新型コロナ対策、医療提供体制確保のために3兆円弱の国費投入―2020年度第2次補正予算案
2020.5.28.(木)
安倍晋三内閣は5月27日に、新型コロナウイルス感染症の感染防止、医療提供体制の確保、経済対策などを目指す第2次補正予算を閣議決定しました(1次補正に関する記事はこちらとこちら)。
2次補正単体では31兆9114億円が計上されており、▼資金繰り対応の強化:11兆6390億円▼医療提供体制等の強化:2兆9892億円▼予備費:10兆円―などが盛り込まれています(財務省のサイトはこちら(フレーム)とこちら(概要))。
医療提供体制の確保等を目指す厚生労働省所管分は4兆9733億円(うち一般会計3兆8507億円、労働保険特別会計1兆4446億円)となりました。厚労省所管分のうち「一般会計」分について、その詳細を眺めてみましょう(厚労省のサイトはこちら(概要)とこちら(ポイント))。
厚労省所管分の柱は、次の3本です。
(1)検査体制の充実、感染拡大防止とワクチン・治療薬の開発(2719億円)
(2)ウイルスとの長期戦を戦い抜くための医療・福祉の提供体制の確保(2兆7179億円)
(3)雇用調整助成金の抜本的拡充をはじめとする生活支援(1兆9835億円)
目次
新型コロナの緊急包括支援を拡充、医療従事者や介護従事者への「慰労金」等も対象に
(2)の医療・福祉体制の確保では、まず、1次補正で創設された「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」の抜本的拡充を行うために2兆2370億円が計上されています(関連記事は。
このうち、医療提供体制の整備等(1兆6279億円を計上)については、従前の取り組みに加えて▼重点医療機関(新型コロナウイルス感染症患者の専用病院や専用病棟を設定する医療機関)への支援▼患者と接する医療従事者等への慰労金の支給▼救急・周産期・小児医療機関の院内感染防止対策▼医療機関・薬局等における感染拡大防止等のための支援―なども交付金の対象となります。
また、新たに「介護・福祉分野」も交付金の対象とすることとなり(6091億円を計上)、例えば▼感染症対策を徹底した介護・福祉サービス等の提供をするために必要な経費▼介護・障害福祉事業所に勤務し、利用者と接する職員への慰労金の支給▼介護・障害福祉サービス利用の再開支援―などに交付金が支給されます。
医療機関等の経営支援のため、無担保・無利子融資を拡充
また、医療機関・介護施設等の経営を支援するために、365億円(貸付原資として1兆3200億円を財政融資として確保)を投じて「資金繰り支援」を拡充します。医療機関等の経営が破綻すれば、第2波、第3波に対応できなくなってしまうためです。
具体的には、新型コロナウイルス感染症の影響により休業・事業縮小をした医療・福祉事業者に対する「福祉医療機構による無利子・無担保等の危機対応融資」を拡充するとともに、審査体制の拡充(円滑な融資の実施につながる)が行われます(関連記事はこちらとこちら)。
さらに、すでにGem Medでお伝えしたとおり「福祉医療機構等からの融資を受けるまでのつなぎ資金確保のために、2020年5月診療分の診療報酬について、一部概算前払い(通常であれば7月末支払いとなるところ、6月22日に支払いを行う)が実施されます(6月5日までの申請が必要)。このためには審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会)が支払いのための原資を確保することが必要となり、国庫で「審査支払機関が市中銀行から必要な資金を借り入れた際の利子等」を補助することになります。
医療物資や個人防護具を国で確保し、必要な医療機関等へ配付
また、従前から不足が指摘される医療用物資や防護具等を確保し、医療機関に適切に配付するために4379億円が計上されました(このほかに、新型コロナウイルス感染症対策予備費により1680億円が措置される)。具体的には、▼サージカルマスク▼N95マスク▼ガウン▼フェイスシールド▼手袋―といった個人防護具(PPE)や検体採取キットなどの医療用物資を国で買い上げ、必要な医療機関等への配布と備蓄を行うことになります。
このほか、例えば次のような取り組みも行われます。
▽薬局における薬剤交付支援事業(11億円):電話や情報通信機器による服薬指導等を行った患者に対し、薬局が薬剤を配送等する費用を引き続き支援する
▽介護・障害福祉分野における感染拡大防止等支援(3億3000億円):事業所等の職員が医療的見地からの相談を受けられる窓口の設置、感染対策マニュアルの作成、感染症対策の専門家による実地指導や研修、業務継続計画(BCP)の作成支援、職員のメンタルヘルス支援等を行う
▽医療的ケア児者への衛生用品等の優先配布(9億4000万円):アルコール綿等の衛生用品等を国で買い上げ、人工呼吸器等を利用する医療的ケア児者に優先配布する
▽看護師養成施設等における実習補完(3億5000万円):医療機関等での臨地実習が中止している実情を踏まえ、これを学内演習に代えることにより同等の知識と技能を修得するために、必要な資器材等の支援を行う(関連記事はこちら)
なお、これらのほか「診療報酬において、重症・中等症患者の診療や医療従事者の感染リスクを伴う診療等に係る特例的な評価」を行うこととし、その内容はすでに中央社会保険医療協議会・総会で決定しています(重症者を受け入れる集中治療室等の診療報酬を通常の3倍とするなど、関連記事はこちらとこちら)。
PCR・抗原検査体制の充実、ワクチン開発等にも国費投入を拡充
また(1)では、次のような取り組みが行われます。
▽PCR等の検査体制のさらなる強化:▼地域外来・検査センターの設置とPCR・抗原検査の実施(366億円)▼検査試薬・検査キットの確保と精度管理(179億円)▼抗体検査による感染の実態把握(14億円)▼検疫における水際対策の着実な実施(63億円)―
▽新型コロナウイルス感染症に係る情報システムの整備:▼感染拡大防止システムの拡充・運用等(13億円)▼新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システムの拡充(29億円、関連記事はこちら)―
▽ワクチン・治療薬の開発と早期実用化等:▼ワクチン・治療薬の開発等(600億円)▼ワクチンの早期実用化のための体制整備(1455億円)―
一方、(3)に関しては、次のような取り組みが目を引きます。
▽新型コロナウイルス感染症対応休業支援金(仮称、新型コロナウイルス感染症対策で休業となった中小企業の労働者について、休業期間中の賃金支払いを受けることができなかった場合に支援を行う)の創設:5442億円
▽新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置により休業する妊婦のための助成制度の創設:90億円
▽個人向け緊急小口資金等の特例貸付の実施:2048億円
▽妊産婦等への支援の強化(新型コロナウイルスに感染した妊産婦等に対し、助産師・保健師等が電話や訪問などの寄り添った支援を行うとともに、必要に応じ、不安を抱える妊婦に対する新型コロナウイルスの検査費用の補助、オンラインによる保健指導、里帰り出産が困難な妊産婦への育児等支援サービスの提供を行うなど、新型コロナウイルス流行下における妊産婦に対する総合的な支援を行う):177億円
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