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「有床診の減少」続く、2021年5月には8万5000床を切り、22年6月末には6000施設を割る見込み―医療施設動態調査(2020年9月)

2020.11.27.(金)

有床診療所の減少が続いており、現在の減少ペースが続けば2022年6月末に6000施設を割り、来年(2021年)5月末に8万5000床を切る可能性が高い。今年(2020年)8月から9月末にかけては「1か月当たりの減少数が小さくなった」ように見えますが、単月の状況から「減少ペースに歯止めがかかった」と判断することはできない―。

また病院のベッド数「大幅減少」(とりわけ療養病床の減少)も、昨年(2019年)後半から続いている―。

厚生労働省が11月26日に公表した医療施設動態調査(2020年9月末概数)から、こうした状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。新型コロウイルス感染症による「倒産」等の影響はいまだ数字には現れていませんが、いわゆる「第3波」が到来していると考えられ、今後の動向をさらに注視していくことが重要です

依然として、有床診の大幅減、病院病床数の大幅減が続いている(医療施設動態調査(2020年9月) 201126)

有床診の減少止まらず、現行ペースでは2022年6月には6000施設を切る

厚労省は、毎月末に医療機関(病院・診療所)の施設数・病床数を積み上げた「医療施設動態調査」を公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。今年(2020年)9月末における全国の医療施設は17万9475施設となり、前月末から119施設増加しました。

病院の施設数は、前月末から4施設減少し8243施設となりました。種類別に見ると、▼一般病院:7189施設(前月末から4施設減少)▼精神科病院:1054施設(同増減なし)—などです。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3580施設で前月末から3施設減少、「地域医療支援病院」は625施設で前月末から1施設増加しています。

地域医療支援病院に関しては、昨年(2019年)8月に厚労省の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」で承認要件の見直しを決定。現在の▼紹介患者への医療提供(かかりつけ医への逆紹介も含む)▼医療機器の共同利用▼救急医療の提供▼地域の医療従事者への研修の実施―という4機能に加え、都道府県が「医師の少ない地域への医師派遣実施」などのプラスアルファ要件を独自追加(厳格化)することが認められます(関連記事はこちらこちらこちら)。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響で医療法改正案の国会提出が遅れており、見直し案は宙に浮いている状況です。



ところで、新型コロナウイルス感染症による医療機関経営への影響(収入減)により「病院・診療所の倒産」が増加することが懸念されていましたが、9月末時点の数字からもそうした状況は見られません。ただし11月に入って新規感染者数が急増しており、今後の動きにも注意が必要です。
【新型コロナウイルス感染症の病院経営への影響調査等の関連記事】
●GHC分析7-9月7月6月 5月4月3月
●厚生労働省分析4-6月4-7月
●支払基金データ7月6月5月4月3月
●日病・全日病・医法協調査7-9月調査7月調査第1四半期追加報告最終報告速報
●全自病調査5月分調査4月分調査
●全国医学部長病院長会議調査8月分調査7月分調査4・5・6月分調査
●健保連調査8月分 7月分6月分調査4・5月分調査



医科診療所の施設数は10万3045施設で、前月末から133施設も増加しています(無床の一般診療所が143施設増加)。ただし有床診療所は前月末から10施設減少し、6404施設となりました。これまでに比べて1か月の施設減少数が少ないようにも思われますが、単月で「減少にストップがかかってきた」と判断することは余りに性急でしょう。

なお歯科診療所は、6月から7月にかけて46施設減少、7月から8月にかけて29施設減少しており、新型コロナウイルス感染症の影響が心配されましたが、8月から9月にかけては10施設減にとどまっています。ただし、再びの新型コロナウイルス感染症患者増が生じており、「患者の受診控え → 医療機関経営の悪化」が生じていないか注視していく必要があります。



有床診療所の施設数は、2年前(2018年9月末)には6934施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2019年9月末)には6644施設(厚労省のサイトはこちら)でした。2018年9月末から2019年9月末までの1年間で290施設の減少、さらに今年(2020年)9月末までの1年間で240施設の減少となっています。有床診療所の施設数は、2019年9月末以降、次のように推移しています。

▼2019年9月末:6644施設
↓(25施設減)
▼2019年10月末:6619施設
↓(19施設減)
▼2019年11月末:6600施設
↓(19施設減)
▼2019年12月末:6581施設
↓(29施設減)
▼2020年1月末:6552施設
↓(21施設減)
▼2020年2月末:6531施設
↓(7施設減)
▼2020年3月末:6524施設
↓(41施設減)
▼2020年4月末:6483施設
↓(17施設減)
▼2020年5月末:6466施設
↓(20施設減)
▼2020年6月末:6446施設
↓(13施設減)
▼2020年7月末:6433施設
↓(19施設減)
▼2020年8月末:6414施設
↓(10施設減)
▼2020年9月末:6404施設

直近1年間は、1か月当たりちょうど「20施設」のペースで減少が続いています。現在のペースが続くと仮定すれば、2022年6月末に6000施設を割ってしまう計算です(前月末までより1か月遅い同じペース)。

有床診のベッド数、現行ペースが続けば「2021年5月」に8万5000床を割る

病院・診療所の病床数(ベッド数)に目を移してみます。全体では、今年(2020年)9月末には159万9008床で、前月末から883床の減少となりました。▼2019年10月→11月:933床減▼同年11月→12月:969床減▼同年12月→2020年1月:1014床減▼同年1月→2月:1787床減▼同年2月→3月末:2890床減▼同年3月末→4月末:7859床減▼同年4月末→5月末:1000床減▼同年5月→6月末:1083床減▼同年6月末→7月末:1170床減▼同年7月末→8月末:540床減▼同年8月末→9月末:883床減—と大幅減少が続いています。

このうち病院の病床数は151万1734床で、前月末から701床の減少。医療法上の病床種類別に見ると、▼一般病床:88万7644床(前月末から382床増加)▼療養病床:29万3143床(同264床減少)▼精神病床:32万4901床(同55床減少)—などとなっています。

また、有床診療所の病床数は前月末から182床減少し、8万7216床となりました。2年前(2018年9月末)には9万4853床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2019年9月末)には9万825床(厚労省のサイトはこちら)でした。2018年9月末から2019年9月末までの1年間で4028床減少、そこから今年(2020年)9月末までの1年間で3609床減少しています。2019年9月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。

▼2019年9月末:9万825床
↓(353床減)
▼2019年10月末:9万472床
↓(224床減)
▼2019年11月末:9万248床
↓(291床減)
▼2019年12月末:8万9957床
↓(331床減)
▼2020年1月末:8万9626床
↓(237床減)
▼2020年2月末:8万9389床
↓(179床減)
▼2020年3月末:8万9210床
↓(601床減)
▼2020年4月末:8万8609床
↓(309床減)
▼2020年5月末:8万8300床
↓(362床減)
▼2020年6月末:8万7938床
↓(215床減)
▼2020年7月末:8万7723床
↓(325床減)
▼2020年8月末:8万7398床
↓(182床減)
▼2020年9月末:8万7216床

この1年間では、1か月当たり「300床強」のペースで減少が続いています。現在のペースが継続すると仮定すれば、来年(2021年)5月末には8万5000床を切る計算です(前月末よりも1か月遅いペース)。



有床診は、将来の地域包括ケアシステム(要介護状態になっても住み慣れた地域で在宅生活を継続可能とする仕組み)の重要な構成要素(急変時やレスパイトにおける入院病床)としての期待はもちろん、現行の医療提供体制においても重要な構成要素(2次医療圏の中には、総ベッド数の4分の1が有床診である地域もある)となっています。有床診の減少は、こうした医療・介護提供体制を脆弱化させることを意味し、経営の下支えが重要となってきます。

厚労省は、2018年度診療報酬改定(介護報酬との同時改定)で、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、後者の『地域包括ケア型』について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視。有床診経営を支援するために、要介護者の受け入れを【介護連携加算】で評価するなどの報酬見直しを行いました(関連記事はこちらこちら)。

さらに、2020年度診療報酬改定では、次のような見直しが行われています(関連記事はこちら)。

▼【有床診療所一般病床初期加算】(急性期病棟からの転棟患者受け入れを評価する)について、点数を150点に引き上げ(50点増)、算定上限日数を「転棟等日から14日」に延長する(7日間延長)

▼【医師配置加算】について、加算1を120点(32点増)、加算2を90点(30点増)に引き上げる

▼【看護配置加算】について、加算1を60点(20点増)、加算2を35点(15点増)に引き上げる

▼【夜間看護配置加算】について、加算1を100点(15点増)、加算2を50点(15点増)に引き上げる

▼【看護補助配置加算】について、加算1を25点(15点増)、加算2を15点(10点増)に引き上げる

▼【有床診療所緩和ケア診療加算】について、250点に引き上げる(100点増)



これまでに改定の効果が明確に現れているとは言い難い状況です。間もなく2022年度診療報酬改定に向けた議論が始まりますが、「有床診の減少スピードに歯止めをかけるためにさらなる一手を打つ」のか、あるいは「別の方向に舵を切る」のか、なども重要な論点となってきそうです。

なお、有床診減少の背景には「後継者がいない」ことも大きく関係していると思われます。この点については診療報酬での手当ては極めて困難です。有床診減少の背景をさらに詳しく分析していくことが重要でしょう。

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有床診、現在の減少ペース続けば、今年(2017年)8月に10万床切る―医療施設動態調査(2017年3月)
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2016年以降、有床診は月間26施設・320床のペースで減少―医療施設動態調査(2017年1月)
有床診療所、前月に比べて施設数は25、ベッド数は287減少―医療施設動態調査(2016年12月)
有床診療所、前月に比べて施設数は30、ベッド数は367減少―医療施設動態調査(2016年11月)
一般病床数、療養病床数ともに2か月連続で3桁の減少―医療施設動態調査(2016年10月)
一般病床数、療養病床数ともに3桁の減少―医療施設動態調査(2016年9月)
有床診療所の施設数・ベッド数の減少ペースがやや鈍化―医療施設動態調査(2016年8月)
一般病床数は前月比336床増加の一方で、療養病床数は252床減少―医療施設動態調査(2016年7月)
一般病床の平均在院日数は16.5日、病床利用率は75.0%に―2015年医療施設動態調査
一般病床数は前月比977床の大幅増、精神病床は237床減―医療施設動態調査(2016年5月)
一般病床数は前月比379床増、精神病床は551床減、2016年度改定との関連の分析が必要―医療施設動態調査(2016年4月)
一般病床数が前月比1135床減、2か月連続で千床台の大幅減―医療施設動態調査(2016年3月)
一般病床数が前月から1299床の大幅減、今後の動向に注目集まる―医療施設動態調査(2016年2月)
病院の一般病床数が前月から726床減少、無床のクリニックも減少―医療施設動態調査(2016年1月)
有床診の減少止まらず7864施設に、2016年度診療報酬改定の効果のほどは?―医療施設動態調査(15年12月)
有床診の減少止まらず、2015年11月には7905施設・10万6890床に―医療施設動態調査(15年11月)
有床診の減少、依然続く、2015年10月には7927施設・10万7210床に―医療施設動態調査(15年10月)
有床診の減少止まらず、2016年度改定での対応に注目集まる―医療施設動態調査(15年9月)
有床診療所、ついに8000施設を切る―医療施設動態調査(15年8月)
病院の病床数、15年5月には156万7636床に―医療施設動態調査



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地域医療支援病院の承認要件見直しへ議論開始―厚労省・検討会



2020年度診療報酬改定、「ネットで2%台半ば以上のマイナス、本体もマイナス」改定とせよ―財政審



内科などの有床診療所、より柔軟に介護サービス提供可能に―中医協総会(2)
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