新型コロナへの医療確保のため、ICU病床確保で1床1日9万7000円、ECMOで1台2100万円等を上限に補助―厚労省
2020.5.7.(木)
新型コロナウイルス感染症等への医療提供体制を確保するために、例えば、集中治療室(ICU)について1床・1日当たり9万7000円、人工呼吸器を使用する重症患者受け入れる病床について同じく4万1000円、それ以外の病床について同じく1万6000円を上限として補助を行う―。
また、重症患者に必要な医療設備を整備するために、人工呼吸器については1台当たり500万円、体外式膜型人工肺(ECMO)については同じく2100万円を上限とした補助を行う―。
さらに、ECMO等の知識を持つ医療従事者の派遣費用、救命救急センター等への医療従事者の派遣費用を補助するとともに、新型コロナウイルス感染等で休まざるを得ない医師の「代替医師」派遣費用についても補助を行う―。
厚生労働省は4月30日に「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業」に関する以下の通知・事務連絡を示し、こうした考えを明らかにしました。
▽新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業の実施について(各事業の目的や内容が示されている)
▽新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業の実施に当たっての取扱いについて(各事業の補助上限などが示されている)
▽新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業の交付申請等について(都道府県が国に申請する場合の期限(5月29日)などが示されている)
▽令和2年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の交付について(都道府県が国に申請する場合の書式などが示されている)
▽新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の目安(都道府県別の補助金額総額の目安などが示されている)
目次
新型コロナ患者への入院医療確保のため、病床整備の費用を補助
中華人民共和国武漢市で発生したとみられる新型コロナウイルスが本邦でも猛威を振るい、各地で患者クラスター(集団感染)が生じ、残念なことに死亡例も発生しています。安倍晋三内閣総理大臣は4月7日に緊急事態宣言(当初は▼埼玉県▼千葉県▼東京都▼神奈川県▼大阪府▼兵庫県▼福岡県―の7都府県を対象)を行い、その後、4月16日には緊急事態宣言の対象を、全国に拡大。さらに5月4日には、緊急事態宣言を5月31日まで延長することが決まりました。
新型コロナウイルス感染症対策としては「感染拡大の防止」と「医療提供体制の確保」が極めて重要で、こうした取り組みを支援するために政府は2020年度補正予算を組み、その中で「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業」(以下、緊急包括支援事業)の実施(国費ベースで1490億円程度)を決定しました(関連記事はこちらとこちら)。4月1日に遡って実施されます(4月1日から実施している事業等も補助対象となる)。
事業の実施者は都道府県で、地域の実情に応じて市区町村や民間団体、医療機関など、都道府県が適切と認める者が行う事業の補助・助成を行うものです。事業内容としては、次のようなメニューが準備されました。
(1)新型コロナウイルス感染症に関する相談窓口設置事業
(2)新型コロナウイルス感染症対策事業
(3)新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関設備整備事業
(4)帰国者・接触者外来等設備整備事業
(5)感染症検査機関等設備整備事業
(6)感染症対策専門家派遣等事業
(7)新型コロナウイルス重症患者を診療する医療従事者派遣体制の確保事業
(8)DMAT・DPAT等医療チーム派遣事業
(9)新型コロナウイルスに感染した医師にかわり診療を行う医師派遣体制の確保事業
(10)医療搬送体制等確保事業
(11)ヘリコプター患者搬送体制整備事業
(12)新型コロナウイルス感染症の影響に対応した医療機関の地域医療支援体制構築事業
(13)新型コロナウイルス感染症により休業等となった医療機関に対する継続・再開支援事業
(14)医療機関における新型コロナウイルス感染症の外国人患者受入れのための設備整備 事業
医療提供体制に関連の深いメニューを見てみましょう。
まず(2)「新型コロナウイルス感染症対策事業」は、「入院病床の確保」等を支援するもので、新型コロナウイルス感染症患者の入院に当たって、▼病床確保▼消毒▼搬送▼患者対応に伴い深夜勤務となる医療従事者の宿泊施設確保等▼軽症・無症候の感染患者(以下、軽症者等)の宿泊施設確保や運営等―に関する経費が補助されます。
具体的には、次の額を上限として経費の2分の1が補助されます。
【病床確保】
▽ICU内の病床確保:1床・1日当たり9万7000円
▽人工呼吸器を使用して重症患者を受け入れるための病床確保:1床・1日当たり4万1000円
▽上記以外の:1床・1日当たり1万6000円
【宿泊施設借上げ費】
▽室料:1室・1日当たり1万3100円
▽食費:1食当たり1500円(飲料代・配送費は除く)、1日当たり4500円(飲料代・配送費は除く)
【対象外】
▽軽症者等に対して電話や情報通信機器による診療等を行うためのソフトウェア導入・使用に係る費用は対象経費から除かれる
このうち病床確保の対象施設は2月9日付の事務連絡「新型コロナウイルス感染症患者等の入院病床の確保について(依頼)」に基づいて「新型コロナウイルス感染症患者等を入院させる医療機関」をさし、対象病床は「感染症指定医療機関における感染症病床以外の病床、または感染症指定医療機関以外の医療機関の病床」で、同事務連絡に基づいて「新型コロナウイルス感染症患者等の入院のために確保するものとして、都道府県等が厚生労働省に協議した病床」に限定されます。
また、医療従事者の宿泊施設確保の対象は「医療機関があらかじめ契約等により指定する宿泊施設で、医療従事者が新型コロナウイルス感染症患者の対応のため業務が深夜に及んだ場合、基礎疾患を有する家族等と同居しており帰宅することが困難である場合」などに限定されます。
重症患者に対応するため人工呼吸器整備について1台500万円を上限に補助
また(3)「新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関設備整備事業」は、都道府県が確保した「新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関」において、必要な医療提供を行うために病床・医療資器材等の確保を支援するものです。支援対象は、▼新設、増設に伴う初度設備を購入するために必要な需要品(消耗品)・備品購入費▼人工呼吸器および付帯備品▼個人防護具(マスク、ゴーグル、ガウン、グローブ、キャップ、フェイスシールド)▼簡易陰圧装置▼簡易ベッド▼体外式膜型人工肺(ECMO)および付帯備品▼簡易病室(テントやプレハブなど簡易な構造をもち、緊急的かつ一時的に設置する新型コロナウイルス感染症患者等への入院医療提供病室)および付帯する備品―となります。
これらの設備等について、次の額を上限として経費の2分の1が補助されます。
▽初度設備費:1床当たり13万3000円
▽人工呼吸器・付帯備品:1台当たり500万円
▽個人防護具:1人当たり3600円
▽簡易陰圧装置:1床当たり432万円
▽簡易ベッド:1台当たり:5万1400円
▽体外式膜型人工肺(ECMO)・付帯備品:1台当たり2100万円
▽簡易病室・付帯備品:実費相当額
帰国者・接触者外来等の設備整備や個人防護具確保の費用を補助
一方、(4)「帰国者・接触者外来等設備整備事業」は、新型コロナウイルス感染症の疑い症例を診察する「帰国者・接触者外来」等(2月1日付の事務連絡「新型コロナウイルス感染症に対応した医療体制について」に基づいて設置された帰国者・接触者外来と感染症専用の外来部門)の設置経費を補助し、感染拡大の防止・国民の不安軽減を目指すものです。
補助対象は、「帰国者・接触者外来」等における▼HEPAフィルター付き空気清浄機▼HEPAフィルター付パーテーション▼個人防護具(マスク、ゴーグル、ガウン、グローブ、キャップ、フェイスシールド)▼簡易ベッド▼簡易診療室(テントやプレハブなど簡易な構造をもち、緊急的かつ一時的に新型コロナウイルス感染症患者等に外来診療を行う診療室)および付帯備品―です。
これらの設備等について、次の額を上限として経費の2分の1が補助されます。
▽HEPAフィルター付空気清浄機(陰圧対応可能なものに限る):1施設当たり90万5000円
▽HEPAフィルター付パーテーション:1台当たり20万5000円
▽個人防護具:1人当たり3600円
▽簡易ベッド:1台当たり5万1400円
▽簡易診療室・付帯備品:実費相当額
ECMO等の操作知識持つ医療従事者を派遣する医療機関を補助
また(7)「新型コロナウイルス重症患者を診療する医療従事者派遣体制の確保事業」は、重症例治療のために必要な人工呼吸器やECMOを正しく扱える知識を有する医療従事者の派遣に係る費用を補助するものです。派遣元医療機関を対象に、▼医師では1人1時間当たり7550円を上限に▼医師以外の医療従事者では同じく2760円を上限に―派遣に係る費用の2分の1が補助されます。
派遣先は、3月26日付の事務連絡「新型コロナウイルス感染症の患者数が大幅に増えたときに備えた入院医療提供体制等の整備について(改訂)」で定められる「重症者」が入院している医療機関で、派遣される医療従事者は「人工呼吸器またはECMOに関する臨床上の十分な経験や研修の受講実績がある者」となります(関連記事はこちら)。
新型コロナ感染で休まざるを得ない医師の「代替医師」を派遣する医療機関を補助
また(8)「DMAT・DPAT等医療チーム派遣事業」では、次の額を上限として医療従事者の派遣費用や医療チームの活動費(個人防護具、医薬品、医療用消耗品、一般消耗品の購入などの必要)について、2分の1を補助するものです。
【医療チーム派遣経費】
▽医師:1人1時間当たり7550円
▽医師以外の医療従事者:1人1時間当たり2760円
▽業務調整員:1人1時間当たり1560円
【医療チーム活動費】:実費相当額
さらに(9)「新型コロナウイルスに感染した医師にかわり診療を行う医師派遣体制の確保事業」では、医療機関に勤務する医師が新型コロナウイルスに感染し、また感染の疑いがあり休まざるを得ない(治療や就労制限)状況にあっても、当該医療機関の診療継続を可能とするために「代替医師」を派遣する派遣元医療機関に対して、医師1人1時間当たり7550円を上限として必要経費の2分の1が補助されます。
都道府県をまたぐ「広域搬送」等に係る経費を補助
一方、(10)「医療搬送体制等確保事業」は、新型コロナウイルス感染症に対応するための「都道府県を越えた広域搬送体制」の整備を支援するものです。新型コロナウイルス感染症患者の搬送を行うために、「都道府県内の患者受け入れを調整する機能を有する組織・部門に『患者搬送コーディネーター』を配置し、患者の状態を考慮した上で搬送の是非に係る判断・搬送先の選定を行い、必要に応じて患者の搬送を行う」事業に係る経費が補助されます。
次の額を上限として経費の2分の1が補助されます。
【患者搬送コーディネーター経費、患者搬送同乗者経費】
▽医師:1人1時間当たり7550円
▽医師以外の医療従事者:1人1時間当たり2760円
【患者搬送費】:実費相当額
関連して、(11)「ヘリコプター患者搬送体制整備事業」では、患者搬送のために必要となる▼隔離搬送用バッグ購入費(ヘリコプター1台当たり30万円を上限)▼交換用消耗品(1搬送当たり11万6000円を上限)―について必要経費の2分の1が補助されます。
救命救急センター等の維持のために医師を派遣する医療機関を補助
また(12)「新型コロナウイルス感染症の影響に対応した医療機関の地域医療支援体制構築事業」は、新型コロナウイルス感染症患者が増加した場合にも、救急医療などの地域医療提供体制を維持するために、そうした機能を担う医療機関に医師等を派遣する経費を補助するものです。
具体的には、「新型コロナウイルス対応のために医療従事者が他医療機関に応援に行っている」「自院の新型コロナウイルス対応に医療従事者が従事している」などで、厳しい状況となっている▼救命救急センター▼二次救急医療機関▼へき地医療拠点病院▼総合周産期母子医療センター▼地域周産期母子医療センター▼小児中核病院▼小児地域医療センター▼小児地域支援病院―に対して、都道府県の定める計画に基づいて、都道府県の登録を受けた医師等を派遣する医療機関(派遣元)に補助を行うものです。
派遣元からは、1か月に延べ5日以上(派遣先の常勤医師等の勤務時間に準ずる)の派遣を行うことが必要で、補助対象となる派遣期間は2か月間が上限となります。次の額を上限として、必要な経費の2分の1が補助されます。
▽医師:1人1時間当たり2265円
▽医師以外の医療従事者:1人1時間当たり562円
なお、派遣元が派遣する医師等が「雇用調整助成金」を受給する場合には、当該助成金分を控除したうえでの補助となります。
新型コロナ感染等で休業を余儀なくされる医療機関、消毒費用などを補助
ところで、「患者が新型コロナウイルスに感染していた」などの理由から医療機関が診療縮小や休業等を余儀なくされるケースが出ています。この点、施設の消毒等が必要になることから、(13)「新型コロナウイルス感染症により休業等となった医療機関に対する継続・再開支援事業」では、▼HEPAフィルター付空気清浄機の購入費(1台当たり購入額90万5000円を上限、1施設当たり2台まで)▼消毒費用等―の2分の1が補助されます。ただし、総事業費の上限は1施設当たり「60万円」となります。
なお、新型コロナウイルスに感染した外国人患者を受け入れる場合には通訳等の多言語対応が必要になることから、(14)「医療機関における新型コロナウイルス感染症の外国人患者受入れのための設備整備事業」として、1施設当たり108万3000円(入院を要する救急患者に対応可能な感染症指定医療機関等の場合では、さらに42万9000円を加算)を上限として、医療機関の入口や、新型コロナウイルス感染疑い患者の待機場所などへの「多言語の看板・電光掲示板」等の設置費用が補助されます。
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