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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

難治がんの1つである食道がん、日本人では「飲酒による遺伝子変異機構」が強く関係―国がん

2021.11.2.(火)

日本人の食道がん(食道扁平上皮がん)症例では、【飲酒】→【遺伝子変異機構が強く働く】→【TP53といったがんドライバー遺伝子(がん増殖に密接に関連する遺伝子)の異常を誘発する】→【食道扁平上皮がんが発症する】という仕組みが明らかになった―。

国立がん研究センターが10月27日に、こうした研究結果を公表しました(国がんのサイトはこちら)。

世界8か国・552の食道がん症例を対象に全ゲノム解析を実施

「食道がん」は、膵臓がんや肝臓がんとともに、いわゆる「難治性がん」の1つに位置づけられ、その発症機構の解明や効果的な治療法の開発などに向けた研究が進められています。

ところで、食道がんの発症頻度は「地域によって大きく異なる」ことがWHOから指摘されています。例えば食道がんの中でも最も多い「食道扁平上皮がん」(日本人では食道がんの9割を占める)は、東アジア、中央アジアから中近東、東アフリカで多く発生しますが、中南米や北アフリカなどでは発生頻度が低くなっています。

食道がんの発生頻度は、世界的に見て地域差が大きい(国がん研究1 211027)



これまでに喫煙や飲酒、刺激物(熱い飲み物など)などが食道がんのリスク因子として浮上してきていますが、これらだけでは「発生頻度の地域差」を説明することが難しく、国がんでは発症頻度の異なる8か国から552症例を収集し、全ゲノム解析を実施しました(日本37例、中国138例、イラン178例、英国7例、ケニア68例、タンザニア35例、マラウイ59例、ブラジル30例)。

その結果、次のような点が明らかになりました。国がんでは、日本人の食道がん(食道扁平上皮がん)症例では、【飲酒】→【遺伝子変異機構が強く働く】→【TP53といったがんドライバー遺伝子(がん増殖に密接に関連する遺伝子)の異常を誘発する】→【食道扁平上皮がんが発症する】という仕組みが明らかになったとコメントしています。

▽飲酒関連変異シグネチャー(がんに特徴的な遺伝子の変異パターン)であるSBS16が、日本・ブラジルの症例で有意に多い

日本とブラジルの食道がん患者では、食道がんに密接に関連する遺伝子変異が多い(国がん研究2 211027)



▽食道がん細胞の増殖には38の遺伝子が密接に関係しており、飲酒歴のある症例では、その1つである「TP53 遺伝子」についてSBS16変異が多く見られる

飲酒歴のある食道がん患者では、食道がんに密接に関連する遺伝子変異が多い(国がん研究3 211027)



▽アルコール分解能の差(エタノール分解代謝においてに重要な酵素であるALDH2のSNPの違い)とSBS16変異とは有意に相関する

また、HBOC(遺伝性乳がん・卵巣がん)の原因遺伝子として知られるBRCA遺伝子変異の有無とSBS3変異にも相関があることが分かり、国がんでは「食道扁平上皮がんの発生に複数の遺伝的な違いも寄与している」ともコメントしています。



なお、前述した食道がん発生頻度の地域差については、▼当初の予想と反して、発症頻度が高い地域の検体でも特別な変異シグネチャーの増加は認められない(地域ごとの発症頻度の違いを規定する因子は「直接がんゲノムに傷を付けるもの」以外のものである▼前がん病変(食道がんでは、炎症等といった組織障害からの再生食道粘膜が知られ、すでに遺伝子が変異した細胞が増殖している)の頻度が影響している可能性もある―との考えを示しました。





国がんでは、さらに「日本における食道がんの新たな予防法開発に応用するために、飲酒に伴う変異誘発機構を解き明かす必要があり、今後も研究を進める」考えを強調しています。



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