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診療科別の必要医師数踏まえ、2020年度以降の専攻医シーリングを設定―日本専門医機構

2019.4.22.(月)

 新専門医制度の専攻医(新専門医資格の取得を目指す後期研修医)の定数上限(シーリング)について、厚生労働省の示した「診療科別・都道府県別の必要医師数」を参考として設定する方向について、基本領域学会と日本専門医機構とで概ね固めた―。

 日本専門医機構の寺本民生理事長は、4月22日の定例記者会見でこのような考えを述べました。

 新たなシーリングの設定や、後述する「新たな連携プログラム」作成などに時間がかかるため、2020年度の専攻医登録スケジュールは遅れることが予想されますが、寺本理事長は「2019年9月中には2020年度の専攻医登録を開始したい」とコメントしています。

4月22日に定例記者会見に臨んだ、日本専門医機構の寺本民生理事長(帝京大学・臨床研究センター長)

4月22日に定例記者会見に臨んだ、日本専門医機構の寺本民生理事長(帝京大学・臨床研究センター長)

 

厚労省が「診療科別・都道府県別の必要医師数」を試算

昨年度(2018年度)から新専門医制度が全面スタートしました。従前、各学会が独自に行っていた専門医の養成・認定について、学会と日本専門医機構が協働して統一的な基準に沿って実施することで、「専門医の質の担保」と「国民への分かりやすさ」との両立を目指しています。

 もっとも、「質を追求するあまり、専門医を養成する施設の要件が厳しくなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されてしまうのではないか」との声が医療現場に根強く、日本専門医機構、学会、都道府県、厚生労働省が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」こととしています。

その一環として、「東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の5都府県では、基本領域ごとの専攻医採用数に上限(シーリング)を設ける」こととしています。その上限は、「▼外科▼産婦人科▼病理▼臨床検査—の4領域を除き、専攻医の募集定員を過去5年の後期研修医の採用実績数などの平均値以下に抑える」という形で設定され、さらに東京都については2019年度を対象に「さらに5%の削減」が行われました(関連記事はこちらこちらこちら)。

 ただし、現在のシーリングには明確な根拠はなく、厚労省はDPCデータ等をもとに試算した「診療科別・都道府県別の必要医師数」を勘案して2020年度以降の専攻医定員の上限を設定してはどうか、との提案を3月22日の医道審議会・医師分科会「医師専門研修部会」に行いました。具体的には、次の3つの提案です(関連記事はこちら)。

(1)2016年の医師数(仕事量)が、2016年の必要医師数または2024年の必要医師数を上回る、あるいは同等である都道府県・診療科(領域)について、シーリングの対象としてはどうか

(2)シーリングの対象となった都道府県・診療科(領域)では、医師少数都道府県の医療機関で、研修期間の50%以上を研修(勤務)する新たな連携プログラムを設けることを必須としてはどうか

(3)シーリングの対象となった都道府県・診療科(領域)では、地域貢献率を20%以上としてはどうか

 まず(1)では、厚労省の試算に基づけば次の診療科・都道府県が「シーリング対象」の候補となります(現在はシーリングの対象外となっている「外科」「産婦人科」「病理」「臨床検査」でも、必要医師数を超過するペースでの医師養成が行われている可能性があるが、今後、精査のうえで「シーリング対象」を決定することになる)。

【内科】
▼東京都▼石川県▼京都府▼大阪府▼和歌山県▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼徳島県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼熊本県

【小児科】
▼東京都▼富山県▼石川県▼福井県▼山梨県▼長野県▼滋賀県▼京都府▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼香川県▼愛媛県▼福岡県▼長崎県▼沖縄県

【皮膚科】
▼東京都▼富山県▼石川県▼福井県▼京都府▼大阪府▼奈良県▼和歌山県▼鳥取県▼島根県▼広島県▼徳島県▼香川県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼熊本県

【精神科】
▼北海道▼秋田県▼山形県▼東京都▼石川県▼京都府▼奈良県▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼広島県▼山口県▼徳島県▼香川県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼熊本県▼大分県▼宮崎県▼鹿児島県▼沖縄県

【外科】
▼京都府▼鳥取県▼岡山県▼広島県▼山口県▼徳島県▼愛媛県▼高知県▼福岡県▼長崎県▼大分県

【整形外科】
▼東京都▼石川県▼京都府▼大阪府▼兵庫県▼奈良県▼和歌山県▼鳥取県▼香川県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼熊本県▼宮崎県▼沖縄県

【産婦人科】
▼秋田県▼山形県▼東京都▼福井県▼山梨県▼大阪府▼奈良県▼和歌山県▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼徳島県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼宮崎県▼鹿児島県▼沖縄県

【眼科】
▼東京都▼滋賀県▼京都府▼大阪府▼兵庫県▼奈良県▼和歌山県▼徳島県▼愛媛県▼福岡県

【耳鼻咽喉科】
▼山形県▼東京都▼富山県▼石川県▼福井県▼山梨県▼岐阜県▼京都府▼大阪府▼奈良県▼和歌山県▼鳥取県▼岡山県▼広島県▼山口県▼徳島県▼香川県▼愛媛県▼高知県▼佐賀県▼長崎県

【泌尿器科】
▼青森県▼秋田県▼福井県▼山梨県▼滋賀県▼京都府▼大阪府▼奈良県▼鳥取県▼島根県▼山口県▼徳島県▼香川県▼愛媛県▼高知県▼佐賀県▼熊本県▼大分県▼鹿児島県

【脳神経外科】
▼北海道▼東京都▼大阪府▼和歌山県▼岡山県▼徳島県▼香川県▼高知県▼福岡県▼佐賀県

【放射線科】
▼東京都▼石川県▼福井県▼滋賀県▼京都府▼大阪府▼奈良県▼鳥取県▼岡山県▼山口県▼徳島県▼香川県▼愛媛県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼長崎県▼熊本県▼大分県▼宮崎県▼鹿児島県▼沖縄県

【麻酔科】
▼北海道▼東京都▼富山県▼京都府▼大阪府▼兵庫県▼島根県▼岡山県▼香川県▼高知県▼福岡県▼佐賀県▼熊本県▼大分県▼鹿児島県▼沖縄県

【病理診断】
▼東京都▼石川県▼山梨県▼滋賀県▼京都府▼奈良県▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼香川県▼佐賀県▼大分県▼沖縄県

【臨床検査】
▼青森県▼岩手県▼宮城県▼秋田県▼栃木県▼群馬県▼東京都▼富山県▼福井県▼長野県▼和歌山県▼島根県▼岡山県▼香川県▼愛媛県▼高知県▼長崎県▼沖縄県

【形成外科】
▼東京都▼神奈川県▼石川県▼京都府▼大阪府▼岡山県▼徳島県▼香川県▼高知県▼福岡県▼長崎県▼沖縄県

【リハビリテーション科】
▼宮城県▼秋田県▼東京都▼石川県▼福井県▼山梨県▼滋賀県▼京都府▼大阪府▼奈良県▼和歌山県▼鳥取県▼島根県▼岡山県▼山口県▼愛媛県▼高知県▼福岡県▼熊本県▼鹿児島県▼沖縄県

「都道府県別診療科ごとの将来必要な医師数の見通し(暫定)」

 
 また(2)は、例えば、医師の多い東京都では、研修プログラムの一部を、医師少数地域である岩手県や新潟県などで「研修期間の50%以上」(3年のプログラムであれば1年半以上)勤務する形とすることを義務付けるものです(新たな「連携プログラム」)。
医師専門研修部会(2)3 190322
 
 さらに(3)は、医師少数でも多数でもない県(兵庫県や富山県など)への医師派遣が停滞しないように工夫する仕組みです(研修期間中に他県へ派遣されれば、地域貢献率が高くなる)。

2020年度から「診療科別・都道府県別の必要医師数」を勘案したシーリング設定

 この提案について、各基本領域学会と日本専門医機構で検討を行ったところ、いくつか異論は出たものの、最終的に「一定のエビデンスに基づく試算であり、アカデミアでとしてこれを受け入れるべき」との方向で概ね固まったことが寺本理事長から報告されました。

 もっとも、▼DPCデータで把握しきれない領域(例えば精神病棟の対象患者はDPCの評価対象外となる)もあり、とくに精神疾患患者に対する措置入院のニーズなどは厚労省の試算にどう盛り込まれているのかが明確でない▼放射線、麻酔などの中央部門領域について、医療ニーズをどう勘案しているのか明確でない―といった疑問点もあることから、詳細な部分について基本領域学会と日本専門医機構、さらに厚生労働省も交えて検討・検証を行うことになりそうです。

また中には、厚労省試算に基づいたシーリング設定を行えば、現在のシーリングとで大きな乖離が生じる診療科・都道府県も出てくると考えられます。厚労省は「2018・2019年度の専攻医平均採用数」から「2024年の必要医師数を達成するための年間養成数と平均採用数との差」の一定割合(例えば20%)を差し引いた数をシーリングに据えてはどうかと提案しているためです。その場合、「激変を緩和するための措置(激変緩和措置)を講じる必要もある」との考えを寺本理事長は示しています。

今後、基本領域学会と日本専門医機構とで、新たなシーリング(専攻医定員の上限)設定方法について検討し、「「医師専門研修部会」に報告することになります。

 
新たなシーリングは2020年度の専攻医募集から適用される見込みです。その理由として寺本理事長は、▼現在のシーリング設定の課題▼医師働き方改革―の2点を掲げました。

前者は、現在シーリング対象となっている愛知県と神奈川県は、厚労省の試算では「医師多数の都道府県」に該当していなかった、という課題です。現在のシーリングを継続すれば、「医師が多数でない愛知県・神奈川県で医師養成が抑制され、偏在を助長してしまう可能性がある」と考えられるためです。
医師専門研修部会(2)1 190322
 
また後者の「医師の働き方改革」では、2024年4月から「医師の時間外労働上限」(年間960時間以下、年間1860時間以下)が適用されます。それまでの5年間、全国で医師の労働時間短縮を進める必要がありますが、併せて地域・診療科間の偏在解消に向けた取り組みも実施していく必要があります(医師が少数の地域では、業務見直しなどが制限され、働き方改革が実現できない)。このため、エビデンスに基づいたシーリングを設定し、診療科・地域偏在を可能な限り是正していく必要があると寺本理事長は強調しています(関連記事はこちら)。
医師働き方改革検討会1 190328

 
こうした課題の解消や、新たな「連携プログラム」作成には一定の時間がかかりますが、寺本理事長は「2020年度の専攻医登録は、2019年9月中に開始したい」との見解を示しています。今後の動きに要注目です。

なお、上述のように「激変緩和措置」が設けられた場合でも、時間をかけてシーリングを「診療科別・地域別の必要医師数」にマッチするように見直していくことになるでしょう。また、実際の医師数がどのように推移しているのかを「医師・歯科医師・薬剤師調査」(いわゆる三師調査)などでウォッチし、シーリングについて必要な修正を行っていくことも必要となるでしょう。このため、2021年度以降もシーンリングが逐次、見直される可能性があります。

総合診療専門医を目指す専攻医は減少、キャリアパスの明確化を目指す

 ところで、今年度(2019年度)の専攻医採用状況(確定数)を見ると、全体で8615名となり、前年度から100名程度の増員となりますが、総合診療専門医については前年度より減少してしまっています(2018年度:184名 → 2019年度:179名)。寺本理事長は、「総合診療専門医のキャリアパス明確化」が、総合診療専門医を目指す専攻医の拡大にとって必要」とし、例えば▼ダブルボード(2つの基本領域の専門医資格を取得する)の在り方▼総合診療領域におけるサブスペシャリティ領域の在り方―などを検討していく考えを強調しています。

 
 

 

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