医療水準向上を目指した研究医養成等も2021年度新専門医養成数に反映させるべき―日本専門医機構
2019.12.25.(水)
2021年4月からの「新専門医資格の取得を目指す専攻医」採用に向けて、都道府県・診療科別の採用数上限(シーリング)を設定する。大枠としては厚生労働省の推計した「都道府県別・診療科別の必要医師数」をベースとした2020年度シーリングを踏襲することになるが、「医療現場の肌感覚」や「研究医等養成の必要性」などを勘案して調整し、早ければ年明け(2020年)2月頃にシーリング設定を行いたい―。
日本専門医機構の寺本民生理事長は、12月23日の定例記者会見でこのような見通しを示しました。
「医療現場の肌感覚」踏まえたシーリング調整も検討
従前の、各学会が独自に養成する専門医制度には「国民に分かりにくくなっている」「質が担保されているか不明確である」との批判が多く、2018年度から、各学会と日本専門医機構が協働して養成プログラムを作成し、統一的な基準で認定する「新専門医制度」へと改められました。
ただし、「専門医の質を追求するあまり、専門医養成施設の要件が厳しくなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されてしまうのではないか」との声が医療現場にあり、▼日本専門医機構▼学会▼都道府県▼厚生労働省―が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」仕組みを構築・運用することとなっています。その一環として「東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の5都府県では、基本領域ごとの専攻医採用数に上限(シーリング)を設ける」仕組みがありましたが、「根拠に基づいたシーリング設定が必要である」との考えに基づき、2020年度の専攻医採用から「厚労省の試算した『都道府県別・診療科別の必要医師数』をベースにした新たなシーリングの仕組み」を導入することになりました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
仕組みは非常に複雑ですが、大枠は▼既に必要医師数を確保できている都道府県・診療科ではシーリング(採用数に上限)を設ける▼採用数の一部を「他の都道府県での研修」に充てるプログラム(連携プログラム)とする―というものです。
ただし、シーリングのベースとなる「都道府県別・診療科別の必要医師数」には、「医療現場の肌感覚に十分マッチしていない」「臨床に従事する医師だけでなく、基礎研究や医学教育等に携わる医師養成を勘案するべきではないか」などの指摘もあり、▼日本専門医機構▼学会▼都道府県▼厚生労働省―では2021年度以降のシーリング設定に向けて「必要医師数の検証・一部見直し」作業を進めています。例えば「医師の働き方改革」や「医師偏在対策」などを勘案することとなりますが、見直しは小幅にとどまり、大枠は「2020年度のシーリングを踏襲する」見込みです。年明け早々に「必要医師数の一部見直し」内容を固め、それをシーリングに反映させることになるでしょう。寺本理事長は「早ければ年明け(2020年)2月頃には2021年度のシーリングを設定し、連携プログラムを含めた専門研修プログラムを関係学会で組んでもらう」考えを示していますが、「必要医師数」と「医療現場の肌感覚」との間には乖離があり、調整が難航する可能性もあります(この場合、シーリング設定が後ろ倒しとなり、研修プログラム設定も遅れてしまう)。
また後者の「研究医等養成」は、我が国の医学・医療水準の維持向上に必要不可欠な要素です。寺本理事長は「ここをしっかり考えなければ、将来、大学病院や高度専門医療センターなどが減少し、我が国の医療が衰退してしまう」とし、日本専門医機構と関係学会とでワーキンググループを設置して「研究医等養成の在り方」に関する考えをまとめる考えを示しました。ただし「具体的に研究医等が何名必要となるのか」という数字の言及までは難しそうです。
なお、来年(2020年)4月からの研修スタートに向けて専攻医登録が進んでおり、11月15日に締め切られた1次登録については、応募者8613名のうち8299名(通常枠:8020名、連携プログラム枠:218名、地域枠:61名)について採用が決定しています。
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