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有床診の減少止まらず、22年6月末に6000施設・22年末に8万床を割る見込み―医療施設動態調査(2021年1月)

2021.3.26.(金)

有床診療所の減少には依然として歯止めがかからず、現在の減少ペースが続けば来年(2022年)6月末に6000施設を割り、同じく来年(2022年)末には8万床を切ることになる―。

また昨年(2020年)から歯科診療所の減少が続いており、新型コロナウイルス感染症による患者減などの影響が伺える―。

厚生労働省が3月25日に公表した医療施設動態調査(2021年1月末概数)から、こうした状況が分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

2020年12月から2021年1月にかけても、歯科診療所の減少が続いている(医療施設動態調査 2021年1月)

有床診の減少止まらず、現行ペースでは「2022年6月」に6000施設を切る見込み

厚労省は、毎月末における医療機関(病院・診療所)の施設数・病床数を「医療施設動態調査」として公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、その前の月末の状況はこちら)。今年(2021年)1月末における全国の医療施設は17万9331施設となり、昨年(2020年)末から86施設減少しました。

病院の施設数は、昨年(2020年)末から1施設減少し、8236施設となりました。種類別に見ると、▼一般病院:7181施設(昨年(2020年)末から増減なし)▼精神科病院:1055施設(同1施設減)—などです。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3558施設で昨年(2020年)末から変化なし、「地域医療支援病院」は625施設で昨年(2020年)末から1施設減少しました。

医科診療所の施設数は10万3071施設で、昨年(2020年)末から21施設減少しました。無床の一般診療所が5施設増加、有床診療所が26施設減少しています。

また、歯科診療所は、6月から7月にかけて46施設減少、7月から8月にかけて29施設減少、8月から9月にかけて10施設減、9月から10月にかけて39施設減、10月から11月にかけて22施設減、11月から12月にかけて38施設減、昨年(2020年)末から今年(2021年)1月末にかけて64施設減となっています。



新型コロナウイルス感染症による医療機関経営への影響(収入減)により「病院・診療所の倒産」が増加する可能性が指摘されています。歯科診療所で施設減が続いており、「新型コロナウイルス感染症の影響」との関連を詳しく分析する必要があります(さらに、歯科診療所は「乱立による経営難」が従前から指摘されており、その影響も大きいと考えられる)。一方、病院・医科診療所については、厚労省による経営支援(空床を確保した病床への手厚い補助、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる病院への人材確保経費補助、診療報酬上の各種特例など)が少なからず効果を上げていると見ることができるでしょう。



ただし、医科医療機関でも有床診療所の施設数を見ると、2年前(2019年1月末)には6836施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2020年1月末)には6552施設(厚労省のサイトはこちら)でした。2019年1月末から2020年1月末までの1年間で284施設の減少、そこから今年(2021年)1月末(6323施設)までの1年間で229施設の減少となっています。有床診療所の施設数は、2020年1月末以降、次のように推移しています。

▼2020年1月末:6552施設
↓(21施設減)
▼2020年2月末:6531施設
↓(7施設減)
▼2020年3月末:6524施設
↓(41施設減)
▼2020年4月末:6483施設
↓(17施設減)
▼2020年5月末:6466施設
↓(20施設減)
▼2020年6月末:6446施設
↓(13施設減)
▼2020年7月末:6433施設
↓(19施設減)
▼2020年8月末:6414施設
↓(10施設減)
▼2020年9月末:6404施設
↓(25施設減)
▼2020年10月末:6379施設
↓(9施設減)
▼2020年11月末:6370施設
↓(21施設減)
▼2020年12月末:6349施設
↓(26施設減)
▼2021年1月末:6323施設



直近1年間は、1か月当たり「19施設強」のペースで減少が続いています。現在のペースが続くと仮定すれば、来年(2022年)6月末に6000施設を割る計算です(昨年(2020年)末から1か月早いペース)。

有床診のベッド数、現行ペースでは「2022年末」に8万床を割る見込み

次に病院・診療所の病床数(ベッド数)を眺めてみましょう。

全体では、今年(2021年)末には159万5146床で、昨年(2020年)末から1182床の大幅減となりました。

このうち病院の病床数は150万9158床で、昨年(2020年)末から780床の減少。医療法上の病床種類別に見ると、▼一般病床:88万7776床(昨年(2020年)末から233床減少)▼療養病床:29万954床(同295床減少)▼精神病床:32万4421床(同240床減少)—などとなっています。

また、有床診療所の病床数は昨年(2020年)末から402床減少し、8万5929床となりました。2年前(2019年1月末)には9万3517床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2020年1月末)には8万9626床(厚労省のサイトは厚労省のサイトはこちら)でした。2019年1月末から2020年1月末までの1年間で3891床減少、そこから今年(2021年)1月末までの1年間で3697床減少しています。2020年1月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。

▼2020年1月末:8万9626床
↓(237床減)
▼2020年2月末:8万9389床
↓(179床減)
▼2020年3月末:8万9210床
↓(601床減)
▼2020年4月末:8万8609床
↓(309床減)
▼2020年5月末:8万8300床
↓(362床減)
▼2020年6月末:8万7938床
↓(215床減)
▼2020年7月末:8万7723床
↓(325床減)
▼2020年8月末:8万7398床
↓(182床減)
▼2020年9月末:8万7216床
↓(348床減)
▼2020年10月末:8万6868床
↓(200床減)
▼2020年11月末:8万6668床
↓(337床減)
▼2020年12月末:8万6331床
↓(402床減)
▼2021年1月末:8万5929床

この1年間では、1か月当たり「308床強」のペースで減少が続いています。現在のペースが継続すると仮定すれば、来年(2022年)末には8万床を切る計算です(昨年末(2020年末)よりも3か月遅いペース)。



有床診は、将来の地域包括ケアシステム(要介護状態になっても住み慣れた地域で在宅生活を継続可能とする仕組み)の重要な構成要素(急変時やレスパイトにおける入院病床)として期待されることはもちろん、現行の医療提供体制においても重要な構成要素(2次医療圏の中には、総ベッド数の4分の1が有床診である地域もある)の1つとなっています。有床診の減少は、こうした地域の医療・介護提供体制を脆弱化させることを意味します。

厚労省は、2018年度診療報酬改定(介護報酬との同時改定)で、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、後者の『地域包括ケア型』について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視。有床診経営を支援するために、要介護者の受け入れを【介護連携加算】で評価するなどの報酬見直しを行いました(関連記事はこちらこちら)。

さらに、2020年度診療報酬改定では、次のような見直しが行われています(関連記事はこちら)。

▼【有床診療所一般病床初期加算】(急性期病棟からの転棟患者受け入れを評価する)について、点数を150点に引き上げ(50点増)、算定上限日数を「転棟等日から14日」に延長する(7日間延長)

▼【医師配置加算】について、加算1を120点(32点増)、加算2を90点(30点増)に引き上げる

▼【看護配置加算】について、加算1を60点(20点増)、加算2を35点(15点増)に引き上げる

▼【夜間看護配置加算】について、加算1を100点(15点増)、加算2を50点(15点増)に引き上げる

▼【看護補助配置加算】について、加算1を25点(15点増)、加算2を15点(10点増)に引き上げる

▼【有床診療所緩和ケア診療加算】について、250点に引き上げる(100点増)



しかし、こうした診療報酬上の手当てについては効果が表れているとは言い難い状況です。このため、「診療報酬による手当てでは、有床診の減少を止めることはできないのではないか。有床診減少の背景には『後継者不在』なども大きく関係しており、別の手当てを考える必要があるのではないか」と指摘する識者もおられます。2022年度診療報酬改定に向けた議論の中で、「有床診の減少スピードに歯止めをかけるために新たな一手を打つ」のか、あるいは「別の方向に舵を切る」のか、注目する必要があります。



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