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【看護職員処遇改善評価料】を答申、病院ごとの看護職員数・入院患者数に応じた点数を設定—中医協総会(2)

2022.8.10.(水)

看護職員の処遇改善に向け、この10月(2023年10月)から、新たな診療報酬【看護職員処遇改善評価料】をスタートさせる。病院ごとの「看護職員数・延べ入院患者数」を元に計算した点数(1点から340点)を、入院基本料・特定入院料・短期滞在手術等基本料を算定するすべての患者に、入院期間中毎日算定するものである—。

医療機関が、【看護職員処遇改善評価料】として算定した費用については、「すべてを看護職員などの処遇改善に充てなければならない」「費用の3分の2以上を基本給等の引き上げに充当することで、継続的な処遇改善に努めなければならない」などのルールを設ける—。

8月10日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした内容の答申が行われました。今後、細部を厚生労働省で詰め、10月から施行されます。

なお、同日には「オンライン資格確認等システムの導入促進」に向けて、▼療養担当規則の見直し(来年(2023年)4月から保険医療機関ではオンライン資格確認等システム導入を原則義務化する)▼【電子的保健医療情報活用加算】の廃止(別に【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】を新設する)—に関する短冊提示・答申も行われており、こちらは別稿で報じています(関連記事はこちら)。

●答申等資料
短冊
新点数表(医科)

病院ごとの看護職員数・患者数に応じた「1点刻みの診療報酬」を165種類設定

ついに、この10月(2022年10月)からの「看護職員処遇改善」論議が決着しました。

昨年(2021年)12月21日に後藤茂之厚生労働大臣と鈴木俊一財務大臣との間で「看護職員について、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%(月額1万2000円)程度引き上げる診療報酬上の対応を行うことが合意されたことを受け、中医協とその下部組織(入院・外来医療等の調査・評価分科会)で制度設計が行われてきました(関連記事は中医協論議こちら(中医協論議)こちら(入院外来医療分科会での技術的検討))。

病院に支払うべき金額は「看護職員数(常勤換算)×1万2000円×1.165(社会保険料相当)」と決まっています。診療報酬で「個々の病院に過不足なく、この金額を支払う」方法が模索され、▼「看護職員数・延べ入院患者数」に応じた点数を100種類以上用意する▼病院が自院の状況(看護職員数・延べ入院患者数)にマッチした点数を請求する—という仕組みが設けられました【看護職員処遇改善評価料】。

すでに報じている部分もありますが、改めて【看護職員処遇改善評価料】の内容を見て見ましょう。

(A)【看護職員処遇改善評価料】
一定の要件を満たし、看護職員等の賃金改善をルールに沿って行う医療機関では、入院患者について、各医療機関の看護職員数・入院患者数に応じた【看護職員処遇改善評価料】を算定できる
→評価料は「最低1点」(評価料1)から「最高340点」(評価料165)に設定され(165種類の評価料(評価料1・評価料2・評価料3・・・・評価料164・評価料165)を設定)、個々の病院が下記(B)の計算方法に則って自院にマッチする評価料を請求する

2022年10月から【看護職員処遇改善評価料】を設ける(中医協総会(2)1 220810)



(B)【看護職員処遇改善評価料】の計算方法
→各病院で、「看護職員等の賃上げ必要額」(当該医療機関の看護職員等数×1万2000円×1.165(社会保険料相当))÷「当該保険医療機関の延べ入院患者数×10 円」で計算した値【A】をもとに、自院にマッチする評価料を165種類の中から選択し、請求する(看護職員数・延べ患者数などは申請が必要であるが、根拠資料は「適切に院内に保管」していればよく提示までは求められないこととする見込み)

(a)「看護職員等の数」は、直近3か月の各月1日時点における看護職員数の平均値とする

(b)「延べ入院患者数」は、直近3か月の1か月あたりの延べ入院患者数の平均値とする

(c)毎年3、6、9、12月に上記計算式で算出し、区分に変更がある場合は地方厚生局長等に届け出る

(d)ただし、前回届け出時点と比較して、直近3か月の「看護職員等の数」、「延べ入院患者数」、「計算結果」のいずれの変化も1割以内である場合には、区分の変更を行わない

【看護職員処遇改善評価料】の計算方法と、点数選択基準(中医協総会(2)2 220810)



(C)対象医療機関((A)の一定要件)
(a)次のいずれかに該当する
(i)【救急医療管理加算】を届け出ており、救急搬送件数が年間200件以上(陳儀改善を行う期間を含む年度の「前々年度」実績)である
ただし、【看護職員処遇改善評価料】算定医療機関が上記実績を満たさなくなった場合でも、「賃金改善実施年度の前年度のうち連続する6か月間、救急搬送件数が100件以上」であれば基準を満たすものと見做す(いわば救済措置)

(ii)「救命救急センター」、「高度救命救急センター」、「小児救命救急センター」のいずれかを設置している



(D)算定要件((A)の賃金改善ルール)
(a)当該医療機関に勤務する看護職員等(保健師、助産師、看護師、准看護師(非常勤職員を含む)をさす、以下同)に対して、【看護職員処遇改善評価料】算定額に相当する賃金(基本給、手当、賞与等(退職手当を除く)を含む。以下同)の改善を行う
賃金改善は、基本給、手当、賞与等のうち対象を特定して行うとともに、特定した項目以外の賃金項目(業績等に応じて変動するものを除く。)の水準を低下させてはならない

(b)賃金の改善措置の対象者は、当該保険医療機関に勤務する看護職員等のほか、視能訓練士、言語聴覚士などのメディカルスタッフ(補助金と同様に規定)も職種も対象に加えることができる()

(c)安定的な賃金改善を確保する観点から、【看護職員処遇改善評価料】による「賃金改善合計額の3分の2以上」は、基本給または決まって毎月支払われる手当の引き上げにより改善を図る(一時金は3分の1未満としなければならない)

(d)【看護職員処遇改善評価料】の見込額、賃金改善の見込額、賃金改善実施期間、賃金改善を行う賃金項目、方法などを記載した「賃金改善計画書」を毎年4月に作成し、毎年7月に地方厚生局長等に提出する

(e)毎年7 月に、前年度の取り組み状況を評価するため「賃金改善実績報告書」を作成し、地方厚生局長等に報告する

評価料の最高点は「340点」に設定

懸案となっていた「外れ値」問題(看護職員を手厚き配置する一方で、入院患者数が少ない病院では「必要額」が極めて高額になり、ここにどう対応するか)については、次のように決着しました。

▽最高点(上限)は340点に設定する(2―9月の補助金申請に係るデータでは、計算上の最高は339点であった)

▽評価料1(1点)から評価料145(145点)までは「1点刻み」に設定するが、評価料146(150点)から評価料165(340点)までは「10点刻み」に設定する

「看護職員を手厚き配置する一方で、入院患者数が少ない病院」(その多くは3次救急、子ども病院、周産期母子医療センター)へ配慮するとともに、「小刻みな点数設定によるデメリット」(医療機関の事務負担増など)も考慮したものと言えます。



今春(2022年春)から中医協・分科会で積み上げてきた内容であり、異論・反論は出ていません。答申に当たり、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「現時点のデータをもとに、可能かぎり過不足なく、また事後の検証が可能な仕組みを構築できた。今後、各病院において『確実な賃金アップ』が行われるよう期待する」とコメントしています。

厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長は「詳細を詰め、9月上旬(2022年9月上旬)に点数表等の告示・関係通知の発出などを行う」考えを提示。また、今後「新設された評価料により、看護職員等の給与改善が確実に行われているか」などを詳しく検証していくことになるでしょう。



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