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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

病院の経営状況は2022→23年度に悪化、病院経営を安定させ地域医療守るために「入院基本料の大幅引き上げ」が必要―日病・全日病・医法協

2023.9.22.(金)

昨年度(2022年4-6月)と本年度(23年4-6月)の病院経営状況を見ると、「医業だけでは病院経営が成り立たない」(7割超が医業赤字)、「補助金がなければほとんどの病院が赤字経営となる」(7割程度が経常赤字)という異常な事態が続いており、その状況が拡大していることが分かる—。

日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3団体が9月15日に公表した「医療機関経営状況調査」結果から、こうした状況が明らかになりました(日病のサイトはこちら)。

3病院団体では、地域住民の健康・生命を守るために、2024年度の次期診療報酬改定では「入院基本料の大幅引き上げが必要」と改めて強調しています。

コロナ補助金等がなければ7割の病院が「経常赤字」の状況が続く

来年度(2024年度)には診療報酬・介護報酬の同時改定が控えており、今後、中央社会保険医療協議会や社会保障審議会・介護給付費分科会で改定論議が進められていきます。日病・全日病・医法協の3病院団体では、次期改定に向けて「病院の厳しい経営状況を勘案した論議」が行われるよう、▼昨年(2022年)4-6月▼本年(2023年)4-6月—の収支状況を調査し、その結果概要を明らかにしました。8月21日時点で810病院が回答を行っています(うち有効回答は333)。

まず病院の経営状況が昨年度(2022年度)から本年(23年度)にかけてどう推移したのかの全体像を見ると、次のように「悪化している」「コロナ関連等の補助金がなければ病院経営は危機的な状況にある」ことが再確認されました。

▽医業収支が赤字となった病院の割合は、昨年度(22年度)の65.8%から、本年度(23年度)には70.3%に増加した

▽経常収支(新型コロナウイルス感染症関連補助金・物価高騰関連補助金を含む)が赤字となった病院の割合は、昨年度(22年度)の58.9%から、本年度(23年度)には63.1%に増加した

▽コロナ補助金・物価高騰補助金を除くと、経常収支が赤字である病院の割合は、昨年度(22年度)の61.9%から、本年度(23年度)には66.7%に増加した

2022年度→23年度の経営状況比較(3病協調査1 230915)



また「病院の規模」の影響を除外するために「100床あたり」の状況を見ると、やはり次のように「経営状況が悪化している」「「コロナ関連等の補助金がなければ病院経営が困難である」ことが分かります。

【100床あたり医業利益】
▽昨年度(2022年度):マイナス4106万4000円 → 本年度(23年度):マイナス4691万6000円(585万2000円の悪化)

【100床あたり経常利益(コロナ補助金等含む)】
▽昨年度(2022年度):マイナス2807万7000円 → 本年度(23年度):マイナス3429万1000円(621万4000円の悪化)

【100床あたりの、コロナ補助金などを除く経常利益】
▽昨年度(2022年度):マイナス2994万1000円 → 本年度(23年度):マイナス3598万3000円(604万2000円の悪化)

100床当たりの経営状況(3病協調査2 230915)



3病院団体では、▼補助金がなければ赤字経営が拡大する危機的な状態が続いている▼この9月(2023年9月)でコロナ補助などが大幅縮小される—ため、状況はさらに厳しくなると見、安定的な医療提供体制を確保するために「大幅な入院基本料の引き上げが必要」と改めて強調しています。

医業収益(収入)の増加を上回って医業費用(コスト)が増加し、病院経営が悪化

また、100床当たりの経営指標を細かく見ると次のような状況が分かりました。本稿では「昨年(2022年)4-6月分合計」と「本年(2023年)4―6月分合計」に注目しています

【100床あたりの医業収益(収入)】
▽昨年(2022年)6月:5億6698万5000円 → 本年(2023年)6月:5億7823万5000円(1125万円・2.0%の増加)
●入院:3億8047万4000円 → 3億8837万9000円(2.1%の増加)
●室料差額:882万2000円 →883万3000円(0.1%の増加)
●外来:1億5928万4000円 → 1億6172万4000円(1.5%の増加)
●その他:1840万6000円 → 1929万9000円(4.9%の増加)

【100床あたりの医業費用(コスト)】
▽昨年(2022年)6月:6億804万9000円 → 本年(2023年)6月:6億2515万1000円(1710万2000円・2.8%の増加)
●医薬品:8733万6000円 → 9329万1000円(6.8%の増加)
●診療材料:5839万1000円 → 5955万6000円(2.0%の増加)
●給与:3億1403万4000円 → 3億1915万円(1.6%の増加)
●委託費:4185万6000円 → 4284万7000円(2.4%の増加)
●設備関係:5489万7000円 → 5526万9000円(0.7%の増加)
●研究研修費:141万4000円 → 164万6000円(16.4%の増加)
●経費:3503万円 → 3734万4000円(6.6%の増加)

2022年度の100床当たり経営指標(3病協調査3 230915)

2023年度の100床当たり経営指標(3病協調査4 230915)



2022年度から23年度にかけて「医業収益」(収入)の増加が見られますが、それを上回って「医業費用」(コスト)が増加したために、経営状況が悪化していることを確認できます。

電気料金の高騰が続き、2022年度から23年度にかけて15.8%も増加

さらに、急騰が続く「光熱水費」(経費の内訳)を見ると次のような状況です。

●水道光熱水費:1069万5000円 → 1155万5000円(8.0%の増加)
○電気:651万3000円 → 754万2000円(15.8%の増加)
○ガス:217万5000円 → 207万6000円(4.6%の減少)
○その他:200万7000円 → 193万8000円(3.4%の減少)

ガス料金などは減少していますが、「電気料金」の高騰が続いており、これが経営を相当程度圧迫している状況を伺うことができます。



こうしたコスト増について、一般企業であれば「価格に上乗せする」などの対応が可能ですが、保険医療機関ではそうした対応は行えません。医療の「価格」は、公定価格である社会保険診療報酬として「一律」に決定されており、個々の医療機関の判断で上げ下げすることは許されないのです。このため日本病院会や日本病院団体協議会などは「光熱水費の急騰に対応するための手当て」を加藤勝信厚生労働大臣(当時)に宛てて強く要請してきており(関連記事はこちらこちら)、今後、中央社会保険医療協議会等でどのような対応が検討されるのか注目を集めます。



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