国民への在宅医療の普及に向けリーフレットを作成、自治体・医療機関等でカスタマイズ可能―厚労省
2019.4.19.(金)
厚生労働省は4月18日に「在宅医療に関する普及・啓発リーフレット」(「在宅医療をご存知ですか?」リーフレット)を公表しました。
厚労省のホームページからパワーポイントファイルをダウンロードでき(厚労省のサイトはこちら(ページの中頃から「在宅医療をご存知ですか?」リーフレットをダウンロードできます))、例えば自治体(市町村)や医療機関で「自地域にマッチするようなカスタマイズ」を行って印刷し、地域の医療機関窓口に備えおく、などといった使い方が期待されます。
なお今般のリーフレットは、主に「高齢者」をターゲットとしています。これをトライアルとして、今後、「小児」版リーフレットなどが作成されることが期待されるでしょう。
リーフレットを手にした患者に「在宅医療とはこういうものか」と知ってもらうこと目指す
いわゆる団塊の世代(1947-51年の第1次ベビーブームに生まれた方)がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年に向けて、医療(とくに慢性期医療)・介護ニーズが飛躍的に高まります。そのため、政府は病院・病床の機能分化・連携を推進するための地域医療構想や、地域包括ケアシステムの構築を進めています。地域包括ケアシステムでは言わずもがなですが、地域医療構想でも「療養病棟に入院する医療区分1の患者の70%が在宅に移行する」こととされるなど(関連記事はこちらとこちら)、今後「在宅医療」をいかに充実させていくかが重要なポイントとなります。
しかし、▼エビデンスに基づいた「在宅医療のメリット(QOLの向上など)」が明確に示されてはいない(国民が十分なメリットを感じていない)▼医療者側に「在宅医療の推進は医療費削減にある」という誤解がある▼在宅医療は小規模な組織体制で提供されており、さまざまな考え方や手法が存在する(標準化されていない)▼国民の多くは自宅で最期を迎えたいとの希望を持つが、家族の負担を考慮し、実際の入院から在宅への移行は多くない―といった課題があります。
厚生労働省は、こうした課題を解消し、また「患者の希望に応じて、在宅医療と入院医療を選択できる環境を整える」ために、「全国在宅医療会議」を設置。全国在宅医療会議では、▼在宅医療の「医療連携モデル」構築▼在宅医療の「普及啓発モデル」の構築▼在宅医療に関する「エビデンス」の構築―の3点(重点項目)実現に向けた「7つの柱」を設定し、行政・関係団体が「同じ方向」を向き、「足並みをそろえる」ことを尽力しています(関連記事はこちら)。
そうした中で「全国在宅医療会議」および下部組織である「全国在宅医療会議ワーキンググループ」では、「国民への普及・啓発」に向けた強力なPRを行う必要があると確認し、在宅医療に関する「わかりやすいリーフレット」を作成することも決定しました。
もっとも、在宅医療にはさまざまな形態があり、地域によって状況も区々なことから、国で▼在宅医療とは何か▼どのようなサービスがあるのか▼どうしたら利用できるのか―といった、いわば「雛型」を作成し、各地域・医療機関でカスタマイズしていくことが現実的でしょう。
リーフレット(雛型)では、まず▼通院が難しくなったとき▼退院後―には、「在宅で医療を受けられる」ことをまず示しています。「通院できなくなった場合でも、必ずしも入院しなくともよい」「退院後にも適切な医療が受けられ、安心して退院できる」点を、より広く周知することを目指しています。
そのうえで、在宅医療には、例えば▼医師による「訪問診療」▼歯科医師等による「訪問歯科診療」▼薬剤師による「訪問薬剤管理」▼看護師による「訪問看護」▼リハビリ専門職による「訪問リハビリテーション」▼管理栄養士による「訪問栄養食事指導」―など、さまざまな種類があり、患者の状態によって適切かつ総合的な医療が提供されることを示しています。
リーフレット(雛型)はパワーポイントファイルで作成されており、自治体(市町村)や医療機関で容易に編集(カスタマイズ)できます。
例えば、ある自治体で「〇〇サービスが不足しているが、かわりに在宅介護サービスが充実している」といった場合には、入れ替えて独自のリーフレットを作成することが可能です。
また訪問診療や訪問看護を広範に展開する医療法人が、「訪問診療や訪問看護について、より地域住民にわかりやすいように、各事業所の名称と電話番号を記載する」ことも可能です。
このようにカスタマイズされたリーフレットを、例えば医療機関の窓口に備えおくことで、患者・家族が手にとり「在宅医療とはこういうものなのか」と知ることを目指します。そのうえで「具体的にどのように利用すればよいのかを知りたい」というニーズには、自治体や医療機関のホームページや広報誌などで詳しく情報提供する、という2段構えの活用が期待されます(いきなり詳細な情報を提供した場合、患者・家族にかえって分かりにくくなる恐れがある)。
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