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介護情報の共有・利活用に向け、「共有すべき介護情報の選別」「介護情報記録の標準化」などを検討—介護情報利活用ワーキング

2022.9.14.(水)

より質の高い介護サービス提供を目指し、介護分野においても「介護情報の標準化を行い、介護サービス事業所・施設間で情報共有する仕組み」を検討していく。まず「どういった介護情報の共有すべきか」「情報の標準化をどういった形で進めるか」「どのような手法で情報を共有するか」を検討する—。

こうした議論が、9月12日の健康・医療・介護情報利活用検討会「介護情報利活用ワーキンググループ」(以下、ワーキング)で始まりました。厚生労働省データヘルス改革工程表に則り「2023年度中の結論」に向けて議論を進めていきます。

介護情報の共有について2023年度中に結論を得る必要がある(介護情報利活用ワーキング4 220912)

医療情報の共有・利活用と同じく、「共有する介護情報の選別、標準化」などを議論

医療分野については「患者の過去の診療情報を、患者同意の下で、医療機関等が確認し、医療の質を高める」「患者自身が、過去の診療情報を閲覧し、セルフメディケーションに役立てる」という取り組みが進んでいます(関連記事はこちら)。

介護分野でも同様に、「利用者の過去の介護情報を、利用者同意の下で、各介護事業所・施設で確認し、介護サービスの質を高める」「利用者自身が、過去の介護情報を閲覧し、自立・重度化防止に取り組む」ことを可能とする仕組みを構築します。

例えば、在宅生活を継続する要介護者等では、様々なサービス(訪問介護、訪問看護、デイ・サービス、デイ・ケア、福祉用具態様・・・)を組み合わせて利用するケースが多くなります。この点、各事業所がてんでばらばらにサービスを行うのではなく、「利用者Aさんについて、●●事業所から訪問看護を受け『◆◆に注意』といった情報提供がなされている。デイ・ケアにおいてリハビリを行うにあたり、◆◆に留意しよう」などといった情報連携を密に行うことで、より質の高い介護サービス提供が可能になると思われます。

もちろん、各サービスは、ケアマネジャー(介護支援専門員)がサービス担当者会議の結果を踏まえて作成した「ケアプラン」に則って行われますが、「今日は体調が良くないでデイ・ケアを休む」などにより「ケアプランと実際のサービス提供がズレる」ことなども少なくないため、「実際のサービス提供情報」の共有がより有用と言えます。また上述のように「サービス提供者から発信された情報」を次のサービスに活かしていくことができれば、なお良いと考えられます。

施設入所者においても、「入所者Aさんは、1年前に要介護度2で●●サービスと○○サービスを利用していたが、◆◆および◇◇により要介護度が悪化し、当施設に入所した。施設での介護では◆◆や◇◇に留意する必要がある」ことなどを、過去の介護情報共有から確認することができます。

また、共有可能な情報の中に「医療」に関する項目も加われば、さらに介護サービスの質が向上と期待されます。

このように「介護情報の共有」は非常に有用と考えられますが、闇雲に情報を収集・共有することは、返って「現場の手間が増えるが、サービスの質向上につながらない」結果を招いてしまいます。介護情報は膨大(要介護度、レセプト、LIFE(利用者の状態やケアの内容)、主治医意見書、ケアプラン、ケア記録等)であり、その中から「必要な情報」を探し出すことが困難になってしまいます。また、こうした膨大な情報は、様々な方法で、様々な場所に格納されていることから、「どこに、どの情報が格納されているのか、探すだけでも一苦労であり、また、探し出しても読み込めない」といった事態も生じてしまいます。

各種介護情報の現状(1)(介護情報利活用ワーキング1 220912)

各種介護情報の現状(2)(介護情報利活用ワーキング2 220912)



そこでワーキングでは、まず▼どういった情報を共有するのか(共有すべき情報の選別)▼どのような形式で情報を格納・共有するのか(情報の記録方法の標準化)▼どのような手法で情報を共有するのか(共有方法)—の3点を中心に議論・検討を進めていくことになりました。

医療分野では、今後「電子カルテ情報」の共有を進めていくことになっています。それに向け、▼共有すべき情報は、医療現場で必要不可欠かつ有用となるアレルギーや検査、退院時サマリなどに、まず限定する▼情報の標準化ツールとして「HL7FHIR」という規格を採用する▼情報共有は「オンライン資格確認等システム」を活用する—ことを、長い時間かけて関係者で協議・決定してきたことが、厚生労働省医政局の田中彰子参事官(特定医薬品開発支援・医療情報担当)(医政局特定医薬品開発支援・医療情報担当参事官室長併任)から報告されました(関連記事はこちらこちら)。

電子カルテ標準化に向けた検討の状況1(健康・医療・介護情報利活用検討会2 220304)



介護分野でも、厚生労働省データヘルス改革工程表に則って「2023年度中の結論」に向けて議論・検討を進め、こうした内容を詰めていきます。あわせて、LIFE情報を活用した科学的介護の推進についてもワーキングで議論していくことになります(早くも「LIFEの入力負担を軽減する必要がある」との指摘が複数の構成員から出ている)。

「主治医意見書の共有」が最重要、函館市の「介護情報の標準化」を参考例にせよ

9月12日のワーキングでは、松田晋哉構成員(産業医科大学医学部公衆衛生学教授)から介護情報の利活用に向けた意見発表も行われました。産業医大では自治体の要請を踏まえて「1300万人の医療・介護情報」を分析。そこから、例えば▼介護予防事業の参加者は、外来受療率は高いが入院受療率は低い、在宅介護サービスを多く利用するが、施設入所は少ない(つまり介護予防事業は施設入所・入院を予防する効果がある)▼急性期病院への入院中にADLが下がってしまい、回復期・慢性期病院でのリハビリに支障が出ている(関連記事はこちらこちら)▼肺炎発生と要介護度には大きな関係があり、ケアマネジメントにおいて医療的な要素の勘案が不可欠である▼継続的な歯科受診(=口腔の健康維持)による肺炎予防効果は非常に大きい▼80歳を超えると医療・介護サービスの利用度合が飛躍的に高まる—ことなどを、データを持って立証。自治体の介護予防事業などに行かれています。

松田構成員は、今後、介護情報の標準化・共有が可能になることで、こうしたデータの精度がさらに向上することに期待するとともに、今後に向けて▼主治医意見書の共有が極めて重要である。項目を少し追加し、標準化・電子化を行って各介護事業所・施設で共有可能とすべき▼LIFEにより介護情報を「国レベルで分析する」ことは可能になったが、「現場で活かす」フェイズにまで至っていない。少なくとも「地域レベルで分析結果を活用できる」環境を整える必要がある▼介護データのみの共有だけでなく、「医療・介護データの連結・活用」が極めて重要である▼介護分野における「臨床研究の活性化」が極めて重要である(関連記事はこちら)—といった提言を行っています。江澤和彦構成員(日本医師会常任理事)や田宮菜々子構成員(筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野教授)らも、この提案に強く賛成しています。



さらに、今後の検討に向けて、▼情報の標準化、用語の統一が極めて重要であるが、そこが極めて難しい。実効性のある方策を考えなければならない(齋藤訓子構成員:日本看護協会副会長)▼中小規模事業所における情報利活用を支援する仕組みもセットで考えていく必要がある(今裕司構成員:全国老人福祉施設協議会経営戦略室室長)—といった提案も出ています。重要な意見であり、併せて議論・検討していくことになるでしょう。

小規模事業所ではICT化が遅れている(介護情報利活用ワーキング3 220912)



なお、情報の標準化に向けて松田構成員は「すでに地域で優れたものができており(例えば北海道函館市では標準化を行っている)、それを全国展開してはどうか。我が国の問題点として、先行事例があっても、地域地域で「他の物」をつくりたがるところがある」と指摘しています。独自の取り組みを否定するものではありませんが、先行事例があれば、それを尊重して「最低限の標準規格」とし、そこに地域独自の上乗せを行っていくことが現実でしょう。この点も十分に参考にすべき指摘と言えます。



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