新型コロナ感染疑いの救急患者を「まず受け入れる」医療機関、各都道府県で早急に設定を―厚労省
2020.5.15.(金)
「新型コロナウイルス感染疑いのある救急患者」をまず受け入れる医療機関、「基礎疾患があり、新型コロナウイルス感染の疑いもある救急患者」を受け入れる医療機関を、改めて地域で設置・整備し、そこに個人防護具(PPE)配付や病床整備・人員確保などの重点支援を行ってほしい―。
厚生労働省は5月13日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症を疑う患者等に関する救急医療の実施について」を示し、こうした点を医療現場や都道府県等に要請しました(厚労省のサイトはこちら)。
目次
新型コロナに対応するため、地域の医療体制を改めて確認し、適切な整備、機能分担を
新型コロナウイルス感染症が依然として猛威を振るっています。安倍晋三内閣総理大臣が5月14日に、▼北海道▼東京都▼神奈川県▼千葉県▼埼玉県▼大阪府▼京都府▼兵庫県―の8都道府県を除く39県において緊急事態宣言を解きましたが、いわゆる第2波、第3波の到来も危惧されています。
そうした中で、救急搬送患者について「新型コロナウイルス感染の可能性があり、受け入れを拒否する」事例も生じています。そこで厚労省は4月18日に、▼「発熱、呼吸器症状等がある」など新型コロナウイルス感染症が疑われても、「生命が危険な状態にある」または「速やかに診療を行う必要がある」救急患者については、院内感染対策等を講じ速やかに受け入れてほしい▼緊急度が高くない場合であっても、基礎疾患や症状の有無等について丁寧に聴取し、都道府県調整本部と調整し、その調整結果に従ってほしい―旨を医療現場や都道府県等に要請しました。
しかし、医療現場において「感染を防止するための個人防護具(PPE)の不足度合いが切迫している」中では、上記の対応が難しい医療機関等も少なくありません。こうした点を踏まえて厚労省は、今般の事務連絡において「新型コロナウイルス感染疑いのある救急患者」の受け入れ体制を整備するにあたり、各地域で検討・調整すべき点を整理しなおしたものです。
検討・調整すべき点は、大きく(1)新型コロウイルス感染疑いのある救急患者の受け入れ体制(2)新型コロナウイルス疑いのある救急患者を「まず受け入れる医療機関」(3)基礎疾患等のある新型コロナウイルス感染疑いのある救急患者の受け入れ体制(4)新型コロナウイルス感染疑いのある救急患者の受け入れ先の調整方法(5)新型コロナウイルス感染疑いのある救急患者のPCR等検査結果判明後の対応(6)救急医療機関において「救急患者受け入れの一部制限や停止等」を行う場合の対応―の6点です。
まず(1)は、新型コロナウイルスが猛威を振るう中で「地域全体の救急医療体制」について再検討を求めるものです。
また、新型コロナウイルス感染症が疑われる患者については、医療従事者や他の患者への感染拡大の恐れがあることから、「確定診断前から新型コロナウイルス感染症と診断された患者と同等の感染管理」が必要となります。このため、各地域で「確定診断がつくまでの間、新型コロナウイルス感染疑いのある救急患者をまず受け入れ、必要な救急医療を提供する医療機関」をあらかじめ別に設定することが求められてくるのです。
こうした点を踏まえて、各地域(都道府県)において、▼新型コロナウイルス感染疑いのある救急患者を受入れる医療機関▼他の疾患等の救急患者を受け入れる医療機関―の役割分担を明確化し、それぞれの役割に応じた必要な支援を行うことが重要です。
新型コロナ感染疑いの救急患者を「まず受け入れる」医療機関へは財政的支援も
このように、各都道府県において「新型コロナウイルス疑いのある救急患者をまず受け入れる医療機関」を設置することが求められます。厚労省では、(2)として▼重点医療機関▼重点医療機関以外で、新型コロナ疑い救急患者を積極的に受け入れる医療機関(神奈川県では重点医療機関を支援する「重点医療機関協力病院」を設定)▼帰国者・接触者外来が設置されている医療機関―などを例示し、早急な設置を求めています。
また、この医療機関では、PCR等検査結果が判明するまでの間、「比較的多くの個人防護具(PPE)や個室病床等」が必要となることから、設置後には、▼個人防護具(PPE)の配分等▼病床確保▼人員確保等―への十分な支援を行うことが求められます(関連記事はこちら)。
「基礎疾患があり、新型コロナ感染の疑いもある救急患者の受け入れ医療機関」設定も
(3)では、「▼糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)などの基礎疾患がある▼免疫疫抑制剤や抗がん剤等を用いている▼透析中、小児―などで、新型コロナウイルス感染疑いのある救急患者について、専門治療を実施でき、かつ、新型コロナウイルス感染症への対応も可能である医療機関」についてもあらかじめ設定することを求めています。
また妊産婦が新型コロナウイルスに感染した疑いがあり、救急医療が必要となるケースに対しては、既に示されている事務連絡「新型コロナウイルス感染症に対応したがん患者・透析患者・障害児者・妊産婦・小児に係る医療提供体制について」も踏まえて、早急に地域での受け入れ態勢(担当医療機関の設定や輪番制の構築など)を協議し、整えることが求められます。
なお、こうした医療機関に対しても、▼個人防護具(PPE)の配分等▼病床確保▼人員確保等―への十分な支援が求められることは述べるまでもありません(関連記事はこちら)。
また(4)では、上記の体制を踏まえた「患者の受け入れに係る連絡・調整」方法を事前に取り決めておく(都道府県調整本部、保健所、救急医療機関、消防機関等)ことを求めています。
例えば、119番通報を受け、消防機関が「新型コロナウイルス感染が疑われる患者」であると確認した場合、▼保健所(夜間には都道府県調整本部)等が搬送手段及び搬送先の調整を行う▼消防機関が、あらかじめ共有されている「新型コロナウイルス感染疑い救急患者をまず受け入れる医療機関」に連絡調整する▼消防機関が、既存の救急医療体制を担う医療機関(例:2次救急医療機関、輪番制の当番医療機関など)に連絡・調整する―など、さまざまな手法が地域で考えられ、それを検討・調整し、関係者間で広く共有しておくことが重要です。
なお、例えば「30分以上搬送依頼を行うも搬送先が決定されない」「4か所以上搬送依頼を行うも搬送先が決定されない」「患者の状態が悪化した」などの場合には、都道府県調整本部が調整を行う、などのルールも決めておくことが必要です。
新型コロナウイルス感染の有無による「事後の対応」もあらかじめ整理を
患者受け入れ後には、PCR等検査を実施することになりますが、次のように検査結果に応じた対応方法を決めておくことも重要です。例えば「陰性患者については、別の医療機関に速やかに搬送する」などの対応をしなければ、「新型コロナウイルス感染疑い救急患者をまず受け入れる医療機関」がパンクしてしまうからです。
【陽性の場合】の対応例
▽陽性患者(新型コロナウイルス感染症)の治療を担う重点医療機関等へ転院
▽同一医療機関の「陽性患者を管理する病床」(感染症病床など)で治療を継続
など
【陰性の場合】の対応例
▽陰性患者の治療を担う地域の医療機関等へ転院
▽同一医療機関の一般病床で治療を継続
など
地域の救急医療体制を毎日確認し、支障あれば地域医師会等協議して迅速な対応を
ところで、「救急医療機関が、救急患者受け入れを一部制限したり、停止する」などの事態が生じている場合には、地域の救急医療体制に支障が生じます。これを放置すれば、救える命が救えないこととなってしまうため、都道府県において必要な対応を行うことが強く求められます。
このため厚労省は、各都道府県に対して次のような取り組みを要請しています。
▽「G-MIS」(厚労省と内閣官房が運営する新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム、関連記事はこちら)を活用して、医療機関の稼働状況を毎日把握する
▽異常(救急医療の支障など)を確認した場合には、▼周辺の救急医療機関・地域医師会をはじめとする医療関係者間で協議し、「新型コロナウイルス感染疑いのある救急患者以外の救急患者」の受け入れ要請も含めて、各医療機関の機能・人員等に応じた役割分担を求める▼当該医療機関への個人防護具(PPE)配分、病床確保・人員確保などの支援を行う―ことを検討、実施する
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