE、医療介護連携、とりわけ医療・介護間の情報連携等を強力に推進—社保審・介護給付費分科会
特定施設入居者生活介護の医療対応力・看取り対応力強化のために、どのような方策が考えられるのか—社保審・介護給付費分科会(5)
一部の特養ホームで「緊急時はすべて救急搬送する」事態も、特養入所者への医療提供をどう確保していくべきか—社保審・介護給付費分科会(4)
老健施設の「在宅復帰・在宅療養支援機能の更なる強化」を2024年度介護報酬改定でも目指す—社保審・介護給付費分科会(3)
介護医療院は医療施設だが「肺炎による医療機関転院」も生じている、さらなる医療・介護力強化が重要課題を—社保審・介護給付費分科会(2)
要介護者に適切な医療提供が行え、医療サイドに生活情報が伝わるよう、中身のある医療・介護連携推進を—社保審・介護給付費分科会(1)
介護保険の要となる「ケアマネの確保、ケアマネ事業所の安定経営」、訪問介護人材の確保にどう対応すべきか—社保審・介護給付費分科会(2)
訪問看護と訪問リハビリの役割分担を明確化、リハビリ専門職による訪問看護をさらに適正化—社保審・介護給付費分科会(1)
介護保険リハビリのアウトカム評価をどう考えていくか、高齢者は「リハビリ効果出にくい」点考慮を—社保審・介護給付費分科会(2)
通所サービスの介護報酬大規模減算は「事業所等の大規模化」方針に逆行、一般通所介護でも認知症対応力向上—社保審・介護給付費分科会(1)
認知症グループホームでの「医療ニーズ対応」力強化をどう図るか、定期巡回と夜間訪問との統合は2027年度目指す—社保審・介護給付費分科会
2024年度介護報酬改定論議スタート、地域包括ケアシステム深化・介護人材確保などがサービス共通の重要論点—社保審・介護給付費分科会
介護ロボット・助手等導入で「質を下げずに介護従事者の負担軽減」が可能、人員配置基準緩和は慎重に—社保審・介護給付費分科会(2)
日常診療・介護の中で「人生の最終段階に受けたい・受けたくない医療・介護」の意思決定支援進めよ!—中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
訪問看護の24時間対応推進には「負担軽減」策が必須!「頻回な訪問看護」提供への工夫を!—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
急性期入院医療でも「身体拘束ゼロ」を目指すべきで、認知症対応力向上や情報連携推進が必須要素—中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
感染対策向上加算の要件である合同カンファレンス、介護施設等の参加も求めてはどうか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
要介護高齢者の急性期入院医療、介護・リハ体制が充実した地域包括ケア病棟等中心に提供すべきでは—中医協・介護給付費分科会の意見交換