有床診の減少スピード加速続く、2019年9月に9万床を、19年末に6500施設を割る可能性大―医療施設動態調査(2019年4月)
2019.7.1.(月)
有床診療所の減少スピードは、昨年(2018年)9-11月分のデータを見る限り「鈍化」が伺えたが、2018年12月-今年(2019年)4月分のデータを見ると、確実に「減少スピードが再びアップ」している。現在のペースが続けば、2019年9月にベッド数9万床を切り、19年末に施設数は6500を割る可能性が高い—。
こうした状況が、厚生労働省が6月27日に公表した医療施設動態調査(2019年4月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診の施設数、1か月当たり30施設程度のペースで減少
厚労省は、毎月末の病院・診療所の施設数・病床数を「医療施設動態調査」として公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。
今年(2019年)4月末の状況を見ると、全国の医療施設は17万9110施設で、前月末から61施設の増加となりました。うち病院の施設数は、前月末から15施設減少し、8327施設となりました。病院の種類別に見てみると、▼一般病院:7272施設(前月から15施設減少)▼精神科病院:1055施設(同増減なし)—などという状況です。また一般病院のうち、「療養病床を有する病院」は3688施設で前月末から15施設減少、「地域医療支援病院」は576施設で前月末からの1施設増加しています。
なお地域医療支援病院については、現在、厚労省の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」において承認要件見直し論議が進められており、「地域(都道府県)の判断で、医師の少ない地域への医師派遣実施などのプラスアルファ要件を追加できる」方向が固まっています(関連記事はこちら)。
一方、医科診療所は10万2298施設で、前月末から96施設増加しています。無床の医科診療所は増加(前月末から140施設増加)している一方で、有床診療所は前月末から44施設減少し、6730施設となりました。
有床診療所の施設数は、2年前(2017年4月末)には7426(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2018年4月末)には7095(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2017年4月末から2018年4月末までの1年間で331施設減少、さらに今年(2019年)4月末までの1年間で365施設減少しています。有床診療所の施設数は、2018年4月末以降、次のように推移しています。
▼2018年4月末:7095施設
↓(21施設減)
▼2018年5月末:7074施設
↓(78施設減、再集計後)
▼2018年6月末:6996施設(再集計後)
↓(28施設減)
▼2018年7月末:6968施設
↓(20施設減)
▼2018年8月末:6948施設
↓(14施設減)
▼2018年9月末:6934施設
↓(25施設減)
▼2018年10月末:6909施設
↓(16施設減)
▼2018年11月末:6893施設
↓(26施設減)
▼2018年12月末:6867施設
↓(31施設減)
▼2019年1月末:6836施設
↓(30施設減)
▼2019年2月末:6806施設
↓(32施設減)
▼2019年3月末:6774施設
↓(44施設減)
▼2019年4月末:6730施設
この1年間は、1か月当たり「30施設強」のペースで減少が続いています。2018年9-11月では減少スピードが一時落ちましたが、2018年11月以降、再度減少スピードアップしていることが確認できます。このペースが続くと仮定すれば、今年(2019年)12月末に6500施設を割る計算です(先月までと同じ減少ペース)。
有床診のベッド数、1か月当たり410床程度のペースで減少
次に医療施設の病床数(ベッド数)に目を移してみましょう。
医療施設全体のベッド数は、今年(2019年)4月末には162万7346床で、前月末から4400床の大幅減少となりました。うち病院の病床数は153万5358床で、前月末から3731床の大幅減となっています。
医療法上の病床種類別に見ると、▼一般病床:88万9430床(前月末から857床減少)▼療養病床:31万1735床(同2352床減少)▼精神病床:32万7839床(同327床減)—などとなりました。
療養病床の大幅減の背景には、2018年度の介護報酬改定で単位数や構造設備基準・人員配置基準などが設けられた「介護医療院」(医療・介護・住まいの3機能を併せ持つ新たな介護保険施設)への転換などが関係していると考えられます。ただし、今年(2019年)3月末までに医療療養から介護医療院へ転換した病床数(病院)は1555床にとどまっており、詳しく分析する必要があるでしょう(関連記事はこちら)。
また有床診療所の病床数は前月末から669床減少し、9万1930床となりました。2年前(2017年4月末)には10万873床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2018年4月末)には9万6856床(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2017年4月末から2018年4月末までの1年間で4017床減少、さらに今年(2019年)4月末までの1年間で4926床減少しています。2018年4月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2018年4月末:9万6856床
↓(276床減)
▼2018年5月末:9万6580床
↓(969床減、再集計後)
▼2018年6月末:9万5611床(再集計後)
↓(296床減)
▼2018年7月末:9万5315床
↓(286床減)
▼2018年8月末:9万5029床
↓(176床減)
▼2018年9月末:9万4853床
↓(352床減)
▼2018年10月末:9万4501床
↓(231床減)
▼2018年11月末:9万4270床
↓(374床減)
▼2018年12月末:9万3896床
↓(379床減)
▼2019年1月末:9万3517床
↓(448床減)
▼2019年2月末:9万3069床
↓(470床減)
▼2019年3月末:9万2599床
↓(669床減)
▼2019年4月末:9万1930床
この1年間では、1か月当たり410床強のペースで減少が続いており、減少ペースが再度アップしていることが分かります。このペースが継続すると仮定すれば、今年(2019年)9月末には9万床を切ることになります(先月までと同じペース)。
厚労省は、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定論議において、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の大きく2類型に分け、後者の「地域包括ケア型」について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視。
この課題を解決し、有床診の経営を下支えするために、次のような報酬見直しを行いました(関連記事はこちらとこちら)。
▼診療報酬での対応:介護サービスを提供する有床診では、高い入院基本料(入院基本料1-3)の要件を緩和し、さらに要介護者の受け入れを【介護連携加算】(新設、1日につき38点または192点)として評価する
▼介護報酬での対応:利用者専用病床を1床確保すれば、看護小規模多機能型居宅介護の「宿泊室」の設備基準を満たしているものとみなす
2018年9-11月分のデータからは、2018年度改定の効果が現れ、有床診の減少に「若干のブレーキ」がかかったように見えました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。しかし、2018年12月-2019年4月分データでは「ブレーキが外れ、さらにアクセルが踏まれた」と考えられます(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
有床診の重要性は上記のとおりですが、経営を下支えするために診療報酬等で何ができるのか、こうしたデータも踏まえ、2020年度の次期診療報酬改定に向けて中央社会保険医療協議会でさまざまな角度から議論していくことが必要でしょう。
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