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2022年3月までに2305件の医療事故報告、このうち87.6％で院内調査が完了済！―日本医療安全調査機構

2022.4.11.（月）

今年（2022年）3月に医療事故調査・支援センター（以下、センター）に報告された医療事故は19件。2015年10月の医療事故調査制度発足から累計2305件の医療事故が報告され、このうち87.6％で院内調査が完了。医療機関等の「事故防止に向けた院内調査」スピードはさらに増している―。

日本で唯一のセンターである「日本医療安全調査機構」が4月8日に公表した「医療事故調査制度の現況報告（3月）」から、こうした状況が明らかになりました（機構のサイトはこちら）。新型コロナウイルス感染症のオミクロン株が急拡大する中、事故の報告・相談・院内調査等の件数は減少したままとなっています。

1 2022年2月の医療事故報告は19件、オミクロン株拡大の影響続く
2 依然として遺族からの相談の大多数は「医療ミスがあったか否か」関連
3 「院内調査」スピードはさらに上昇、事故全体の87.6％で院内調査完了

2022年2月の医療事故報告は19件、オミクロン株拡大の影響続く

2015年10月から【医療事故調査制度】が始まりました。すべての医療機関等（病院、診療所、助産所）において、「院長などの管理者が予期しなかった、医療に起因（疑いを含む）する死亡・死産」のすべてをセンターに報告することを義務付ける制度です。事故の原因・背景を調査・分析し「再発防止策」を構築。それを医療現場に広く共有することで医療安全の確保・向上を狙っています。

医療事故調査制度は次のような流れで進められます。
▽医療事故が発生した場合、医療機関等の管理者（院長など）は、速やかにセンターへ事故発生を報告する
↓
▽事故が発生した医療機関等が「自ら」事故原因を調査【院内調査】し、調査結果をセンターに報告する
↓
▽当該医療機関等は、調査結果に基づいて事故の内容や原因を遺族に説明する（調査結果報告書の提示までは義務付けられていない）
↓
▽センターで事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを構築し、公表する

医療事故調査制度の概要

センターでは毎月、医療事故報告の状況も公表（前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら）。今年（2022年）3月には新たに19件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は2305件となりました。

前月と同様に報告件数が少なくなっており、新型コロナウイルス感染症のオミクロン株拡大に伴って、▼患者減（外来では受診減など、入院では病棟一部閉鎖・予定入院や予定手術の延期など）→▼医療事故等も減少—という事態が再度生じていると考えられます（事故報告、院内調査、相談のすべてで件数が低い水準となっている）。

今年（2022年）3月に新たに報告された医療事故19件は、病院から18件、クリニックから1件でした。制度発足（2015年10月、以下同）からの累計では、病院から2180件（事故全体の94.6％）、診療所から125件（同5.4％）となりました。

また今年（2022年）3月に新たに報告された医療事故19件を診療科別に見ると、▼内科：5件▼脳神経外科：3件―などで多くなっています。制度発足からの累計では、▼外科：355件（事故全体の15.4％）▼内科：293件（同12.7％）▼消化器科：196件（同8.5％）▼循環器内科：195件（同8.5％）▼整形外科：195件（同8.5％）―などで多い状況です。

医療事故報告の状況（医療事故の現況（2022年3月）1　220408）

依然として遺族からの相談の大多数は「医療ミスがあったか否か」関連

医療機関等は「すべての死亡・死産」をセンターへ報告するわけではありません。上述のように、報告対象は死亡・死産事例のうち「院長などの管理者が『予期せず』、かつ『医療に起因し、または起因すると疑われる』もの」に限られます。

例えば、交通事故などで瀕死の重症を負った方が救急搬送され、懸命な治療が行われたにもかかわらず残念ながら死亡してしまったケースなどでは、一般に「死亡が予期」されることからセンターへの報告は必要ないと考えられるでしょう。ただし明らかな処置上のミスなどがあり、通常の経過とは異なるプロセスで当該患者が死亡したような場合には、「予期しなかった」医療事故となりセンターへの報告が必要となってくるでしょう。

もっとも「予期された医療事故」がどこまでか、どこからが「予期しなかった医療事故」なのかの切り分け・判断は難しく、医療現場では「不幸にも患者が死亡したが、報告すべき医療事故に該当するのか分からない」という疑問が生じます。また、医療機関等には「初めての医療事故で、センターへどのように報告すればよいのか分からない」といった疑問が生じることもあるでしょう。一方、遺族の中には「家族が医療機関等で死亡したが、医療事故として報告されていない。事故を隠蔽しようとしているのではないか？」との疑念を持つ方もおられることでしょう。

そこでセンターでは個別事例に対する相談対応を行っており、今年（2022年）3月には、新たに138件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計では1万1968件となりました。

今年（2022年）3月に新たにセンターへ寄せられた相談の内訳は、▼医療機関等から62件▼遺族などから68件▼その他・不明8件―でした。

医療機関等からの相談内容を見てみると、最も多いのは「報告の手続き」に関するもので46件（医療機関等からの相談全体の65.7％）、次いで「院内調査」に関するもの14件（同20.0％）、「報告すべきか否かの判断に迷う」ケース7件（同10.0％）という状況です。

一方、遺族などからの相談内容を見ると「医療事故に該当するか否かの判断」が60件（遺族などからの相談全体の75.9％）と大多数を占めている状況に変化はありません。依然として「制度の正しい周知」が依然として大きな課題となっています。

センターへの相談に関する状況（医療事故の現況（2022年3月）3　220408）

「院内調査」スピードはさらに上昇、事故全体の87.6％で院内調査完了

医療事故調査制度は、冒頭に述べたとおり「再発防止策の構築と周知」が目的です。「犯人捜し」や「特定個人の責任追及」などをする仕組みではないことに留意が必要です。

このため、事故が生じた医療機関等が自ら事故の内容や背景を調査する【院内調査】が重視されています。調査の過程で「自院の体制・手続き・ルールなどに問題がなかったか」を検証し、その過程で自ら「自院の課題」を発見し、自ら「再発防止策構築」に繋げることが重要と考えられているためです。

今年（2022年）3月に新たに院内調査が完了した事例は34件で、制度発足からの累計では2019件となりました。これまでに報告されたすべての医療事故2305件のうち87.6％（前月から0.8ポイント増）で院内調査が完了している格好です。調査スピードは着実に上がっています。

院内調査の状況（医療事故の現況（2022年3月）2　220408）

ただし、遺族の中には「院内調査結果に納得がいかない」「院内調査が遅い、何かを隠そうとしているのではないか」といった疑念を持つ方もおられるかもしれません。

また、診療所や助産所などの小規模施設では、「自前で院内調査を実施することが難しい」ケースもあります（医師会や病院団体、大学病院などが調査をサポートする体制が整えられている）。

そこでセンターでは、「遺族や医療機関等からの調査依頼を受け付ける」体制も敷いています【センター調査】。センター調査では「センターが最初から調査しなおす」のではなく、「院内調査が時期・内容ともに適切に実施されているか」という観点での調査が行われます。

今年（2022年）3月にセンターへ寄せられた調査依頼は2件で、遺族から1件、医療機関から1件でした。制度発足からの累計調査依頼件数は182件（遺族から152件・83.5％、医療機関等から30件・16.5％）。センター調査の進捗状況を見ると101件で調査が完了しています（前月から2件増加）。

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