Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

2021年12月までに2248件の医療事故が報告され86.2%で院内調査完了、再発防止への取り組み進む―日本医療安全調査機構

2022.1.13.(木)

昨年(2021年)12月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は25件。2015年10月の医療事故調査制度発足から累計2248件の医療事故が報告され、このうち86.2%で院内調査が完了。医療機関サイドの「事故防止に向けた院内調査」スピードがますますアップしている―。

日本で唯一のセンターである「日本医療安全調査機構」が1月11日に公表した「医療事故調査制度の現況報告(12月)」から、こうした状況が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

2021年12月、25件の医療事故報告、外科で5件、内科、消化器科、循環器内科で4件

2015年10月から【医療事故調査制度】が稼働しています。すべての医療機関等(病院、診療所、助産所)は、「院長などの管理者が予期しなかった、医療に起因(疑いを含む)する死亡・死産」のすべてをセンターに報告しなければなりません。事故の原因・背景を詳しく調査・分析し「再発防止策」を構築して、それを医療現場に広く共有することで医療安全の確保・向上を狙う仕組みです。

医療事故調査制度の大枠は次のような流れで進められます。

▽医療事故が発生した場合、医療機関等の管理者(院長など)は、速やかにセンターへ事故発生を報告する

▽事故が発生した医療機関等が「自ら」事故原因を調査【院内調査】し、調査結果をセンターに報告する

▽当該医療機関等は、調査結果に基づいて事故の内容や原因を遺族に説明する(調査結果報告書の提示までは義務付けられていない)

▽センターで事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを構築し、公表する

医療事故調査制度の概要



センターは精力的に「再発防止策」を検討しており、これまでに次の14本の再発防止策を公表しています。
(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―
(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析
(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析
(4)気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入に係る死亡事例の分析
(5)腹腔鏡下胆嚢摘出術に係る死亡事例の分析
(6)栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析
(7)一般・療養病棟における非侵襲的陽圧換気(NPPV)及び気管切開下陽圧換気(TPPV)に係る死亡事例の分析
(8)救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析
(9)入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析(関連記事はこちら
(10)大腸内視鏡検査等の前処置に係る死亡事例の分析
(11)肝生検に係る死亡事例の分析
(12)胸腔穿刺に係る死亡事例の分析
(13)胃瘻造設・カテーテル交換に係る死亡事例の分析
(14)カテーテルアブレーションに係る 死亡事例の分析



センターは毎月、医療事故報告の状況も公表しています(前月の状況は こちら、前々月の状況はこちら)。昨年(2021年)12月には新たに25件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は2248件となりました。



昨年(2021年)12月に新たに報告された医療事故25件は、病院から23件、診療所から2件。制度発足(2015年10月、以下同)からの累計では、病院から2126件(事故全体の94.5%)、診療所から122件(同5.5%)となりました。

また昨年(2021年)12月に新たに報告された医療事故25件を診療科別に見てみると、▼外科:5件▼内科:4件▼消化器科:4件▼循環器内科:5件—などで多くなっています。制度発足からの累計では、▼外科:352件(事故全体の15.7%)▼内科:285件(同12.7%)▼消化器科:191件(同8.5%)▼整形外科:190件(同8.5%)▼循環器内科:190件(同8.5%)―などで多い状況です。消化器科が整形外科を抜き3位に浮上しています。

医療事故報告の状況(医療事故の現況(2021年12月)1 220111)

遺族からの相談の72.5は「医療ミスがあったか否か」などに関するもの

医療機関等は「すべての死亡・死産」をセンターへ報告しなければならないわけではありません。上述のとおり報告対象は死亡・死産事例のうち「院長などの管理者が『予期せず』、かつ『医療に起因し、または起因すると疑われる』もの」に限定されます。

例えば、交通事故などで瀕死の重症を負った方が救急搬送され、懸命な治療が行われたにもかかわらず残念ながら死亡してしまったケースなどでは、一般に「死亡が予期」されることからセンターへの報告は必要ないと考えられるでしょう。ただし明らかな処置上のミスなどがあり、通常の経過とは異なるプロセスで当該患者が死亡したような場合には、「予期しなかった」医療事故となりセンターへの報告が必要となってくるでしょう。

もっとも「どこまでが予期された医療事故なのか」の切り分け・判断は難しく、医療現場では「不幸にも患者が死亡したが、報告すべき医療事故に該当するのか分からない」という疑問が生じます。また、医療機関等には「初めての医療事故で、センターへどのように報告すればよいのか分からない」といった疑問が生じることもあるでしょう。

一方、遺族の中には「家族が医療機関等で死亡したが、医療事故として報告されていない。事故を隠蔽しようとしているのではないか?」との疑念を持つ方もおられることでしょう。

そこでセンターでは個別事例に対する相談対応を行っており、昨年(2021年)12月には、新たに159件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計では1万1599件となりました。

昨年(2021年)12月に新たにセンターへ寄せられた相談の内訳は、▼医療機関等から65件▼遺族などから87件▼その他・不明7件―でした。

医療機関等からの相談内容を見てみると、最も多いのは「報告の手続き」に関するもので47件(医療機関等からの相談全体の63.5%)、次いで「院内調査」に関するもの13件(同17.6%)「報告すべきか否かの判断に迷う」ケース8件(同10.7%)という状況です。

一方、遺族などからの相談内容を見ると、「医療事故に該当するか否かの判断」が66件(遺族などからの相談全体の72.5%)です。

センターへの相談に関する状況(医療事故の現況(2021年12月)3 220111)

「院内調査」のスピードさらにアップ、事故全体の86.2%で院内調査完了

医療事故調査制度は上述のとおり「再発防止策の構築と周知」が目的です。「犯人捜し」や「特定個人の責任追及」などをする仕組みではないことに留意が必要です。

このため、事故が生じた医療機関等が自ら事故の内容や背景を調査する【院内調査】が重視されています。調査の過程で「自院の体制・手続き・ルールなどに問題がなかったか」を検証し、その過程で自ら「自院の課題」を発見し、自ら「再発防止策構築」に繋げることが重要と考えられているためです。

昨年(2021年)12月に新たに院内調査が完了した事例は29件で、制度発足からの累計では1938件となりました。これまでに報告されたすべての医療事故2248件のうち86.2%(前月から0.3ポイント増)で院内調査が完了している格好です。調査スピードがさらに増していることが分かります。

院内調査の状況(医療事故の現況(2021年12月)2 220111)



ただし、遺族の中には「院内調査結果に納得がいかない」「院内調査が遅い、何かを隠そうとしているのではないか」といった疑念を持つ方もおられるかもしれません。

また、診療所や助産所などの小規模施設では、「自前で院内調査を実施することが難しい」ケースもあることでしょう(医師会や病院団体、大学病院などが調査をサポートする体制が整えられている)。

そこでセンターでは、「遺族や医療機関等からの調査依頼を受け付ける」体制も敷いています【センター調査】。センター調査では「センターが最初から調査しなおす」のではなく、「院内調査が時期・内容ともに適切に実施されているか」という観点での調査が行われます。

昨年(2021年)12月にセンターへ寄せられた調査依頼は3件で、すべて遺族からのものでした。制度発足からの累計調査依頼件数は174件(遺族から147件・84.5%、医療機関等から27件・15.5%)。センター調査の進捗状況を見ると、94件で調査が完了しています(前月から3件増加)。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

【関連記事】

2021年11月までに2223件の医療事故あり85.9%で院内調査が完了、再発防止に向けた動き加速―日本医療安全調査機構
2021年10月までに2201件の医療事故、一般国民にも医療事故調査制度浸透の可能性あり―日本医療安全調査機構
2021年9月までに2174件の医療事故・84.8%で院内調査済、コロナ第5波の影響で報告・調査件数が大幅減―日本医療安全調査機構
2021年8月までに2156件の医療事故・84.8%で院内調査完了、コロナ第5波の影響は小さいか―日本医療安全調査機構
2021年7月までに2126件の医療事故が報告され、うち84.9%で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
カテーテルアブレーション治療、心タンポナーデなど重篤リスクにも留意した体制整備を―医療安全調査機構の提言(14)
医療事故の報告・相談件数が6月に入り増加、2015年10月からの累計で2092件の医療事故報告―日本医療安全調査機構
コロナ第4波で医療事故の報告件数・相談件数などが4月・5月と大幅減―日本医療安全調査機構
2021年4月、コロナ第4波で医療事故報告件数・相談件数等が再び大幅減―日本医療安全調査機構
2021年3月で医療事故報告が2000件台に乗る、85.1%で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
人口100万人あたり医療事故報告件数、4年連続で宮崎県がトップ―日本医療安全調査機構
抗血栓療法中・低栄養患者は胃瘻造設リスク高、術後出血や腹膜炎等の合併症に留意を―医療安全調査機構の提言(13)
2021年2月までに医療事故の84.8%で院内調査完了、新型コロナ第3波の落ち着きとともに事故報告・相談なども増加―日本医療安全調査機構
2021年1月までに医療事故の84.8%で院内調査完了、新型コロナ第3波に伴い事故報告・相談など明らかに減少―日本医療安全調査機構
2020年12月までに医療事故の84.3%で院内調査完了、新型コロナ第3波で再び事故報告など減少か―日本医療安全調査機構
2020年11月までに医療事故の83.8%で院内調査が完了、「院内調査」が順調に進んでいるか注視を―日本医療安全調査機構
医療事故調査制度発足から丸5年、大規模病院ほど「病床当たり事故件数」多い―日本医療安全調査機構
胸腔穿刺で心臓等損傷する死亡事故、リスクを踏まえた実施、数時間後に致命的状態に陥る可能性踏まえた経過観察を―医療安全調査機構の提言(12)
2020年10月の医療事故報告件数、3月以前の水準に戻る―日本医療安全調査機構
2020年4-9月の医療事故、3月以前に比べて18%減少、新型コロナによる患者減の影響か―日本医療安全調査機構
2020年8月の医療事故は24件、医療現場は平時に戻りつつあるが、さらなる観察が必要―日本医療安全調査機構
2020年7月の医療事故は30件、報告件数等は増加傾向にあり、医療現場は平時に戻りつつある―日本医療安全調査機構
2020年6月の医療事故は26件、4・5月に比べ報告件数は増加し、医療現場は平時に戻りつつある―日本医療安全調査機構
2020年5月の医療事故は15件、新型コロナで入院患者減・手術減等が生じている影響か―日本医療安全調査機構
2020年4月の医療事故は19件、内科で3件、整形外科・循環器・産婦人科で各2件など―日本医療安全調査機構
2020年3月の医療事故は31件、消化器科で7件、内科・脳神経外科で各4件など―日本医療安全調査機構
2020年2月の医療事故は37件、消化器科で7件、内科・循環器内科で各5件など―日本医療安全調査機構
2020年1月の医療事故は35件、外科と内科で各7件など―日本医療安全調査機構
2019年12月に医療事故が35件、整形外科と消化器科で各5件など―日本医療安全調査機構
2019年11月に医療事故が37件、外科で8件、内科・整形外科で6件など―日本医療安全調査機構
2019年10月に医療事故が35件報告され、累計1535件に―日本医療安全調査機構
医療事故調査制度スタートから丸4年、累計1500件の医療事故が報告される―日本医療安全調査機構
2019年8月末までに1472件の医療事故が生じ77%で院内調査完了、医療機関の調査スピードアップ―日本医療安全調査機構
2019年7月末までに1452件の医療事故、うち75.9%の事例では院内調査完了―日本医療安全調査機構
2019年6月末までに1420件の医療事故、院内調査スピードがさらに加速し75.4%で調査完了―日本医療安全調査機構
2019年5月末までに1380件の医療事故、院内調査スピードが加速し74.9%で調査終了―日本医療安全調査機構
2019年4月末までに1342件の医療事故、院内調査スピードは再び増し74.8%で調査完了―日本医療安全調査機構
2019年3月末までに1308件の医療事故、制度が国民に浸透する中で「正しい理解」に期待―日本医療安全調査機構
医療事故調査、事故全体の7割超で院内調査が完了しているが、調査期間は長期化傾向―日本医療安全調査機構
2019年2月末までに1284件の医療事故、院内調査完了は73.9%で変わらず―日本医療安全調査機構
2019年1月末までに1260件の医療事故、73.9%で院内調査完了―日本医療安全調査機構
医療事故の原因究明に向けた院内調査、「外部の第三者」の参画も重要テーマ―医療安全調査機構
2018年末までに1234件の医療事故、73.6%で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2018年11月までに1200件の医療事故、72.8%で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2018年10月までに1169件の医療事故、国民の制度理解が依然「最重要課題」―日本医療安全調査機構
2018年9月までに1129件の医療事故、国民の制度理解は依然進まず―日本医療安全調査機構
2018年8月までに1102件の医療事故報告、国民の制度理解が今後の課題―日本医療安全調査機構
2018年7月までに1061件の医療事故報告、うち71.2%で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
医療事故調査、制度発足から1000件を超える報告、7割超で院内調査完了―日本医療安全調査機構
2018年5月までに997件の医療事故、うち69.9%で院内調査完了―日本医療安全調査機構
2018年4月までに965件の医療事故、うち68.5%で院内調査完了―日本医療安全調査機構
2018年3月までに945件の医療事故が報告され、67%で院内調査完了―日本医療安全調査機構
2018年2月までに912件の医療事故報告、3分の2で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2018年1月までに888件の医療事故が報告され、65%超で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2017年末までに857件の医療事故が報告され、63.8%で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2017年9月までに751件の医療事故が報告、院内調査は63.4%で完了―日本医療安全調査機構
2017年8月までに716件の医療事故報告、院内調査のスピードは頭打ちか―日本医療安全調査機構
2017年7月までに674件の医療事故が報告され、63.5%で院内調査完了―日本医療安全調査機構
2017年6月までに652件の医療事故が報告され、6割超で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2017年5月までに624件の医療事故が報告され、6割超で院内調査完了―日本医療安全調査機構
2017年4月までに601件の医療事故が報告、約6割で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2017年2月までに546件の医療事故が報告、過半数では院内調査が完了済―日本医療安全調査機構
2017年1月までに517件の医療事故が報告、半数で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2016年12月までに487件の医療事故が報告され、46%超で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2016年11月に報告された医療事故は30件、全体の45%で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2016年10月に報告された医療事故は35件、制度開始からの累計で423件―日本医療安全調査機構
2016年8月に報告された医療事故は39件、制度開始からの累計で356件―日本医療安全調査機構
2016年7月に報告された医療事故は32件、制度開始からの累計で317件―日本医療安全調査機構
2016年6月に報告された医療事故は34件、制度開始からの累計では285件―日本医療安全調査機構
制度開始から半年で医療事故188件、4分の1で院内調査完了―日本医療安全調査機構



医療事故に該当するかどうかの判断基準統一に向け、都道府県と中央に協議会を設置―厚労省
医療事故調査制度、早ければ6月にも省令改正など行い、運用を改善―社保審・医療部会

医療事故調査制度の詳細固まる、遺族の希望を踏まえた事故原因の説明を―厚労省



中心静脈穿刺は致死的合併症の生じ得る危険手技との認識を—医療安全調査機構の提言(1)
急性肺血栓塞栓症、臨床症状に注意し早期診断・早期治療で死亡の防止—医療安全調査機構の提言(2)
過去に安全に使用できた薬剤でもアナフィラキシーショックが発症する—医療安全調査機構の提言(3)
気管切開術後早期は気管切開チューブの逸脱・迷入が生じやすく、正しい再挿入は困難—医療安全調査機構の提言(4)
胆嚢摘出術、画像診断・他診療科医師と協議で「腹腔鏡手術の適応か」慎重に判断せよ—医療安全調査機構の提言(5)
胃管挿入時の位置確認、「気泡音の聴取」では不確実—医療安全調査機構の提言(6)
NPPV/TPPVの停止は、自発呼吸患者でも致命的状況に陥ると十分に認識せよ―医療安全調査機構の提言(7)
救急医療での画像診断、「確定診断」でなく「killer diseaseの鑑別診断」を念頭に―医療安全調査機構の提言(8)
転倒・転落により頭蓋内出血等が原因の死亡事例が頻発、多職種連携で防止策などの構築・実施を―医療安全調査機構の提言(9)
「医療事故再発防止に向けた提言」は医療者の裁量制限や新たな義務を課すものではない―医療安全調査機構
大腸内視鏡検査前の「腸管洗浄剤」使用による死亡事例が頻発、リスク認識し、慎重な適応検討を―医療安全調査機構の提言(10)
「肝生検に伴う出血」での死亡事例が頻発、「抗血栓薬内服」などのハイリスク患者では慎重な対応を―医療安全調査機構の提言(11)



人口100万人あたり医療事故報告件数、2017・18・19と宮崎県がトップ、地域差の分析待たれる―日本医療安全調査機構