介護報酬の高齢者虐待防止措置未実施減算・身体拘束廃止未実施減算でQA提示、利用者の人権擁護、身体的拘束等の適正化図れ—厚労省
2025.1.21.(火)
「利用者に対し身体的拘束等をしていない」場合であっても、身体的拘束等の適正化を図るための全ての措置(委員会の開催、指針の整備、研修の実施)がなされていなければ【身体拘束廃止未実施減算】が適用される(施設・居住系の介護保険サービスでは10%、短期入所・多機能系では1%の減算)—。
施設・居住系では年に2回以上、訪問・通所・多機能系では年に1回以上の「虐待防止のための対策を検討する委員会」開催がなされていない場合には、【高齢者虐待防止措置未実施減算】が適用される(1%の減算)—。
厚生労働省は1月20日に事務連絡「高齢者虐待防止措置未実施減算、身体拘束廃止未実施減算の取扱いに係るQ&Aの周知について」を示し、こうした考えを明らかにしました(厚労省サイトはこちら)。
利用者の人権擁護、虐待の防止等をより推進し、身体的拘束等の更なる適正化を図る
2024年度の介護報酬改定では、利用者の人権擁護、虐待の防止等をより推進し、身体的拘束等の更なる適正化を図る観点から、▼【高齢者虐待防止措置未実施減算】の新設▼【身体拘束廃止未実施減算】の拡大—が行われています。
●【高齢者虐待防止措置未実施減算】
→居宅療養管理指導、特定福祉用具販売を除く全ての介護保険サービスにおいて、以下の虐待発生・再発を防止するための措置が講じられていない場合に「所定単位数の100分の1」に相当する単位数を減算する(所定単位数から平均して1日・1回あたり7単位程度の減算となる見込み)
(虐待の発生・再発を防止するための措置)
・虐待防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能)を定期的に開催するとともに、その結果について従業者に周知徹底を図る
・虐待防止のための指針を整備する
・従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施する
・上記措置を適切に実施するための担当者を置く

高齢者逆防止措置未実施減算(2024年度介護報酬改定)
●【身体拘束廃止未実施減算】
▽2018年度改定
→(地域密着型)特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、(地域密着型)介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院において、以下の措置を行わない場合に「所定単位数の10分の1に相当する単位数を減算」する
▽2024年度改定
→(介護予防)短期入所系サービス(短期入所生活介護、短期入所療養介護)、(介護予防)多機能系サービス(小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護)においても、以下の措置が講じられていない場合に「所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算」する(短期入所系・多機能系サービスの所定単位数から平均して1日・9単位程度の減算となる見込み)
(身体拘束廃止に関する措置)
・身体的拘束等を行う場合には、その態様・時間、その際の入所者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録する
・「身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会」を3か月に1回以上開催し、その結果について介護職員その他従業者に周知徹底を図る
・身体的拘束等の適正化のための指針を整備する
・介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施する

身体拘束廃止未実施減算(2024年度介護報酬改定)

身体拘束廃止未実施減算(2018年度介護報酬改定)
ところで、短期入所系サービス・多機能系サービスにおいては、身体拘束廃止に関する措置を準備・実施するための時間が必要であるため「2025年3月末までの経過措置」(措置が講じられていなくとも減算をしない)が設けられています(2025年4月からこれらサービスでも減算が実施される)。
厚労省では、利用者の人権擁護、虐待の防止等をより推進し、身体的拘束等の更なる適正化を図る観点から、【高齢者虐待防止措置未実施減算】、【身体拘束廃止未実施減算】の取り扱いについて、考え方を明確化したものです。
まず、短期入所系サービス・多機能系サービスにおける【身体拘束廃止未実施減算】については、次のような点が明らかにされています。
▽「利用者に対し身体的拘束等をしていない」場合でも、身体的拘束等の適正化を図るための全ての措置(委員会の開催、指針の整備、研修の実施)がなされていなければ減算の適用となる
→施設系サービス・居住系サービスにおいても同様
▽運営指導等で「行政機関が把握した身体的拘束等の適正化を図るための措置が講じられていない事実が、発見した日の属する月より過去である」場合、遡及して当該減算を適用することはせず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」となる
▽利用者または他の利用者等の生命・身体を保護するため緊急やむを得ない場合に身体拘束を行うことも考えられるが、その検討にあたっては「3つの要件(切迫性、非代替性、一時性)全てを満たす」ことの記録が確認できなければ減算の適用となる
→「3つの要件」については、以下を参考にしてほしい
・「切迫性」とは、利用者本人・他の利用者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高いことをいう
・「非代替性」とは、身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないことをいう
・「一時性」とは、身体拘束その他の行動制限が一時的なものであることをいう
→訪問系サービス・通所系サービス等について減算の適用はないが、身体拘束を行った際に「当該要件を満たした記録の確認ができない」場合は、指導の対象になる
また、居宅療養管理指導、福祉用具貸与、特定福祉用具販売を除く全サービスが対象となる【高齢者虐待防止措置未実施減算】については、次のよう考え方が明らかにされています。
▽「高齢者虐待防止のための研修」の実施回数については、「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」など「各サービスの指定基準の解釈通知」で示されている「虐待の防止に係る事項」の規定を確認してほしい(厚労省サイトはこちら)
【年に2回以上の開催が必要なサービス】
・(介護予防)特定施設入居者生活介護
・(介護予防)認知症対応型共同生活介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・介護老人保健施設
・介護医療院
【年に1回以上の開催が必要なサービス】
・訪問介護
・(介護予防)訪問入浴介護
・(介護予防)訪問看護
・(介護予防)訪問リハビリテーション
・通所介護
・(介護予防)通所リハビリテーション
・(介護予防)短期入所生活介護
・(介護予防)短期入所療養介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・夜間対応型訪問介護
・地域密着型通所介護
・(介護予防)認知症対応型通所介護
・(介護予防)小規模多機能型居宅介護
・看護小規模多機能型居宅介護
・居宅介護支援
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