有床診の減少続く、22年6月末には6000施設を割り、9月には8万床を切る見込み―医療施設動態調査(2020年10月)
2020.12.28.(月)
有床診療所の減少が続いており、現在の減少ペースが続けば再来年(2022年)6月末に6000施設を割り、同じく9月には8万床を切る可能性が高い―。
また病院のベッド数「大幅減少」(とりわけ療養病床の減少)も、昨年(2019年)後半から続いている―。
厚生労働省が12月24日に公表した医療施設動態調査(2020年10月末概数)から、こうした状況が分かりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診の減少止まらず、現行ペースでは「2022年6月」には6000施設を切る
厚労省は、毎月末に医療機関(病院・診療所)の施設数・病床数を積み上げて、「医療施設動態調査」として公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。今年(2020年)10月末における全国の医療施設は17万9493施設となり、前月末から18施設増加しました。
病院の施設数は、前月末から2施設減少し8241施設となりました。種類別に見ると、▼一般病院:7185施設(前月末から4施設減少)▼精神科病院:1056施設(同2施設増加)—などです。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3569施設で前月末から11施設減少、「地域医療支援病院」は625施設で前月末から変化ありません。
ところで、新型コロナウイルス感染症による医療機関経営への影響(収入減)により「病院・診療所の倒産」が増加する可能性が指摘されていましたが、10月末時点の数字からもそうした状況は見られません。ただし11月以降は新規感染者数がみたび急増しており、今後の動きにも注意が必要です。
【新型コロナウイルス感染症の病院経営への影響調査等の関連記事】
●GHC分析:7-9月、7月、6月、 5月、4月、3月
●厚生労働省分析:4-6月、4-7月
●支払基金データ:7月、6月、5月、4月、3月
●日病・全日病・医法協調査:7-9月調査、7月調査、第1四半期、追加報告、最終報告、速報
●全自病調査:10月分調査、5月分調査、4月分調査
●健保連調査:9月分、8月分、7月分、6月分調査、4・5月分調査
●厚労省医療費の動向:4-8月分、4-7月分、4-6月分
●●全国医学部長病院長会議の動向:9月分調査、8月分調査、7月分調査、4・5・6月分調査
医科診療所の施設数は10万3104施設で、前月末から59施設増加しています(無床の一般診療所が84施設増加)。ただし有床診療所は前月末から25施設減少し、6379施設となりました。前月(2020年9月)には「これまでに比べて1か月の施設減少数が少ない」状況でしたが、一時的な現象だったようです。
なお歯科診療所は、6月から7月にかけて46施設減少、7月から8月にかけて29施設減少、8月から9月にかけて10施設減、9月から10月にかけて39施設減となっており、新型コロナウイルス感染症の影響(受診患者の減少 → 医療機関経営の悪化)が出ている可能性があります。今後の状況を注視する必要があります。
有床診療所の施設数は、2年前(2018年10月末)には6909施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2019年10月末)には6619施設(厚労省のサイトはこちら)でした。2018年10月末から2019年10月末までの1年間で290施設の減少、さらに今年(2020年)10月末までの1年間で240施設の減少となっています。有床診療所の施設数は、2019年10月末以降、次のように推移しています。
▼2019年10月末:6619施設
↓(19施設減)
▼2019年11月末:6600施設
↓(19施設減)
▼2019年12月末:6581施設
↓(29施設減)
▼2020年1月末:6552施設
↓(21施設減)
▼2020年2月末:6531施設
↓(7施設減)
▼2020年3月末:6524施設
↓(41施設減)
▼2020年4月末:6483施設
↓(17施設減)
▼2020年5月末:6466施設
↓(20施設減)
▼2020年6月末:6446施設
↓(13施設減)
▼2020年7月末:6433施設
↓(19施設減)
▼2020年8月末:6414施設
↓(10施設減)
▼2020年9月末:6404施設
↓(25施設減)
▼2020年10月末:6379施設
直近1年間は、1か月当たりちょうど「20施設」のペースで減少が続いています。現在のペースが続くと仮定すれば、2022年6月末に6000施設を割ってしまう計算です(前月末までと同じペース)。
有床診のベッド数、現行ペースが続けば「2022年9月」に8万床を割ってしまう
病院・診療所の病床数(ベッド数)に目を移してみましょう。全体では、今年(2020年)10月末には159万7408床で、前月末から1600床の減少となりました。▼2019年10月→11月:933床減▼同年11月→12月:969床減▼同年12月→2020年1月:1014床減▼同年1月→2月:1787床減▼同年2月→3月末:2890床減▼同年3月末→4月末:7859床減▼同年4月末→5月末:1000床減▼同年5月→6月末:1083床減▼同年6月末→7月末:1170床減▼同年7月末→8月末:540床減▼同年8月末→9月末:883床減▼同年9月末→10月末:1600床減—と大幅減少が続いています。
このうち病院の病床数は151万482床で、前月末から1252床の減少。医療法上の病床種類別に見ると、▼一般病床:88万7468床(前月末から176床減少)▼療養病床:29万2060床(同1083床減少)▼精神病床:32万4921床(同20床増加)—などとなっています。
また、有床診療所の病床数は前月末から348床減少し、8万6868床となりました。2年前(2018年10月末)には9万4501床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2019年10月末)には9万472床(厚労省のサイトはこちら)でした。2018年10月末から2019年10月末までの1年間で4029床減少、そこから今年(2020年)9月末までの1年間で3604床減少しています。2019年10月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2019年10月末:9万472床
↓(224床減)
▼2019年11月末:9万248床
↓(291床減)
▼2019年12月末:8万9957床
↓(331床減)
▼2020年1月末:8万9626床
↓(237床減)
▼2020年2月末:8万9389床
↓(179床減)
▼2020年3月末:8万9210床
↓(601床減)
▼2020年4月末:8万8609床
↓(309床減)
▼2020年5月末:8万8300床
↓(362床減)
▼2020年6月末:8万7938床
↓(215床減)
▼2020年7月末:8万7723床
↓(325床減)
▼2020年8月末:8万7398床
↓(182床減)
▼2020年9月末:8万7216床
↓(348床減)
▼2020年10月末:8万6868床
この1年間では、1か月当たり「300床強」のペースで減少が続いています。現在のペースが継続すると仮定すれば、再来年(2022年)9月末には8万床を切る計算です(前月末と同じペース)。
有床診は、将来の地域包括ケアシステム(要介護状態になっても住み慣れた地域で在宅生活を継続可能とする仕組み)の重要な構成要素(急変時やレスパイトにおける入院病床)としてはもちろん、現行の医療提供体制においても重要な構成要素(2次医療圏の中には、総ベッド数の4分の1が有床診である地域もある)となっています。有床診の減少は、こうした医療・介護提供体制を脆弱化させることを意味し、経営の下支えが重要となってきます。
厚労省は、2018年度診療報酬改定(介護報酬との同時改定)で、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、後者の『地域包括ケア型』について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視。有床診経営を支援するために、要介護者の受け入れを【介護連携加算】で評価するなどの報酬見直しを行いました(関連記事はこちらとこちら)。
さらに、2020年度診療報酬改定では、次のような見直しが行われています(関連記事はこちら)。
▼【有床診療所一般病床初期加算】(急性期病棟からの転棟患者受け入れを評価する)について、点数を150点に引き上げ(50点増)、算定上限日数を「転棟等日から14日」に延長する(7日間延長)
▼【医師配置加算】について、加算1を120点(32点増)、加算2を90点(30点増)に引き上げる
▼【看護配置加算】について、加算1を60点(20点増)、加算2を35点(15点増)に引き上げる
▼【夜間看護配置加算】について、加算1を100点(15点増)、加算2を50点(15点増)に引き上げる
▼【看護補助配置加算】について、加算1を25点(15点増)、加算2を15点(10点増)に引き上げる
▼【有床診療所緩和ケア診療加算】について、250点に引き上げる(100点増)
これまでに改定の効果が明確に現れているとは言い難い状況です。間もなく2022年度診療報酬改定に向けた議論が始まりますが、「有床診の減少スピードに歯止めをかけるためにさらなる一手を打つ」のか、あるいは「別の方向に舵を切る」のか、なども重要な論点となってくるでしょう。
なお、有床診減少の背景には「後継者がいない」ことも大きく関係していると思われます。この点については診療報酬での手当ては極めて困難であり、有床診減少の背景をさらに詳しく分析していくことが重要です。
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有床診療所は10万19床、現時点で10万床割れは確実―医療施設動態調査(2017年7月)
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有床診、2017年5月末に10万466床、7月に10万床切るペースで減少―医療施設動態調査(2017年5月)
有床診、新年度から減少ペース早まり、今年(2017年)7月に10万床切る―医療施設動態調査(2017年4月)
有床診、現在の減少ペース続けば、今年(2017年)8月に10万床切る―医療施設動態調査(2017年3月)
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一般病床数、療養病床数ともに2か月連続で3桁の減少―医療施設動態調査(2016年10月)
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一般病床数は前月比336床増加の一方で、療養病床数は252床減少―医療施設動態調査(2016年7月)
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一般病床数は前月比977床の大幅増、精神病床は237床減―医療施設動態調査(2016年5月)
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一般病床数が前月から1299床の大幅減、今後の動向に注目集まる―医療施設動態調査(2016年2月)
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有床診の減少止まらず7864施設に、2016年度診療報酬改定の効果のほどは?―医療施設動態調査(15年12月)
有床診の減少止まらず、2015年11月には7905施設・10万6890床に―医療施設動態調査(15年11月)
有床診の減少、依然続く、2015年10月には7927施設・10万7210床に―医療施設動態調査(15年10月)
有床診の減少止まらず、2016年度改定での対応に注目集まる―医療施設動態調査(15年9月)
有床診療所、ついに8000施設を切る―医療施設動態調査(15年8月)
病院の病床数、15年5月には156万7636床に―医療施設動態調査