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GemMed塾 看護モニタリング

「基準病床数の必要性」を検討する時期に来ているのではないか―日医総研

2019.1.9.(水)

 医療計画における「基準病床数」について、計算式の考え方やプロセスを分かりやすく解説する必要がある。また地域医療構想の「病床の必要量」が、現実的な病床整備(新設・増床)の判断基準になっていることを踏まえれば、「基準病床数の必要性」を検討するべきである―。

 日本医師会のシンクタンクである日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は12月27日にリサーチエッセイ「基準病床数と病床数の必要量等の関係について」を公表し、このような提言を行いました(日医総研のサイトはこちら)。

まず基準病床数の計算プロセスなどを分かりやすく解説する必要がある

 我が国においては、「ベッド数(供給)が入院患者(需要)の増加を招いている」との指摘があり、都道府県の定める医療計画において、事実上の病床数上限となる「基準病床数」が定められています(一般病床・療養病床については2次医療圏ごとに設定)。基準病床数を超えて、ベッドを新設・増設する場合、公的医療機関等については「開設を許可しない」、民間医療機関については「保険指定を行わない」ことが可能です(がん医療や小児医療などでは例外あり)。

ところで、2025年における医療提供体制の設計図とも言える地域医療構想では、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の機能ごとに将来の医療ニーズ(患者数)を踏まえた、「病床の必要量」が設定されています。

「基準病床数」と「病床の必要量」とでは、▼射程におく期間が異なる▼計算式の設定方法が異なる(例えば地域医療構想では、実際の入院患者数をベースとし、医療資源投入量の低い入院患者は在宅移行を促すことを前提としている、など)―ことから、数字に差が出てきます。とくに、今後も人口増が見込まれる大阪府や東京都では、「病床の必要量>現在の病床数(既存病床数)>基準病床数」、つまり、「2025年に向けて病床整備が必要だが、現在の病床数が基準病床数を超過しており、病床整備が難しい」という事態が生じました。この「捻じれ」を放置することはできず、厚生労働省は「毎年、基準病床数を確認するなどし、必要な病床の確保に支障が出ないように対応する」考えを示しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 
この点、日医総研では「医療現場では基準病床数と病床数の必要量の解釈に苦慮している」と指摘し、今般、両者の関係性について分析し、それを踏まえた提言を行っています。

まず基準病床数は、▼2次医療圏ごとの性・年齢階級別人口▼地域ブロックごとの性・年齢階級別退院率(一般病床)▼地域ブロックごとの性・年齢階級別入院受療率(療養病床)▼地域ブロックごとの平均在院日数(一般病床)▼介護施設・在宅医療等での対応可能数(療養病床)▼2次医療圏ごとの流出入数▼2次医療圏ごとの病床利用率―から算出します。この点について、日医総研では次のような課題があると指摘。
基準病床数と必要病床数(日医総研)1 181227
 
▽療養病床における「介護施設・在宅医療等での対応可能数」は、地域医療構想での推計値をベースにするが、この数値が基準病床数計算に与える影響は少なくなく、「現実と乖離して違和感を生じている」2次医療圏もある

▽性・年齢階級別の人口・退院率・入院受療率、平均在院日数などは、医療計画作成のたびに大きく変動する

▽一般病床の退院率は、抽出調査による「患者調査」の数値を用いることになるが、ブロック内でも地域等によるバラつきが大きい

▽一般病床の平均在院日数は、「直近の短縮率」をベースとするため、「10%超」の減少を見込むことになる地方ブロックがほとんどである(かねてより、日本医師会幹部は「平均在院日数の短縮は限界に来ている」と主張)
基準病床数と必要病床数(日医総研)2 181227
 
▽療養病床から在宅医療等へ転換させようとする意図が強い計算式である

▽患者流出入の調整結果が、必ずしも明示されていない

▽病床利用率は2次医療圏内でもバラつきが大きい
基準病床数と必要病床数(日医総研)3 181227
 
 こうした課題ゆえ、「人口増減と基準病床数の増減に相関はなく、基準病床数の算定結果が容易に納得できない」という問題が生じていると日医総研は見通し、各都道府県の医療計画の中で、「基準病床数計算の考え方とプロセス」を分かりやすく解説ことが必要と提言しています。

 
 また、上述のように、将来的に人口増が見込まれる地域では、「病床の必要量」が「基準病床数」や「既存病床数」を超えることとなり、基準病床数を超える新設・増床が可能です。しかし、地域医療構想が見据える2025年により先には、多くの地域で人口減少が見込まれるため、実際に増床が可能な地域は限られてくるでしょう。

 一方、基準病床数よりも既存病床数が少ない(基準>既存)地域では、新設・増床が可能ですが、将来、「病床の必要量」が「基準病床数」を下回ることになる場合には、都道府県知事が増床を認めないことも可能となりました。

 このように、地域における病床整備(新設・増床)の可否は「病床の必要量」をもとに判断することになっているため、「基準病床数の必要性」を検討する時期に来ているとも日医総研は指摘。

その上で、地域の病床整備(新設・増床)に当たっては、▼より長期の人口見通し▼都市部の高齢者の地方移転(地方での療養)―なども勘案し、「慎重に対応する必要がある」と結んでいます。
基準病床数と必要病床数(日医総研)4 181227
 
 
 
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