病院の平均在院日数、最長は高知の56.2日、最短は宮城の20.9日で、依然大きなバラつき―2017年・患者調査
2019.3.4.(月)
2017年の1日当たりの入院患者数(推計)は131万2600人で、3年前(2014年)に比べて微減。人口10万対の入院受療率も1036で同じく微減。入院患者の年齢構成など見ると、高齢者が大きく増加しており、各医療機関においては「地域の医療ニーズ」を十分に勘案する必要がある。なお、平均在院日数は短縮が続くが、都道府県間のばらつきが依然として大きい―。
厚生労働省が3月1日に公表した2017年の「患者調査」結果から、こうした状況を伺うことができます(厚労省のサイトはこちら(概要)とこちら(詳細な統計表、e―Statサイト))。
目次
入院患者数の減少続く、地域の医療ニーズ見極めが極めて重要
患者調査は、医療機関を利用する患者の傷病などの状況を明らかにするもので、3年に1度行われます。「どの地域に、どのような疾病が多いのか」「年齢によって、どのように疾病構造が異なるのか」などを詳細に知ることができます。病院にとっては、地域のニーズを把握するために極めて重要なデータと言えます。
2017年の患者調査は、6427の病院、5887の一般診療所、1280の歯科診療所を対象に行われました。
まず2017年の1日当たり推計患者数(2017年10月17日から19日のいずれか1日)を見てみると、入院131万2600人(3年前の前回調査に比べて6200人減少)、外来719万1000人(同4万7400人減)となりました。
年次推移を見ると、入院では2008年調査から概ね「減少」を続けています。さまざまな理由(入院医療から外来医療へのシフト(例えば抗がん剤治療など)、入退院支援の充実、人口減少など)で入院医療ニーズが減少しており、病床規模が適切なのかを再検証することが重要です。
一方、外来では2005年調査からほぼ横ばいとなっていますが、病院では「減少」傾向にあります。外来医療の機能分化(一般外来は診療所で、病院は専門・紹介外来を担う)が進んでいることが伺えます。
なお、年齢階級別に見ると、65歳以上の高齢者で入院・外来ともに患者数の増加が続いています。医療ニーズの内容についても、「回復期・慢性期」のニーズが増加していることが伺え、とくに病院において「機能転換」を積極的に考える必要性がさらに高まっていると言えるでしょう。
精神障害・循環器疾患・がん・損傷などの4傷病分類で入院全体の57.9%
次に、入院患者の傷病に着目してみましょう。
入院患者数のトップ4は、依然として▼精神及び行動の障害:25万2000人(前回調査比1万3500人減)▼循環器系の疾患:22万8600人(同1万1500人減)▼新生物:14万2200人(同1900人減)▼損傷、中毒及びその他の外因の影響:13万7700人(同6400人増)―です。
それぞれが入院患者全体に占める割合は、▼精神及び行動の障害:19.2%(前回調査比0.9ポイント減)▼循環器系の疾患:17.4%(同0.8ポイント減)▼新生物:10.8%(同0.2ポイント減)▼損傷、中毒及びその他の外因の影響:10.5%(同0.5ポイント増)―となっており、これら4分類で入院患者全体の57.9%を占めています。4大傷病のシェアは徐々に低下しており、傷病が多様化している状況が伺えます。
入院患者の重症度合いを見てみると、全体では(1)生命の危険がある:5.9%(前回調査比0.2ポイント増)(2)生命の危険は少ないが入院治療を要する:75.2%(同0.9ポイント増)(3)受け入れ条件が整えば退院可能:12.9%(同0.7ポイント減)(4)検査入院:1.0%(同0.1ポイント減)(5)その他:4.9%(同0.5ポイント減)―という状況で、入院患者の重症化が進んでいるように感じられます。
また(3)のいわゆる「社会的入院」の割合を年齢階級別に見ると、▼全体:12.9%(同錠)▼0-14歳:7.0%(前回調査比0.6ポイント増)▼15-34歳:9.7%(同増減なし)▼35-64歳:11.8%(同0.8ポイント減)▼65歳以上:13.6%(同0.8ポイント減)▼75歳以上(再掲):14.0%(同0.9ポイント減)―と、前回調査から減少傾向にあるようです。今後の推移を注意深く見守る必要があるでしょう。
入院受療率、最高の高知と最低の神奈川で2.98倍の格差
次に人口10万対の受療率を見てみましょう。患者数そのものは、人口の多い都市部で必然的に多くなるため、人口規模の差などを除外して地域比較をすることが重要なためです。
全国の受療率は、入院1038(同2ポイント減)、外来5675(同21ポイント減)となりました。入院・外来とも微減、あるいは横ばいと見ることができそうです。
年齢階級別に見ると65歳以上で高くなることが再確認できます(これが高齢者の医療費が高騰する大きな要因です)。ただし、年次推移を見ると65歳以上の受療率は入院・外来ともに下がってきていることが分かります。
傷病分類別に見ると、患者数と同様に▼精神及び行動の障害:199(前回調査比10ポイント減)▼循環器系の疾患:180(同9ポイント減)▼新生物:112(同2ポイント減)▼損傷、中毒及びその他の外因の影響:109(同6ポイント増)―の4大分類で受療率が高いことが分かります。
さらに都道府県別に受療率を見てみると、入院では、▼高知県:2101(前回調査比114ポイント減)▼鹿児島県:1880(同5ポイント減)▼長崎県:1803(同9ポイント減)―などで高く、逆に▼神奈川県:706(同23ポイント増)▼東京都:745(同14ポイント減)▼埼玉県:753(同30ポイント増)―などとなっています。
全国平均との乖離状況を見ると、高い方では▼高知県:2.03倍(前回調査から0.8ポイント低下)▼鹿児島県:1.81倍(同増減なし)▼長崎県:1.74倍(同0.1ポイント低下)―と、低い方では▼神奈川県:0.68倍(同0.2ポイント上昇)▼東京都:0.72倍(同0.1ポイント低下)▼埼玉県:0.73倍(同0.3ポイント上昇)―となっています。最高の高知県と最低の神奈川県との格差は2.98倍で、前回調査に比べて0.26ポイント縮小しましたが、いわゆる「西高東低」の状況に変化はありません。
一方、外来の受療率は、▼佐賀県:7115(前回調査比265ポイント増)▼香川県:6952(同443ポイント増)▼長崎県:6812(同307ポイント増)―などで高く、▼沖縄県:4586(同269ポイント増)▼京都府:5014(同36ポイント増)▼長野県:5033(同89ポイント減)―などで低くなっています。最高の佐賀県と最低の沖縄県との格差は1.55倍で、前回調査から若干縮小しています(0.04ポイント減)。
病院の平均在院日数、最長は高知の56.2日、最短は宮城の20.9日
また2017年9月中に退院した患者について平均在院日数を見ると、慢性期や精神科病院なども含めた病院全体では30.6日となりました。3年前の前回調査に比べて2.6日減少しており、年次推移を見ても着実に減少していることがわかります。
傷病分類別に平均在院日数(診療所も含めた全体)を見ると、▼精神及び行動の障害:277.1日(前回調査比14.8日短縮)▼神経系の疾患:81.2日(同1.0日短縮)▼循環器系の疾患:38.1日(同5.2日短縮)―などで長くなっています。より細かく見ると、▼統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害:531.8日(同14.3日短縮)▼血管性及び詳細不明の認知症:349.2日(同27.3日短縮)▼アルツハイマー病:252.1日(同14.2日短縮)▼気分[感情]障害(躁うつ病を含む):113.9日(同0.5日短縮)▼脳血管疾患:78.2日(同9.3日短縮)▼慢性閉塞性肺疾患:61.5日(同6.6日短縮)―などが長い状況です。
次に、一般病床について在院期間別の推計退院患者数の構成を見ると、▼0-14日:71.9%(同1.3ポイント増)▼15-30日:15.9%(同0.6ポイント減)▼1-3か月:10.5%(同0.4ポイント減)▼3-6か月:1.3%(同0.2ポイント減)▼6か月以上:0.3%(同0.2ポイント減)―となっており、在院日数の短縮化が進んでいることが分かります。
さらに、退院患者について「入院前の居場所」と「退院後の行き先」をクロス分析してみると、「家庭に帰る」人の割合は、「家庭から入院した人」では90.2%(前回調査比0.1ポイント増)なのに対し、「他の病院・診療所から入院(転院)した人」では43.2%(同0.4ポイント増)にとどまることが分かりました。「転院患者(他院からの入院患者)の自宅復帰は難しい」ことが患者調査でも裏付けられた格好です。
2018年度の診療報酬改定では、▼急性期一般病棟1における「在宅復帰率」の見直し(「在宅復帰・病床機能連携率」と名称変更等)▼地域包括ケア病棟、療養病棟における「救急・在宅等支援(療養)病床初期加算」の見直し(急性期患者支援(療養)病床初期加算と在宅患者支援(療養)病床初期加算との2分し、後者を高く評価)―などの見直しが行われました。こうした報酬改定が、患者の流れにどのように影響するのか、今後の調査結果にも注目する必要があります。
ところで、都道府県別の平均在院日数(病院のみ)を見てみると、▼高知県:56.2日▼佐賀県:48.1日▼長崎県:44.1日―で長く、逆に▼宮城県:20.9日▼神奈川県:23.9日▼愛知県:34.6日―で短くなっており、依然として大きなばらつきのあることが分かります。受療率の高い地域で、在院日数が長い傾向があり、「不適切な入院の長期化」あるいは「入退院支援の努力放棄」(消極的な入院の長期化)などが生じていないか、詳しく見ていく必要があるでしょう。在院日数の不適切な長期化は、▼ADLの低下▼院内感染リスクの上昇▼患者や家族のQOL低下(職場復帰等が遅れることによる経済的な損失なども含めて)▼高齢者における認知機能の低下―などのデメリットが大きく、厳に慎むべきでしょう。
在宅医療受給者、「訪問診療」が特に増加
最後に在宅医療の状況を見てみると、2017年10月17から19日のいずれか1日に在宅医療を受けた患者数は18万100人で、前回調査に比べて2万3700人増加しています。
2008年以降、とくに「訪問診療」が急増していることが分かります。厚労省は、患者自身が医師等の適切なアドバイスを受けて「入院医療を選択するのか、在宅医療を選択するのか」を選べる環境の整備を進めています。あわせて、地域医療構想の中では「2025年には、『療養病床に入院する医療区分1の患者』の7割を、在宅や介護施設等で受け入れる」こととなっており、高齢化による在宅・介護施設ニーズ増に加えて、「約30万人分のニーズ増」が新たに生じる計算です。在宅医療提供体制のさらなる整備が期待されます。
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