新専門医制度の「臨床研究医コース」、8月にプログラム等提示し、9月から専攻医募集開始へ—日本専門医機構・寺本理事長
2020.7.22.(水)
新専門医制度に新たに設けられる「臨床研究医コース」について、8月にも責任医療機関(研修病院)やプログラムの内容が明らかにされ、9月から専攻医募集を開始する—。
当初は40名枠でスタートし、臨床研究医コースに採用されなかった場合には、10月半ばからの「一般の専攻医コース」に応募することもできる—。
日本専門医機構の寺本民生理事長(6月30日の社員総会で再任)は7月20日の定例記者会見で、このような考えを明らかにしました。
臨床研究医コースからドロップアウトが見られた場合には、研修病院等にペナルティ
2018年度から全面スタートした新専門医制度では、▼日本専門医機構▼学会▼都道府県▼厚生労働省―が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」仕組みを構築・運用しており、その一環として「地域・基本領域ごとの専攻医採用数に上限を設ける」仕組み(シーリング)が設けられています。
シーリングの仕組みは非常に複雑ですが、厚生労働省の試算した「都道府県別・診療科別の必要医師数」をベースに、▼既に必要医師数を確保できていると考えられる都道府県・診療科ではシーリング(採用数に上限)を設ける▼採用数の一部を「他の都道府県での研修」に充てるプログラム(連携プログラム)とする―というものです。
ただし、このシーリング、ベースとなる必要医師数には「研究医」が含まれていません。これでは、将来の我が国の医学水準が低下してしまう恐れがあり、厚生労働省の医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」(以下、専門研修部会)において次のような「臨床研究医コース」を設置することが認められました。
当初は合計40名からスタートし、シーリングの枠外で臨床研究医を養成していきます。
▽通常の専門研修と同様に、臨床研修(初期研修)を修了した医師を対象とし、7年間の臨床研鑽および研究(エフォートの50%以上)に携わる(研修期間は7年間)
▽大学病院等で研鑽する(例えば2年間)中で臨床を学び(主にカリキュラム制となる)、その後、大学院等に進学し、研究に携わる。研究期間中に、First author(主筆)として、SCI(Science Citation Index)論文を2本以上執筆する義務を負う(case reportは除く)
▽研修修了後は、大学等で臨床教官となることが考えられる
▽研修期間中は、身分保障がなされ、所属大学病院や大学院等の規定に沿った給与支給を受けられる
この専門研修部会決定を受け、寺本理事長は2021年度の専攻医(新専門医資格取得を目指す研修医)募集を次のようなスケジュールで進める考えを明らかにしました。
▽基本領域学会(19領域)と調整を進め、8月にも「臨床研究医コース」の詳細を臨床研修医に周知する
↓
▽9月から「臨床研究医コース」の専攻医募集を開始し、10月中旬までに選考・採用決定を行う
↓
▽10月中旬から「一般の専攻医募集」を開始する
臨床研究医を希望する医師には、▼臨床研究医コースでの研修を行う道▼一般の専攻医となり、専門医資格取得後に、自らの負担で大学院等に進学し研究医になる道—の2度のチャンスがあります。前者では、上述のとおり「7年間の身分保障」などがあり、大きなメリットになると期待されています。
臨床研究医コースのイメージとしては、例えば「東京大学医学部附属病院で臨床研鑽を行い、後に東京大学大学院医学系研究科に進学して研究する」形や「国立がん研究センター中央病院で臨床を学び、後に国立がん研究センター研究所で研究に従事する」形などが考えられます。この場合、東大病院や国がん中央病院が責任医療機関として手上げし、研修プログラムを提示して、専攻医の応募を待つことになります。
ただし、臨床研究医コースに入った医師についてドロップアウト(例えば、「臨床研究医コースとして採用されたにもかかわらず、研究医とはならずに専門医資格のみ取得して臨床医となる」ようなケース)が見られた場合には、当該学会や責任医療機関には「一般の専攻医定員枠を削減する」とのペナルティが課されます。寺本理事長は「そういった点も踏まえて、臨床研究医コースの責任医療機関(主に大学病院やナショナルセンター)に手上げを行ってほしい」と要望しています。
なお、上述のとおり臨床研究医コースの定員は「当初は40名」に設定され、▼各基本領域学会に1名(つまり19名分)の枠を置き▼残りの21名分を応募状況を踏まえて各基本領域学会に割り振る—形が考えられています。今後、例えば「X大学大学院・内科臨床研究医コース」「Y国立研究センター・外科臨床研究医コース」などが大学院やナショナルセンター(国立研究所)で設定され、そこへの応募状況を見て、具体的な定員が設定されるイメージです。
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