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2020年5月、医療機関の患者減・請求点数減に拍車かかる―支払基金

2020.8.4.（火）

新型コロナウイルス感染症の影響により、レセプトの請求件数（＝総患者数）、請求点数（＝医療機関の収益）が前年同月の減少度合いが、今年（2020）年5月には、さらに悪化した―。

社会保険診療報酬支払基金が8月3日に公表した「統計月報（令和2年5月診療分）」から、こうした状況が明らかになりました（支払基金のサイトはこちら（Excelファイルをダウンロード））（4月に関する記事はこちら、3月に関する記事はこちら）。

Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの分析でも、▼新型コロナウイルス感染症の影響が限定的であった3月時点で、すでに入院・外来ともに患者減が生じていた▼4月に入るとこの影響が拡大した▼5月には、患者減がさらに拡大し、待てないはずの「がん」や「脳梗塞」「心不全」の患者も減少した—ことが明らかとなっています。

1 前年同期比で、医科入院では9.5％、医科入院外では17.5％の請求金額減
2 病院・診療所ともに患者数・請求金額の減少進む、ただし診療所は「底」の可能性も
3 国立病院等や大学病院などの基幹病院、さらに患者数・請求金額などの減少進む
4 DPCでも総日数・請求点数の減少度合いが悪化

前年同期比で、医科入院では9.5％、医科入院外では17.5％の請求金額減

「2020年3月診療分の請求件数・請求点数」「2020年4月診療分の請求件数・請求点数」と同じ流れで、今年（2020年）5月の請求状況を見ていきましょう。

まず全体は次のようになっており、概ね、前年同月（2019年5月）に比べて減少度合いが厳しくなっていることが分かります。訪問看護のみ増加が認められるのは4月と同様の状況です。

▽総計：7084万797件（前年同月比24.2％減、4月に比べて1.3ポイントのマイナス）、9107億5322万円（前年同月比12.4％減、4月に比べて2.2ポイントのマイナス）
▽医科計：3714万867件（前年同月比25.8％減、4月に比べて1.6ポイントのマイナス）、6370億714万円（前年同月比同13.8％減、4月に比べて2.1ポイントのマイナス）
▼医科入院：70万6768件（前年同月比16.0％減、4月に比べて1.6ポイントのマイナス）、3079億2010万円（前年同月比9.5％減、4月に比べて3.2ポイントのマイナス）
▼医科入院外：3643万4099件（前年同月比26.0％減、4月に比べて1.7ポイントのマイナス）、3290億8704万円（前年同月比17.5％減、4月に比べて1.5ポイントのマイナス）
▽歯科：955万1896件（前年同月比20.3％減、4月に比べて2.0ポイントのプラス）、829億9558万円（前年同月比10.0％減、4月に比べて2.7ポイントのプラス）
▽調剤：2398万8169件（前年同月比23.3％減、4月に比べて1.9ポイントのマイナス）、1738億1809万円（前年同月比9.2％減、4月に比べて4.3ポイントのマイナス）
▽食事・生活療養費：56万8090件（前年同月比17.1％減、4月に比べて3.7ポイントのマイナス）、82億9951万円（前年同月比5.5％減、4月に比べて0.7ポイントのマイナス）
▽訪問看護：15万9865件（前年同月比9.8％増、4月に比べて3.2ポイントのマイナス）、86億3290万円（前年同月比13.2％増、4月に比べて4.0ポイントのマイナス）

病院・診療所ともに患者数・請求金額の減少進む、ただし診療所は「底」の可能性も

次に病院・診療所別に見てみると、次のような状況です。

【病院】
▽医科計：735万6011件（前年同月比23.4％減、4月に比べて4.4ポイントのマイナス）、1713万6142日（前年同月比19.3％減、4月に比べて3.3ポイントのマイナス）、500億8594万点（前年同月比11.9％減、4月に比べて3.6ポイントのマイナス）
▽医科入院：56万8771件（前年同月比16.7％減、4月に比べて3.0ポイントのマイナス）、750万4213日（前年同月比10.0％減、4月に比べて1.2ポイントのマイナス）、330億2939万点（前年同月比10.4％増、4月に比べて3.1ポイントのマイナス）
▽医科入院外：678万7240件（前年同月比23.9％減、4月に比べて4.5ポイントのマイナス）、963万1929日（前年同月比25.3％減、4月に比べて4.9ポイントのマイナス）、170億5654万点（前年同月比14.8％増、4月に比べて4.6ポイントのマイナス）

▽医科計の診療諸率：▼1件当たり6809点（前年同月比15.0％増）、▼1件当たり2.3日（同4.5％増）、▼1日当たり2923点（同9.1％増）
▽医科入院の診療諸率：▼1件当たり5万8072点（同7.6％増）、▼1件当たり13.2日（同8.2％増）、▼1日当たり4401点（同0.4％減）
▽医科入院外の診療諸率：▼1件当たり2513点（同11.9％増）、▼1件当たり1.4日（同増減なし）、▼1日当たり1771点（同14.1％増）

【診療所】
▽医科計：2521万5542件（前年同月比24.0％減、4月に比べて0.6ポイントのマイナス）、3565万1950日（前年同月比24.1％減、4月に比べて0.7ポイントのプラス）、244億8067万点（前年同月比19.4％減、4月に比べて0.9ポイントのプラス）
▽医科入院：5万6952件（前年同月比5.9％減、4月に比べて1.1ポイントのプラス）、30万8406日（前年同月比6.8％減、4月に比べて1.7ポイントのプラス）、8億2765万点（前年同月比4.5％減、4月に比べて2.2ポイントのマイナス）
▽医科入院外：2515万8590件（前年同月比24.1％減、4月に比べて0.6ポイントのマイナス）、3534万3544日（前年同月比24.2％減、4月に比べて0.7ポイントのプラス）、236億5302万点（前年同月比19.8％減、4月に比べて1.1ポイントのプラス）

▽医科計の診療諸率：▼1件当たり971点（前年同月比6.1％増）、▼1件当たり1.4日（同増減なし）、▼1日当たり687点（同6.2％増）
▽医科入院の診療諸率：▼1件当たり1万4533点（同1.6％増）、▼1件当たり5.4日（同1.8％減）、▼1日当たり2684点（同2.5％増）
▽医科入院外の診療諸率：▼1件当たり940点（同5.5％増）、▼1件当たり1.4日（同増減なし）、▼1日当たり669点（同5.7％増）

3月から4月にかけて「前年同期に比べた減少幅」が大きくなったため、4月から5月にかけての減少幅の増加度合いは目立ったものとはなっていません。また、診療所に関しては患者減・請求点数減について「4月で底を打った」感もあります。6月以降の状況が注目されます。

国立病院等や大学病院などの基幹病院、さらに患者数・請求金額などの減少進む

さらに、病院について経営主体別に見ると、次のような状況にあることが分かりました。4月時点では、大学病院や国立病院などの高機能病院でも「単価（1日当たり、1件当たり）の増加で、件数（患者数）の減少を補う」ことができなくなり、請求点数も減少してしまいました。5月にはこうした高機能病院の経営状況がさらに悪化している状況が伺えます。

【国立病院等】
▽医科計：253万7698件（前年同月比25.1％減、4月に比べて6.1ポイントのマイナス）、522万8763日（前年同月比23.1％減、4月に比べて5.4ポイントのマイナス）、190億1657万点（前年同月比14.3％増、4月に比べて5.2ポイントのマイナス）
▽医科入院：20万3881件（前年同月比21.8％減、4月に比べて4.0ポイントのマイナス）、208万9164日（前年同月比15.8％減、4月に比べて2.2ポイントのマイナス）、124億2283万点（前年同月比13.8％減、4月に比べて4.2ポイントのマイナス）
▽医科入院外：233万3817件（前年同月比25.4％減、4月に比べて6.2ポイントのマイナス）、313万9599日（前年同月比27.3％減、4月に比べて7.4ポイントのマイナス）、65億9374万点（前年同月比15.3％減、4月に比べて7.1ポイントのマイナス）

▽医科計の診療諸率：▼1件当たり7494点（前年同月比14.4％増）、▼1件当たり2.1日（同5.0％増）、▼1日当たり3637点（同11.4％増）
▽医科入院の診療諸率：▼1件当たり6万932点（同10.3％増）、▼1件当たり10.2日（同7.4％増）、▼1日当たり5946点（同2.3％増）
▽医科入院外の診療諸率：▼1件当たり2825点（同13.6％増）、▼1件当たり1.3日（同7.1％減）、▼1日当たり2100点（同16.5％増）

【大学病院】
▽医科計：97万5717件（前年同月比22.5％減、4月に比べて2.9ポイントのマイナス）、195万6834日（前年同月比21.0％減、4月に比べて3.0ポイントのマイナス）、97億8925万点（前年同月比10.1％増、4月に比べて3.7ポイントのマイナス）
▽医科入院：7万7800件（前年同月比18.1％減、4月に比べて4.1ポイントのマイナス）、79万8363日（前年同月比14.2％減、4月に比べて2.4ポイントのマイナス）、62億1471万点（前年同月比10.7％増、4月に比べて4.2ポイントのマイナス）
▽医科入院外：89万7917件（前年同月比22.9％減、4月に比べて2.9ポイントのマイナス）、115万8471日（前年同月比25.1％減、4月に比べて3.7ポイントのマイナス）、35億7454万点（前年同月比9.0％減、4月に比べて2.9ポイントのマイナス）

▽医科計の診療諸率：▼1件当たり1万33点（前年同月比16.1％増）、▼1件当たり2.0日（同増減なし）、▼1日当たり5003点（同13.8％増）
▽医科入院の診療諸率：▼1件当たり7万9881点（同9.1％増）、▼1件当たり10.3日（同5.1％増）、▼1日当たり7784点（同4.1％増）
▽医科入院外の診療諸率：▼1件当たり3981点（同18.0％増）、▼1件当たり1.3日（同増減なし）、▼1日当たり3086点（同21.4％増）

【法人病院】
▽医科計：378万5701件（前年同月比22.3％減、4月に比べて3.7ポイントのマイナス）、980万9632日（前年同月比16.8％減、4月に比べて2.2ポイントのマイナス）、210億7496万点（前年同月比10.5％増、4月に比べて2.1ポイントのマイナス）
▽医科入院：28万3843件（前年同月比12.2％減、4月に比べて1.8ポイントのマイナス）、455万6754日（前年同月比6.3％減、4月に比べて0.4ポイントのマイナス）、142億6936万点（前年同月比7.0％減、4月に比べて1.6ポイントのマイナス）
▽医科入院外：350万1858件（前年同月比23.1％減、4月に比べて4.0ポイントのマイナス）、525万2878日（前年同月比24.1％減、4月に比べて3.8ポイントのマイナス）、68億560万点（前年同月比17.0％減、4月に比べて3.2ポイントのマイナス）

▽医科計の診療諸率：▼1件当たり5567点（前年同月比15.3％増）、▼1件当たり2.6日（同8.3％増）、▼1日当たり2148点（同7.5％増）
▽医科入院の診療諸率：▼1件当たり5万272点（同5.9％増）、▼1件当たり16.1日（同7.3％増）、▼1日当たり3131点（同0.8％減）
▽医科入院外の診療諸率：▼1件当たり1943点（同7.9％増）、▼1件当たり1.5日（同増減なし）、▼1日当たり1296点（同9.5％増）

【個人病院】
▽医科計：5万6895件（前年同月比26.6％減、4月に比べて2.9ポイントのプラス）、14万913日（前年同月比21.3％減、4月に比べて0.8ポイントのプラス）、2億516万点（前年同月比17.4％減、4月に比べて1.5ポイントのプラス）
▽医科入院：3247件（前年同月比14.3％減、4月に比べて0.5ポイントのマイナス）、5万9932日（前年同月比10.3％減、4月に比べて2.0ポイントのマイナス）、1億2249万点（前年同月比10.2％減、4月に比べて2.2ポイントのマイナス）
▽医科入院外：5万3648件（前年同月比27.2％減、4月に比べて3.1ポイントのプラス）、8万981日（前年同月比27.8％減、4月に比べて1.8ポイントのマイナス）、8267万点（前年同月比26.2％減、4月に比べて4.9ポイントのプラス）

▽医科計の診療諸率：▼1件当たり3606点（前年同月比12.6％増）、▼1件当たり2.5日（同8.7％増）、▼1日当たり1456点（同5.0％増）
▽医科入院の診療諸率：▼1件当たり3万7725点（同4.9％増）、▼1件当たり18.5日（同5.1％増）、▼1日当たり2044点（同0.1％増）
▽医科入院外の診療諸率：▼1件当たり1541点（同1.4％増）、▼1件当たり1.5日（同増減なし）、▼1日当たり1021点（同2.3％増）

DPCでも総日数・請求点数の減少度合いが悪化

さらにDPC（急性期入院医療）について見てみると、次のような状況です。

▽総計：36万3027件（前年同月比24.1％減、4月に比べて4.6ポイントのマイナス）、1903億7554万円（前年同月比13.5％減、4月に比べて2.9ポイントのマイナス）

▽医科：36万3027件（前年同月比24.1％減、4月に比べて4.6ポイントのマイナス）、331万6249日（前年同月比17.4％減、4月に比べて1.6ポイントのマイナス）、241億1555万点（前年同月比14.1％減、4月に比べて2.3ポイントのマイナス）

日数（総入院日数）・点数ともに4月に比べて「5月はさらに減少の度合いが大きい」ことが分かります。やはり「予定入院・予定手術の延期」（新型コロナウイルス感染症に医療資源を重点化する）の影響が大きいと考えるべきでしょう。

なお、GHCの分析では「緊急入院のほうが、予定入院に比べて件数減の幅が大きい」ことが分かっています（関連記事はこちら（3月分データ）とこちら（4月分データ）とこちら（5月分データ））。疾患構成をみると、▼衛生面の向上による他感染症への罹患が大きく減少した（例えば手洗いの励行による季節性インフルエンザウイルスや腸炎を引き起こすウイルスへの罹患減少など）▼軽症者の救急搬送要請の減少（行動の適正化）―などの要因も大きいことが伺えます。