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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

2020年7月、病院の患者数は前月に比べて入院では回復、外来ではやや悪化―病院報告、2020年7月分

2020.11.9.(月)

病院の患者数を前年同月と比較した場合、今年(2020年)7月は前月に比べて「入院では改善」したものの、「外来では若干悪化」してしまっており、新型コロナウイルス感染症は依然として病院経営に厳しい影響を及ぼしている—。

厚生労働省が11月6日に公表した今年(2020年)7月分の病院報告から、こうした状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

2020年7月、新型コロナによる「患者減」は入院では改善したが、外来ではやや悪化

厚労省は、全国の病院における(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を毎月末に「病院報告」として公表しています(前月末の記事はこちら、前々月末の記事はこちら)。医療提供体制の実態をリアルタイムで、また経時的に把握することができ、地域医療の在り方を考える際に極めて重要な資料となります。

今年(2020年)7月末の(1)「1日平均患者数」は、病院全体で▼入院:115万2518人▼外来:121万7634人―となりました。

前年(2019年)の7月末と比較すると、入院では6.5%の減少、外来では11.7%の減少となりました。前年同期と比べた患者数の増減動向は4月以降、次のようになっています。

【入院】
▽4月:7.6%減

(2.4ポイント悪化)

▽5月:10.0%減

(2.0ポイント改善)

▽6月:8.0%減

(1.5ポイント改善)

▽7月:6.5%減

【外来】
▽4月:19.5%減

(5.7ポイント悪化)

▽5月:25.2%減

(16.6ポイント改善)

▽6月:8.6%減

(3.1ポイント悪化)

▽7月:11.7%減

2020年7月に入り、病院の入院患者はさらに戻ってきたが、外来は若干悪化してしまった(病院報告2020年7月1 201106)



入院に関しては、限られた医療資源を新型コロナウイルスに感染した重症患者に重点化・集約化するために「予定入院・予定手術の延期を検討する」ことが求められました。また外来に関しては、患者サイドが「新型コロナウイルス感染のリスクを低減するために、受診を控える」「非常に軽微な症状の場合には病院を受診しない」「衛生面の向上や他者との接触が減少したために他の感染症(ウイルス性腸炎など)が激減した」ことなどにより患者数は大きく減少しています。

各種調査によれば「患者減は5月に底を打ち、6月に入ると回復してくる。ただし7月に入ると一部指標で再び悪化してしまった」ことが報告されており、病院報告でも同様の状況を確認できます。

【新型コロナウイルス感染症の病院経営への影響調査等の関連記事】
●GHC分析7月6月 5月4月3月
●支払基金データ7月6月5月4月3月
●日病・全日病・医法協調査7月調査第1四半期追加報告最終報告速報
●全自病調査5月分調査4月分調査
●全国医学部長病院長会議調査7月分調査4・5・6月分調査
●健保連調査7月分調査6月分調査4月・5月分調査
●厚労省医療費の動向4-6月分



医療法上の病床種別に「入院患者数」と「前年同月からの変化」を見てみると、次のような状況です。一般病床で患者減が目立ちますが、回復傾向が見て取れます。

▼一般病床:62万4200人(前年同月比7.9%減、前月に比べて2.3ポイント改善)
▼療養病床:24万9018人(同8.0%減、前月に比べて0.2ポイント改善)
▼精神病床:27万7282人(同1.9%減、前月に比べて0.4ポイント改善)
▼結核病床:1404人(同5.5%減、前月に比べて7.9ポイント改善)



また、感染症病床の入院患者数動向を見ると、次のようになっています。
▽今年(2020年)1月:79人

(76人・96%増)

▽2月:155人

(142人・92%増)

▽3月:297人

(408人・137%増)

▽4月:705人

(291人・41.3%減)

▽5月:414人

(238人・57.5%減)

▽6月:176人

(438人・248.9%増)

▽7月:614人

増減の背景を詳しく分析する必要がありそうです。



ところで、「社会保障審議会・医療部会」などでは、「新型コロナウイルス感染症を契機として、我が国の医療提供体制の課題がより明確になった。地域医療構想の実現などを加速化していく必要がある」ことを確認しています。もっとも、約440の公立病院・公的病院等に求められている「再編・統合に向けた再検証」については、現場から「その必要性・重要性は認識しているが、まず新型コロナウイルス感染症対応に注力すべきである。現時点では期限を切るべきではない」との要請がなされており、今後の議論を注目する必要があります。

病院の平均在院日数は短縮、「不要な入院のリスク」を新型コロナで再確認

また(2)「平均在院日数」は、病院全体では27.9日で、前月から0.4日の短縮となりました。

病床種別に見ると、▼一般病床:16.1日(前月から0.1日短縮)▼療養病床:140.0日(同4.6日延伸)▼介護療養病床:324.9日(同30.3日延伸)▼精神病床:270.0日(同4.6日延伸)▼結核病床:41.7日(同8.2日短縮)▼感染症病床:7.4日(同1.3日延伸)―となりました。

2020年6月から7月にかけて病院の平均在院日数は短縮している(病院報告20年7月3 201106)



なお、不必要な長期入院が「感染リスクを高めてしまう」ことが新型コロナウイルス感染症によって再確認されたと言えます。必要な入院が阻害されることがあっては困りますが、例えば「経営のために在院日数を伸ばす」ことが、医療安全を阻害し、地域における病院の信頼を損ねてしまうことに留意が必要です。

一般病床の利用率はさらに回復して69.7%に

さらに(3)「月末病床利用率」に目を移すと、病院全体では75.8%で、前月から0.9ポイント上昇しました。

病床種別に見ると、▼一般病床:69.7%(前月比1.1ポイント上昇)▼療養病床:84.6%(同0.4ポイント上昇)▼介護療養病床:86.0%(同0.7ポイント上昇)▼精神病床:85.1%(同0.5ポイント上昇)▼結核病床:37.6%(同5.2ポイント上昇)▼感染症病床:70.0%(同54.7ポイント上昇)―という状況です。

2020年6月から7月にかけて、一般病床の利用率はさらに回復した(病院報告2020年7月2 201106)



病床利用率は乱高下しており、新型コロナウイルス感染症患者と他の疾患の患者とに分けて、それぞれの入院動向をより詳しく見ていく必要があるでしょう。



なお、新型コロナウイルス感染症という特殊要因があり、一般病床の「平均在院日数」や「病床利用率」の動向を過去同月と比較することは困難です。ただし、新型コロナウイルス感染症対策を考えるうえでも「地域における病院の機能分化・連携の強化」が非常に重要なことを失念してはなりません。

例えば「新型コロナウイルス感染症の重症患者、中等症患者、あるいは重症化リスクの高い患者を重点的に受け入れる病院」「新型コロナウイルス感染症患者は受け入れず、それ以外の救急患者を受け入れる病院」などの機能分化を進めておくことで、「円滑な入院調整」「院内感染リスクの低減」が期待でき、結果として「医療提供体制の逼迫・崩壊」を防止することに繋がります。

さらにこうした機能分化を進めておくことは、▼地域医療構想の実現▼医師働き方改革の実現▼医師偏在の解消―にもつながります。医師働き方改革は「医師の健康・生命を維持」しながら、「地域医療提供体制の確保」を目指すもので、2024年4月から新たな時間外労働上限(原則960時間以内)がスタートします。

上述のとおり、社会保障審議会・医療部会などでもこうした点が確認されており、今後、議論を詰めていくことになります(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。



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