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DPC等含めた後発品割合80.4%、「踊り場状態」から抜け出せておらず、8割未満は19都府県に増加—協会けんぽ

2022.7.28.(木)

協会けんぽにおけるジェネリック医薬品(後発品)の使用割合は、調剤・医科・DPC・歯科分の合計で今年(2022年)3月末には80.4%で、「踊り場状態」から抜け出しきっていない―。

都道府県別に見ると80%以上の新目標値が未達成である都道府県は19に増加(神奈川県と兵庫県が再び80%未満に落ちてしまった)―。

協会けんぽを運営する全国健康保険協会がこのほど公表した医薬品使用状況から、こういった状況が明らかになりました(協会のサイトはこちら)。「後発品の供給不安」が続く中で、後発品使用割合をどう高めていけばよいのか知恵を絞る必要があります。

協会けんぽ全体の後発品割合、2022年2月から3月にかけて再び「低下」

医療技術の高度化が進んでいます。例えば、脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似した、やはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場してきています。こうした技術進展は「医療費の高騰」に繋がります。

また、少子高齢化も進展を続けています。ついに今年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。高齢化の進展も「医療費の高騰」を招きます。

このように医療費が高騰する一方で、支え手となる現役世代人口は減少する(2025年度から2040年度にかけて急速に減少する)ことから、医療保険の制度基盤が非常に脆弱になってきています。

こうした中では、「医療費の伸びを、我々国民が負担できる水準に抑える」(医療費適正化)ための取り組みが極めて重要になります。政府は、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます。



主に中小企業の会社員とその家族が加入する「協会けんぽ」(運営者:全国健康保険協会)でも、積極的に後発品使用促進に取り組んでいます。たとえば医療機関を受診し、医薬品を処方された加入者個々人に宛てて「貴方の医薬品を先発品から後発品に切り替えれば、自己負担額が○○円軽減されます」といった通知を発出したり、毎月の後発品使用割合の公表などを行っています(前月の記事はこちら)。

このほど公表された今年(2022年)3月末時点の後発品使用割合を見ると、調剤ベースでは82.9%で、前月から0.2ポイント低下してしまいました。後発品メーカーの不祥事に端を発する後発品の欠品・品薄などにより「後発品使用推進にブレーキがかかっている」状況が続いています。徐々に「踊り場を抜け出している」状況も伺えますが、まだまだ本調子には戻っていないようで、今後の状況を注視する必要があります。

調剤分に「医科・DPC・歯科」分を加えた保険診療全体の後発品割合は、▼2020年1月:78.6%▼2月:78.7%▼3月:78.7%▼4月:79.0%▼5月:78.7%▼6月:78.9%▼7月:78.5%▼8月:78.9%▼9月:79.2%▼10月:79.6%▼11月:80.0%▼12月:80.2%▼昨年(2021年)1月:80.3%▼2月:80.4%▼3月:80.4%▼4月:80.6%▼5月:80.6%▼6月:80.5%▼7月:80.0%▼8月:80.1%▼9月:80.0%▼10月:80.1%▼11月:80.4%▼12月:80.3%▼2022年1月:80.4%▼2022年2月:80.5%▼2022年3月:80.4%―となり、こちらも「以前として踊り場状態から抜け出せ切れていない」ことが分かります。

協会けんぽの後発品割合、今年(2022年)2月から3月にかけて再び減少(協会けんぽの後発品割合(2022年3月)1 2207)

後発品割合80%の未達、東京都や大阪府など19都府県に再び増加

都道府県別の後発品割合を見ると、依然として大きなバラつきがあります。「調剤・医科・DPC・歯科」分の後発品割合が最も高いのは沖縄県の88.8%(前月から増減なし)、逆に最も低いのは徳島県で73.8%(同0.3ポイント低下)となっています。

徳島県を含めて、「調剤・医科・DPC・歯科」分で後発品割合80%以上をクリアできていないのは、▼奈良県:75.9%(前月から0.1ポイント上昇)▼高知県:76.0%(同0.2ポイント低下)▼和歌山県:76.3%(同0.1ポイント上昇)▼京都府:76.9%(同0.4ポイント低下)▼大阪府:77.6%(同0.2ポイント低下)▼香川県:77.7%(同0.1ポイント低下)▼愛媛県:77.9%(同0.2ポイント低下)▼広島県:79.0%(同0.3ポイント上昇)▼東京都:79.2%(同0.3ポイント低下)▼山梨県:79.3%(同0.6ポイント低下)▼岡山県:79.3%(同0.2ポイント低下)▼岐阜県:79.4%(同0.1ポイント上昇)▼福井県:79.4%(同0.1ポイント上昇)▼三重県:79.5%(同0.1ポイント上昇)▼茨城県:79.6%(同0.2ポイント低下)▼神奈川県:79.7%(同0.3ポイント低下)▼愛知県:79.8%(同0.1ポイント低下)▼兵庫県:79.9%(同0.2ポイント低下)—の19都府県(前月から2県増加)となりました。前月80%以上をクリアした神奈川県と兵庫県が、再び「80%未満」になってしまいました。

後発品割合80%以上がクリアできていないのは、東京都や大阪府など19都府県(協会けんぽの後発品割合(2022年3月)2 2207)



長引く「踊り場状態」の背景には、一部後発品メーカーの不祥事を起点とする「後発品の供給不安」があり、その状態の解消にも時間がかかっています。昨年(2021年)6月18日に閣議決定された骨太方針2021(経済財政運営と改革の基本方針2021)では、「後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」との目標が確認されています。この新目標値達成に向かう中で、「後発品の供給不安」が重い足枷となっています。

2022年度の診療報酬改定では「後発医薬品使用」策として加算・減算の強化が行われましたが、供給不安が続く中でどう効果が現れてくるのか、今後の動向を注視していく必要があります。



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