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ケアマネの【特定事業所集中減算】、不適切に集中率を低く計算して減算を免れる事例があるため「適正運用」に留意を—厚労省

2024.8.16.(金)

介護保険の要となる介護支援専門員(ケアマネジャー)の公正・中立を担保するための【特定事業所集中減算】について、不適切に集中率を低く計算して、減算を免れている事業所がある(介護給付費の過大請求・支給)。適切な運用に留意してほしい—。

厚生労働省は8月13日に事務連絡「居宅介護支援に係る特定事業所集中減算の適正な適用について」を示し、こうした点への留意を介護現場等に求めました(厚労省のサイトはこちら)。

集中率の正しい計算法を再周知し、減算対象事業所を的確に把握せよ

介護保険制度においては、ケアマネジャー(居宅介護支援)が利用者・利用者家族の状況やニーズ、地域の介護資源、医療専門職等の助言などを総合的に勘案してケアプランを立てます。このようにケアマネジャーは「介護保険制度の要」とも言うべき存在であることから、公正性・中立性が強く求められます。特定の介護サービス事業所への利益誘導等があってはならないのです。

こうした点を踏まえて介護報酬上は、特定の介護サービス事業所に偏ったケアプランを作成するケアマネ事業所に対し【特定事業所集中減算】という一種のペナルティを課しています。

具体的には、ケアプランにおいて最も紹介件数の多い法人事業所の割合を定期的に算出し、「同一法人事業所が80%を超える」場合に、1か月当たり200単位の「減算」が行われます。

ケアマネ事業所の特定事業所集中減算の大枠

2018年度介護報酬改定で特定事業所集中減算が一部見直された



ところで、政府には会計検査院という組織があります。憲法第90条第1項に基づいて設置され、内閣から独立して国の収支決算を検査し、国会に報告する権能を持っています。検査の中で「会計経理に関し法令に違反し、または不当であると認める事項がある」場合や、「制度または行政に関し改善を必要とする事項があると認める」場合などには、主務官庁などに改善を求めることができます(会計検査院法第30条の2ほか)。

この権限に基づいて会計検査院は次のような指摘を行い、「特定事業所集中減算の適切・適正な適用を行う」よう要請しています。
▽19市区等の26事業所において、特定事業所集中減算の適用誤り(訪問介護サービス等を位置付けた計画数(分母)の過大な集計、訪問介護サービス等に係る紹介率最高法人の居宅サービス計画数(分子)の過小な集計により、集中割合を小さく計算する事例)が認められた(後述)
→減算が適用されず、介護給付費が過大に支払われていた

▽この背景には「居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)で算定基準等を十分に理解していなかった」、「市区町村により事業所への指導等が十分でなかった、特定事業所集中減算の適否確認が十分でなかった(減算届出書の提出なし事業所を、減算可能性ありとして確認していないなど)」ことなどがある



こうした会計検査院指摘を踏まえ、厚労省は今般、介護保険者(市町村)や都道府県等に対し次のような点に改めて留意するよう要請しました。ケアマネ事業所においても適切な対応が求められることは述べるまでもありません。

▽居宅介護支援における特定事業所集中減算の適否の確認
→市区町村においては、国民健康保険団体連合会が提供している「居宅介護支援請求状況一覧表」を参照し、「同一法人割合が80%を上回っているケアマネ事業所」から減算にかかる届出書が提出されていない場合は、当該事業所に「判定期間の割合が適正に計算されているか」を確認するなどして、居宅介護支援における特定事業所集中減算の適用誤りがないように介護給付費の適正化に努めてほしい

▽判定期間の割合算出方法に関する居宅介護支援事業所への周知
→特定事業所集中減算が適用されず介護給付費が過大に支払われていた事態の主な原因は、「判定期間(3月1日-8月末日、または9月1日から翌年2月末日)に作成された居宅サービス計画に位置付けられた、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与、地域密着型通所介護それぞれにおける、紹介率最高法人が占める割合」の計算誤りであった
→市区町村においては、後述の「特定事業所集中減算の適用に係る割合の計算を誤っていた主な原因について」をケアマネ事業所に周知するなどし、注意喚起を図ってほしい

▽「居宅介護支援請求状況一覧表」の市区町村への提供時期
→「居宅介護支援請求状況一覧表」は、サービス提供月から半年以上の期間が経ってから提供されるため、「減算適用期間終了前に一覧表を用いての確認ができない」場合もある
→都道府県においては、各都道府県国民健康保険団体連合会に対して「一覧表を早期に市区町村に提供する」よう調整し、その提供時期を市区町村に周知するなどして、確認が速やかに行えるよう配慮してほしい

→市区町村に一覧表が提供される時期は、早くても「サービス提供月の数か月後」となるため、減算にかかる届出書が市区町村に提出される9月または3月の時点では「判定期間に係る同一法人割合が表示される翌10月または翌4月の一覧表」が作成されていない
→市町村においては、このため10月・4月の介護給付費の請求前に一覧表を活用することができないが、「事後的に活用・確認」をお願いしたい



【特定事業所集中減算の適用に係る割合の計算を誤っていた主な原因】
(1)訪問介護サービス等を位置付けた計画数(分母)の過大な集計
(正しいルール)
▼ケアマネ事業所が、訪問介護サービス等を位置付けたケアプランを作成した場合には、訪問介護サービス等を位置付けたケアプランごとに「各月1人1件」として数える

(不適切な事例)
▼1件のケアプランで『複数の訪問介護サービス提供事業所がある』場合に、「訪問介護事業所ごとにケアプラン数を重複して数え、実際のケアプラン数を上回る集計となる」など、ケアマネ事業所がケアプランの集計方法を誤認していた
→分母が大きくなり、「判定期間に占める割合が80%を超えていない」として特定事業所集中減算届出書を市区町村に提出していなかった

(2)訪問介護サービス等に係る紹介率最高法人の居宅サービス計画数(分子)の過小な集計等
(正しいルール)
▼ケアマネ事業所が訪問介護サービス等を位置付けたケアプランのうち、最もその紹介件数の多い法人(以下「紹介率最高法人」)を位置付けた計画数を数える

(不適切な事例)
▼紹介率最高法人の運営する訪問介護事業所が複数ある場合に、一部の訪問介護事業所に係る計画数しか集計していなかった
▼他の市区町村に所在する同じ法人が運営する事業所に係る計画数を集計していなかった
▼ケアマネ事業所と同じ法人が運営する訪問介護事業所があるが、これを除いて計画数を集計していた
→分子が小さくなり、「判定期間に占める割合が80%を超えていない」として特定事業所集中減算届出書を市区町村に提出していなかった



なお、「優れた訪問介護サービス等があれば、そこでサービスが集中することは当然である」として【特定事業所集中減算】の存在そのものに対する疑問を提示する識者や介護現場も少なくありません。この点について社会保障審議会・介護給付費分科会で議論されます。



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